第1話「忌子」
子供が生まれた。
男の子が。
けれど、
――――両親以外は、誰も祝福しなかった。
その男の子は“愁”と名付けられた。
しかし、周りの人は愁と呼ばない。
人は皆、その男の子のことを“忌子”と呼ぶ。
なぜなら
“禁忌の子”だから。
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愁の父は元東魔軍総隊長、黒鉄悠。
母は元西魔軍部隊長、サラ=ウォーカー。
彼らの住む国はとても面倒な国だと言えるだろう。
島はドーナツ状になっていて、3つの国が領地を3等分している。
北側にある国は中央魔法黄国といい、西側に所属する国を西洋魔法蒼国という。
そして彼らの住む国は東洋魔法紅国。
この3つの国は非常に相性が悪い。
というのも、国の雰囲気や人種までもが違っている。
そして何よりも、ここは国同士で戦争を起こす国。
国がドーナツ状であり、その中央に小さな島がある。
その島の名は鬼島。
そこは人ならざるものが住む島。
3国はその人ならざるもの――邪鬼――を倒すべく、日々訓練を重ねている。
しかし、3国は邪鬼を倒すのに協力などするはずもなかった。
どの国がより優れているのか、倒すことで力の差を示してきた。
倒すべき相手が邪鬼だけではないのだ。
自国のために、ほかの国の兵をも殺すのだ。
戦争嫌いの人々は言う、「戦争など虚しいだけだ。人の命を軽んじるな。」と。
戦争する人々は言う、「戦争こそ全てだ。力を示せ。」と。
この島の人間の8割が戦争を望んでいる。
残りの2割は戦争とは無縁の生活を望んで、関わらないようにひっそりと暮らしている。
愁たち家族は後者だった。
国には厳しい法律があった。
彼らはその法律に触れていた。
【他軍の人間と婚姻を結ぶな。】という法律を。
だが彼らは幸せだった。
周りからどんな目で見られようと、彼らは、強かった。
あの日までは。
愁が生まれてまもなく、サラは戦場に呼ばれた。
彼女は引退した身だったが、上には逆らえず彼女は戦場に赴いた。
帰ってきたのは、冷たくなった彼女の体だった。
悠は悲しんだ。
酷く、悲しんだ。
しかし彼をその絶望から救ったのは唯一の息子、愁の存在だった。
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愁の成長は目覚しかった。
身体能力や魔法に関しては両親の血を受け継いだのか、とても優秀だった。
父、悠は身体能力に優れ。母、サラは魔法に長けていた。
そして見た目も両親の血を継いでいた。
父譲りの赤い髪と瞳、母譲りの端正な顔立ちと左髪の一部が母譲りの白い髪。
3歳になった愁はそこらの兵よりも強いかもしれない。
彼はそう思っていた。
悠が教えたことを愁は一生懸命に真似する。
微笑ましい親子の風景だが、その風景がいつまでも続くはずがなかった。




