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第一巻 『四話』 病室という名の監獄

短編ですが事実上、[第一巻]の後始末です。

ここはどこだ…………




僕は何をしてたんだ



「…んっ……」



頬を誰か触った...


「ねぇ〜、フィネ見た?さっきの!!

今、ピクンってしたよ!」


「慌てるな、柚華

病人にくちなしだ。

今のうちに仕上げるぞ!」



僕は死人じゃない


「髪とかアップにしたらどうかな〜、

意外に似合うかも………」


アップ....?


「わたし的には、後ろで小さく結ぶのも悪くない……

もちろん、ツインだが」



ツインテール?


「やっぱり……服かな?

少し、ヒラヒラの…」



「ひとまず、ウチの制服着せるか?

予備のスカートまでバッチリあるぞ。」


スカート?誰に



「フィネのところ、制服可愛いもんね。

きっと似合うよ!」



「たぶん...わたしよりもな。」


二人は由貴の顔をじっくり見て...


「「流石、女顔...」」




そう、女顔♪




「誰がぁ!女顔だ!!」


由貴が勢い良く、ベッドから起き上がる。


「ひゃっ」と可愛らしく驚く柚華と、

少しも驚いた様子がないフィネ。


「フィネ、何だか顔がベトベトしてるんだけど」


由貴が自分の頬を触りながら、質問する。


「乳液だ、気にするな!」



「楠瀬さん、僕が着ている服....

あなたも着てません?」」



由貴が着ているのは、

一般的な公立高校に使われている思われるセーラー服。


「だって、学校に行く前来ただから当たり前じゃないですか」




「僕は....


女の子じゃなっ………...」


柚華の持つ鏡に映る自分。



制服を着た『天使』がこちらを見て可愛らしく、怒っていた。


僕の馬鹿......




ひとまず、柚華たちを病室から追い出しTシャツに着がえた


どうやら、僕は病院にいるらしい。あの後、柚華に大量の生気を吸収された僕はぶっ倒れ、


二日間は昏睡状態で言わば、危険な毎日を過ごしていたことになる。


まぁ、実際は着せ替え人形にして遊ばれてたという、

不名誉な2日間だ。


冒頭で僕が着ていた制服を見ればわかるだろう


あの後、柚華を問いつめようとしたところ、フィネが.....


「柚華のファーストキスを奪ったくせに」


フィネは由貴の耳元でぼそりと呟くと不敵な笑いを浮かべて、

病室をでていった。


思わず、由貴は顔を真っ赤にして背けた。


事実、あれは反射的にやったことで由貴自身、

意識したわけじゃない。


けど、奪ったのは僕…


柚華はそのことを知らずに、

[公館]とか云う組織が運営する病院をかつぎこまれた。



レガツィオーネ[公館]とは魔術社会においての政府みたいなものらしい。


フィネから言うには、

昔ほどの力はないが粒揃いで、

頭の硬い奴らしかいないそうだ。



その人たちがフィネたちに依頼し、

今回のようなことが起こったそうだ。


[土葬]のジェニーオと[悪魔憑き]のアルジネは

[公館]にとってなかなかの脅威だった。


教会としても、手こずっていた魔術師を討伐したと、

若い魔術師にしては高めの奨励金が支払われた


ボロボロになった教会の修繕費にあてるのでほとんど、残らないが......


事実、教会は人が住める環境ではない。

壁という壁には穴があき、

ステンドガラスは飛び散っていた。


一般世間では、ガス漏れによる爆発事故となっている




「ふぅ……」


入院生活とは暇なものだ

一日中ベッドに縛り付けられ、塩分控えめの昼食を食べ、

たまに来る看護婦さんと些細な会話をしたり……


時間がここまで僕を苦しめるとは.....



「ところで、何であんな所にいたのよ!」


泰治と一緒にお見舞いと称して遊びに来た、

瑞穂がありきたりな質問をした。


「楠瀬さんもいたんだろ!

俺の由貴に楠瀬さんが告白するために呼び込んだとか.....」


パイプ椅子に座った泰治が由貴の答えた。


「え!、わたしは一緒に買い物に行けなかった懺悔のために.....」


えらく、ピンポイントな意見を言ったのは詩織だ。


どうやら、三人は学校帰りにここに来てくれたらしい。


まぁ、僕を心配するきはないだろうが…


「楠瀬さんも、一昨日入院したらしいよ。

何か、検査入院みたいの」


「ああ、一昨日のガス爆発事故に巻きこまれて、

そのまま入院したんだろ!」


「けど、昨日、今日って学校に来てたんだから


意外に大丈夫だったんじゃねーの!

