覚醒編 第二章
+ 転校生Ⅰ +
GM/霞谷 連太郎 「なあなあ、知っているか? 二学期から転校生が来るんだってよ」
春日 正輝 そうなのか……まぁ、お前の態度から察するに女の子なんだろうな(苦笑)。
GM/連太郎 「分かってんじゃん。お前もやっぱり可愛い子だと思うか?」
正輝 可愛いかどうかなんて、分からないだろ?
GM/連太郎 「いいや、オレには分かるね。絶対可愛い!」
正輝 まさか、もう顔を見てきたとか?
GM/連太郎 「うんにゃ、連太郎さまのカンというやつだ」
正輝 アホか……。
魅呼音 (そんな二人を見て)…………(苦笑)。
正輝 しっかし、連太はなんでそんなことで盛り上がれるんだ?
GM/連太郎 「転校してきたばかりの美少女……そこに、優しく声をかけるオレ……芽生える恋……燃え上がるLOVE!」
魅呼音 (ぽつりと)きっと、無理だと思うわ…。
正輝 ……? …魅呼音は転校生のことをなにか知っているのか?
魅呼音 え、そういうわけじゃなくて……えっと、いつも連太はそんなこと言っているけど、成功した試しがないじゃない?
正輝 まぁ、そうだな。そういうわけだ、諦めろ連太っ(ぽんっと肩を叩く)。
GM/連太郎 「のわっ、すでに慰められている(笑)」とまあ、そんなしょうもない会話をしていると、このクラスの担任が入ってくる。
/担任 「みんな、早く席に着きなさ~い!」
一同 (がやがやがや)
GM/担任 「ほら、静かに。……さて、新学期が始まったわけですが、その前に今日から同じクラスになる転校生を紹介します」
椎奈 (がらがら…とドアを開ける)…………。
この時、ざわついていた教室が静かになる。
教壇に、一歩一歩近づく女生徒をクラス中の生徒たちが注目していた。
連太なんて、すでに身体を乗り出して見ていた。そして、俺も連太ほどではないが、その教室に入ってきた女の子に見入っていた。
色白で髪は濡れ羽色の黒。ストレートに伸ばした髪、そして可愛いおでこを見せている。顔立ちは無表情ではあるが、整っているためどこか人形のように思わせていた。
緊張しているのか表情は硬く、ミステリアスというかその神秘的な雰囲気を漂わせていることもその人形らしさに拍車をかけていた。
GM/担任 「さ、指宿さん」
椎奈 ……?
GM/担任 「自己紹介を…」
椎奈 (こくりと頷く)読みづらい名前なので……(黒板に名前を書く)。
魅呼音 ……まるで明朝体ね、あの文字(笑)。
GM/連太郎 「(視線だけで)おいおい、すげぇ可愛い子だぞ」
正輝 (視線だけで)……はいはい(苦笑)。
椎奈 指宿 椎奈です…………。
一同 …………。
椎奈 …………(沈黙)。
一同 …………。
椎奈 …………よろしくお願いします(無表情)。
一同 …………。
GM/担任 「えっと…他になにか言うことは?」
椎奈 ………他?
GM/担任 「趣味とか前にいた学校とか……」
椎奈 …………趣味? (ポツリ)読書が…好き……。
GM/担任 「…いや、先生にではなく、みんなに自己紹介してくれないかな?(苦笑)」
椎奈 (向き直って)読書が…好き……。
一同 …………。
GM/担任 「(笑顔を作って)はい、それでは席は霞谷くんの隣ということでっ」
椎奈 分かりました……。
GM 連太郎が正輝の方を見て、
/連太郎 「(視線だけで)顔は可愛いが、めっちゃ不愛想ですよっ」
正輝 (苦笑しながら)連太の苦手系だな。
椎奈 …………。
GM/連太郎 「よ、よろしく……」
椎奈 よろしくお願いします……。
GM/連太郎 「はは、これはご丁寧に……お、お座りください…ませ(汗)」
椎奈 はい、座らせていただきます……。
魅呼音 変な会話よね……。
正輝 そうだな……。
+ 転校生Ⅱ +
GM 普通、転校生だったら色々と質問攻めするものだが、自己紹介の挨拶のせいか、みんな遠巻きに見ているだけだよ。
椎奈 …………(本を読んでいる)。
魅呼音 この学校で捜査する時に、二人でいてもおかしくないように、挨拶だけはしておかないとね(苦笑)。
GM/連太郎 「(魅呼音が着く前に)あ~~~…指宿さん?」
椎奈 (見上げて)……はい?
