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ヒールが手に入る目処が立ったので、私はウキウキと噴水近くの通りを歩いていた。

ヒールがあればこんな人混みでも探し物がしやすくなるかもしれない。少なくとも今のような圧迫感は減るはず!

そう思うと道具屋までの道のりもちょっと楽になる。


突然ラピスは顔を横に向けて鼻をクンクンとしたかと思うと、私の手をひいた。


「どうしたの?」


ラピスは向こうのほうを指差しながら、私を連れて行こうとする。


「そっちは人がたくさんだよ?」


ラピスの指差すほうは食べ物の露店がたくさん並んでいるあたりで、人が特に多い。

ラピスはしきりに鼻をクンクンとさせて何か訴えている。

私も鼻をクンクンとすると、いろいろな美味しそうな匂いがする。その中に、覚えのある香ばしい匂いが混ざっていることに気付いた。


「あの串焼きのお店、こっちの方にあるの?」


ラピスがうんうんと頷く。


「よく分かったね。じゃあ、買いに行こう」


私はラピスの案内で、無事にあの串焼きの露店を見つけることが出来た。

ラピスの嗅覚ってすごいかも。そんなスキルはなかったはずなのに、犬みたい。やっぱり美味しいもの限定の能力かなあ?


お肉を焼いている露店は他にもあるが、やっぱりあの串焼きの露店には人が並んでいた。

やっぱり人気あるんだなあ。

ラピスも行列にソワソワしながら並んでいる。


「あいよ、おまたせしました。お客さんは何本?」


「20本で」


「20かあ、それまた多いな。ちょっと待ってくれな」


赤メッシュのお兄さんは手際よくお肉を網に並べていく。

20本は多いかと思ったけど、ラピスのお気に入りのようなので、多めに買ってリングの中に入れておかないと。


「ここのラビ肉って美味しいですよね? 臭みがないし、柔らかいし」


「おう、下処理は工夫してるからな!」


「下処理って難しいんですか?」


「もしかして、お客さんも【料理】持ち?」


「はい、さっき取ったばかりでラビ肉焼いてみたんですけど、ひどい出来で」


「あはは、そうだな。モンスターの肉は普通の調理のつもりでは難しいかもな。下処理にはレシピがあるんだよ」


「レシピ?」


「この世界でも現実と全く同じ方法で料理することは出来るけど、この世界独自の材料を使うときはレシピを手に入れたほうが早くて確実だぞ」


「へ~」


料理にまでレシピが必要だなんて思ってなかった。確かに肉の状態ならまだしも見たことない草やモンスターは、一から調理方法を探るの大変だもんね。


「ほい、焼けた。20本で1000Gな。料理関係のレシピならあの通りの中程にある本屋でいくつか売ってるぞ」


「ありがとうございます!」


「別に大した情報じゃないからいいって。また、買いに来てくれよ」


「はい!」


串焼きを買いに来ただけだけど、それ以上にいいことが聞けた。

やっぱりこのお兄さん、見かけはチャラいけど仕事は丁寧ないい人だね。


ラピスに1本渡すとパアッと笑顔になって、勢い良くかぶりついた。ラピスはやっぱり満面の笑みで串焼きを食べている。

私の作ったものでもこんな風な顔で食べてくれるように頑張らないと。

私も一緒に1本食べると、残りの18本はリングの中に収納した。

収納するところをラピスがじっと見ていた気がするけど、気が付かないふりをしてさっさとしまってしまう。

これは料理がうまくいかなかった時に渡す用にするつもりなんだから。



お目当ての串焼き屋さんも見つかって満足した私たちは、まっすぐに道具屋に向かった。


「はい、いらっしゃいませ」


今日もあのお婆さんが出迎えてくれる。


「あら、あんたは昨日も来たお嬢さんだね? ありがとうね。ギルドに売ってくれたんだって?」


「はい、Cのポーションが作れたので20本だけですが売りました」


「そうかい、そうかい。ちょっとでも助かるよ。こんな短時間で作れるようになるなんてお嬢さんは見込みがあるようだね。そんなあんたにはこれをあげよう」


そう言って、お婆さんは1枚の紙を取り出した。

それを受けとると、光となって体に吸い込まれていきウインドウが1つ開いた。


────────────

報酬のレシピ(MPポーション)を手にいれました。

調薬のレシピにMPポーションが追加されます。

────────────


レシピの項目を開くと確かにMPポーションが増えていた。


「ありがとうございます。これでMPポーションに挑戦してみます」


「これも今品薄でね、作ることが出来たらまたぜひ生産ギルドに売っておくれ」


「え? それって」


嫌な予感がした途端、目の前にウインドウが出た。


───────────────────

緊急クエスト


MPポーション不足解消を手伝うため、緊急クエストを受けますか?(これには時間制限があります)

YES / NO


《詳細》

───────────────────


やっぱり……。

なんだか見覚えのあるウインドウに思わず苦笑いしそうになる。

とりあえずこれも詳細を見るしかないよね?


───────────────────

緊急クエスト


品質CのMPポーションを20本作り、生産ギルドで買い取りしてもらってください。(分割しての納品でも可)

買い取り価格は生産ギルドの買い取り価格のため1本300Gです。


報酬:レシピ(毒消し)


期限:今から24時間以内



ただし、このクエストはクリア出来なくてもペナルティはありません

────────────────────


うん、ポーションのときと条件は変わらない。

確かMPポーションも依頼がたくさん出ていた気がするけど、また報酬にレシピがもらえるならやった方がいいよね?

20本だけだもんね。頑張れば出来るかな?

私はYESを選択した。


「分かりました。ギルドに売れるように努力してみます」


「うんうん、お嬢さんなら出来ると思うよ」


「そうしたらお婆さん、ポーション瓶を100本ください」


こんなに買うと今度はポーション瓶が品薄にならないか心配になる。けど、今のところ個数制限されてないから大丈夫だよね?


「はいよ、100本ね。若い人が頑張る姿はいいねえ。お嬢さん、疲れた時にはこれでも食べな」


「飴?」


「いや、グミじゃよ。孫のお気に入りでね。このあたりでは一般的なおやつで私が作ったものだけど、おまけだと思って貰っておくれ」


「ありがとうございます」


───────────────

・ラーラーの実のグミ C

ラーラーの実の果汁を固めて出来たグミ。弾力があるが、一口サイズで食べやすい。

満腹度:微小

───────────────


ポーション瓶とグミを受け取ってお店を出ようとしたところで、ラピスが見ているものに気がついた。


「あ、あと食器もください」


食べかけのラビ肉をのせたままリングに収納しているから、調理道具セットにはいっていたお皿はもう無くなってるんだよね。

忘れたらフライパンのまま食べるはめになるところだった。

今後のためにいろんなサイズのお皿を大量に買って道具屋を出た。






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