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2 キャラクター設定

私がSFOをやると決心すると、茜はかなり喜んでいた。そして帰ってきたおとうさんとの交渉もやってくれ、2つ返事で買ってもらえることになった。

ただその時、「二人ともするなら、おとうさんもやろうかなあ? そうしたら離れていても二人とゲームの中でお話できるし」と言いだしたのにはびっくりした。それは茜と共に全力でやめるよう説得した。

高校生にもなって父親同伴でゲームはさすがあり得ないよね。恥ずかしすぎる……。

だけど、こっそり単身赴任先で購入しているのではないかと不安ではあるんだよね。





そして今、私の目の前には大きな箱がドンと置かれている。

傍らには昨日ようやく追加発売されたSFOのソフトがある。

昨日予約したゲームを取りにいったが、VRゲーム機本体はかなり大きいので持って帰ることはせず宅配してもらったのだ。

ようやく届いたゲーム機の配線を行う。茜のとき手伝っていたので、なんとか1人でもできた。

茜は今日、委員会の集まりがあるらしくて少し帰りが遅くなるらしい。


「よし、茜が帰ってくるまでにチュートリアルくらい終わらせておこうかな」


ヘッドギアを被るとベッドに横になった。







ふわっと浮き上がる感覚がすると、真っ暗な世界にSFOのタイトルが浮かびあがっていた。

自分の体が勝手に動きだし、タイトルのほうへ飛んでいく。

ぶつかると思い反射的に目を閉じると、つぎの瞬間にはアンティークちっくな部屋の中にいた。


「ようこそSpirit Fantasy Onlineの世界へ。初めてのログインでございますので、IDとパスワードの設定をお願いいたします。」


デパートの受付嬢のような人がこちらに話しかけてきた。ペコリと頭をさげる姿はかなり自然で、驚いた。うん、本当にすごい技術のゲームらしい。こんな滑らかで自然な動きするんだね。

私はあらかじめ考えていた文字を入力するとすぐに承認された。


「それではこれからキャラクター設定を行います。私はナビゲーターを務めますアリスと申します。あなたのお名前を教えてください」


「リーフです」


これも考えてあったので問題なさそう。というか本名が若葉なので、いつもこの名前を使っているんだよね。


「それでは容姿の設定です。」


すると目の前に鏡のようなものが現れて、現実の私とまったく同じ姿を写し出す。


「リーフ様の体型はプレイするのに支障がないため、体の変更を行うことが出来ません。」


そのことは確かに説明書にも書いてあった。現実の体と大きく違うと脳の反応に誤差が生じることが多いらしくて、動くのに問題ある体型の人以外はいじれないらしい。


「身長を少しだけでも伸ばすことは出来ませんか? せめて1㎝くらい」


「残念ですが、それは出来ません」


粘ってみるが、やっぱりダメらしい。目指せ160㎝はVRでも達成出来ないなんて……。中学から高校2年の現在までで伸びたのは1㎝ちょっと。成長期は終わってないと信じて牛乳をたくさん飲んでいるけど、周りのみんなよりも低いこの身長にはうんざりしている。この世界でくらい150㎝は越えたかった。


「じゃあ、この胸を小さくするのはどうですか? 動くのに十分邪魔になると思うのですが」


「そうですね……」


アリスさんがそう言うと、目の前の鏡の中の自分が腕をグルグルと回したり、手を挙げたりする。


「うーん、確かにぶつかりますが動かせますので、変更は出来ません。申し訳ございません。気になるようでしたら、ゲーム内で胸あてなどの防具を使うと動きやすくなると思いますので」


アリスさんは申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。

せっかくのVRならば、理想のスタイルになりたかったのに。チビの巨乳なんてコンプレックスの塊でしかない。もう少しバランスのいいスタイルになりたかった……。


「分かりました」


ここでゴネても先に進まない。私は頷いた。


「では、次は顔の設定です。こちらは色や大きさの変更など自由に出来ます。」


そうして顔のアップが写し出された。

せっかく変更できるなら顔はいじりたい。


「えーっと、まず目を少し大きくして、まつ毛をもっと増やして……うーんと、少しつり目っぽくしようかな? それから鼻も高くして、口は外国の女優さんみたいにぽってりと厚くして……それからそれから……」


かなりいじった。あーでもない、こーでもないと熱中していた。


「よし、これでどうかな?」


ちょっといじるだけでも印象が変わるのが楽しくてたくさん動かしてしまったが、結構いい出来にやったんじゃないかな?


「これでよろしいでしょうか?」


アリスさんに聞かれると目の前のキャラクターが瞬きしてニッコリと微笑んだ。


「えっ?」


不気味だった。熱中していて気付かなかったが、改めて見ると不自然すぎて気持ち悪いアンドロイドのようになっている。あらかじめ見たゲームの攻略サイトでも確かに顔をいじるのは注意と書かれていた。こういう意味だったらしい。確かにこれはないわ。


「すみません。最初からやり直します」


「はい、どうぞ。キャラクターの容姿は途中では変えられませんので、納得いくまでなさってください。髪や目の色だけを変える方が多いですよ」


かなりの時間待たせているが、アリスさんは嫌な顔もせずニコニコとアドバイスをくれる。優秀なナビゲーターさんである。


アリスさんのアドバイスに沿って髪の色を明るい緑、若葉色にしてみる。現実では絶対出来ない色なだけにかなり違和感があるが、ゲームの映像にはいろんな色の髪の人が映っていたので、これでも目立たないと思う。ついでに瞳も同じく若葉色にしてみる。


「うーん、もっと落ち着いた色のほうがいいかな?」


目はすこし暗めの青緑にする。

うん、目の色を変えただけでずいぶん印象が変わるみたい。


「せっかくだから髪ものばそう」


鎖骨くらいまでの長さの髪を、思いきって腰くらいまで伸ばしてみる。

うん、私じゃないみたい。これならもしもおとうさんが始めていても、すぐには気付かれないだろう。


「これでお願いいたします。」


「はい、これでよろしいですね?」


さっきのように目の前のキャラクターが瞬きしてニコッと笑う。今度は不気味な感じはしない。ただすごい色の髪と目に違和感を感じるくらい。

これはそのうち慣れるのかな?


「はい」


私が頷くと、目の前の鏡のようなものが私のほうに近付いてきた。私にぶつかるとピカッも光につつまれる。


「これで容姿の設定は完了ですね」


私が下を向くと、背中の後ろに若葉色の髪の毛が見える。私は確かにさっきの設定した容姿になったようだ。











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