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覚醒編 第三章

 


    + 日常茶飯事Ⅰ +

 


 


(魅呼音 あんた……頭、大丈夫なの?)

(椎奈 はい、私はオーヴァードですから、たんこぶもすぐに治ります……。(ちょっと寂しげな笑みを浮かべて)……エージェントの坂本さかもとさんが言っていたことをふと思い出します……)

(魅呼音 いや、そこだけ微妙にシリアスぶらないでよ……(笑))

GM たんこぶだし…(笑)。

 


 


魅呼音 やっと、お昼休みね。そう言えば、みんなのお昼ってどんなのかしら?

正輝 俺のは夕美の手作り弁当だよ。相変わらず、味はイマイチだが…。

魅呼音 あたしは時間がなくって、今日はおにぎりと簡単なおかずだけなのよ……。

GM/連太郎 「みんなは弁当か……もしかして、購買のパンってオレだけ?」

椎奈 私もお弁当……。

正輝 魅呼音もだけど、指宿さんもお弁当か。なんか、意外だな……(弁当を覗き込む)……これは、いったい……?

椎奈 (アスパラのベーコン巻きだけぎっしりと)本通りに作ったら……たくさんできた……?

魅呼音 あんた、あの手の本は3、4人前はあるのよ(苦笑)。それに、なんで一品だけなのよ?

椎奈 時間配分が分からなくて、これしかできませんでした……。

GM/連太郎 「てぇと、ご飯は…?」

椎奈 コンビニで…………。

四人 …………。

正輝 まぁ、そいうこともたまにはあるよな(笑)。

魅呼音 「ないと思うわよ……」……なんだか、居た堪れないお弁当よね……。「これとこれ、交換する?」

椎奈 ありがとう……。

正輝 ああ、夕美が作った弁当でよければ俺のとも交換しないか?

GM/連太郎 「俺もおすそ分けにパンをやるよ」……みんな、椎奈に対するロイスの感情は「同情」なのかな?(笑)

 


 


 そろそろ、私は本格的に捜査の方を始めようと思いました。

 春日正輝さんは昨日からずっと見張っていましたが、今の所は怪しいところはありません。他にも、伊集院十和、日和川アンナという方もいます。

 とりあえず、クラスに行けば会えるかもしれませんし……そう言えば、魅呼音さんは日和川アンナという方と友人というお話です。

 後で―――

 


 


椎奈 …………(思案中)。

正輝 指宿さん、どうしたんだ? なにか、ぼ~っとして?

椎奈 (目をそらして)いえ、なんでもないです。

正輝 なんか、今、あからさまに目をそらされたような……。

GM/連太郎 「まぁ、女の子には秘密の一つや二つあるもんさ」

正輝 そういうもんか(納得)。

魅呼音 (なんとなく察して)ご飯食べ終わったら話があるから、ちょっと来てくれない?

椎奈 ……はい(こくりと頷く)。

 


 


GM 昼ご飯を食べ終わった後、二人っきりで廊下に出たということで。

椎奈 (唐突に)伊集院十和……って、どんな人……?

魅呼音 はぁ、伊集院? ああ、あいつは一発ぶん殴ってやりたい奴ね(きっぱり)。

椎奈 敵なの…?

魅呼音 そうねぇ、「女の敵」って奴よ。

椎奈 (報告書に書いてあったことを思い出しながら)薬やチンピラとつるんでいる話は…?

魅呼音 そんな話まであるの…? ……もしかして、あいつが怪しいの?

椎奈 (頷く)それで、ちょっと見てみたいです。

魅呼音 クラスは確かE組よ。

椎奈 (途中でD組を覗き込んで日和川アンナを探す)…………。

魅呼音 E組はこっちよ。(クラスを見渡しながら)……あいつはいないみたいね。

椎奈 ……そっか。不良がクラスでお弁当なんて食べないよね……?

魅呼音 それもそうね(苦笑)。……そう言えばさ、あんたってなにができるの?

椎奈 ……拳銃とか…得意……。

魅呼音 あんた、まさか学校に持ってきているわけ?

椎奈 (ちょっと目をそらす)………(こくりと頷く)。

魅呼音 はぁ(ため息)。

椎奈 ……この学校には持ち物検査とかってあるのですか……?

魅呼音 ないけど……変な所でぶっ放さないでよ(苦笑)。

椎奈 分かってます……。

魅呼音 (教室に戻る途中)そう言えばさ、あんたってなにか部活とか入るの?

