24 年齢制限
生産スペースを出た私たちはまずカウンターに向かう。MPポーションの買い取りをしてもらわないと。
「はい、品質CのMPポーションを20本買い取りですね。こちらが品物の代金6000Gです」
お金を受けとるとウィンドウが現れた。
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緊急クエスト CLEAR!
報酬:レシピ(毒消し)
(注)今回の報酬は始まりの街の道具屋で受け取りとなります
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良かった、今回もちゃんとクリア出来たよ。
あとはたくさん作ったMPポーションも売りたいので掲示板ところに行く。
MPポーションもたくさん依頼が張ってあるが、ポーションほどではないように見える。やっぱり需要としてはポーションのほうが多いのかな?
たくさんある依頼の中から条件のあうものを順にとって、Bを10本、Cを15本、Dを20本売ることにした。
もう少し売ってしまおうかと思ったけど、明日のエリアボス戦を考えると多少多めに自分で持っておくことにする。茜は準備なんていらない、心配なんていらないとは言ってたけど、そんなわけにはいかないよね? ポーション類ぐらいは私が用意しておかないと。
カウンターで代金を受けとると、全部で17750Gになった。一気にお金が増えてうれしいかも。
私はウキウキと生産ギルドから出た。
こんなにお金があるなら買い物したい。
それに今は昼時間。お店もたくさん開いていて、ちょうどいいしね。
私は買い物のため街を歩き始めた。
もちろんラピスとは手を繋いでおかないとね。
まずはいつもの道具屋で。って思ったけど、それはやめておかないといけない。
この前みたいに道具屋に行ってクリア報酬のレシピをもらったら、新たなクエストが発生するかもしれない。また時間制限があるクエストだと困ってしまうことになる。茜との約束の後に行くことにしないと。
じゃあ、あと買い物をしたいところは……【料理】に使う材料を売っているところかな。私はとりあえず店頭に果物や野菜類が売られているのを見た店を目指した。
現実では深夜だというのに土曜日なせいか、かなりのプレイヤーが行き交っている。
「うう……っ」
店屋の多いあたりでは、人にぶつかってばかりで思うように歩けない。お店が並んでいる。この辺りは店頭のものを眺めながら歩いている人も多いため、難しい。私も頑張って避けているが、周りの人たちは私よりも頭を1つ分以上大きいためか基本的に私のことはほとんど視界に入ってない。ぶつかってから私の存在に気付くといった具合である。
切実にヒールが早く欲しい!
でも昨日頼んだばかりだから、出来上がるのはまだまだ先をだろうなあ。私は1つため息をつくと、ラピスに【人間化】を解除してもらった。私よりももっと小さいラピスではこの人混みの中歩くのは大変だろう。ラピスを肩に乗せると、目当ての店まで気を付けて歩いていった。
お店には果物や野菜が並んでいるが、見慣れない名前のものとよく知っているものがあった。知らない名前のものは籠盛りで安く売られている。さっき私がスライムジュースにつかったマリーベルも小さめの籠一杯はいって150Gだった。
それに対して現実と同じ苺は1粒で100G。かなりの高級苺だ。
オレンジやグレープフルーツ、キウイなどもあるが気軽にジャムなどは作れない値段をしている。トマトやキャベツ、玉ねぎなども売っていたが、野菜炒めを作るだけでポーション何本分になるんだろう?
「高い……」
私は現実でよく見たことがある果物や野菜を目の前にしてショックを受けた。もしかして【料理】スキルってお金かかるの? 露店で売っている料理がそんなに高くなかったので、油断していた。
「そりゃそうさ」
店のおばさんが笑って話しかけてきた。
「その辺りは高級品の野菜たちだからねえ」
「高級品?」
「お客さん、ここには最近来たのかい?」
最近来たというか、おとといゲームをし始めたところです。
「その辺のものたちは遠く海を超えて運んできてもらってるんだよ。珍しいものだけど、まあ冒険者たちにはよく売れているよ」
冒険者というのはプレイヤーかな? そうだよね。見たことのない名前の青いミカンより知っている食べ物を買いたくなるよね。
「こっち側の品物は西側の森や近くの村で採れるものだからお手頃だよ。この辺りの人はこっちのものしか買わないねえ」
確か西門から出た森には食材になるものが採取しやすいんだっけ? ここに並んでいるものが採取出来るのかな? 時間が出来たら1度行ってみないとなあ。露店で売っている料理はこっちの野菜とかを使っていたのかな?