どっかの女顔と違って....」


瑞穂がしれっとした顔で呟いた。


「瑞穂、それって僕のこと言ってる....?」


「いんや、詩織を心配させて泣かせた、どこかのアホだ。」


それを聞いて、不安そうな顔をしている詩織を見上げて...


「詩織....ありがとう

一昨日は本当にごめん」


いくら何でも、楠瀬さんにキスして倒れちゃいましたなんていえないからな。


「いいよ、わたしは由貴が無事なら」


彼女は小さく微笑んだ


「詩織......」



「何か、あたしたちって邪魔?

ねぇ、泰治?」


「甘い時間を邪魔しちゃあ悪いな、瑞穂!」


「「じゃあ、お先に!」」



二人はそそくさと帰ってしまった。


「瑞穂ちゃん、どこ行ったんだろ?」


詩織はというと、何故二人が帰ったのかわからない様子だ。



「じゃあユキちゃん、着がえよ♪」


「へっ?」


「だって、今日意識が戻ったんでしょ?

やっぱり、服とか清潔にしとなきゃ!」


詩織にしてみれば由貴のことを考えた行動なのだろう。

しかし、由貴は柚華たちにある意味清潔に保たれていた。


「い、いいよ

僕、さっき着がえたばっかりだし…」


「嘘ばっかり....

ユキちゃんのためにわざわざ、着がえ持ってきたのに.....」


詩織が大きな紙袋から、畳まれた服を出した。


あれ?それはウチの学校のセーラー服じゃないか(本日二着目)


「ユキちゃんの箪笥を開けたらこんな物が……」


詩織が持ってきた着がえを手に取ると.....


「ワンピース、スカート…ネグリジェ!?

詩織、僕がいつ女装趣味なったんだ。」


「わたしが、似合うと思って少し前から......」


何故、そこで泣き出しそうな顔をする!


「…ユキちゃんのご飯に女性ホルモン剤を.....」


この体と顔は詩織が創り出し....


「…いれなくても、由貴ちゃんが勝手に可愛くなっちゃうんだもん!!」


……、


「どうしたの?ユキちゃん」


「いや、別に。

自分の顔が死んだ両親から受け継いだものでよかったなぁって…」


由貴自身、喜んでいいのか微妙だったが何となく安心した由貴だった。




「こんにちは〜由貴くん


お見舞いの品を持ってきたよ〜!」


突然、ドアが開いた。


「あ、柚華ちゃん!

どうしだの?ユキちゃんのお見舞い!」


詩織は少し、柚華に対して冷たい態度をとっている


泰治の告白発言が引っかかっているのだろう。


「朝に一回来たんだけど、由貴くんに追い出されちゃって♪」


詩織の額からビキっと何か切れたような音がした


「へぇ、じゃあ何で来たの」


「由貴くんが入院したのって、私のせいだから...」


柚華が申し訳なさそうに顔を伏せた。

その姿を見て少しだけ、胸がキュンとしてしまった二人


「わたしの唇を由貴くんが……あうっ!」


由貴はポッと顔を真っ赤にして話す柚華を、

ネグリジェでぶっ叩いた。


「痛いよ〜由貴くん、何で叩くの」


「柚華ちゃん、その話……」


「楠瀬さん、自らぼろを出さないでくれ.....

僕が被害を被るから…」


「まぁ、気にせず、気にせず♪

由貴くんに買ってきたプリンだけど、詩織ちゃんもどう?」


小さなコンビニの袋からホイップクリームつきのプリンを取り出す。


「え、柚華ちゃんありがとう!

ほら、柚華ちゃんも!」


詩織は気をよくして、

もう一つのプリンをずずっと前に出した。


「美味しい〜!さすが、398円のプリンだけにあるね!」


「柚華ちゃん、最高!

わたし、スッゴい幸せ!!」


二人の女子高生はキャッ、キャッと二つのプリンを食べている。


「当事者である僕の分はないのか?」


ハッとした柚華に、プリンをすべて胃に流しこむ詩織。


「ユキちゃん、もうないみたい....」


ケッ、五倍速で食ったのはアンタだろ!


「食べかけだけど……、

由貴ちゃんも食べる?」


柚華がプリンをひとすくい、

差し出した。


『はむっ』


由貴は首を伸ばすと、

そのままスプーンごとプリンを味わった。

「ん、なかなか!」


「ゆ、ユキちゃん!?」


両手をグッと握りしめる詩織。


「今、柚華ちゃんと間接キスしたでしょ!」


由貴はおもわず舐めていたスプーンを吐き出した。


「ゲホッ、何言うんだ!

