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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

寂しがりのパレット

作者: 獣毛

短編を出来るだけ本気出して書いてみますた。しかしかなりの処女作となっております。お許しを……

 ――っ……

 ……んぅ。あれ?どこなんだろう、ここは。それに一切の記憶がない。

 自分の名前、住所、年、ここが何処かさえ分からない。

 有るのは黒。辺りを覆い尽くす、黒い絵の具の入ったバケツをひっくり返したような、黒。無機質で、光や暖かみがない。空虚な世界。

 そんな黒く塗りつぶされたキャンバスに、ポタンと垂らされた白い一滴。それが私。小さな体に見合わない、丈の長い真っ白なワンピースに、周りの黒よりほんの少し明るい、ながい黒髪。ながすぎる黒髪は、今にも周りにとけてしまいそうだ。

 風も、音もない。光もない。だけど私は見えている。確かにここにいる。空虚な中にも、確かに息遣いを感じる。しかし、空虚な世界と私の息が捕色調和され、私の恐怖は引き立てられてしまう。誰もいない、帰る場所もない、色とりどりの恐怖が混ざり合い、私を飲み込もうとしている。私の真っ白なキャンバスも、真っ黒に塗りつぶされてしまいそうだった。


 ポトリ、一滴の白が生まれる。よく見えない、しかし、確かに暖かい何か。

 私は走り出す。一つの白い点に向かって、この空虚でしかないだけの世界に、新たな白が生まれたのだ。だから必死に、安心できる場所を求めて走る。少しずつ、点は大きくなっていく。まだか、まだかという思いが胸の中で膨らんでいく。点はもうすぐそこだった。しかし、私の足はそこで止まる。その、暖かみのかけらもない、大きな異形を目の当たりにして。

 その異形は、人のパーツのようなものがくっついていて、SF映画で見るエイリアンのような形をしている。のっそり、のっそりと動いて、真っ白でぬめりのある体をひねって、獲物を探しているようだった。


――逃げないと。

 私は本能的に走りだした。この異形に見つかれば勝ち目など無いだろう。殺される、逃げないと殺される。息が上がっても走り続ける。しかし、途中で何かに足を取られ、倒れてしまった。

 起きあがり、後ろを振り返った私は、異形と目が合ってしまった。異形は、まるで水が滴るような早さで向かってくる。早く、早く逃げなくては……しかし、足を何かできってしまったようで、痛くて足が動かない。足からは、絵具のように赤い血がぽたぽたと筋を描いて滴り落ちていた。そして、足元に出来た小さな血だまりの中に、何かを見つける――


――ふ……で……?

 そう、それは絵筆だった。何処にでもあるような、柄が木でできた、小さな絵筆。筆先は私のながした赤い血で染まっていた。

 こんなもの、役に立つなんて思わないかもしれない。しかし、私は確かに感じた――この絵筆の、不思議な力を、その力強さを。

 私は絵筆を手に取り、筆先で異形を切りつける。するとどうだろう、異形の身体は切り裂かれ、中から色とりどりの絵具が……いや、体液が溢れだす。少し気味が悪いが、まともに戦えるようになったのは大きい。私は異形が動かなくなるまで切りつけた。そうすることで、安心できた。





 異形は次から次へと現れた。しかし、この絵筆があればもうへっちゃらだ。黒いキャンバスに、真っ赤な絵筆で線を引く。白からあふれる色とりどりの体液で、黒い空虚なキャンバスはカラフルに染まっていく。私の白いワンピースも、青、黄色、緑、オレンジ、ピンク……数えきれないほどの色で綺麗に染め上げられていく。

 しかし、白から溢れる絵具は穢れていた。ねっとりとしていて、指ですくって、指をくっつけたり、離したりすると、いやらしい糸を引きながら、ぽとっぽとっと滴り落ちる。いやらしく絡みつく、まとわりつく、見た目だけの穢れた血。

 奴らは全く綺麗じゃない。見た目で誤魔化した、穢れた白い化け物。あぁ、許せない。私は綺麗な白なのに、あいつらと同じ色だなんて。次から次へと現れる、穢れた白い異形を見て、私はそう思った。




――楽しい。そう、この場所に楽しさを見出していた。時間を忘れ駆け回り、穢れた異形たちを切り刻む。その行為を繰り返すたびに、計り知れない多幸感が生まれる。

 しかし、彩られた時間も長くは続かない。だからまたほしくなる、もっと、もっと、色が欲しくなる。白だけなんて地味、もっと幸せな色が欲しい。

 色彩豊かになれば私だって変われるはずだ。この世界だって変わるはずだ。もっと、もっと、色が欲しくなった。だから、次から次へと異形を殺していった。もはやそこに満足なんてものはなかった。ただただ殺し、色を求めた。私は一つの作品の究極の完成形を求めていたのだ。

 なのに、満足できない。奴らの穢れた色だけじゃ満足できない。ほかに、ほかに綺麗な色、もっと明るい色が欲しい。新鮮で、綺麗な澄んだ色――




――あるじゃない、ここに。

 私は絵筆をもつ手に力を込める。そしてそれを自分の足に突き立てる。絵筆はもはや筆ではなくなり、筆先はパレットナイフになっていた。

グシャッ、グシャッ、グシャッ

 様々な色が混ざり、真っ黒になってしまったワンピースを塗り替えることはもうできなかった。分かっているんだ。もう遅いと。私の心も、黒く染まってしまっていると。

 しかし、私の腕は止まらない。穢れたままなんて絶対にいやだ。空虚なままなんて絶対にいやだ。腕を切り、腹をえぐり、首元をかききった。全身真っ赤に染まり、視界も真っ赤に染まっていく。それでもワンピースは染まらない。綺麗な色には戻らない――