椎奈 今まで、入ったことない……。

魅呼音 なんなら、あたしが案内してあげるけど…?

椎奈 日和川アンナが演劇部に入っていることはすでに知ってますよね? それなら、「……よろしくお願いします……それと」

魅呼音 ん、他になにか?

椎奈 仕事と両立できる部活ってありませんか……?(真顔)

魅呼音 きっと、ないわ(笑)。

 


 


 


    + 日常茶飯事Ⅱ +

 


 


GM 春日家の夕飯時のことだ。

夕美 (むっつりとした表情)……。

正輝 どうしたんだ、夕美? なにかあったのか…?

夕美 (だんっとテーブルに紙を置いて)これ、夕美の友達からお兄ちゃんにだって!

正輝 …?

夕美 「夕美は、お兄ちゃんの伝言係じゃないんだからねっ!!」って言って、部屋から出て行くもん。

正輝 ……なるほど、そういう手紙ね……(苦笑)。

GM/手紙 『放課後、校舎裏で待ってます』


(椎奈 文面だけなら、果たし状とも取れます……)

一同 ホントだ(笑)。


GM というわけで、放課後校舎裏だよ。結構、可愛い子がいるね。

  /女子生徒A 「あの…春日先輩……す、好きですっ。わたしとお付き合いしてくれませんか……?」

正輝 (少し困った顔をして)えっと……悪いんだけど……俺、そういうのに興味がないんだ……。

GM/女子生徒A 「…………」

正輝 今はバスケのことで頭がいっぱいで、そういうことまでに気が回らないし………その、ごめんっ!(頭を下げる)

GM/女子生徒A 「……いえ、いいんです……その、告白できただけでも嬉しかったです。あの……ありがとうございました……(ちょっと涙を見せて去っていく)」

正輝 (背中を見送りながら)ごめん…………。

 


 


GM その頃の椎奈たちは部活見学でいいのかな?

椎奈 はい。部活見学で演劇部が見てみたいです……。

魅呼音 へぇ……あんたって演劇に興味があったんだ?

椎奈 本が好きだから…少し……。

 


 


「ねぇ、聞こえる? わたしの声が……どうして、どうしてなにも答えてくれないの?」

 日和川アンナさんの透き通った声が会議室中に響き渡ります。

 演劇部は、空き教室を使って劇の練習をしているようです。

「……ちょっと、見学させてもらうわよ」

 劇の練習はもう少しかかりそうでしたので、魅呼音さんが一年生らしき人に小声で話しかけて、私を先導してくれました。


 私は身体に眠るレネゲイドウィルスを活性化させるために、意識を集中させました。すると、通常では使われることのない脳内神経が活性化を始め、日和川アンナという人物像を分析しました。

 この現象を、『マトリクスシフト』と呼びます。

 レネゲイドウィルス感染者は任意にその現象を引き起こすことができ、その効果は発症者によって異なります。私の場合は、自分の身体や脳の神経伝達を限界まで引き出せます。

 今回、私が行なったマトリクスシフトは《プロファイリング》という現象(エフェクト)です。

 


 



GM 日和川アンナか……この状況から推察するに、「演劇部の中でも一目置かれている存在であり、周囲とのコミュニケーションは円滑のようだ。また、演劇に対する真面目な練習姿から、情熱をかけたものには相当入れ込む性質」ぐらいかな。

日和川(ひよりがわ) アンナ (台本を片手に)ずっと一緒にいましょう……これは永遠の誓い、死すらもわたしたちを引き離すことはできない………。

魅呼音 ……相変わらず、上手いわね……(見惚れている)。

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


(椎奈 (プロファイル中……)他の部員と一線引いている感じなのですね)

(アンナ (椎奈に)ええ、わたくしはやはりハーフですし、そのあたりで一線を引かれていると思いますわ)

GM そうだね、アンナがオーヴァードかどうかは別にして一線は引かれているよ。でも、人柄などそういった面で人望はあるって感じかな。

(椎奈 了解……)


椎奈 (魅呼音に)活気がありますね……。

魅呼音 ん、そうね。どう、入る気になった?

椎奈 それは……。

アンナ (向こうから)あら、魅呼音。今日は、どうしたんですの?

魅呼音 ああ、ちょっと、転校生が演劇部に興味があるらしくて連れてきたのよ。……話していてもいいの?

