第2話「忌子養兵学校」
おれの名前は愁だ。
としは5さい。
みょう字は大てい国のトップの人がつけてくれるらしいから、おれにはまだない。
おれの母さんはせんそうでしんじゃったらしい。
父さんも元そうたいちょうでえらい人だったらしい。
おれは今、“忌子養兵学校”の前にいる。
おれは今日からここに通う。
人はみんなおれを見てヒソヒソ話するんだ。
少しだけ聞こえたのは「キコね。」「お父様はイダイな人なのに、どうして。」
キコっていうのはおれみたいな子供のことを言うらしい。
イダイはすごい人ってこと。
大じょうぶ、ちゃんとべんきょうしてるよ父さん。
おれはリョウに入るからしばらく父さんと会えないんだって。
大じょうぶおれはつよいから!
泣いたりなんてかっこわるいことしないよ。
さみしくなんかないよ。
大じょうぶ。
おれは、つよいから。
「どうかしたの?」
門のまえでとまっていたおれに声をかけたのは、女の人だった。
メガネをかけてて、みじかい赤っぽい色のかみをしてる。
おれはえがおで自己しょうかいをする。
だって、そうするように父さんに言われたから。
「はじめまして。おれは愁と言います。今日からここへ通うように言われてきました。」
「そう。私は黒波シズカよ。教室へ案内するわ。」
「よろしくおねがいします。」
くろなみさんの後ろについて歩いていく。
付いた教室は“1”。
中に入るとみんながおれの方を向いた。
何人かはめずらしそうにおれをみてて、何人かは少しだけおびえてた。
くろなみさんは大きな机の後ろに立って、おれたちを見下ろした。
おれは空いているまどがわの1ばんうしろの席に座った。
「おまえ、おもしろいかみしてるな!」
話しかけてきたのは、おれのみぎがわに座る男の子だった。
“おもしろいかみ”とはおれのひだりがわのかみのことをいっているのだろうか?
「これのことか?」
ひだりのかみをもち上げながら聞いてみた。
すると男の子はそうだと言わんばかりに首をたてにふった。
「これは生まれつきだ。赤色は父さんの色で、白色は母さんの色だ。」
「へぇ・・・そうなのか!おれはぜんぶかあさんのいろなんだ!」
「そうか。きれいな色だな。」
「だろ!」
そういって笑う男の子のかみの色は赤にちかいピンク色をしていた。
光のかげんによってすこし色がかわっていくのがおもしろい。
「なあ!おまえ、なまえはなんて言うんだ?」
「愁だ。」
「しゅう?よろしくな!愁!おれは響希って言うんだ!」
「よろしくな、響希。」
彼は響希というらしい。
とても明るくてひとなつっこいっていうのかな。
教室の中はしずまりかえっていて、話しているのはおれと響希だけだった。
すると、おれのまえに座っていた女の子がふりかえる。
きれいな黒色のかみの女の子だ。
「ごめんね。話、きいてたんだ。わたしは夏美っていうの、よろしく。」
「おれは響希だ!夏美、よろしくな!」
「おれは愁、よろしくな、夏美。」
「うん!響希、愁、よろしく!」
少しだけおびえながら自己しょうかいをしてくれた子は夏美というらしい。
それからクラスのみんなはおれたちに自己しょうかいをはじめた。
はなしてみるとみんな元気ないい子みたいだ。
って、おれもおなじとしぐらいなんだけどなー。
ふとまえをみるとくろなみさんがすごくつめたい目をしていた。
きらいなものを見るみたいな目をしてた。
・・・どうしてだろう。
するとくろなみさんはおれと目があったときにさっと目をそらして、にっこり笑った。
「はい!皆、一回席について。・・・私の名前は黒波シズカ。このクラスの担任の先生よ。
皆には、魔法の使い方や身体能力を教えていきます。よろしくね!」
『よろしくおねがいしまーす!』
みんなは知らないんだ。
くろなみせんせいが、おれたちのことをつめたい目で見ていたことを。
知ってるのはおれだけなんだ・・・。
うん。きめた。
おれはあの人にはあんまり近づかないようにしよう。
父さんが言ってたんだ。
「あの学校の先生はお前たちをいい目で見ない。先生が少しでも怖いと感じたら、近づくな。」
って。いい目っていうのはあの目じゃない。
ひとりでがんばってべんきょうしよう。