 わたしは少し殺し過ぎたのかもしれない。本当に穢れていた空虚な色は、私だったのかもしれない。血で赤に染まったまま、私は空虚にぽつりとつぶやく。

――わたし、ここで死んじゃうのね……

 耳元で、誰かが囁いたような気がした。誰か、優しい声。

……お願いだから……目を……覚まして……

 誰だろう。でもごめんなさい。私、もう死んでしまうの……

……がんばれ!がんばるんだ……

 がんばったって、どうせいいことないじゃん。みんなあの異形といっしょ。みためだけごまかして、こころのなかではけがれためでわたしをみてる……きっとそう……

……ほんとうにごめんなさい……こんなことになるなんておもわなかったの……ゆるして……おねがい……めあけて……

 なんで、いまさらあやまるの……もうおそいよ……

……起きろ!約束したじゃないか!俺とお祭り行くって!

 ……お祭り……そうだ、私、絶対にあきらめないって、お祭り行く約束したから、絶対死なないって……行かなきゃ!




――おい……

――おい、ま……

――おい、マリ、しっかりしろ!

「……お父……さん」

「良かった!本当に生きててくれてよかった!マリ……マリ……」

「本当にごめんなさい……マリちゃん……私っ、私っ……」

 そうだ、思い出した。私は学校で屋上から飛び降りたんだ。もうこの世界に居るのが耐えられなくなって、もう死のうって……




 私は小学校低学年のころから虐められていて、先生や他の大人達からも冷たくされていた。だけど、ミツルはいつも私の見方になってくれた。だから、勇気を出して、ミツルとお祭りに行く約束をしたんだ。絶対一緒に行こうねって。なのに……私は……

「絶対信じてた。お前が帰ってくるの。だって約束しただろ?お祭り行くって。」

 ミツルが私の手を握ってくる。とても温かい、安らぎを与えてくれる、力強い手。私はその手を握り返す。

「ミツルがいてくれたおかげなんだよ、私が帰ってこられたの。」

 ミツルが照れながら言う。

「なんだよ、それ。お前の両親や、学校の奴らだって、駆けつけてきてくれたんだぜ?」

 気がつくと、私の周りにはたくさんの人がいた。仲間なんて、1人もいないと思っていたのに。そうか、私のただの被害妄想だったのか……

 その中で3人の女の子が、泣きながら私に頭を下げてきた。

「本当にっ……ぐす……ごめんなさい……あなたが飛び降りるなんて……」

「いいの。私こそ、ごめんなさい。自分の非に気付けなかった。」

「えっ……それって……」

 私は女の子たちの手を笑顔で握った。

「まっ、細かいことは良いから。これから……仲良くしてくれる?」

 3人は顔を見合わせて、少し戸惑っている。が、すぐに笑顔になった。

「うん……これから、よろしくね!」




「ねぇ、次どこ行く?」

 隣にいるミツルに話しかける。

「そうだなー。俺の知ってる一番良い場所に連れて行ってやるよ!」

 ミツルがしってる一番いい場所?どこなんだろう。ミツルよはあまりお祭りに行かなからなぁ。もしかして、新しい屋台とかが増えたのかな。


 ミツルに引っ張られてきた場所は、人気の少ない高台だった。私はミツルに問いかける。

「ねぇ……ここって……」

「いいからいいから。よし、もうそろそろ時間かな……よーく観とけよ。ここ、すっげぇのが見られるんだぜ!」

 そう言われ、ミツルが指をさすほうを見る。しかし、その先には真っ黒な空が見えるだけだ。

 夜空を見ていると、あの空虚な世界を思い出す。そして、夜空に浮かんでいるのは白い異形たち……

ドーンっ!

「うわっ!」

 急に空が色とりどりに光り、辺りに爆音が轟く。突然花火がうちあがったのでびっくりしてしまった。

「お!始まったみてぇだな!」

 夜の空を彩る花火は、黒いキャンバスを明るく照らし出し、幻想的な景色で私たちを引き込む。思わず息をのんでしまうほどだ。

「綺麗……」

 私がぽつりと口を零す。

「良かっただろ?祭りにこれて。」

「うん、とっても綺麗だよ。ミツル……」

 私はミツルの肩に寄り添う。とても温かい。不思議な感じだ……私は、ミツルに恋をしてしまったのかもしれない……

「ねぇ……ミツル?」

「ん?なんだ?」

 勇気を出して、言おう。本当の気持ちを伝えるために、ここまで来たんだ。

 祭り会場からアナウンスが聞こえる。

「次で最後の特大花火になります。」

 私は、息を大きく吸って、心の準備をする。

「ミツルのこと……好きだよ……」

 夜空に、今年最後の、大きな赤い花火が上がった



なんか最初リョナっぽいもの書こうと思ったら最終的に恋愛になってしまいましたwww何という不思議www

恋愛ものはあんまり分からない分野のほうなので少し時間がかかってしまいました……くそっ。黒歴史が無駄に増えるじゃないかww


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