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5-1



Sクラスの教室に着いた瞬間、龍はすぐぼくを車椅子からソファーに移動、強制的に横になった。


もはやぼくの意見を聞く気もなくとりあえず休めということらしい。


本当に呆れるもんだな。


忌々し過ぎて眼の前にいるだけでも無性にイラッとするから、ティータイムの用意しろと言った。自然と龍を尊敬しているスイもも一緒に準備することになった。


クレマンが先程の講義の内容を魔法で録画した内容を他の者が見やすいように調整していながら、その魔法に興味津々のアキラに説明している。


スズネが何度か説明して、ようやっとマキの了承を得たから。マキの爪にマニキュアを塗っている。初めてのマニキュアだから、マキが不思議そうでスズネの作業を見つめている。


強制されたとはいえ、正直些か疲れたから横になったままみんなの行動を眺めているだけ。


今の調子だと、夜になったらまた熱になりそう。熱が出たらしばらく講義に出ることができない。このままここに来る意味がなくなるな。


不便な体。


「みっち~どぉした?もしかしてクレマンくんと仲良くなったから嫉妬したぁ?大丈夫だよ。オレはいつでもみっちの忠実な犬」


……目の前にしゃがんで、ぼくの目線の高さを合わせたアキラを見ると笑いたくなる。


彼も思ってないことを気軽に言えるもんだ。


ただ、その顔とその目を見ると、意外と目障りではない。


「あんたのような乱暴な猛獣に飼ってる記憶がないわ」


「へへへぇ~猛獣なんてまだまだだよぉ」


まるでぼくに褒められたように馬鹿らしく笑っているアキラを見ると本当に飽きないな。


ただ比べる相手が些か違ったような気がする。(あいつ)と比べると誰も猛獣なんてなれないわ。


「手、触っていい?」


「………いいよ」


ぼくの許可を得たアキラが軽くぼくの手を触った。彼の体温が思った通り高かった。


さすが子犬だな。


今の体には些か高温すぎて気持ちが悪い。だけど、彼は程よい感じでぼくが積もりすぎた力を自分の体内に吸い取ってくれたから、おかげで体のだるさが少し緩和された。下手したら龍が作った魔導具より精密かもしれない。魔導具のように四六時中を調整できないけれども十分だ。他の者であればこうしてぼくの力を直接触れ合うと死ぬのに、よく平気でここまでぼくの力を調整できるなんて、実に称賛すべき。


ある意味彼はこの(ぼくたち)中に一番謎の存在かもしれないな。


厨房にいる龍が些か不機嫌になった。それを感じただけで先までの不愉快が晴れたかもしれないな。


「ありがとう」


「どうだい?オレを飼う気になった?」


「ふふ…」


些か調子乗りすぎたな。でもアキラのおかげで少し楽になったから、誰かさんが大目にみてくれるだろ。


やはりアキラと一緒にいると色んな意味で面白い。そう考えながら彼の頭を撫でた。


「みっち、撫ででくれるのは嬉しいけどぉさ、これ以上撫でるとね、オレもしかして今日で死ぬかもよぉ」


泣きそうな声でそう言っているが、ぼくの手を避けようともしていない。


本当に思っていないことをサラサラと言えるな。


でも確かにこれ以上刺激すると良くないかもしれないな。


「マキ、スズネ、終わったらこちら来ないか?龍たちもそろそろ準備できそうから」


クレマンはぼくが言う前にもうソファーの近くに来た。鮮血のような赤い瞳が興味津々でアキラを見ている。おそらくアキラがぼくの力を調整しているのを見ていたたろ。クレマンの眼はアキラほどではないが、知識があるから目で見えない部分は自分で推測できる。おそらくこの中に一番早くぼくの能力(ちから)を気づいたのも彼だろ。


本当にみんな面白いな。


近づいたマキがぼくがアキラを撫でる手をずっと見ている。アキラはそれを気づいてかのようでマキにニッコと笑顔に送ったが、全く相手にされなかった。


マキ無視に全く気にせず、ぼくの隣の位置を譲って、クレマンの隣に移動した。


「初めてのネイルの色だから似合う赤にしようとしたのに…なんでよ、せめて灰色にしてほしかったよ…」


スズネが珍しく小声でブツブツ言っている。


言っている意味がわからないからそのまま無視した。


隣りにいるマキがぼくの服を軽く引っ張った。


本当にかわいいことをするな。この部分も弟とそっくり。いつもは他の事に気をそらすと、ぼくの注意がほしい時はこうする。実に可愛らしいな。


「その爪似合うよ」


白く細い指にきれいな黒く塗った爪がマキに合うかもしれないな。てっきり赤を選ぶと思った。


「…ありがとう」


「スズネとお揃いかい」


元々喜んだマキは何故か急にしょぼんになってしまった。おや?なんかまずいことを言った?


