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9 道具屋

薬草を取るために街の外に行くためは、念のためポーションなどを買わないと。


「次は道具屋に行こう」


私はラピスと再び手をつないで歩きはじめた。

噴水のあたりまで戻ってくると、さっきは気付かなかったが露店がいろいろ並んでいる。武器や防具、食べ物などいろいろお店が並んでいて見ているだけでも楽しい。

その中でも美味しそうな匂いがしていた1つの屋台が目についた。人が何人か並んでいる。


「焼き鳥かな?」


タレの香ばしい匂いがあたりに広がっている。ゲームの中でも食欲をそそられるなんて変な感じだけど、食べたくなってくる。


「1つ買ってみようか。ラピスも食べる?」


ラピスにも聞いてみると、コクンとうなづいた。

私たちも列の後ろに加わった。

屋台のお兄さんはテキパキとタレをつけて焼いていく。その横で妖精のような女の子が串の準備をしている。どうやら、このお兄さんはプレイヤーさんだったみたい。


「すみません、2つください」


「あいよ。2本で100Gな」


「はい」


前の人たちの様子を見ていたので、問題なくお金を払うことができた。


「まいどっ!」


串を受けとると、人の邪魔にならない花壇の端に二人並んで腰掛ける。


「はい、これはラピスの。タレに気をつけて食べてね」


1本渡すとラピスは嬉しそうにかぶりついた。

お肉好きなのかな?

私も一口食べてみる。


「おいしいっ!」


肉は臭みもなくて柔らかくて、タレの香ばしい味も濃すぎず薄すぎずちょうどいい感じ。なにこれ! VRの中でもこんなに美味しさを感じられるなんてすごいっ!

私はまじまじと串を見つめた。


─────────────────

・ラビの串焼き(タレ) A

ラビの肉で作った串焼き。下処理をきちんとしているため、臭みはない。

満腹度 小

─────────────────


品質A!?

ええっ? すごい!

私は思わず屋台のお兄さんを見た。

見た目は茶髪に赤メッシュのチャラそうなお兄さんなのに、仕事はかなり丁寧なんて……。

屋台の行列は途切れることなく、次から次へと人が買いにくる。

納得の美味しさと品質である。

これで1本50Gって安い気がする。


やっぱり【料理】でも品質Aにするには難しいんだよね?

でも、こんな美味しいものが作れるなら自分でもやってみたくなっちゃうなあ。

次とるスキルは【料理】にしようかなあ?


「美味しいね」


ラピスに話しかけると、ラピスは満面の笑みで頷いてくれた。ラピスもこの串焼きは気に入ったみたい。

また買いに来ないとね。


「よし、行こうか?」


食べ終わると今度こそ道具屋に向かって歩き出した。

道具屋は噴水から近かったので、食べてからすぐに着くことが出来た。

道具屋はいかにもな古い感じの雰囲気のするお店で、お婆さんが一人座っていた。


「いらっしゃいませ」


棚にはポーションなどいろいろなものが並んでいる。

えーっと、とりあえずポーションとMPポーションと……毒消し? これもいるかな?

あとは……瓶! ポーション作るときにいるみたいだったもんね。


「ラピスは何かいる?」


店の中を見て回っているラピスに聞いてみるが、首を横にふる。


「じゃあ、とりあえずポーションとMPポーションを3つずつと毒消しを1つ、ポーション瓶を……うーん20本? ください」


「すみませんね。ポーションとMPポーションは今品薄でね、今日はお1人様2本までしか販売していないんじゃよ」


「そうなんですか? 分かりました。2本ずつでお願いします」


2本ってかなり少ないよね?

私は自分で作る気でいたからあまり注文しなかったけど、普通ならもっといるよね?

販売しているポーションは品質Cで回復量は15らしいから、MPポーション2本でファイヤーボール6発分……。無駄に撃てないよ


「ポーションが1本250Gで、MPポーションが350G、毒消しは400G、ポーション瓶が30Gだから、全部で2200Gじゃな」


「はい」


お金を支払うとすべてリングに収納する。たくさんの品物も一気になくなる。


「お嬢さん、ポーション瓶を買うということは【調薬】持ちじゃな?」


「え? はい」


「じゃあ、ぜひともポーションを作って生産ギルドに売ってはくれないだろうか?」


「生産ギルドにですか?」


「ええ。うちは生産ギルドからポーションを卸してもらって販売しているのだけど、一昨日くらいから急激にお客さんが増えてねえ、ポーションの数が足りてなくて困っているんじゃ」


ゲーム内時間は1日が12時間だから、一昨日といえば現実的では昨日。あー、追加発売されてプレイヤーが増えたからってこと? 茜が言っていたことがおきてるんだね。


───────────────────

緊急クエスト


ポーション不足解消を手伝うため、緊急クエストを受けますか?(これには時間制限があります)

YES / NO


《詳細》

───────────────────


あれ? 急に緊急クエストなんてウインドウが出てきた。

チュートリアルクエストも完了してないのに、いいのかな?

とりあえず詳細を見るしかないよね?


───────────────────

緊急クエスト


品質Cのポーションを20本作り、生産ギルドで買い取りしてもらってください。(分割しての納品でも可)

買い取り価格は生産ギルドの買い取り価格のため1本200Gです。


報酬:レシピ(MPポーション)


期限:今から24時間以内



ただし、このクエストはクリア出来なくてもペナルティはありません

────────────────────


報酬のMPポーションのレシピはぜひ欲しい!

でも、品質Cを20本かあ……出来るかな?

まだDしか作ったことないけど……

24時間ということはゲーム内で2日間ということだけど間に合うかな?

うーん、まあ失敗してもペナルティがないなら受けておいてもいいのかな?

私はYESを選択した。


「出来るだけ頑張ってみます」


「そうかい。それは助かるよ」


「とりあえずポーションたくさん作ってみるので、追加で瓶をもう20本ください」


「あいよ」


お婆さんはニッコリ笑って追加分を売ってくれた。


道具屋を出ると、すぐに薬草を取りに行こうかと思い、マップを確認した瞬間、時計が目にはいった。


「マズイ!」


思った以上に時間が経っているようだった。

今日はお母さんが仕事で遅くなるから、私が夕飯を作るはずだったのだ。


「ええっーと、ログアウトするにはどうするんだっけ? ラピスごめんね。あとで街の外に出てみようね」


ラピスが頷いたのを確認すると、私は指輪のなかにラピスを戻し、慌ててログアウトした。


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