15
ポーション作りのことで頭がいっぱいで、まだチュートリアルの途中だったということを忘れていた。
でも報酬のスキルポイントは嬉しい。これで念願の【料理】スキルを取ることができそう。
私とラピスは人の邪魔にならないように、生産ギルド内にあるソファに移動する。
「えーっと、スキルを取得するには……」
スキルウィンドウを表示して、【料理】を選択する。
────────────────
スキルポイント:10
【調薬 Lv4】【採取 Lv4】【鑑定 Lv5】【ダッシュ Lv2】【火魔法3】【料理 Lv1】
────────────────
いつの間にか【鑑定】のレベルが上がっていたみたいで、あと2つくらいスキルも取得できそう。
だけど、今すぐに取りたいのって言われると難しいなあ。
ポーション作りと料理するので今のところ時間なくなっちゃうもんね。
もう少し様子を見て考えようかな?
するとメニュー画面を閉じようとして精霊のアイコンが光っていることに気付いた。
─────────────
ラピスの取得可能スキルが増えました。
─────────────
「え?」
思わずラピスの顔を見るが、ラピスには私が何を見ているのか分からないみたいでキョトンとした顔で首を傾げる。
ラピスが取得可能となっていたのは、【索敵】や【速度上昇】などの他に【調薬補助】と【洗浄魔法】と書かれている。
生産補助のスキルは取得しにくいかもと聞いていたけど、ずっとポーション作りを手伝ってくれたおかげで取得可能になったみたい。でも、【洗浄魔法】って……ラピスに洗い物お願いしすぎたかなあ。
私は生産する時間が長いから、一緒にいるならやっぱり生産補助スキルあった方がいいよね?
【料理】も取得したから【洗浄魔法】があるとこれから便利だよね? でも、ずっとラピスに洗い物を任せるというのもなあ。
精霊がスキルポイントためるには精霊レベルを上げるしかないらしいので、私よりもスキルを取得しにくいんだよね。
これはどちらかと言うと私が取得したい。私も洗い物をたくさんすれば出るかな?
「うーん、どうしようか?」
ラピスがこちらを見て首を傾げる。
「あのね、ラピスもスキルがとれるみたいなんだけど、何が良いかなって思って」
ラピスはこちらをジーっと見ていた。
「うーん、私としては【調薬補助】か【洗浄魔法】かなと思っているんだけど、ラピスはやっぱり戦いのときに使うスキルの方がいいよね?」
ラピスは首を少し傾げて考えると首を横に振る。そして、左手でお椀の形を作り、右手を握りすりつぶす動きをする。
「ん? ちがうの? それは……調薬をやりたいってこと?」
ラピスは首を大きく縦に振った。
「ラピス真面目に手伝ってくれると思ったら興味があったんだね。採取は途中で飽きちゃってたのにね」
ラピスは少し恥ずかしそうにプイっと顔を反らした
「うふふ。じゃあ、【調薬補助】にしようね」
私は【調薬補助】を選択した。必要スキルポイントは5。
ラピスの精霊レベルは5と、私よりも高い。お陰で、ちゃんと取得できそう。
昨日ラピスかなりモンスター倒していたもんね。やっぱりモンスターを倒すほうが経験値たまるのかな?
──────────────
《精霊》
ラピス Lv5 親密度 55
【大剣 Lv5】【筋力強化 Lv5】【人間化 Lv3】【調薬補助 Lv1】
スキルポイント:0
──────────────
「よし、せっかくラピスがスキル取ったからポーション作ってみようか?」
ラピスが嬉しそうにしているので、再び生産スペースを1時間借りることにした。
品質Dの薬草でポーションを作る作業の続きをすることにする。
Dのポーションでも買ってくれる人がたくさんいることが分かったので、失敗しても問題ない。
ラピスは今まで、器具や材料を用意して手渡してくれたり、乳鉢を押さえてくれたりとお手伝いはしてくれていたが、すりつぶすなどの作業は出来なかった。
だけど、【調薬補助】をとったことで、すりつぶしたりろ過したりと調薬の作業が出来るようになったみたいだった。
これでラピス一人でポーションを作れるようになったのかと思ったけど、私が一緒に作業しないと手が出せないようだった。あくまでも補助というスキルということらしい。
でもこのスキルにより、流れ作業でポーションを作ることが出来るようになった。
私がすりつぶして鍋に入れて加熱し、ラピスが2回ろ過して瓶に注ぐ。洗い物も今度は私が担当する。あっという間に残っていた瓶すべて使いきってしまった。
出来たのはCのポーションが14本に、Dのポーションが5本。明らかにさっきまでよりも品質が良くなっている気がする。これはDの薬草を使うことに慣れてきたからか、それともやはりラピスの【調薬補助】の効果なのかな?