「貴方ってバカなの?わざと?え?どう見てもあな、うぅ……」


話の途中でマキの手で塞がれた。


いつの間にふたりがこんなに仲良くなったな。


「お待たせしました」


スイは大きめなトーレでお茶とお供のシフォンケーキと一緒に持ってきた。その前にいる龍はぼくの分だけ持っている。


本当にどうしようもないやつだな。


ぼくの元に戻った龍はすぐぼくの額を触って体温を確認した。触らなくても確認できるのに、こいつは本当にどうしようもない。何も考えずに龍の手を払った。


いつものやり取りのに、今日は珍しくイラッとしたな。


本当に体だけ大きくなって、心の狭さは年々酷くなる一方だな。


後ろを向かなくても彼の不機嫌を感じれる。無言のアピールが彼のお得意技だからな。


「全員揃ったな。では、始めようか」


元気があるうちに課題を解決しようか。


クレマンがまず先程録画した映像を僕たちの前で放送した。おそらくアキラ以外の他にとっては馴染みがある話だろ。ある意味アキラのためかもしれないな。


案の定、アキラがまず疑問をあげた。


「オレが変だけぇ?なんでみんなが神の存在信じてんの?」


「はあ?何馬鹿なこと…」


さすがスズネ、反応が早いな。


スズネの気持ちがわかる。ぼくも些か驚いたな。


ただ、人間界は他の世界と関わらずに封鎖的で、魔法も何も使えない世界と聞いたから、世界の最初なんて分かる者がいないのもおかしくないかと考えれば、アキラの疑問は別におかしくないかもしれないな。


「なになにぃ?オレナンが変なこと言った?」


「…嗚呼、命様はたしかに人間界からいらっしゃったんですね」


「そぉよ」


「じゃ~しょうがないね」


「ふふ…わからないのも無理もないな。神たちが最初作った三種族の寿命がないから、彼らが存在している時点で、神が存在になる証明だからな」


「えええ?まだ生きてんの?」


「寿命がないからね。ちなみに前任の魔王がそのうちのひとりデスよ。二千年前くらい引退シマシタけど」


寿命があるのが当たり前人間には永遠の命は想像しづらいだろ。


「人間界以外のほか四つ世界の住民にとって、神というは想像や妄想ではなく現実だからな」

当たり前すぎることがアキラの存在によって、当たり前ではないかもともう一度考えるようになるのはお互いに良いことかもしれないな。


現にスイたち(中間界・魔界組)アキラ(異世界人)、両方お互いの当たり前を学んでいく。


「質問」


何を気づいたアキラが右手を高く挙げた。


「どうぞ」


「神の存在が当たり前ならさ、神に見放されたとか思う人いねぇの?ほら、なんで神がオレたちを助けないとか、逆に神を憎む人いない?」


「いる」


マキが唐突に声を出したことを、はっきりと言いきったからかアキラが些か驚いたようだ。


……マキも色々あったからな。


軽く彼女を撫でた。きっとこれだけで彼女の傷には癒せないだろ。


ぼくの服を強く握った彼女の手を見ると、彼女の傷は時間だけで直せる物ではない。いずれマキは信頼できる相手に自分の過去を言える日が来ると信じる。そうするとたとえ傷が再び傷んで、えぐられても前と違ってひとりで耐える必要がなくなるだろう。


心のキズは一生消えないものだが、癒やされるものだ。


それまでにぼくは彼女を見守ることにした。


「当たり前よ。色んな種族がいるから皆の考え方それぞれ違う。むしろいないほうが不自然わ。ただ、神を信じない、疑う、憎しむ連中の組織は本当にいる。いつか忘れたけれど、連中は三種族に殺そうとして、真っ先は竜族だったが、どうやら失敗したと聞いた」


淡々と言ったのはスズネ。


少々意外かもしれないな。もっと視野が狭い者だと思っていた。どうやらぼくの間違いだな。


「ほほォ?その組織って中間界だけ?魔界で聞いたことがないネ」


「知らないわよ。あたしも訊きたいくらいわよ」


「…皆様、少々話が逸れましたよ」


スイに言われて初めて話が逸れたことを気づいたが、それよりスイは珍しく暗い雰囲気になった気がした。


本当にそれぞれに簡単に他者に言えない過去があるんだな。


龍もきっとそうだろ。もちろん、ぼくもきっとある。ただ、ぼくが思い出していないだけかもしれない。





もうすぐアトリエシリーズの新作がでますね。

錬金釜が無くなったアトリエがちょっと嫌だけど、面白ければいいか…と葛藤しているぼくでした。

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