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炎の王子は竜の姫に恋をする  作者: 紅花うさぎ


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9

「レイナ様が眠ってらっしゃる間に、非常に困ったことになりました。」

 私が目覚めたと聞き、カイルはすぐにやって来た。


 どうやら私は2日もの間眠っていたらしい。

 エイデンは無事だったかしら?

 爆発の時確か一緒にいたはずなんだけど……


 エイデンは無事だとカイルから聞き、ほっと胸をなでおろす。


「それで、一体何が困ったことなの?」

「陛下が、生誕祭を中止すると宣言しました。もちろん今更そんなことできるはずもないので、今大騒ぎですよ。」


 やれやれ……といった感じでカイルは私のそばに座る。

「目を覚まされたばかりで申し訳ないんですが、陛下を説得していただけますよね?」


 有無を言わさぬ瞳で見つめられる。

 説得って言ったって……エイデンが私の言うことを素直に聞いてくれるとは思わない。


「だいたい何でエイデンは生誕祭を中止するなんて言ってるの?」

 2日眠ってたってことは、生誕祭まであと3日しかないはずだわ。


 他国の方も招待されているはずだし、今更中止するのは、確かに難しいでしょうね。カイルが困るのも無理はない。


「あなたの為ですよ。」

 えっ?

 カイルの言葉に驚いた。

「私の為?」


「そうですよ。」

 カイルはため息をつきながら説明を始める。


 先日爆発が起こったのは、賊が押し入ってきたからであること。


 その際に使用されたガスのせいで私が眠っていたこと。


 私を助けるためにエイデンが炎の力を使ったため、私の部屋は焼けてしまい、現在修復中であること。


 エイデンは半日眠っていたが、現在は元気でケガもないこと。


「賊が狙っていたのはレイナ様、あなたでした。陛下はまたあなたが狙われたらいけないと、心配されているのでしょう。」


「……」

 様々な情報が一度に入ってきたため、うまく頭の中で処理ができない。


「狙いは私だったの?」

 信じられなくて、つい大きな声が出てしまう。

「何で?」


「それが……賊は捕らえたんですが……」

 カイルの説明では、賊は3人の男で、酒場で私の話を聞いたらしい。捕まえてくれば謝礼をはずむと言われて押し入ったそうだ。


「一体誰が私を捕まえたがってるの?」

「その酒場にいた人物はまだ調査中です。陛下はあまりにも簡単にレイナ様の部屋を攻撃されたことを心配されてます。」


 そりゃそうだ。

 私の部屋は城の外から分かるはずもない。

 誰か城の内部に詳しい人物が、私の部屋の場所を教えたとしか考えられない。


 背筋がスーッと冷たくなる。

 それじゃあ、いつ誰が攻撃してくるか分からないじゃない。城の中も安全ではないのだと思うと不安になる。


「現在この部屋の前は、衛兵が守っています。外の警備も増やしてますから大丈夫だとは思いますが、くれぐれも気をつけてください。」


「……エイデンに会えるかしら?」

「レイナ様が目を覚まされたことは、まだ陛下には伝えておりません。」


 カイルが目を細めながら言った。

「レイナ様が目覚めたと知ったら、すぐこちらにいらっしゃるでしょうね。」


「じゃあエイデンに伝えるの、少し待ってもらってもいい?」

 少しだけ考えてカイルにそうお願いする。

「それは構いませんが……」


 よかった。

 なんだか自分が煙臭くて仕方ないの。エイデンに会う前にシャワーくらいは浴びたいわ。


 横に待機していたビビアンとカイルが顔を見合わせる。二人とも微妙な表情だ。


「レイナ様、言いにくいんですが……」

 カイルが重い口をひらく。


 カイルの言葉に慌てて髪の毛を見る。

 本当だ。だからこんなにも焦げ臭かったのね……


 長かった髪の毛の一部分が焦げてチリチリになっていた。




  ☆ ☆ ☆




「だから何度も言ってるだろう。生誕祭は中止だ。」

 国の主な役職の者達を前に改めてそう宣言する。


「こちらも何度も言ってますように、それはできません。」

 いつもは味方をしてくれるカイルも、今回は反対の立場をとっている。


