ごめんなさいよりありがとう1
程良くページを切り分ける事が出来なかったので、同サブタイトルの内容を2ページに分けて同日時間差で公開します。1ページ目はこれで、2ページ目はお昼の12時に投稿予約をしておきます。
「水越さんが救急搬送された………!?先生、水越さんは大丈夫なんですか?」
取り乱しぎみの僕とは対照的に、先生は落ち着いた表情で口を開く。
「俺も、電話越しに連絡を受けただけだが、適切な処置のおかげで、命に別状は無いらしい。ただ、少し不可解なことがあってな」
そう言って顎を撫でながら訝しげに首をひねる先生。
「不可解な事…?」
「さっき、不審者が居るかもしれないから、早く帰るように、という話はしただろう。水越が発見される直前に近くにいた人が水越のものと思しき悲鳴を聞いているんだ。もしかすると何者かに襲われた可能性もあるかもしれない、という話になっている。それで、水越と一緒に帰っていたらしいお前にもあとで警察が話を聞きにくるかもしれん。お前は、何か見たりはしなかったのか……?」
真剣な表情で先生は僕を見つめる。
「すみません、水越さんとは途中で別れてしまったので………」
ぼくが取り乱してあの場を離れたせいで水越さんを一人にさせてしまったのか………?
「そう、か………。水越が倒れた原因だが、失血性ショック、というものらしい。本来なら大怪我をしたりして血が流れ過ぎた時に見られる症状だそうだが、何故か水越には外傷は一切なかった。不可解な事、というのはそれだ。内部で出血が起きている可能性も危惧して検査をしたようだが、健康体そのもので異常はなかったそうだ。」
検査しても分からない不可解な失血………まさか、僕が取り乱していなくなった後、彼女は一人で野衾を探していたとでも言うのだろうか。そして不幸にも襲われ、血を吸われてしまった。僕のせい、か。水越さんに謝らなければならないことがまたひとつ増えてしまった。
「先生、お見舞いに行きたいので 水越さんの入院先を教えてもらえないでしょうか?」
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その日の授業は身が入らなかった。放課後、帰りのホームルームが終わると僕はそそくさと荷物をまとめて、水越さんが入院しているという病院へと向かった。1階の受付で水越さんの病室を聞くと、番号と一緒に、彼女の意識が数時間前には戻ったという事を教えてくれた。僕は御礼をいうと、足早に教えられた病室へと向かった。
「水越さん、大丈夫!?」
焦っていたのもあって、勢い良くドアをあけすぎた為に、僕の声と一緒に、ガン、という騒音が響いた。
「芳員君、ここは病室ですよ。それも個室じゃないんですから、静かにしてください」
ベッドの上で上体だけを起こした水越さんにそうたしなめられた僕は、彼女の無事にホッとすると同時に羞恥心がこみ上げた。
「ご、ごめんなさい!それより、水越さんは大丈夫?」
さっきより、音量を落として尋ねた。
「はい、見ての通り大丈夫です。それより、芳員くんの方こそ大丈夫ですか…?あの日、急に取り乱した芳員くん、どう見てもタダ事ではないような感じでしたし………」
自分のことより僕を心配してくれる水越さんの優しさに、罪悪感を覚える。
「ごめん、そのこと謝らなくちゃって思ってたんだ。野衾の調査をする、とか言っておきながら、水越さんをあの場に置き去りにしてしまったことを謝らせてください」
そう言って僕は頭を下げる。
「芳員くん。その謝罪を受けようにも、私はあのとき芳員に何があったのかよく分かっていないんです。芳員にとって話し辛い事でなければ、芳員が取り乱した理由、教えてくれませんか………?」




