第6章
6 洋館その2
寄宿舎の脇を抜けていくと、やがて小道に出て、その先にいまはもう使われていない、林道がある。さらに道なりにたどると、やがて大きな門が見えてくる。それは
こんな山奥にありえない風景だった。
私と野梨子そして博士は、さびたかんぬきを空けて、中へ入った。
そこには立派な洋館がそびえていた。
「凄いよね。まるでお城みたい」野梨子は無邪気にはしゃいでいた。
荒れ果てた、芝生と西洋庭園が、そして今にも噴出しそうな石造りの噴水も、まるでヨーロッパの大公国にでもタイムスリップしたような。
「中へ入ってみますか?」博士が言った。
「でも、だいじょうぶかな?」私は無断侵入に抵抗があった。
「大丈夫ですって。何度も入ってるんですから」
玄関は半ば崩れて、容易に開いた。
博士が入り私も続いた。
そのとき、私は野梨子の息遣いをまじかに聞いた。
野梨子は私の腕にすがっていたのだった。
少女らしい香りが私をつつんだ。
暗い廊下を抜けるとホールに出た。
シャンデリアと家具などの調度品もほこりをかぶって時がとまったように
そこにあった。
「私、まるで王女様見たいね。」振り返ると野梨子は大きな椅子に座ってこちらを見ていた。
そうだ、確かに色白の髪のながい野梨子はまるでどこかのプリンセスのようだった。
バルコニーに出るとそこからは山並みが一望できた。
私たちは飽きず眺めていた。
「「私、これからどうなるんだろう?」
野梨子が突然そうつぶやいた。
「どうなるって?」私は思わず聞き返してしまった。
「また入院するのかな、やだな。」
「大丈夫だって、野梨ちゃんは、つよいんだからさ。」
博士がそんなことをいって野梨子を励ましていた。
私はそれ以上聞くこともできずただ野梨子の横顔を見つめていた。
こんな山奥にこんな分教場にこんな少女がいたなんて。
これは夢で本当は私はあの実家の縁側で寝込んで夢を見ているだけなのかもしれない、何て思ったりする私なのだった。
続く
続きを読む方法は「小説家になろう」サイトのトップページの「小説検索」の欄に
「青春の肖像」と入力して検索すれば全編が表示されますので全編読むことができます。