アンナ ええ、そろそろ休憩にしようかと思っておりましたし……(椎奈を見て)あっ、はじめまして、日和川(ひよりがわ)アンナと申します。よろしくお願い致しますわね(にっこり)。

椎奈 はじめまして……指宿椎奈です………。

アンナ 指宿さんは演劇に興味があるんですの?

椎奈 少し……。

アンナ そうですか。入部希望でしたら、いつでも歓迎ですわ(にっこり)。

椎奈 ……部活…忙しそうですね……。

アンナ ええ、文化祭に向けての練習中ですわ。

魅呼音 へぇ、今年の文化祭はどんな劇をやるの?

アンナ 中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーですの。ある国の姫と王子のお話ですわ。

魅呼音 アンナはそのお姫さま役なんでしょ?

アンナ ええ、まあ。他の部員の推薦で……。

魅呼音 まあ、あんたには向いていると思うわよ(羨望)。

アンナ でも、まだまだですわ…(ため息)。

魅呼音 まだ、文化祭まで時間はあるんだから大丈夫よ。

アンナ ええ、ありがとう、魅呼音(にっこり)。あ、わたくしはちょっと台本の手直しをしなくてはなりませんから。魅呼音、指宿さん、それではまた(と、立ち去る)。

二人 あ、また…。

魅呼音 ……それで、演劇部はどうするのよ? なんなら、入部届けを貰ってきてあげるけど。

椎奈 ここで入るわけにはいかないから、「今はいい……」と答えます。

魅呼音 それじゃあ、他にはなにか見たい部活はあるのかしら?

椎奈 (正輝のことを思い出して)バスケ部……。

 


 


GM 体育館、バスケ部だ。

正輝 (ころころ)肉体判定は11だな。

GM/連太郎 (ころころ)9。

正輝 今のコンビネーション、もう一回やってみるか?

GM/連太郎 「そうだな、もう少しコンビネーションを増やさないと……。次こそは優勝だな」

正輝 おうっ。……しっかし、お前もバスケだけは真面目に練習するよな……。

GM/連太郎 「ばーか。お前ほどじゃねぇよ(苦笑)」

 


 


魅呼音 (体育館まで連れてきて)あんたって結構趣味にばらつきがあるのね(苦笑)。

椎奈 ……そう?

魅呼音 「ここまで連れてきておいてなんだけど、うちの学校って女子バスケ部はないんだけどね」……プレイヤーが忘れていたわ(笑)。

椎奈 (先程の正輝たちのやりとりを見て)……なんか、違うかも……(→容疑者のこと)。

魅呼音 ん、なにが…?

椎奈 なんでもない……。

魅呼音 ふぅ~ん、そう(苦笑)。

 


 


 部活の方が休憩に入り、春日さんや霞谷さんとほんの少しお喋りをしました。

 楽しそうに話す魅呼音さんをふと見ていると、なんだかこのまま事件の捜査を彼女と続けてよいのかどうか悩んでしまいます。

 下手をすれば、この学園生活を壊してしまいそうで……。


 その後、適当に話を切り上げて、私と魅呼音さんとで伊集院十和のことを探していましたが、結局見つかりませんでした。

 


 


 そう言えば、春日さんたちと話している時に、魅呼音さんの表情に時折暗い影が差込んでいることがあります。もしかしたら、オーヴァードというところが魅呼音さんの影となっているかもしれません。

 


 


 一人で家に帰る時に夕暮れの空を見上げながらふと考えてしまいます。

 春日さんのことも今までのことからかなり疑念は晴れていました。

 だから、この人たちはこのまま事件と関わらず平和に学園生活を送って欲しいと思います。


 そして、

 少しでも長く、

 この場所に私がいられることを、

 私は願ってしまいました―――

 


 


 


    + 愛の独白 +

 


 


 声をかけよう、

 かけようとしても、

 わたしの喉からは一向に声が出てこなかった。

 喉から勇気を出して話し掛けようとしても、あなたに届く声は出なかった。


 だめだ………。

 こんなんじゃいつまでたっても、わたしの存在に気付いてくれない。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 こんな気持ち、知らない方がよかった……よかったのに………。

 知らなければ幸せだったのかな?

 でも、そしたらこの大切な気持ちはどこにいってしまうの?

 消えて綺麗になくなってくれるの……?

 わたし、どうしたらいいの……?

 ほんのちょっとでもいい、後押しが欲しい。

 


 


 

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