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星冠のアンタレス  作者: ミルフィーユ筍
10/14

機怪戦

ゴゴゴ……ズゴォン!



家の周囲で、何か巨大な物が地面に激突する音と共に、またもや地面がグラグラと揺れる。

恐らくは、機怪が近くで戦闘をしているのだろう。



「うわっ……とと、先輩。アカギちゃん達はどうしますか?」

「俺が伝えてここに呼んでくる。やちよはその間にアンタレスの起動準備を頼むぞ!」




やちよは「了解です!」と言いながら、アンタレスの腕に乗り、そしてそのままコックピットへ移った。

俺はそれをチラリと横目に見ながら、リビングへの扉を開ける。

そこには、避難準備を進めている姉さん達が居た。



「全員居るな……皆、俺は今からアンタレスを出す。外は危険だし……皆は暫く地下室に避難しててくれないか?」

「地下室への避難は考えていたが……アンタレスを出すつもりなのか!?」



姉さんは驚いた様な顔でそう言うと、俺の手を握って、フルフルと首を横に振った。



「だが……無茶だアラタ!相手はランクBの飛竜種型機怪だ!危険すぎる!」

「そうッスよ、危険っス!」

「それに魔道士隊も出ている、無理に危険を侵して戦う必要は無いだろう?」



姉さんやヤナギが珍しく声を荒らげて、マツバは諌める様にして俺を静止する。



「大丈夫だ。俺達で作ったアンタレスはそんなにヤワじゃない。Bランク程度に遅れは取らねぇさ!」

「──っ……分かった。信じるぞ!皆、地下室に行こう!」



姉さんのその一言により、俺達は一緒に地下室へと向かう事となった。

ハッチから階段を降りて地下室に入ると、その瞬間にまたもや地面が揺れた。

しかし今度の揺れは先程よりももっと大きく、さらにギャリギャリギャリ……と、何かが引き摺られる様な音がして地下室が揺れ、段々と家に近い位置で戦闘が行われる様になってきた事が分かる。

そして機怪の、生物とも機械音とも取れない二重に重なった不気味な咆哮が、近くから聞こえてきた。



『『KYURIAAAAAAAAA!!!』』

「な──っんだよ、この声……!」

「機械音の様な……生物の声の様な……」

「気持ち悪い声ッスね……!」



地上から聞こえてきたその声に俺達が驚いていると、ギュイイ……と、モーターが駆動する様な音と共に、アンタレスのバイザーが緑色に光った。



「おっ……やちよ!出来たか?」

「えぇ、機体の準備はできました!後は地下室から地上へのハッチを開ければ出れます!」



スピーカー越しの返答とともに、やちよがアンタレスの腕をこちらに差し出してくる。

俺がそれに乗ると、アンタレスの手はコックピット前まで来た。

そして、俺はアンタレスに乗って、操縦席に座る。

やちよはそのまま操縦席後ろにシートベルト付きで座っている。



「アラタ!」



ハッチを占める寸前で、姉さんが俺を呼ぶ。

俺がモニター越しにそちらを見ると、姉さんはグッと親指を立て、そして笑顔を作った。



「無茶はするな!それと……必ず生きて戻って来い!」

「あいよ、勿論!──行ってくる!」



そして手前のレバーを引くと、座席とハッチが連動して後ろへとスライドし、その後にハッチが閉鎖、起動したモニターが外部の光景を映し出す。

コックピット内部では、カタカタとキーボードの音が響いていた。



「接続完了、ロック解除……ハッチ展開のタイミングをこちらに譲渡……完了。固定用ケーブル接続……カタパルト準備……よし!」



やちよがそう言うと、重々しい音を立てながら、天井が横に開き、真っ青な空が見えた。

それと共に機体にケーブルが接続され、カタパルトから落ちないように固定される。



「ハッチオープン。上昇式カタパルト用起動十秒前、出撃準備──完了!システム『RSA』正常、コンディションオールグリーン!行けます!」

「よし……ッ!アンタレス、出るぞ!」



アンタレスの足元にあった床の一部が持ち上がり、加速を付けつつ、アンタレスを乗せて地上へと向かう。



ゴウン……ゴウン……ギュイイ……ガシュン!



カタパルトが止まり、ケーブルが外され、そしてアンタレスが1歩を踏み出す。

周囲にあるのは、破壊された魔道具、倒壊した家、折れたビル。

そして、その残骸の上に立つのは、一体の飛竜種型機怪……改め、M・ワイバーン。

ワイバーンの名の通り、角の生えた頭部に手と一体化した様な翼が特徴的な竜の怪物。

しかし、M・ワイバーンは全身に装甲の様なものを纏っており、特に尻尾は三叉槍の如く三又に分かれていた。



(あれが……機怪か、中々デカいもんだな……!)