GM/連太郎 「隣の席という偶然もあることですし……校内を案内しちゃったりしても…構わないでしょうか……?(変な言葉遣い)」
椎奈 ……なんで、敬語なのですか……?(無表情)
GM/連太郎 「いや、つい…………正輝…魅呼音……助けて……」
正輝 やれやれ……。
魅呼音 あたしは、かえって好都合よね。
正輝 はじめまして、指宿さん。連太、まだ自己紹介してないだろ?
GM/連太郎 「あ、オレの名前は霞谷 連太郎。よろしくお願いします(まだ、敬語)」
椎奈 …………よろしく。
魅呼音 この子って、ワンテンポ遅いのよね……(苦笑)。
正輝 ああ、えっと俺の名前は春日 正輝。こいつと同じバスケ部員なんだ。
椎奈 ………(じぃ~~)。
正輝 ……? なにか、俺の顔についてる?
椎奈 ………………(じぃ~~~~~)。
正輝 …………(汗)。
椎奈 (小声で)彼が、春日正輝…………(少し大きな声で)よろしくお願いいたします。
魅呼音 あたしは暁 魅呼音、はじめまして(白々しく)。
椎奈 ……(こくりと頷く)。
正輝 それにしても、指宿さんって本が好きなんだね? どんな本を読んでいるの?
椎奈 ……ん(と、本を見せる)。
三人 『永遠に続くラブソング1』……?
魅呼音 しかも……これって、ぼーいず・らぶ系………(唖然)。
正輝 なんだ、それ? へぇ、指宿さんってラブストーリーとか好きなんだ?
魅呼音 いや、ラブストーリーって言えばラブストーリーだけど…………。
椎奈 ……それ、私が書いたの……。
三人 …………。
一同 なにぃ!?(驚)
GM なにーーーっ!!?(驚)
椎奈 …………いえ、冗談です(無表情)。
三人 …………。
魅呼音 あ、あははは、そ、そうよね。真顔だったからすっかり信じちゃったわ……(苦笑)。
*プレイヤーも真顔だったので、GMも信じてしまった(本気でビックリ)。
正輝 そっか、冗談か。いやぁ、指宿さんも意外と面白い人だなぁ。あははっ(爽やかな笑み)。
GM/連太郎 「それで、済ますな(笑)」
椎奈 ………なにがですか?
魅呼音 指宿には、この手の冗談の具合が分からないのね(哀れみの視線)。
GM 椎奈が可哀相な女の子扱いだよ、それじゃあ(笑)。
椎奈 (真剣に)……おかしい。このままでは、私は変な女の子一直線……。
魅呼音 もう遅いわよ(笑)。
春日 夕美 (ドアを勢いよく開けて)お兄ちゃーん! 一緒に帰ろぉーー!!
正輝 (苦笑しながら)夕美、大声で俺のことを呼ぶんじゃない。
夕美 えぇ、だってだってぇ。
正輝 はぁ……(ため息)。それで、どうしたんだ夕美?
夕美 今日ね、お買い物に付き合ってもらおうかと思って……。
正輝 ああ、それなんだけどな。今日転校してきた指宿さんと仲良くするために、これからどこかに行こうと思っていたんだ。
魅呼音 へぇ、いいアイデアじゃない。
正輝 というわけなんだけど、夕美はどうする?
夕美 いぶすき…さん? うん、夕美も行くぅ。
正輝 そっか。どう、指宿さん? これから、学校とか案内するけど……。
椎奈 よろこんでお受けします。
正輝 それで、妹の夕美も一緒だけどいいかな?
