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10 初装備

1階のキッチンに向かうと、ちょうど茜が帰ってきたようだった。


「おかえり」


「ただいま~。お姉ちゃん、今日の晩御飯なーに?」


「うーん、急いでるからすぐに出来るパスタにしようかと思って」


「パスタか、いいね。でもなんで急いでるの?」


「うん、ちょっとすぐにSFOに戻りたいの」


「あ! お姉ちゃんもとうとう始めたんだね! どう? どう? 面白いでしょ?」


「うん、本当にすごい世界だよね。見た目も匂いも味も、現実と変わらないというかそれ以上に感じたよ」


「でしょでしょー♪ 一度やるとハマるよねえ」


私が御飯の準備している間、茜はカウンターの向こう側から身を乗りだしながらSFOの魅力を語る。


「ハマるかどうかは分からないけど、とりあえずクエストをこなそうと思って」


「クエスト? チュートリアルのこと?」


「それもやってるけど、緊急クエストってやつを受けたの」


「緊急クエスト! どんなやつ?」


「ポーションが足りないから、24時間以内にポーションを作って納品っていうのだったよ」


「【調薬】持ちじゃなきゃ受けられない内容だね。やっぱりポーション不足になってるんだ」


「そうみたい。さっき買いにいったら、1人2本までって言われたよ」


「2本!? ありえない……。いつもは制限かかっても10本だったのに」


茜はかなり衝撃を受けているようだった。


「そうなの? まあ、少ないなあとは思ったけど」


「そうだよ! 2本じゃまともに戦えないよ! 他の街ならまだ売ってるかな?」


「どうかな? 私じゃそれは分からないから」


「うーん、ほかでもそんなことになっていたら困るなあ。ちなみにお姉ちゃんそんなクエスト受けるってことは普通のポーションは作れたの?」


「ううん、それを作る練習するために急いで戻ろうと思ったの。薬草集めからしないといけないから時間かかると思うし」


「そうなんだ。じゃあ、薬草あつめ私も手伝ってあげる。はじまりの街近くの薬草の場所なら、私もだいたい知ってるしお姉ちゃんが薬草摘んでる間の見張りするよ」


「いいの?」


茜がついて来てくれるなら、街の外に出るのも心配ないかも。さすがに初めての戦闘は不安だったんだよね。まあ、【ダッシュ】で乗り切る気満々だったけどね。


「うん。今日はパーティーメンバー集まるの遅い予定だし、お姉ちゃんがポーション作れるようになると私も助かるからね。じゃあ、急いで食べちゃおう」


「あ、もう少し待ってサラダも作るから」


「じゃあ、こっちの盛り付け手伝うよ。急がないと夜時間になっちゃう」


「夜時間?」


「SFOでは8~12時は夜時間で暗くなっちゃうんだよ」


そういえばSFOにも夜があるんだった。1日は12時間だから、0~8時が昼、8時~12時が夜、12時~20時が昼、20時~24時が夜ということらしい。


「あの辺りのモンスターなら夜限定のモンスターとかでも私は問題ないけど、お姉ちゃんは暗いと採取出来ないんじゃない? 【夜目】とかとった?」


「とってない」


夜活動するにはそんなスキルまでいるんだ。


「じゃあ、やっぱり8時までには採取を終えないと。ほら、食べよう」


茜はパスタとスープとサラダを並べると、さっそく食べはじめた。私も茜に急かされながらのご飯となった。








ログインすると、茜に言われたとおり待ち合わせの東門へ向かう。もちろんラピスを召喚することは今回は忘れてない。今は小さいままで私の左肩に乗っている。

これはこれでお人形みたいで可愛いよね。


東門の辺りにも人が立っていたが、噴水のあたりに比べると疎らである。ほとんどの人たちは立ち止まらず門を通りすぎていく。

立っているのは、私みたいに待ち合わせの人たちくらいなのかな?


茜に聞いたのは東門前で待っているから赤い鎧の人を探してということ。顔はいじってないから、すぐに分かるはずと言われたんだけど……いた!

だけどこれは……赤い鎧というより、赤い人だよ。


「茜?」


「お姉ちゃん!」


茜は確かに赤い鎧を着ていた。だけど、髪も赤く瞳の色まで赤くて目立つ。鎧の色に比べると、髪はオレンジがかった茜色で、瞳は深紅といった深い色だから同じ赤一色というわけではないので、変ではない。鎧のしたのインナーは黒で、少し短めのフレアスカートもバランスがとれていて似合っている。

髪は高めの位置でポニーテールにしていて、ベテラン冒険者といった雰囲気だ。茜をチラチラ見ている人がいるのも分かる。茜は身長高いからそんな格好をしても様になっている。なんで1歳しか違わない姉妹なのに、身長は10㎝以上も差が出てしまったのだろうか……。

私は思わず遠い目をしそうになる。


「お姉ちゃん、見事に初期装備なんだね」


「まだ装備品を見て回っている時間がなくてね。胸当てくらいは買うつもりなんだけど」


「それならこれ良かったら使ってよ」


茜は1つの装備を取り出した。


──────────────────

・ラビ皮の胸当て C

ラビの皮でできた柔らかい胸当て。縫製は丁寧でワンポイントに花の型押しがされているのだが、防御力は高くない。

防御値 +7

──────────────────


「私が最初のころ使ってた装備なんだけどね。この桜模様が気に入って買ったの。今じゃ人気の防具職人のミーシャさんの作品だから、売らずにずっと持っていたんだよね。綺麗でしょ?」


「確かに素敵だね。いいの?」


パッと見は茶色の普通に胸当てだが、ベージュの縁取りがきちんとされており、肩近くに桜模様が入っている。かなりセンスがいい胸当てに見える。


「うん、記念に持っていたけど使ってくれる人がいるならそのほうがいいだろうしね」


「茜、ありがとう。使わせてもらうね」


胸当てを装備してみる。サイズは自動で調節されるらしくピッタリと合っている。

だけど、ピッタリ過ぎてかえってこれ胸が目立つ気がするんだけど……アリスさん、胸当てをつければいいって言ってたよね?

私は腰をひねったり、腕を回したりして感覚を確かめる。

確かに固定されて動くのには支障なくなってるのかな?


「なんか、不条理だ……」


「?」


茜がジト目でこちらを見ていた。


「全く同じものに見えない。ズルい!」


茜の視線が胸当てに完全に定まっている。


「あ、茜? これ、やっぱり返そうか? 私似合わないみたいだし」


茜の雰囲気が怖くて思わず装備からはずそうとする。


「それはダメ! なんか負けた気がするもん。それにお姉ちゃん似合っていないわけじゃないよ。むしろ羨ましい感じだよ」


茜はハアーと溜息を1つついた。


「うん、それぜひ使ってね」


「……そう?」


そんなに胸に注目されるとかえって使いにくい。

あとで別のもの探しに行こうかな?


「この胸当てって柔らかくて装着感は抜群なんだよ。別のに変えるならこれ以上のやつじゃなきゃ認めないからね」


これを絶対に使えということみたい。

うーん、他の装備がどういうもなのか知らないけど、茜がそんなに薦めるってことは本当にいいものなんだろう。


「じゃあ、使わせてもらうね。茜ありがとう」


「うん。それと私、ここではスカーレットって名前だから」


「私はリーフだよ」


茜あらためスカーレットとフレンド交換すると、二人で東の門を抜けた。



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