表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/26

22 やけど

夕飯後、宿題を終わらせてからログインすると茜からメールが届いていた。

ゲーム内時間の明後日2時に東門で待ち合わせという内容だった。

夕飯のときの話はやっぱり決定事項だったらしい。


「はあ……」


私は思わず大きくため息をついた。

緊急クエストだけでも忙しいと思っていたのに、気が付いたら明日はエリアボスと戦うなんて……。

ポーション作って、モフモフしながらのんびりライフするつもりでゲームを始めたはずがあ!

嘆いても仕方ない。私はラピスを呼び出すといつも通り生産ギルドで生産スペースを借りた。




「よし、ラピス今日はMPポーションをたくさん作るよ!」


テーブルの上にCの魔薬草とビーカーやお皿類をたくさん出す。


「とりあえずお水をはかって魔薬草浸しておいてくれる?」


ラピスはコクンと頷くと作業を始めてくれる。

私はラピスの横でBの魔薬草を5つとDの魔薬草を5つちぎって浸す。

容器の数もそんなにないのですぐに作業は終わってしまう。でも最低でも10分は経たないと次の作業にうつれない。


「この間にちょっと料理しようか?」


ラピスは嬉しそうにコクンと頷く。

さっき街の外で戦闘もしたので、お腹も空いているのでやっぱりラビ肉のステーキにリベンジするしかない。

ラビ肉の下ごしらえのレシピも買ったので、今度こそうまくいくはず。

スキルのアイコンから料理のレシピを開くと手順が出てくる。どうやらラビ肉は叩くだけではなく、固い筋があるので特定の場所に切り込みの必要があったらしい。レシピどおりの場所に包丁をいれ、指定されたハーブと酒を揉み込んでいく。ハーブ類も採取のときたくさん手に入ったので問題なくできた。酒も調味料セットに入っていたので今回の分くらいは問題ない。あとは塩コショウをして焼いてみる。

ラピスが鼻をヒクヒクさせながら焼き上がりを待っていた。


「よし、これでどうかな?」


─────────────

・ラビ肉のステーキ C

ラビ肉を焼いたステーキ。ハーブ類が使われおり、臭みがとれている。

満腹度:中

─────────────


よかった!

やっとCになったよ。

ただお肉を焼くだけの料理だと思ったのになかなか手こずったなあ。


「ラピス、今回のはどうかな?」


ラピスは早速一切れ口に入れてもごもごとする。

すると嬉しそうに首を縦に振ってくれた。

私もそれを見て味見する。

うん、臭みはなくなってる。だけど、まだあの屋体の串焼きに比べると柔らかさが足りないし、パサパサしてる気がする。

やっぱり品質Aとは全然比べ物にならない。

まだまだ頑張らないと!

今回はCで出来たので、ラピスから取り上げず好きなだけ食べさせることにした。するとラピスはあっという間にステーキ1枚を食べきってしまった。


「そんなに食べて大丈夫なの?」


ラピスの小さい体でこんなに食べて、後でお腹が痛くならないか心配になる。

ラピスは全然平気だとアピールするように腕を動かす。

まあ、私もここではたくさん食べても平気みたいだし、ラピスも精霊だし問題ないよね。

まだまだ食べれるというようなアピールをラピスがするので、ラビ肉の下処理だけしたものを3つほど作っておく。

せっかくハーブと酒を揉み込むんだから時間をおいたほうがもっとよくなるのではないかと思ったのだ。


「じゃあ、今度はMPポーションの方やろうか? Bが出来るようになるまで作るからね」


ラピスは大きく頷くと器具を用意し始める。


まずはCの魔薬草を前回と同じように色を確認しながら慎重に煮る。やっぱり一瞬光るようだけど、分かりにくい。出来上がったのはC。


「うーん……」


何度も注意深く様子を窺いながらタイミングをはかる。

C、C、C……何度やってもCしか出来ない。

失敗してDになることはなかったけど、どうしてもBにならない。あの光に合わせて火を消しているはずなのに、どうしてだろう?

ポーションのときは光に合わせるのがポイントだったから、MPポーションもそうだと思ったんだけど違うのかな?

