表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他に寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/99

五十四

ナサのいきなりの行動に、わたしは腕の中で困惑している。ほんとうに言いたくなければ、言わなくていいと思っていたから。


「ごめん、リーヤ。オレはリーヤが無垢だと知ってるなんて、言えるかよ」


「む、無垢⁉︎」

「あ、いや……なんで、オレは」


 ツルッと口を滑らせて言ってしまったのか焦るナサと、無垢って、あの無垢? わたしが結婚をしていたことはみんな知っている……それとは別に未経験だとも知っている。


 このことは両親以外、誰にも伝えていないのに。



「な、なんで、ナサはこの事を知ってるの!」


「あ、いや……すまん」


「すまん、じゃないわ。なんで知っているのか理由を教えて」


 腕の中から見上げると、ナサは申し訳ない表情を浮かべて、ポツポツ言葉を探しながら話しだす。


「コレは、オレ達……獣人にしからない事で、その、リーヤから……リーヤからいい香りがするんだ。お前からは、いっさい結婚していた相手の匂いがしない!!」


「へっ?」


 相手の匂い?


「あのさ、人間も結婚って好きあった番同士がするんだろ? だったら"オレのものだって"主張する相手の匂いが必ず、するはずなんだ。だけど、初めてリーヤと会ったとき……離縁をしたばかりにしては、ほんの、さわり程度の男の香りしかしなかった」


「⁉︎」


 相手の香りが……さわり程度しかしないと、ナサの言っていることは当たっている。結婚していた二年の間は、彼にだけ都合のいい夫婦関係だった。


 ナサに知られた恥ずかしさと、当時のやるせない気持ちが蘇り、わたしの頬を涙が濡らす。



「あ、クソッ! リーヤ、泣くなオレが悪かった……離縁も何か理由があったんだろ? もう、言わないから」



 焦った声とナサの指が頬を滑り、流れる涙をぬぐう。


「ナサのバカ、バカ……バカ! わたしじゃない他の女性に、こんなことを言ったら失礼になるわ。絶対に言っちゃダメなんだから」


「い、言うかよ。他の奴なんて興味ない。リーヤだから香りが気になったんだ。リーヤ以外に香りが気になるヤツなんていねぇ」  


「えっ、」


(わたしだから香りが気になるって、ナサ。それって、わたしのこと好きだって言ってるのと同じ?)


 ドクンドクンと鼓動が高鳴る。


「あ、あのさ、リーヤ」


 ナサらしくない震えた声と、ギュッと腕に力がこもる。


「アサトに言われていたんだ、オレとリーヤは違うって。嫌だったらダンス練習も辞めて近寄らないから、リーヤ、今までの通りで良いんだ。……だから、オレを嫌わないでくれ」


 そんなか細い声で言わないで、


「ダンス練習は辞めないし、嫌わない……かなり、恥ずかしくて、照れるだけ」


 腕の中で見上げてキッと睨むと、ナサは瞳を大きくして、そのあといつもの様に笑った。


「シッシシ、良かった」


「良くない、わたしは恥ずかしい。もう、怒った。ナサの嫌いなものばかり朝食に作るから、覚悟してね!」


「うーん、それに関しては覚悟はいらないな。リーヤが作るものならなんでも美味いぞ」


 その言葉にドキンと、鼓動がさらに跳ねる。


「それは嘘、この前、ハンバーグを焦がしたとき、オムライスの卵が破れたとき……? あ、あれっ『焦げるな』『卵、下手くそ』と、笑っていたけど……残さず食べてくれた」


「だろう?」


 何よ、嬉しそうに笑っちゃって。

 コッチばかりドキドキする。


「決めた、ダンス練習のときに、ナサの足をいつも以上に踏むわ」


「おい、子供みたいなこと言うなよ。まぁ、リーヤが踏んでも、痛くないから別にいいけどさ」


 だって。


「あー、コーヒー飲もっと」

「オレにもいれてくれる?」


「うん。すぐにいれるから、座って待っていて」



 




「あの、ナサ。ハッキリと聞くけど……わ、わたしから、どんな香りがするの?」


 コーヒーをいれ終わり、向かい合って座っ後にナサに聞いた。ナサはサラッと、


「どんな香りって、甘い、オレの好きな香り」


「はぁい、甘い、ナサの好きな香り? そ、そうなんだよかった、変な香りじゃなくて」


(もう、ナサが好きだとか言うから……頬が熱い)


「シッシシ。それより、行く時間だな」


「えっ?」


 リビングの時計を見て、ナサはコーヒーを一気に飲んだ。


「ほんとうだわ。準備してミリア亭に行かなくちゃ。ナサ、使ったカップとお皿はそのまま置いておいて、着替えてくるから待っていて」


 と、寝室で着替えて、近くのエプロン取る。

 その下に見えたカゴ。


「ダメ、見ちゃ、ナサ、見ちゃダメ!」

「な、なんだ?」


 わたしはスッカリ忘れていたのだ。

 できたら渡そうと思って、刺繍しているハンカチの入ったカゴを、エプロンでかくしたことを……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