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14

 オワリノ国のとある町のとある屋敷の一室で、男と女が顔を付き合わせていた。


 男の方は長い髪を後ろに流し、後顎髭を蓄えている。ガタイも良い。胸板が厚く肩回りもがっしりしている為か、妙に貫禄がある。


 女の方は光沢のある衣に身を包んでいるが、彼女の細身には少々大きいのか、腰回りに皺がよっている。丁寧に結わいだ髪に木目の簪を指しているが、着飾っているのはそれだけだ。



 男の方がグラスに入った透明の液体をくいっと呷る。


 男が吐き出す息にアルコールの臭いがまじり、向かいに座る女は眉を潜めた。



「なんだ、今も酒は嫌いか?こんな良い物を。見ろ。グラスに注がれた酒はまるで宝石のようではないか。これは神が我々に与えた宝ぞ」



 男がせせら笑う。だが女の表情に一層嫌味が増し、男はため息を吐いて、グラスをテーブルに置いた。



「して、城の様子はいかがかな?」



 女の問いに、今度は男がジロリと睨んだ。



「祝賀会の準備が進めれているが、予想外のトラブルが多くて、予定より遅れている。よもやとは思うが……」



「まさか。我々が何かしたとでも言いたいのか?そのような事をするずなかろう。我々にとっての悲願がついに叶うと言う時に」



「ふん、ならば偶然か?久しく開かれていなかった、大がかりな祝賀会だ。そんな事もあるだろうか」



「それか、反王政派が祝賀会の失敗を狙い、工作しているとは考えられんか?」



 まさか、男が呟いた。その表情には驚きではなく、困惑の色が浮かぶ。


 女はそんな男を見てニヤリと笑った。男は釣られて吐き出す様にして笑う。



「大がかりといえども、所詮王女の祝賀会だ。それの開催を遅らせるだけの小細工などなんの役にたつというのだ。あれらを馬鹿にしすぎだ」



「でも、あれたちは本気でやりかねないと思わんか?」




「言えて妙だが、そういうてやるな。あれもあれなりに、頑張ってるのだからな……どうせ影を落とす事もできんよ」



 男は得意気に鼻を鳴らして笑った。





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