それともタイミングを合わせてるつもりだけど、合ってないとか?

とりあえずCの魔薬草からCのMPポーションを作ることは出来るようになった。

私は浸しておいたBの魔薬草を加熱してみることにした。Bの魔薬草のほうが光が分かりやすい気がする。タイミングを合わせて火を消すと、出来上がったのはBのMPポーションだった。


「出来た! けどなあ……」


ラピスが私の声に反応して、こちらを見て一瞬嬉しそうにする。だけど私の表情を見てうまくいったのではないと気付いたようで、困った顔をして再び作業を続ける。

嬉しそうにしたラピスには申し訳ないけど、Bの魔薬草からBのMPポーションでは納得できない。目標はあくまでもCの魔薬草からBのMPポーションなのだから。

もう一度Bの魔薬草を加熱するが、出来上がったのはB。その次もB。光のタイミングは見やすいはずなのに、それ以上の品質にはなってくれない。

その次のBの魔薬草ではあえて少しタイミングを外してみる。

すると、Cになってしまった。


「あ~、やっぱりあの光のタイミングがポイントなのは間違いなさそうだよね?」


次にDの魔薬草も試してみる。光は見にくいがDでも確かに光っているように見える。タイミングを合わせたつもりだったけど、出来上がったのはDのMPポーションだった。


「うーん、難しい……」


残りの4つのDの魔薬草を試してみたけど、全部DのMPポーションにしかならなった。

次に採取前に浸した状態で収納リングに入れておいたCの魔薬草を取り出す。同じように加熱するが光が分かりにくくてDになった。もう一度試してみるけど、これもD。やっぱり収納リングに入れてしまうと時間の経過はないため、浸しておいてるとはみなされないみたい。

収納リングに入れておいた水に浸した魔薬草残りも全部テーブルの上に放置する。

そして再びCの魔薬草でチャレンジしてみる。空いた器にラピスがどんどんCの魔薬草を浸しておいてくれるので、充分な時間浸すことができ次々作業が進められる。うん、ラピスは働き者だなあ。


「ん~……あつっ!?」


よそ見をしたせいか、熱々のビーカーに腕が触れてしまった。

慌てて水で冷やす。

少し腕が赤くなっている。

こんなところまでリアルなんだなあ。思わず感心してしまう。

ラピスは私の声にすぐに反応して駆け寄ってきてくれた。だけど、どうしていいのか分からず私の回りを心配してうろうろとしている。


「大丈夫だよ。たいして痛くないから。ちょっと気が緩んでたみたい。気を付けるから作業続けよう?」


ラピスの頭をポンポンと撫でてやると、ラピスは疑うような目を向けながらも作業テーブルのところに戻っていった。

嘘なんてついてないのにと思わず苦笑してしまう。この火傷は見た目に反して痛みはあまりない。冷やしたときには、火傷したとき特有のジンジンとした痛みを覚悟したんだけどなあ。

ふと視界の上にあるHPバーが目に入った。満タンだったはずのバーがいつの間にか少し減っていた。


「あ……」


アリスさんがHPバーを表示しておいた方がいいって言ってたのはこういうことだったんだ。確かに痛みはあまりないから多少の怪我とか気にならないかも。敵と戦っているときはたぶんあたったりしたら気にするし、自動で表示されるから問題ないけど、今みたいなときは確かに困る。調薬や料理で切り傷や火傷、毒などを気にせず放置しておいていつの間に死に戻りしてるとかあり得そう。街中でもバーの減り気を付けておかないと。


この火傷はどうしようかな? 戦闘中でもないからポーション飲むほどじゃないし、痛くないしもう放置でいいのかな? ポーションを飲めばこの赤くなっているところもすぐに治ってしまうんだろうけどなあ。

水にあてていた腕はすっかり冷たくなっていた。

意外とここの水冷たいんだなあ。すぐ冷えて───


「あっ!」


私は急いでCの魔薬草を加熱し始めた。加熱している間に調理セットのボールに水を入れておく。そしてタイミングを合わせて火を消したビーカーをすぐにそのボールに浸けた。水に浸けるとすぐに冷めてしまった中身を茶漉して濾してみる。……出来上がったのはBのMPポーションだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