椎奈 ……いいです。
夕美 えっと、春日 夕美でぇす。よろしくねっ☆(元気な笑顔)
椎奈 指宿椎奈と言います。よろしくです(元気な笑顔を作ろうとして失敗→ニヒルな笑み)。
一同 こわっ!(笑)
夕美 あの…なんか、体調悪いんですか…?
椎奈 ふつーです。
五人 …………。
魅呼音 それじゃあ、行こうかしら(苦笑)。
正輝 そうだな……。
一通り学校を案内してくれた後、どこかに行こうという話になりました。
最初は、カラオケに行こうというお話でしたが、私がそういうのが苦手だと察してくれた魅呼音さんが助け船を出してくれました。
どうやら、魅呼音さんはとてもいい人みたいです。
確かに、私は最近の曲を知らないどころか、童謡しか歌えません。
私が歌ったとしても、きっと盛り上がることはないでしょう。
魅呼音 とりあえず、ご飯を食べに行くだけでもいいんじゃない?
椎奈 ……(こくりと頷く)。
正輝 そうだな。学校を案内したら結構時間かかったし、それでいいか。指宿さんは、なにか食べたいものとかあるのかな?
夕美 夕美はぁ、パフェかなぁ……。
正輝 (夕美の頭をぽこっと叩いて)……指宿さんは?
椎奈 ファミリーレストラン……とか、いいです。
正輝 そっか、ま、いつも行っているところでいいよな?
魅呼音 うん、いいんじゃない?
GM/連太郎 「それなら、さっそく行くか」
五人 (ぞろぞろと歩いている)
椎奈 (くいくいと魅呼音の袖を引っ張る)…………(上目遣い)。
魅呼音 ん、どうしたの?
椎奈 ありがと………(カラオケの件)。
魅呼音 ああ、あんたああいうの苦手そうだから……。
椎奈 ……(こくりと頷く)。
GM というわけで、ファミレスの座席にみんな座ったということで。
夕美 指宿さんって、どこから引っ越してきたの? どんなところにいたのっ?(好奇心)
(椎奈 そう、遠い……とても遠い、遠いところ……(遠い目))
一同 だから、どこだよ!?(笑)
椎奈 東京のはしっこ……です。
正輝 へぇ、東京かぁ。ご両親の仕事の都合とか?
椎奈 …………(俯く)。
正輝 あれ、なにか聞いちゃまずい質問だったかな……と思うなぁ。
椎奈 お母さんは学校の先生で……お父さんはなにかよくわからない研究をしてます………(暗い表情)。
正輝 へぇ、そっかぁ(あえてそれ以上突っ込まない)。
GM/連太郎 「そういや、指宿さんってすっげぇ頭良さそうだもんな」
椎奈 普通……です。
魅呼音 ……ふぅん、そぉ……(極力初対面のふりをしている)。
椎奈 ……あっ。
正輝 どうしたの?
椎奈 ……国語…とか、苦手……。
夕美 あはは、椎奈さんって独特のテンポだね。夕美もね、友達によくそう言われるんだよ。それって、誉め言葉なのかなぁ?(笑)
椎奈 「……私も、よく言われる……」でも、全然違う意味だろうけど(笑)。
夕美 夕美と同じだねっ♪
椎奈 同じ……(ちょっと笑う)。
+ 帰り道 +
GM/連太郎 「(ファミレスを出て)それじゃあな、みんなっ。オレがいなくなったからって、泣くなよ(笑)」
正輝 誰が泣くか!(笑)
GM/連太郎 「じゃあなっ!(走っていく)」
魅呼音 じゃあ、あたしもこの辺で……。
正輝 おう……あれ、指宿さんはこっちなの?
椎奈 うん、すぐそこ……(駅前のマンションを指差す)。
正輝 最近、この辺で行方不明になる人が多いらしいから気を付けないと。
椎奈 …………(じぃ~~~~)。
正輝 なんなら、通り道だしそこまで送っていくよ。
椎奈 ………………(じぃ~~~~~~)。
正輝 な、なに…? 俺の顔になにかついているのか?(最有力容疑者)
椎奈 いえ、なにもないです……。家もすぐそこだし、大丈夫ですから……。
正輝 やっぱり、危ないし俺が送ってやるよ。魅呼音はどうする?
