出発
今年の誕生日パーティー無事に幕を閉じた。
毎年恒例の事で、両親の知り合い等が祝ってくれたけど、正直家族だけで十分と思ってる。
今の家族と血が繋がっていない。長年子を授からない両親が十五年前赤子だった満を拾ってくれて血縁がないにも拘らず満を大事に育てくれた。まして拾ってから五年後やっと念願の子供を産ん
でもなお満の事を大事に愛してくれた。だから満は両親のこと感謝している。
弟の誕生に満はたぶん両親より喜んでいる。何故というと弟がいると、満がやりたいことがやれるからだ。
今年で十歳になって、やっと本格的に次期当主の勉強をし始めた。そして満もやっと十五歳になったから、そろそろ手に入れたい物を取りに行こうと思っている。
去年あたりに旅行という名目でこっそり入学試験を受けてきた。すべて今年入学の為。
寝る前に用意してくれた温い紅茶を飲みながら、パーティーで喜んでくれた両親と弟の顔を思い出す。
でも明日の朝になったら、きっと悲しみに塗り替えられるでしょう。
十歳の時、家族の前にスプラウー学院に入学すると言った途端、家族から絶大の反対を受けた。
「満」
ベランダから高身長の男が現れた。黒い眼帯で片方の目を隠しているけど、もう片方の左目が竜族特有の目を持っている。名前は龍。種族のそのままの名前、満は出会ってからずっと名づけの者のネーミングセンスを疑っている。
「いい夜ね。絶好の家出日だ。そう思わない?」
満の笑顔と違って龍はずっと無言で無表情のまま。その彼の態度はとっくに慣れてきた。何せよ五歳からずっと一緒にいるから。
「行かなくてもいい」
「ふふ…行かないという選択あると思うか」
満面の笑顔で聞いてるけど、たとえ龍が否定してもきっと満の耳には届かない。
「ってことで、行くとしようか!」