「今年は陛下の20歳の誕生日だと言うことで、近隣の王族の方々も招待してます。今更キャンセルなんてできないのはお分かりでしょう。」


「それでも中止だ。」

 城内にも敵がいるかもしれない今の状態で、生誕祭を行うのは危険すぎる。


 未だに目覚めないレイナのことを思うと、守り切れなかった自分の不甲斐なさに腹が立ってしょうがない。


「先日の賊は捕まえたんじゃろ?」

 祖父である先代が口をひらいた。


「そうですが、まだレイナを狙ったのが誰なのかは分かってません。」


「レイナ様を囮にしてみてはいかがでしょう?」

 重鎮の一人がそう提案した。


「それはいい考えですね。このまま生誕祭を中止しても犯人は分からないままですから。いっそのこと、レイナ様が狙われやすい状況を作った方がいいのでは?」


 何を言ってるんだ……

「そんな事、できるわけないだろう。」

 ただでさえ危ない状況にいるレイナを、もっと危険にさらすなんて冗談じゃない。


「アーガイット大臣はどう思われますか?」

 レイナを囮にと考えている者達が大臣に意見を求める。


 大臣がレイナを邪魔に思っているのは周知の事実だ。賛成するに決まっている。誰もがそう思っていた。


「生誕祭で陛下の婚約者が襲われる……なんてことになったら、それこそ他国に示しがつかないでしょうな。」

 意外にもレイナの囮案に消極的な大臣にカイルと顔を見合わせた。


 一番に賛成しそうなのに、何を考えてる?

 怪しむ俺に大臣がニヤリと笑った。


「幸いレイナ様はまだ陛下の婚約者として披露されていません。生誕祭ではレイナ様の代わりの者を、婚約者として連れて行かれたらいかがでしょう。」


 おぉっと声があがる。

 その歓声は大臣の意見に賛成の者が多いことを表していた。


「賊がレイナの顔をはっきり知らなかった場合は? その身代わりを犠牲にすればいいと?」


 そもそもレイナ以外を婚約者として紹介なんて冗談じゃない。


「どちらにせよ、生誕祭を中止することは許さん。」

 祖父がきっぱりとそう言い切った。

 役職にはついていないが、未だに絶大な影響力を持つ先代に言われてはどうしようもない。


 くそっ。

 拳で机を叩いた。

 王になった今でも、結局祖父の言いなりにならざるを得ないのか……


 生誕祭、レイナをどうすればいいのだろう……?

 それよりも、生誕祭までにレイナは目覚めるのだろうか?


 このままずっと眠ったままだったら?

 ゾクっと寒気がする。

 レイナを失うと思うと、それだけで目の前が真っ暗になりそうだ。


「はぁっ。」

 大きなため息をつき、自分の部屋へと戻る。レイナの部屋は燃やしてしまったため、レイナは今この部屋で眠っているのだ。


 部屋の扉を開け足がとまる。

「キャッ。」

 レイナがビビアンに、背中のリボンを結んでもらっているところだった。


「もう……ノックくらいしてよ。」

「悪い……」


 赤い顔をして口を尖らせるレイナに、思わず謝ってしまって気がついた。

 いやいや、ここは俺の部屋だぞ。


 それよりも……

 目の前で動いているレイナに目が釘付けになる。


「……目、覚めたのか?」

「お昼前にね。」

 にっこり笑いながらレイナが言う。

「心配かけてごめんね。」


 思わず手を伸ばしてレイナを引き寄せた。

「あっ。」

 小さく声をあげ、腕の中にすっぽりおさまるレイナを優しく抱きしめる。


「レイナ……」

 レイナの体のあたたかさを感じ、やっとこれが夢でないと実感する。

 よかった……


「レイナ、愛してるよ……」

 レイナが体を固くしたのを感じ、はっと我にかえる。

 しまった。声に出してしまった……


 でももう我慢できない。

 レイナを抱きしめる腕に力をこめる。


 先代や大臣はまだまだレイナとの結婚の妨げになるだろう。レイナを襲った奴らもまだはっきりしない。


 レイナは俺が守ってみせる。

 いざとなったら、俺の力ですべて焼きつくしたって構わない。


 俺の腕の中で真っ赤になりながら、軽くパニックになっているレイナを見てふっと笑う。

 本当に、なんて可愛いいんだろう……


「愛してるよ。」

 もう一度耳もとで囁いて、その赤く染まった頬に口づけた。

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