魅呼音 あたし? あたしは……。
正輝 まぁ、お前のことだし大丈夫か(苦笑)。
魅呼音 ………そうね、あたしにはこれ(正拳突きを見せて)があるから大丈夫よ(少し寂しそうな笑顔)。
GM 正輝くん、何気にひどいこと言うね(苦笑)。
(魅呼音 恋愛に鈍い男とそういうのって紙一重よね……)
魅呼音 じゃあ、あたしはもう帰るよ。また、明日ねっ。
正輝 また明日な。
夕美 魅呼音さん、ばいばぁ~い!(手をぶんぶんと振る)
正輝 じゃあ、行こうか指宿さん?
夕美 それじゃあ、三人仲良く手を繋いで歩いていこうよ。
正輝 (苦笑しながら)指宿さん、迷惑じゃない?
椎奈 そんなこと、ない……。
正輝 そっか………。
三人 …………(歩)。
正輝 しかし、こうしていると……夕美は、まるで捕らわれた宇宙人みたいだな(笑)。
一同 (笑)
夕美 えぇ!? 夕美、あんな銀ぴかじゃないもんっ!!
正輝 いや、しかし目が大きくてくりくりっとしてるところなんか……。
夕美 似てないもぉ~ん(ぷんぷんっ)。
椎奈 「(そんな兄妹を見て)……兄妹っていいですね……」と微笑もうとするけど、やっぱりニヒルな笑みになっちゃいます(笑)。
一同 (笑)
GM というわけで、マンション前についた。
夕美 すっごぉい。ここって結構高級なマンションだよ。椎奈さん(→すでに、下の名前で呼んでいる)ってもしかして、お金持ち?
椎奈 そうではない…と思います……。
正輝 へぇ、そっかぁ。なんだったら、今度街を案内しようか?
椎奈 え……。
正輝 別にイヤだったらいいんだけど。
椎奈 「(ぽつり)誘い…」…込まれている…罠?(笑)
一同 (笑)
GM やっぱり、まだ疑っているのね(笑)。まあ、当然か……。
夕美 (割り込んで)夕美も、夕美もぉ!!
正輝 (椎奈の疑念に気付かず)ああ、そうだな。夕美と一緒に案内するけど……迷惑かな?
椎奈 そんなこと…ない……。
正輝 それじゃあ、また明日な。
夕美 じゃあねぇ!
椎奈 おやすみなさい……。
二人 (楽しそうにしゃべりながら去っていく)
椎奈 (二人の背中を見送って)……ちょっと新鮮かも……。
…………。
………………。
…………。
私は鏡に向かって、何度も奇妙な顔をし続けていました。
「やっぱり……向いてないのかも………」
皆さんの屈託のない笑みを見ていたら、いいなぁ……と純粋に思いました。
私も、あんな風に笑えたら……。
私はそんなことを初めて考えている自分に驚きながらも、なんだかとても満たされた気持ちになりました。
というのが、今から二時間前のことです。
私もあんな屈託のない顔で笑えたら……と思い練習しているのですが、この珍妙な顔つきはイメージする笑顔よりも遥かに不気味な代物です。
「…………こんなの、違う…………」
しかも、普段使い慣れていない筋肉を酷使したせいか、なんだか顔中が痛いです。
そして、筋肉が限界を超えた時。
「…………っ!!!」
つりました……。
あまりの痛さに部屋中を転げまわって、私はタンスの角に頭を打ちつけてしまいまいました。
「痛い………」
静かな夜はこうして深けていきました―――
+ 愛の独白 +
あなたのことを想い、どれほど経ったのだろうか。
だけど、わたしの存在には一向に気付こうとしない。
寂しい。
悲しい。
今までは見ているだけで満足できたのだけど、
もう、ただ見ているだけでは、わたしは満足できない。
だけど、声すらもかけられないわたし。
こんな自分が少しだけ惨めに思える。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
また、違う人があなたに声をかけている。
そして、あなたは楽しそうに笑う。
そして、声をかけた人も楽しそうに笑う。
その人をとても羨ましく思う。
あなたのそばにもう少し近づけたらどんなに幸せだろうか。
あの笑顔がわたしに向けらたものだったらいいな。