別にお互いに意識してないんだから!」


「そうだよ、わたしは間接キスよりも......」


もじもじと俯きかげんで呟く柚華。

おい、逆に誤解をうけるぞ


「そんなことどうでもいいの!!

ユキちゃんの純潔が〜!!」


とうとう、詩織は泣き崩れてしまった。


由貴のファーストキスは既に終えたことを知らずに...




「う〜、お手洗いに行ってくるぅ」


散々わめき散らした詩織は

涙でベトベトになった顔を直しにトイレに向かった。


「わたしがいない間に何かしたら、だめだからね!」


いや、流石に何も起こらないだろう。


「由貴くん、ちょっとしたお願いがあるんだけど...」


「ん、なに?」


「よいしょっと…」


柚華はベッドによじ登った。


「柚華、どうしたんだ?」


「由貴くん知ってる?


わたしが最初に由貴から精気を吸い取った時、

何故意識を失ったか...」


柚華はちょうど、柚華の腰あたりを跨ぐ


「由貴くんが宿した、

天使憑き[チェレスティアーレ]の自衛本能がわたしを拒否した。


だから、わたしにエネルグーメン[悪魔憑き]がバグったの」


柚華は由貴を跨ぐと、グッとからだを近づけてきた。


顔は彼女の瞳に顔が映るぐらい近づいている


「けど、今の由貴くんはわたしを拒否したりしないよね?


だって、わたしを助けたんだから.....」


柚華は目を閉じて、両手を由貴の頬に添えた


「病み上がりだから、何か足らないみたい.....」


由貴の唇に重ねられた


「んっ...」


柚華は唇を放すつもりはないらしい。

由貴の意識が霞む.....



「まさに、羊の皮を被った狼と狼の皮を被った羊だな」



「「……。え!?」」


柚華も思わず唇を離して、パイプいすに腰掛けるフィネを見た


「気にせず、グッとやってくれ

私に構わず」


イヤイヤ、お酒じゃあないんだから

いつから居たんだフィネ....


「彼女が部屋を出たすぐ後かな…


うちの学院は七時限制だから、少し遅れてしまったが.....


結果的に狼に襲われる仔羊を見れたなら良しとするか!」



満足感に満ち溢れた笑顔を向けられても困るよ…フィネ。


それまで、一言も口を開かなかった柚華がポツリと呟く


「なんで邪魔するの」


柚華ね背中では[悪魔憑き]の象徴である光の結晶のような翼が構成されている


服を透けて構成される物質は一つ一つが光を放ち、揺らいでいた。


「これは私にとって、必要な行為なの!

フィネだって、知ってるでしょ」


強気に出た柚華だったが、一方のフィネのニヤニヤは止まらない。


「抗発的な態度に出ても無駄だ。


一週間に一度、体に触れているくらいで平気だった柚華が


由貴の唇まで奪ってまで、

その行為を続ける理由....」


フィネは右手を柚華にかざすと、


「皆まで言わせる気か!!」


[悪魔憑き]が気のせいか、赤いような気がする。

柚華は由貴の上で正座をすると、


「……イジワル.....」


フィネに対して頭を下げた。


「ところで由貴、

わたしたちは教会が壊れた今、住むところがない……。


そこでだ!由貴の家は何というか、いろいろと余裕がありそうだ。


居候させてほしい!」



……ハイ?


「ちょっと!わたしも聞いてないかも!!」


柚華も流石にビックリしているようだ。

あまり動かれると痛いんだけど....


「確かに、両親が死んだ今、部屋のほとんどは使ってないけど.....


流石に、一緒に暮らすのはどうかと思うよ」


部屋はほとんどが空き部屋なのは事実だ。

自室とキッチンさえあれば生活できる


けど、それとは別問題だ


「断るつもりか由貴。


家族である柚華に手をだしといて、

自分の罪から逃げる気か!」


「いや別に、逃げるとか…」


ただ、あの幼なじみが何と言うか......


「これは罪を償うチャンスだ!由貴。


ここで彼女に手を差し出すことが自分の使命ではないのか」


……



「その沈黙はイエスとみていいな」


不適に笑うフィネね右手には柚華の襟を掴んでいた


「ほら、用が済んだから帰ろうか柚華。

ここにいる必要はない」


さっさと病室を出て行くフィネを、慌てて追いかける柚華。


「え、わたし的にはまだ物足りないんだけど〜!」


結局、何しに来たんだよフィネ


そういえば、フィネって修道女(シスター)だったんだな…

ああ見えて.....






世の中って不条理だーー!!

少し、力関係が垣間見えたかも.....

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