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25 50℃洗い

夜更かししてしまった分、少し寝坊してしまったが、午前中のうちにログインすることは出来た。

昨日のへこんでしまった気持ちはもうすっかりなくなっている。手にはいらないなら仕方がない。絶対に必要というものでもなかったしね。


「ラピス、今日はポーション作るよ」


エリアボスとの戦いに向けて少し手持ちを増やしておく必要があると思ったのだ。ポーションがたくさん必要になる戦闘をすぐにするとは思っていなかったため、昨日作った分は大部分を売ってしまっている。

茜との約束は2時。お昼ご飯を食べるために一度ログアウトすることを考えても2、3時間くらいは生産に使えそう。

そんなことを考えながら、いつものように生産ギルドで生産スペースを借りるためにカウンターに向かった。


「リーフ様、指名依頼が来ていますよ」


「え? 指名依頼?」


カウンターのお姉さんにいつもように生産スペースを借りたいと伝えようとしたところ、突然そんなことを言われた。


「はい、リーフ様に作ってほしいと指名しての依頼です。依頼内容はCのポーションを30本。1本330Gでの買い取りだそうです」


「Cのポーション?」


Cのポーションなら確かに作れるけど、なんで私に? 茜がわざわざ生産ギルドを通して依頼でもしたのかな?


「そうです。受けられますか?」


「あの、それ依頼した人って教えてもらえますか?」


「はい。ヒロ様です」


「ヒロ……?」


茜じゃない。

……というか誰?


「えーっと、ですね……この方はリーフ様が一昨日受けられた依頼の依頼人の方ですね。リーフ様は2回この方の依頼を達成されていますね。納品した品を気に入って指名されることは珍しいことじゃないんですよ」


一昨日の依頼……? えーっと、ゲームで一昨日ということは、昨日の午前中だよね? たしかにポーションの依頼をいくつか受けた覚えがある。もしかしてDとCを大量に必要としていた依頼の依頼人?


「指名依頼って受けないといけないんですか?」


「断ることも可能ですよ。ただ指名依頼は普通の依頼よりもギルドへの貢献度が高く設定されているので、ギルドランクが上がりやすくなります」


ギルドランクかあ。道具セットは買いたいけど、そんな急いで上げたいわけじゃないし……。

この人には昨日合計40本もポーション納品したよね? 1日でそんなに使うものなのかな? その上新たに30本って……私はあまりモンスターと戦わないから分からないけど、そんなに使うものなの?

やっぱり転売とかしてるのかな?


「受けません。受けなくてもペナルティーとかないんですよね?」


「はい、大丈夫ですよ。では、生産スペース2時間でしたね。こちらの部屋をお使いください」


「はい。ありがとうございます 」


私はいつものように使用料を払いスペースを借りた。




なんだかモヤモヤした気分のまま生産スペースに入った。

私が作ったものを欲しがってくれる人がいるのは嬉しいけど、それがもし転売のお金儲けのためというのなら、なんか嫌な気分がする。本人が使ってくれているとか、パーティのメンバー分まとめてとかなら受けても良かったけど……。あの依頼だけでは判断出来ないしなあ。

分からないままでは受けること気分にはなれなかった。


「うーん、指名依頼受けてみたかったんだけどなあ……。ん?」


ラピスが私の服をツンツンと引っ張った。


「どうしたの?」


私が首を傾げると、ラピスは私にしゃがむように手を動かした。


「こう?」


私が背を縮めるようにしゃがむと、ラピスは私の頭をグシグシと撫でた。

私があまりにひどい顔をしていたのか、ラピスは慰めようとしてくれたらしい。いつも私がラピスの頭を撫でるように、やってくれようとしたみたいだった。


「ふふっ。ありがとうラピス」


ラピスに慰められるようになるんてちょっと予想外だった。見た目は幼稚園児なのに、戦闘以外でもしっかりしているなんて。

私もお返しに頭を撫でてあげると、ラピスはちょっと照れたように嬉しそうな表情になった。


「よし、やろう!」


私は乱れた髪を手櫛で直しながら立ち上がると気合いをいれてポーション作りの準備をした。採取してきたから、薬草もたくさんある。


最初はCの薬草で作ってみる。昨日を思い出して作っていく。ピカッと光るタイミングもだいぶ掴めている。B、B、C、B……Bが作れることが多くなってきたみたい。昨日はBが5本に1本くらいの割合でしか作れなかったけど、今日は2本に1本以上の割合でBが作れている。

