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採取はかなり順調にいった。

むしろ思ったよりも順調に採取出来てしまった。

というのもラピスがやる気いっぱいな上に、やっぱり強かったからだ。



最初は私もチラチラとまわりの様子を見ながら採取をしていた。

だけど、私がモンスターに気付くよりも先にラピスが倒しにかかっているという状態だった。

走り回って遊んでいるように見えるけど、ちゃんと見張りの仕事をしてくれているラピスは頼もしかった。

それでも1度に複数のモンスターが出てきたら、ちゃんと魔法で援護しようとラピスの様子を窺いながら薬草類を摘んでいた。

そして、スライムが2体、ラビが2匹現れた。

ラピスがすぐに駆けつけてスライムに一撃を与えていたが、一度に4匹は多いと思って、私は杖を向けた。ファイヤーボールを2発撃ってラビにそれぞれ1発ずつ当てることができた。やった!と思ったが、ラピスが不機嫌な顔をしてこちらを睨んでいた。

4体とも倒し終わると、すごい勢いでこちらに駆けてきて抗議しはじめた。どうやら、私が魔法を撃ったことが気に入らないらしい。私にはモンスターは気にせず採取して欲しかったということらしい。


「分かった、分かった。お仕事邪魔してごめんね」


分かればいいんだというように腕を組んでうんうんとしている。


「でも、これは飲んでね」


さっきのモンスターはやっぱり多かったようで、少しHPが減っている。そのため、ポーションを渡す。ラピスは受けとるのに戸惑うような様子をみせた。


「一緒に作ったポーションだよ」


ラピスは飲むのに抵抗があるように、ジッとポーションを見つめる。


「どうしたの?」


ラピスは私の顔を見ると、覚悟を決めたように一気に飲み干した。そして、飲み終わると舌をベーっと出した。


「もしかして苦かった?」


今までHPが減ったことがなかったので、普通のポーションを飲んだことがなかった。確かに見た目は緑の青汁のような液体である。

私はHPが減っていなかったが、Eのポーションをグイっと飲んでみた。

確かにちょっと草の香りがして苦味がある。見た目ほど青汁のようなマズさはないが、確かに小さい子には飲みにくい味だとは思う。ラピスはもうポーション飲んでくれないかも。何か考えなきゃなあ。


「はい、これ食べて」


道具屋のお婆さんから貰ったグミを1粒、口のなかに入れてあげた。ラピスは一瞬にして嬉しそうな顔になった。


「じゃあ、もう少し採取するからラピスも怪我しないようにね」


ラピスは口をもごもごしながら頷いた。そして、私にこっちを気にせず採取をしろというように足下を指差していた。


「分かった。見張りはラピスを信じてるよ。だけど、危ない時はちゃんと合図してね」


ラピスは任せろとまた走り出してしまった。

仕方なく私は採取に集中することになった。




結局、かなりの時間採取していた。ラピスが走り回る足音や、モンスターの鳴き声を聞きながらも、あれ以降私は攻撃することなく作業を続けていた。途中で私がレベルアップしたので、ラピスは一人でかなりの数を倒してくれたのだと思う。

そのおかげでCの魔薬草だけでも157ある。この辺りの採取ポイントは根こそぎ採ってしまったかもしれない。

立ち上がって、所々禿げた草むらになってしまった周りを見渡す。本当に2、3日で元に戻るといいんだけど……。


ラピスを呼び戻して【ダッシュ】で帰る。思う存分動いたおかげかラピスは満足げな顔をしていた。寄り道しなかったので、モンスターに襲われることなく帰りはすぐに帰れた。



生産ギルドに戻る前に、道具屋に寄る。MPポーション作りのために茶漉しを買おうと思ったからだ。


「茶漉しかい?」


お婆さんが不思議そうに目をパチクリとする。


「はい」


「お茶っ葉でも買ったのかい? まあ、それなら4軒隣に料理道具専門の道具屋があるから、そこで聞いてみな」


「料理道具専門の道具屋ですか?」


「この店は冒険者がよく買うものしか取り扱わないからねえ。そういう生活雑貨や専門的なものはまた別の店だよ」


それもそうだよね。この店だけでなんでも揃うわけはないよね。


「もしかして調薬道具の専門店もあるんですか?」


「それは残念ながらこの街にはないねえ。たしか海の近くの街やもっと東の街に行けばあるらしいがね」


残念、この街にはないのかあ。あったら茶漉しよりもMPポーション作りが楽になる道具があるんじゃないかと思ったんだけどなあ。


「そうなんですね。分かりました、料理道具専門の店に行ってみます。ありがとうございます」


「いえいえ。今回はポーション瓶はいいのかい?」


毎回毎回ポーション瓶ばかり買っていたせいで、買わずに店を出るのも変な感じがする。


「あ~……今回は40本ください」


とりあえず使った分くらいは買っておこう。


「はい、毎度ありがとうねえ」


うまくお婆さんに商売された気もするけど、まあいいっか。


「そうだ。お婆さんあのグミ美味しかったです。ありがとうございました」


「そうかい、そうかい。お嬢さんの口に合ったなら良かったよ。ポーション作り頑張っておくれ」


「はい」


私は次に料理道具屋にそのまま寄った。本当に色々な道具が置いてあった。包丁だけでも何種類もあったし、可愛いクッキー型なんてものも置いてある。あの串焼き屋さんが使っていた炭火焼風の串焼きコンロも売っていた。

ここでああいうものは買うんだなあ。

色んな物が置いてあるので、見ていて飽きない。というより色々欲しくなる。だけど、今はMPポーションを優先と自分に言い聞かせて、手頃なサイズの茶漉しを2種類買うと後ろ髪引かれる思いをたち切ってお店を出た。

クエスト受けてないときに絶対来よう。

お店は出たが、料理したくてたまらない気分になってしまった私はそのまま本屋にも寄っていくことにした。

ちょっとだけ、ちょっとだけ。レシピ買うだけで今は作らないし……。

なぜか自分に言い訳しながら私は結局、

レシピ(ラビ肉の下処理)

レシピ(スライムジュース)

レシピ(クッキー)

を購入してしまった。

うん、無性に作りたくなるけど今は我慢だ。

私は一度ログアウトした。

我慢できそうになかったからじゃない。夕飯の時間だからだもんね。






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