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他に寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。  作者: にのまえ


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五十八

後ろから伸びた大きな手は、わたしをキツくその胸に抱きしめた。  

 

「……リーヤ、大丈夫か?」


(この声はナサ?)


 大丈夫だと頷いた。

 

「それで、皇太子達はここに何かご用ですか?」


 ナサが言えば

 皇太子も、


「へえ、君がナサか……亜人隊の者がどうして、ここにいる?」


「オレは昼休憩ですよ、皇太子殿。それで、お忙しい騎士団ギルバート総隊長と第一グレン隊長、外には近衛騎士、第一部隊までいるのですか?」


 ナサのため息混じりの冷たい声、の後、外から。



「何で、ここに騎士団、第一部隊がいるんだ?」

「私達の大切な休憩の場に、訓練でお会いした貴方達がなんでいるのですか?」


「お前達には関係ない!」

「お前達こそ、なんでここにいる?」


 アサト、ロカの声が聞こえた。どうやら外の護衛騎士達と揉めているみたい。それに気が付いたミリアは店の外に出て行った。


 そのあと、外で会話しているらしく"ボソボソ"と店の中に、内容は気が取りにくいけと聞こえてきた。





 ミリアが外に出るとアサト、ロカは数人の騎士と見合っていた。カヤとリヤは騎士に近寄らず、遠くでこの様子をうかがっている。


「よっ、ミリア。ナサは慌てて店の中に入っていくし、店の中に誰がいるんだ?」


「それがさ、訳がわからないんだよ……いきなり、客として皇太子一行が現れて、リーヤに手を見せてくれとかちょっかい出すし」


「え、リーヤの手を見た? だから、ナサは慌てて店に入っていったのですね。大切な番に手を出されては困りますからね」



「ま、待てロカ、変な事を言うなよ」


いきなり、外に向けて声を上げるナサ。


「ナサ?」

「なんでもない、ロカが外で変なこと言っただけだ」




 外は外で話を始めたらしく、ナサはひと呼吸を置き皇太子と騎士に聞いた。


「それでリーヤの手を握って、言い寄って、何をしていたんですか?」


「カートラの妹を……ワーウルフと戦った彼女を見に来たんだ、それだけだが?」


 ワーウルフと聞いて、ナサの表情が曇る。


「あの噂は本当だったんですね。皇太子は剣に長けている女性と婚約、結婚をしたいと申して……騎士団の女性を集め、ワーウルフと戦った女性を探しておりましたね」


「そうだが?」


 だから、皇太子はワーウルフと戦ったわたしに、幾つかの質問をしたのか。ナサはわたしを背後から抱きしめたまま、低く喉を鳴らして、彼らに睨みをきかせた。



「亜人隊ナサ、貴様の皇太子殿下に対しての態度は、先ほどから失敬だぞ」


「うるさい、第一部隊グレン、嫌がるリーヤに先に手を出したのはそっちが先だろう!」

 

「なんだと!」

「貴様!」


 騎士団の二人と衝突が起きる、そう思ったとき。

 

「はい、ここまでです。お時間になりましたラルジュ様、いつまでもここにいては執務が滞ります。今日は執務に戻りまして、またの機会に訪れましょう」


 パンと手を叩き、いままで一言も話さず座っていた、眼鏡の男性が割ってはいる。


「……ジャスタ、そうだな、今日はワーウルフと戦った女性が、公爵カートラの妹リイーヤ嬢とわかった。明日から公爵家と交渉ができるしな」


(な、ウチと交渉?)


「リーヤと交渉だと? そんな事はさせねぇからな」


「フン、ご自分が亜人である事を悔しがるといい。リイーヤ嬢、また逢いましょう」


「ナサ、覚えておけ」


 皇太子一行がミリア亭からいなくなるまで、ナサはわたしを離さなかった。

 


 落ち着き、静かな店内、カウンタ席に並んで座った。

   

「リーヤ、あいつに手を握られた以外、何されたんだ?」


「え、」


 隣に座ったナサを見上げた、怒っているような、わたしを心配するような表情をしていた。


「皇太子殿下はわたしの手を見ただけよ」


「そっか、で、アイツはリーヤの手を触ったのか、どっちの手だ、出せ」


「どっちって……触ったのは両方だけど? って、……ナサ、何するの? ちょっと自分のシャツでわたしの手を拭かないでよ」


「黙って、拭かせろ」


 そのとき聞こえた、小さくつぶやいた。


「アイツ、オレのリーヤに触りやがって」


 ナサの言葉が嬉しくって、わたしの頬は真っ赤になる。そして、わたし両手はラベンダーの香りなった。


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