第02節 魔術師ランとの出会い
気づくとそこは城下町による
門の前であった。
神様の言った通り、
中世ヨーロッパを思わせる
ゴシックな造りである。
気が付くと、まばらに数人が
門の中へと歩いている。
土田はその通行人に紛れて
町へ入って行った。
「あの…、僕はどこに行けば、
…いいんでしょう?」
思わず通行人の一人に
聞いてしまった。
「ああん?兄ちゃん、旅人か?
見慣れねえ恰好、してやがんな。
ひょっとして訳ありで
家出してきたんと違うか?
だったら酒場に行きな。
昔っから訳ありの者は
そこに隠れるもんよ」
「あぁ…。…なるほど」
そういえば神様が三人まで
仲間を連れて行くのはOKだ、
と言ってた事を土田は思い出した。
酒場なら仲間集めもできそうである。
「おじさん…。酒場は、
…どこにありますか?」
「この町は扇状の形をしている。
酒場は扇の始まり、つまり東の端っこにあるよ」
お礼を言った後に、
土田学はとぼとぼと町の東に
向かって歩き始めた。
町の東にたどり着くと、
酒場は確かにあった。
『ギネスの酒場』
と看板に書かれている。
土田が扉を開けて入ると、
なんだか人が揉めているようだった。
「このインチキ占い師!
お金を返しなさいよ!」
ドン、とテーブルを叩きながら
若い女は怒鳴っていた。
「ランちゃんのタロット占いは当たるのだ。
嘘じゃないのだ」
見ると黒いローブに
黒系の鍔の広い三角帽子を被った少女が、
数枚のタロットカードを
十字の形に広げている。
「あんたは水の魔物に
憑りつかれてるのだ。
やがてそいつは
心を失わせて体を乗っ取りにかかるのだ。
その前に砂風呂に入って
御祈祷しないと大変な事になるのだ」
「どこに憑りつかれた証拠があるってのよ?!
証拠を見せなさいよ!!」
「証拠なら、これなのだ」
ランと名乗った少女は
右腕をローブから出して見せてきた。
そこには『鳥』の形をした黒い痣があった。
「ランちゃんは風の精霊シルフに
選ばれし者なのだ。
風はこの世界のどこにでもあり、
何でも知ってるのだ。
だからランちゃんのタロットカードには
風の魔力が宿っているので、当たるのだ」