この調子でBの薬草でも作ってみる。だけど、これは相変わらずBしか出来ない。


「うーん……。Bがたくさん出来るのは嬉しいけど……」


Bの薬草からBのポーションしかできないのはやっぱり悔しい。

そこで、私は昨日寝る前に考えついたことを試してみることにした。MPポーションを作るときに、加熱のしすぎを防ぐために冷やしたのが葉物野菜みたいだと思ったのを考えていたのだ。薬草も大きな葉っぱをしているので、葉物野菜のように扱えばより良くなるかなあっと。

そこで思いついたのは50℃洗い。50℃のお湯に萎びたレタスを浸すと瑞々しくシャキッとなるというもの。薬草は採取するとすぐにリングに収納してしまうので、見るからにしなしなになることはないけれど、使うときにテーブルの上に出しておくので有効ではないかと思ったのだ。


温度計は持っていないので、とりあえず水と沸騰したお湯を同量ずつボールに入れてお風呂よりも熱めのお湯を作る。そこにBの薬草を30秒くらい浸して水気を切る。

うーん、いつもよりはパリッとしているのかな? いや、変わらないといえば変わらないような気も……。

あまり意味なかったかなと思いながらも、そのまますぐにすりつぶしてみる。Bの薬草はやっぱり光が分かりやすいのでタイミングはバッチリだと思う。そして加熱して2回濾してみる。


「ん?」


───────────

・ポーション A

HPが30回復する

───────────


見間違えかと思ったけど、何度鑑定してもA。……A?


「やったー!」


Aが出来た! 初めてのA!


「ラピス! Aだよ! Aが出来たよ!」


あまりの嬉しさにラピスと手を繋いでぴょんぴょんと跳び跳ねる。ラピスも嬉しそうに一緒に跳び跳ねてくれる。

まさか本当にAが出来るなんて!

50℃洗いの効果があったってことだよね?


「Aをいっぱい作らないと!」


茜がAが出来たら連絡して欲しいって言ってたし、後で会ったときに渡したら驚いてくれるかな?

一応私のためにエリアボス倒しに来てくれるらしいし、お礼にいくつか渡してあげよっかな。


私は再びお湯を用意して、Bの薬草でポーションを作りはじめた。だけど出来たのはB。


「あれ? やっぱり偶然なのかな?」


ちょっとガッカリするが、諦めずBの薬草を熱めのお湯にくぐらせてから、すりつぶす。B、B、A、B、A、B、B、B……Aが出来るのは4回に1回くらいだった。それでも数をこなせばちょっとはAが出来るようになってくる。


「Cの薬草で50℃洗いしたらどうなるのかな?」


ちょうどAのポーションが10本出来たところで、Cの薬草も同じようにポーションにしてみる。だけど出来たのはB。次もB、B、C、B、B、B、C……。Bが出来る確率はあがったみたいだけど、Aにはならない。


「うーん……」


あとどうしたらいいのかと考えながら薬草をすりつぶしていると、ラピスにトントンと叩かれた。


「どうしたの?」


ラピスはポーション瓶が置かれていたテーブルを指差す。どうやらポーション瓶をすべて使いきってしまったみたい。


「あら?」


慌ててリングの中も確認するが、空のポーション瓶がない。

道具屋でまとめて買っておいたはずなのに!

いつの間にそんなに使っちゃったんだろう?

ショックを受けながらも、今作りかけの分はどうしようかと考える。今すりつぶしている分と加熱してる分で2本分の瓶が必要になる。


「う~ん」


何かコップのようなものに入れておくしかないかなあっと収納リングの中を見ていると、あるものに気付いた。


使用済みポーション瓶 × 2


昨日採取したときにラピスと私が飲んだポーションのゴミである。

いくらゲームの中とはいえ、その辺の草むらに投げ捨てるのも気が引けるので後でゴミ箱に捨てようと、リングの中にいれたままにしていたものである。


「これって再利用出来るのかな?」


私は今作業中の薬草が光るタイミングまですりつぶすとラピスに後の作業を任せて、使用済みポーション瓶を洗いはじめた。

ポーション自体はさらっとしているし、油ものでもないのですぐにキレイになった。


─────────────

・ポーション瓶 C

ポーション類を入れるための瓶。ガラス製のため取り扱い注意

─────────────


鑑定してみれば、普通のポーション瓶だった。道具屋で買うのと変わりない説明文しか出てこない。

私はそのポーション瓶に出来上がったポーションを入れてみた。結果はBとCが1本ずつ。説明文にポーション瓶は再利用とも表示されない。リングの中に入れてしまえば、他のポーションと一緒にされてしまい分からなくなった。


「再利用できるみたい」


私はなんだか意外だと感じながらも、今回作ったポーションの数を確認した。


ポーション A × 10

ポーション B × 35

ポーション C × 8


うん、十分な数は出来ている。茜に少しあげても全部なくなることはないだろう。

私は満足してうなづいた。


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