表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リカバリーイニシエーション  作者: 大川太郎兵衛一也
第001章 僕と仲間と異世界と
7/21

第07節 魔王の誘惑

土田は思った。


<酒に関係ある事で、

魔王に騙されたんではないのかな?


この事件、酒絡みの訳なんだし>


「マーガレットさん、何かお酒に関することで

この事件に思い当たる事はないんですか?」


土田は僧侶マーガレットに訊ねた。


「そういえば、ある田舎では

喧嘩した夫婦が仲直りするのに

お酒を送る風習がありますわ」


それを聞いた途端、

魔物はいきなり泣き始めた。


「オオオォォォ…」


僧侶マーガレットは初め驚いていたが、

やがて落ち着きを取り戻し

魔物に歩み寄って行った。


「さあ、ルイーズさん。

悪いものを吐き出しましょう」


優しく魔物の背中をさすると

いきなり口から紫色の煙を大量に吐き出した。


煙が幻を見せる。

それは酒場でのやり取りだった。


「ルイ―ズさん、飲み過ぎだよ。

それにツケも溜まってきてるんだけどね」


酒場のマスターがぼやいた。

今日の店は客が少なく、

マスターは不機嫌だった。


「うるさい、もう一杯だけ飲ませろ!」

「さすがにこれ以上はツケられないね。

帰ってもらいますか」


ルイーズが仕方なく帰ろうとした時に、

酒場の片隅で飲んでいた紳士が割り込んできた。


「お嬢さん、一杯奢らせて貰えませんか?」


見ると上品なスーツを着て

優雅な顔立ちをした若い男である。


「私の名前はボーラ、

と言いましてね。


なんだかあなた、お辛そうですが

嫌な事でもありましたか?


私にできる事なら力になりますよ」


ボーラ。そう、こいつが魔王である。

人間に化けて騙しに来たのだ。


そうとは知らず、ルイーズは

訳を語りだしてしまった。

付け込まれるとも知らず…。


「実は、酒癖が悪くて

彼氏と喧嘩しちゃったんですが…」


「なるほど、それなら

惚れ薬を飲ませたらどうでしょう?


ベッキーナ地方では

夫婦が喧嘩するとお酒を送って

仲直りするのですよ。


その酒に惚れ薬を仕込むんです。

いかがでしょう?」


妖しげに若者の目が光った。

少し赤かったような…気もする。


「そんな事をしていいのかしら…」

「いいんですよ、嘘も方便です。


惚れ薬入りの酒のお代は、

あなたの悲しみでいいですよ」


ルイーズは不思議そうな顔をして

訊ねた。


「悲しみが代金なんて、

どうやって支払うんですか?」


「もうすぐ分かりますよ。


悲しみを乗り越えると、

幸せが待ってるものです」


ボーラはニコニコしながらそう語った。


ここで煙による幻は消えてしまい、

まだ真相は分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