第08節 酒場による運命の交差
「まだ煙が見せる幻が足りねえなあ」
武闘家シュウが悔しそうに言った。
土田はTVで観た刑事もののドラマを思い出した。
現場には犯人を捕まえるヒントがある。
<なんか無いかな…>
そういって辺りを見回すと
小さな可愛らしいウイスキーの空瓶が転がっていた。
土田がなんとなくそれを拾ってくると
魔物は怯えだした。
「ヒイイイイイイイイ!」
異常な怯え方だ。
こんな空瓶がなぜ怖いのだろう?
「土田さん、それ貸してもらえませんか?
私の魔法で調べてみます」
僧侶マーガレットが魔法を唱えると
空瓶から紫色の煙が立ち込めた。
空中に幻が浮かび上がる。
ギネスの酒場。
昼過ぎではあるが夕方には
まだ早い。
そこでボーラとルイーズが
やり取りをしてる。
「はい、ルイーズさん。
あなたの彼氏さんが好きなウイスキーに
惚れ薬、仕込んでおきましたよ」
小さな可愛らしいボトル。
年代もののウイスキーらしく、
少し高級そうだ。
「ありがとう、ボーラさん」
ルイーズはウイスキーを受け取る。
「じゃあ、私はこれで失礼します。
結果が出たら、また会いましょう
おっと、うまくいくようにオマジナイ」
ボーラは何やら呪文を唱えた。
するとルイーズの体に黒い影のような
何かが入り込んだ。
「ひゃっ、今のは一体?」
「はははは。
だからオマジナイですよ。
それでは、また」
そういうとボーラは
去って行った。
ルイ―ズは不思議そうな顔をして
マスターに訊ねた。
「ねえマスター、仲直りはうまくいくかなあ?」
「うちの店にね、最近占い師が
場所を貸してくれって来るんですよ。
若い魔術師のような身なりをしててね、
これがまたよく当たるんでさ。
一つ、占ってみたらどうですか?
もうじき来ますよ」
「ふーん、じゃあ占ってみるわ」
噂をすればその魔術師の恰好をした
占い師が酒場に入ってきた。
「マスター、場所を借りるのだ。
借り賃は5Gでいいんだよね?」
「ランちゃん、さっそくお客さんだよ」
ランと呼ばれた魔術師の恰好をした若い娘は
ルイーズとテーブルに向き合った。
「彼氏にプレゼントして仲直りしたいんだけど
うまくいくかしら?
占ってちょうだい」
「15Gになります」
「はい、お代。
あなた最近売れっ子の
占い師らしいわね」
「いやいや、それほどでもないのだ。
ついこないだまで魔術学園で修行して、
城下町へ出てきたばかりなのだ」
そう言うと魔術師ランは
タロットカードをシャッフルし始めた。
サッサッサッ、
パラパラパラ。
タロットカードが
十字の形に並べられる。
「おや、『悪魔のカード』が出たのだ。
プレゼントは悪い結果になる兆しなのだ。
あれ、『悪魔のカード』は
原因にも繋がっているのだ。
むむ、これは悪魔との契約?
プレゼントと悪魔に何か繋がりが…
あんた、何をしたのだ?」
良い鑑定結果を期待してたのに
ルイーズは意外なことを言われて
思わずカッとなった。
<ボーラさんが悪魔ですって!?
優しい悪魔なんている訳がない!>
「このインチキ占い師!
お金を返しなさいよ!」
ドン、とテーブルを叩きながら
ルイーズは怒鳴っていた。
幻はまた消えた。
「それでランちゃんに占いを頼んだのか!」
魔術師ランは
感心した。
「問題はその後、
ルイーズさんに何があったかですわ」