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16 露店巡り

お昼ごはんを食べて再びログインした私は、報酬のレシピをもらうため道具屋に行くことにした。

もちろん行く途中で、あの串焼きの露店を探すのは忘れない。今回は見つかるといいなあ。


「すごいね?」


キョロキョロと回りを見渡すと露店の数は昨日よりも増えている。その分、買い物に集まっている人も多い。人が多くてなかなかどんな露店があるのかさえ見るのに一苦労する。

ラピスも美味しそうな匂いがするほうをキョロキョロとしている。迷子にならないように、しっかりと手を繋いでおかないと。

露店は今日も武器や防具が多いみたい。他にも素材らしきものなども売られていた。

冒険者ギルドで売るよりも露店のほうがやっぱりいいのかな?


ちらちらと覗きながら歩いていると、たまたま見た露店にポーションが置かれているのに気付いた。


───────────

・ポーション A

HPが30回復する

───────────


「え?」


品質Aのポーションが売られていた。Aは回復量が少し高いみたいだけど、値段もすごい。2000Gとなっている。さっきBを500で売ったのに、それに比べると格段に高い。

どうやったらAが出来るのだろう? このまますりつぶすタイミングを調節するだけで出来るのかな? それとも高いのは何か特別な材料を混ぜてるからかな?


「あの、すみません……」


「お! いらっしゃい!」


露店を開いている男の人にちょっと話を聞いてみたくて声をかけてみると、思ったよりもいい勢いで返事されて、ちょっと躊躇ってしまう。


「あ、このポーションなんですが……」


「それな、めずらしいだろ? 今ポーションなかなか手に入らないから貴重だぞ」


「あの、私、初めてAのポーション見て……」


「Aは作れる人が今のところ少ないらしいからな。2000Gでも安いくらいだろ? どう? いくつ欲しい?」


「いや、私、そうじゃなくて……」


「値切りか? うーん、俺としては貴重価値があるからあまり値下げはしたくないんだがなあ」


男の人はうーんと腕を組んで考えている仕草をする。あまりのマシンガントークになかなか私は話せない。


「まあ、あんた可愛いから1500Gでどう? お買い得だと思うぞ? ついでにこのベルトはどうだ? なかなかの出来だろ?」


「あの、いえ……」


「な? どれにする?」


思わず勢いに負けてごめんなさいと言って逃げたくなるが、Aを作れる人への興味が勝って少し声を張って聞いてみる。


「あの、違うんです! 私も【調薬】持っていて、今Bまでしか作れないので、話を聞いてみたかっただけなんです!」


「なんだ、買ってくれるんじゃないのか?」


「ごめんなさい!」


さっきまでの勢いがなくなり、なんだか悪い気がする。


「いや、まあいいけどさ。それ俺が作ったんじゃないんだ。防具のお代のかわりに渡されたものでさ」


「お代のかわり……」


「そうそう。1本1200Gの計算で交換したからな。それで、転売してるってわけさ」


転売……。

そっか、露店だとそういうことが出来ちゃうんだ。

生産ギルドでの売買は自分で作ったものに限るという条件がついていたから、思いもよらなかった。


もしかして、あのポーション大量購入の依頼って転売目的だったのかな? うーん、もしそうだったらなんだかイヤだなあ。自分がせっかく作ったものがお金儲けのために使われるって。あの依頼、1本の値段もあまり高くなかったし可能性あるよね? 今度から気を付けないと。


「まあ、儲けるためというより俺の作ったもの売るためなんだけどな。ポーションがあると客寄せにもなるって言われてさ。俺は皮製品を作っているんだけど、防具売ってる露店は多いからちょっとは目につくと思って置いてみたんだ」


確かに露店にはいろんな皮で出来た防具やベルト、ブーツなどが置かれていた。品質はBやAのものが多い。


「そうなんですね。ごめんなさい、私、今は防具は必要なくて」


「そういや、あんたの……」


ジーっと胸元を見られる。

え? 何急に? この人もアウトな人?