俺がそんな事を考えていると、空で滞空している、まだ撃墜されていなかった魔道具の内一機、他の機体とは違う、青を主軸にしながら、一部を白に塗装されたその機体から、女性の声が聞こえて来た。



「こちらはB区画担当の魔術士隊隊長、フォン・マーキュリーである!非常時故、単刀直入に聞く!……貴君は敵か!?」

「いいや、俺達は味方だ!そんで……コイツの名はアンタレス!俺達が作り出した……機装だ!」

「子供!?それに、その機体……機装だと……?いや、そんなハズは……!」




俺はスピーカーをオンにしてそう言うと、モニターを確認して敵の動きを確認する。

M・ワイバーンは、先程とは毛色の違う敵が現れた事に驚いているのか、威嚇の咆哮と共に尾を突き出して来た。



『『KYURIAAAAAAAAA!!!』』

「先輩、相手の狙いはコックピット部の様です」

「OK……早いが、避けられない程じゃないな!」



右足のペダルを踏みつつ、右の操縦桿を後ろに倒す。

すると、アンタレスは軽快な動きで身を翻し、突き出されたその尾を難なく避けた。

スレンダーで流線型な体型の魔道具とは違う、かなり直線的かつマッシブな体型をしているアンタレスだが、優秀な姿勢制御プログラムにより、陸上ならばその機動力は魔道具に勝るとも劣らない。



「行くぞ……!そぉ──らァッ!」

『『GUGI……o!?』』



尻尾を回避した後にアンタレスを前進させ、そのまま拳をM・ワイバーンの顔面に叩き込む。

拳と共に籠手がその顔面に直撃し、M・ワイバーンの顔面周辺の装甲がひしゃげ、後ろへ下がった。



「ぃ良し!通じるな!」

『『KYURIIIIII!!』』



飛竜種型機怪が、グルリと一回転しながら尻尾を横薙ぎに払う。

周囲に転がっている魔道具の残骸が溶けているのを見るに、恐らく尻尾の先端、少し濡れている様な黄色の三又部分には、毒があるのだろう。

俺は先端を掴まない様にしてその尻尾を右腕で挟むと、そのままガッチリと固定して動きを止めた。



「尻尾の先端は毒ですかね……下手すれば、アンタレスでも溶かされちゃいますよ!」

「だろうな!まぁ、なら……こうすりゃ良い!」



俺は残ったアンタレスの左手を尻尾の繋ぎ目、関節の部分に差し込む。

先端が鋭利な爪のおかげか、その手は少しの抵抗を受けた後、深々と差し込まれる。

そして挟み込んだままの尻尾を右手で掴むと、俺はそのままゆっくりと、両腕を左右に広げた。



メキ……ゴシャ……ミシッ……ブチッ……!



ゆっくりと、尻尾が千切れるような音がする。

そして内部があらわになり、ケーブルや、尻尾の肉がモニター越しに見えてきた。



「ぬ……ぐぐ……ッ!これで、尻尾は──」

『GYU!?GYURYYYY!!』



そして俺が、再度機体の腕を左右に広げると、限界を迎えた飛竜種型機怪の尻尾が、ブチンという音と共に引きちぎられる。



「封じたッ!」

「今です先輩、怯みましたよ!」

「了解!ならコイツで、切り刻んでやる!」



ガコン、と両操縦桿を後ろにスライドさせると、脚部前半分の装甲が前に倒れる様にして展開、両足から一本ずつ、計二本のナイフの持ち手が現れる。

そして、そのナイフを逆手の状態で引き抜くと、M・ワイバーンに向かってアンタレスを走らせた。

スラスターの無いアンタレスだが、その速度は怯んだM・ワイバーンに接近するには十分だった。



「これで……どう──だっ!」

『『GYUROOOOA!!』』



アンタレスの力をもって振り下ろされた二本のナイフが、ワイバーンの翼の付け根、関節部に突き刺さる。



「チッ……意外と硬いな……っ!」



ワイバーンの尻尾を引きちぎり、その翼をも切り落とそうとするアンタレス。

それを見ている魔道具の内一機が、ボソリと呟いた。



「アレは本当に、機装なのか……?あの強さは……魔道具ですらビクともしないヤツの尻尾を……いとも容易く……!」

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