「そうなんですね。どうしようかな?」
買おうと思っていた果物たちを全部買ったら予算オーバーしそう。
これは知らない名前のものを使うしかないってことだよね。まあ、せっかくSFOの世界にいるんだから、ここにしかないものを使って作るほうが面白いよね?
「何を作るつもりなんだい?」
「えーっと、ジュースとかお菓子とかを作りたいなって」
「ジュースなら、この辺の果物じゃダメなのかい?」
おばさんはマリーベルやマリンダが置いてあるあたりを指差す。
「ダメじゃないです。けど、マリーベルとマリンダでは作ったことがあるので」
でもさっき作ったけど、追加して買っておこうかな? 薬草類ならいっぱいあるけど、果物はあまり採取できなかったからなあ。
「じゃあ、これはどうだい?」
おばさんがグレープフルーツくらいの大きさの真っ青な実を指差した。
指差された果物を見るとラーラーの実と書かれている。
道具屋のお婆さんがくれたグミはこの果物だったんだ。
うん、知らなかったら積極的に食べたいとは思わない見た目だね。
葡萄みたいな味がすると知っているので、これは買っていこう。
「あとおすすめはありますか?」
「そうだね。お菓子にならこれはどうだい?」
手のひらサイズの黄色いカボチャを指差された。
「これは加熱しないと食べられないけど、甘いよ」
カボチャクッキーみたいなのが作れるかな?
「あと、これも焼くとおいしいよ。それとこれは……」
おばさんは親切にいろいろ教えてくれた。どんな料理にあうとか、これは皮も使えるものとかすごく為になった。
「ありがとうございます。とりあえずこれで作ってみます」
「こちらこそたくさん買ってくれてありがとうね。また来ておくれ」
「はい、もちろん」
私はたくさんの果物や野菜を買うと、ご機嫌にお店を出た。おばさんに小麦粉や卵を売っているお店の場所も聞いて次へ向かう。
小麦粉や全粒粉、砂糖など必要そうなものを買う。茜がここでは甘いものは高級品だと言っていたけど、確かに砂糖の値段は高かった。特に白砂糖は1㎏で2000G。少し安めのブラウンシュガーも買っておいた。
問題は卵だ。
「大きい……」
ここで卵と言えば、コッコーというモンスターのドロップ品のことらしい。私がイメージしていた卵よりも大きかった。ダチョウの卵くらいかな? 初心者用調理道具セットにカナヅチが入っていて、どうしてかと思っていたけど、この卵のせいだったらしい。……そんなに殻が固いの大丈夫かな?
他のモンスターの卵もあるらしいけど、この街で手にはいるのはこれだけらしい。コッコーも西門から出た森にいるモンスターらしい。やっぱり一度行って食材集めしてこないといけないのかなあ。
とりあえず卵は3つだけ買ってお店を後にした。
「よし、あとは料理用のお酒も買っておかないと」
私は次は酒屋に向かった。扉を開けようとするとウインドウが開いた。
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20歳未満のプレイヤーは立ち入り禁止です。
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「えっ!?」
ゲームの中でも未成年の飲酒は禁止ってことなのかな?
そのまま飲むんじゃなくて料理に使いたいのに買うこと出来ないのかな?
フランベするのに度数の高いお酒や煮込むのに赤ワインとか欲しいと思っていたのに……。
私はへこんでしまい、今日はここでログアウトした。