思わず反射的に両手で胸を隠してしまう。

私のその反応を見て、ラピスが私を守るように両手を広げて前に立った。


「ああ、違う違う! 誤解だ!」


お店の人が必死に手を振って否定するが、ラピスはキッと睨んだまま動こうとはしない。


「その胸当て見てたんだ! かなりデザインが凝っていて、珍しいなと思って観察しちまっただけで!」


なるほど、これ花のワンポイントまでついてるもんね。


「ラピス、ありがとう。この人悪い人なわけじゃないから大丈夫だよ」


私がラピスの頭を撫でると、ラピスは手を下ろしたがまだ疑うような表情をしたまま私を見上げる。

私がにっこり笑って頷くと、しぶしぶとした感じでまた隣に立った。

ラピスはえらいなあ。こんなに小さいのに守ろうとしてくれるんだね。


「ちょっと勘違いしてしまったみたいで、ごめんなさい。これ、妹から借りたんですけど、確かミーシャさんだったかな?の作品だとか」


「ミーシャさん!?」


お店の人のかなり驚いた様子に私のほうがびっくりしてしまう。


「知っているんですか?」


「そりゃあ、有名な防具職人だからな。たぶん今防具頼むなら彼女が1番だぞ」


「そんなすごい人なんですね」


「ああ、あんたいい妹いるんだな。妹に感謝しとけよ。まあ、そんな防具しているなら、確かに俺のはいらねえなあ」


お店の人は苦笑いしていた。

話しかけたのに何も買わないのは、悪いよね?

私はお店の商品を見渡すとひとつの手袋に目をつけた。


「これください」


──────────────

・ラビ皮の手袋 A

ラビの皮で作られた手袋。防御力はないが、柔らかいため手の動きを邪魔しない。

防御値 +1 器用値 +5

──────────────


採取するとき手が汚れたり、草によっては採るのに指が痛いような気がしていたからちょうどいいかも。


「これか?」


「はい」


「手袋ならもっと性能いいやつが、いっぱいあるぞ? ラビ皮なんてスキル練習のために作ったやつだから防御値低いしな」


確かに防御値+1は防具としては、低いよね。でも私の場合あまり戦うつもりはないから問題ないと思うし。


「店に並べる品数増やすために置いてたようなもので、値段が安いのならブラックウルフやCだけどバイオレンスホースの手袋も同じくらいの値段でもっと防御値が高いぞ」


このお店の人は本当に良い人だったらしく、そんなことを教えてくれる。


「これがいいんです」


他のは皮が固そうで、ガッシリしている。私としては草むしりするときの軍手感覚で使いたいからあまりたいそうなものは困ってしまう。


「そうか。ありがとうよ。じゃあ、おまけして1500Gでいいぞ」


「ありがとうございます」


私は手袋を購入した。装着してみると、思ったよりもフィットしていて指を動かしたりするのにも支障がない感じだった。


「あの、あとブーツなんですけど」


「おっ! ブーツも買ってくれるのか?」


「あ、え、買いたいは買いたいんですけど」


「お金か?」


「いえ、お金はまあ大丈夫なんですけど、あの……」


「ん? なんだ?」


「あの……ヒールつきってありますか?」


「ヒール?」


言ってしまった。

お店の人がキョトンとした顔をしている。

冒険者の装備にヒールってやっぱりダメなのかな?

でも、どうしても欲しかったんだよね。


「やっぱりないですよね?」


露店に並んでいるブーツはどれもペッタンコのものばかり。


「それって、回復魔法のヒールじゃなくて、ブーツのかかとを高くしたものが欲しいってことだよな」


「出来れば10㎝、低くても5㎝は高くしたものが欲しいんですけど」


私の姿を下から上へと見たと思ったら


「ぶははははっ!」


笑われてしまった。


「あんた面白いこと言うな。確かにあんた小さいから必要かもな」


「う……」


低めの椅子に腰掛けている人から見ても私が小さいことは明白らしい……。

でも笑わなくてもいいのに……。


「まあ、作ったことはないけど出来ても敏捷値や防御値にマイナス補整かかりそうだぞ」


「そういうものなんですね。それでもいいので作ってもらうことは出来ますか?」


マイナスになってもいい。

街中、特に今みたいに人混みを歩く時用にぜひとも欲しい!

VRゲームは12歳以上しか出来ないから私よりも小さい人なんてほとんどいない。必然的に埋もれてしまうから困っているんだよね。


「それらしいものは作れると思うぞ。ただヒールを作るとなると、【木工】持っている知り合いに聞いてみないと確かなことは言えないがな」


「ぜひお願いします!」


良かった。ヒールが手に入るかもしれない!


「分かった。女性プレイヤーに売れるかもしれないし、ちょっとやってみるかな。出来上がるメドがついたら、連絡いれようか?」


「はい、お願いします」


私はそうしてお店の人、マーシーさんとフレンド交換した。















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