「よし、じゃあ料理もしてみよう!」
せっかくなので、昨日作ったのと同じラビ肉を焼いてみる。
昨日と同じくステーキくらいの大きさに切って塩コショウをふり、フライパンで焼く。
────────────────
・ラビ肉のステーキ E
ラビ肉を焼いたステーキ。味付けはしてあるが、臭みがあって固い。
満腹度:中
────────────────
よかった、今度はステーキと認識してもらえたみたい。
でも昨日と同じく品質はE。
やっぱり美味しくなさそう。
出来たステーキをラピスはキラキラした目で見ている。
明らかに味見を期待しているよね?
私は昨日のお肉を考えるとあまり食べたくない。
だけど、ラピスの表情を見ると食べずにリングの中に仕舞ってしまうわけにはいかない。
私が一口大に切り分けるとラピスはサッと手をだし口に入れた。
口を動かすたびに、やっぱりラピスの眉間にシワが強くなる。
私も一切れ、口にいれる。
うん。やっぱり固いし、くさい。【料理】があっても、味はあまり変わらなさそう。
「美味しくないね?」
ラピスは首を横にふるが、顔は不満そう。なんだか怒ってみえる顔で、もう一切れ食べようとする。
「もうダメだよ」
私は慌ててリングの中に仕舞う。
どうしてラピスはこの美味しくない料理をムキになって食べようとするのだろうか?
分からない。
不満そうな顔でリングを見つめるラピスを見ると、なんだか私が悪いことをしている気になる。
「もう1回作ってみるから。ね?」
私はラビ肉を先程と同じくらいの大きさに切り分けると、今度は包丁の背で軽く叩いてみる。
これでちょっとは柔らかくならないかな?
そして、昨日採取したときに摘んだハーブ類をみじん切りにして揉み込んでみる。
どれがいいのか分からないので適当に目についたハーブを5つくらい混ぜて使ってみる。
その後、いつものように塩コショウを強めにかけて焼いてみた。
匂いはいい感じかも?
─────────────
・ラビ肉のステーキ D
ラビ肉を焼いたステーキ。ハーブ類が使われおり、少し臭みがとれている。
満腹度:中
─────────────
「Dだ!」
ちょっとは品質が上がって、良かった。
昨日摘んだものが役に立ったみたい。手当たり次第に集めておいて良かったよ。
ラピスも期待した目で見ているので、さっそく一口大に切って食べてみる。
「ん……?」
臭みはハーブで誤魔化されたかもしれないけど、ハーブは選ばないといけないみたい。なんだか合わない風味が混ざっている。
肉の固さも少しは良くなったけど、まだまだパサパサしている。
「うーん? Dでも食べるにはまだまだだね」
ラピスの眉間のシワはさっきに比べると少しは良くなっているが、やっぱり固いせいかモゴモゴとしている。
今度も仕舞おうとすると不満そうな顔をするので、3切れだけ渡すことにした。ラピスは嬉しそうな顔をしていたけど、やっぱり食べにくそうだった。
まだまだ研究する必要がありそうだね。
ラピスが食べ終わるとちょうどスペースを借りていた時間が終わったので、出来たポーションを売却することにする。
現在Cのポーションが30本もあるので、掲示板を見てみると1本500Gの依頼は1件で、4本欲しいというものだった。それ以外はちょうど高い依頼はみんな取られてしまったタイミングだったのか、300G台の依頼しかない。
「うーん、どうしようか?」
せっかくだから高く売りたい。そう考えるとわざわざ今売らなくてもいいかなあって思っていると、ひとつの依頼が目についた。
1本320Gで20本の依頼。依頼人はヒロ。
さっき受けたDのポーションを20本欲しいって依頼の人だよね?
もしかして、依頼受けてもらえない可能性を考えて2つ同時に出してあったのかと思ったけど、依頼が出された時間は30分ほど前と書かれている。
ポーションって一度にそんなにたくさん必要なのかな?
もしかしたら私の記憶違いかもしれない。
さっき依頼を1度に4枚も持っていったので、勘違いしてるかもしれないよね。
なんとなく私はその依頼が気になり、その依頼も受けることにした。
24本のポーションを売って8400Gを受けとると1度ログアウトした。




