表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/37

覚醒編 第一章

 


    + 愛の独白 +

 


 


 あなたを初めて見た時、わたしの心臓は早鐘のように鳴り響いた。

 瞳孔が開き、呼吸が乱れ、そして、血液が逆流しそうになる。


 この気持ち、いったいなんなんだろう?

 分からない。

 だけど、やはりあなたを見ているとどきどきする。


 そして、

 ああ……これは、きっと“恋”なんだ。


 そう気付くのに、ある程度の時間が必要でした。

 なぜなら、わたしにとって初めての気持ちだったのだから。

 だけど、そう自覚しても、内気なわたしには見ていることしかできない。

 遠くから、そっと見ているだけ。

 それだけで、満足できるから……。

 


 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 

ダブルクロス・リプレイ - LoveSyndrome/恋愛症候群 -

覚醒編――START

 


 


 


    第一章


    + UGNからの使者 +

 


 


 8月26日UGN関東第一支部―――


GM/UGNの上司 「“嘆きの銃弾(レイニィ・バレット)”、あなたを呼んだのは他でもありません。4ヶ月前の事件を覚えているかしら?」

指宿(いぶすき) 椎奈(しいな) ……(こくりと頷く)。

GM 一応、念のために言っておくけど、ファルスハーツが作った“オーヴァード化”誘発薬を回収できなかったことだ。

  /上司 「どうやら、あれは関東圏から出ることもなく密やかに広まってしまったようです。この報告書を読んでください」

椎奈 …………(読)。

GM/上司 「ここ数ヶ月で、Y市を中心に若い男女の行方不明者数が急増しています。そのほとんどは、家出として取り扱われていますが、どうやらファルスハーツが絡んでいるのは間違いないようです」

椎奈 …………(読)。

GM/上司 「……聞いていますか?」

椎奈 ……はい(頷く)。

GM/上司 「つい先日ですが、エージェントがジャーム化寸前の少年を捕獲しました。残念ながら、すでに脳がウィルスに犯されていて、情報は引き出せませんでしたが……。それと、ファルスハーツの工作員と思しき人物がその都市の榊学園付近で目撃されています。

 そこで、あなたには9月から榊学園の生徒になってもらいます」

椎奈 了解です。

GM/上司 「榊学園にUGNの民間協力者であるUGNイリーガルが一名います。現地では、彼女と協力して任務にあたってください」

椎奈 ……はい、分かりました。

GM/上司 「詳しいことは先程の報告書に書いてあります。転入手続きの方はすでに終わっています。さっそく、引越しの準備に取り掛かってください」

 


 


椎奈 ――報告書の内容を最終確認します。

GM/報告書 『(要約文)Y市で若い男女の行方不明者数が急増。その内、約三割が榊学園の生徒である。また、ジャーム化で捕獲した少年も榊学園の生徒であることから、少なくとも榊学園に事件関係者がいる模様』

椎奈 これが、今度転校する学校……。

GM/報告書 『UGNイリーガル:“獅子鬼(ナラシンハ)(あかつき) 魅呼音(みこと)。中学2年生の時にオーヴァードとして覚醒。以後、UGNイリーガルとなる。シンドロームはキュマイラ/ブラックドッグと確認。

 捜査対象である春日正輝、日和川アンナとの交友関係があるため、目標が捜査対象であることは時期を見計らって伝えること』

椎奈 これが、現地の協力者……暁さん……(ぽつり)。

GM/報告書 『重要度A:春日(かすが) 正輝(まさき)。5歳の時に実の母親がジャームに殺される。その時の検査でレネゲイドウィルスに感染していることが判明。覚醒をしたことは未だ確認されず。当時、記憶処置を行なっている。

 現在、父親、義母親は海外に出張しており、義妹と暮している』

椎奈 これが、今回の最有力容疑者……春日正輝……(写真を見ている)。

GM/報告書 『重要度B:伊集院(いじゅういん) 十和(とうわ)。榊学園の理事長の孫。異性関係や素行に問題があり、権力者である祖父が幾度となく問題をもみ消している。チンピラを束ねている節があり、裏ルートで何度か薬物を入手しているらしいが、今のところは詳細の確認されていない。

 重要度B:日和川(ひよりがわ) アンナ。母親がアメリカ人で父親が日本人のハーフ。小学校1年生の時に海外から転校、小学校5年生までこの都市に在住、後にアメリカへ。そして、再び高校1年生の時に帰国してきて、榊学園に通い始める。アメリカでの情報に未確認な部分が多いため、確認されたし』

 重要度C以下は数十人にも上るから、特に怪しいのはこの三人だよ。

椎奈 もう、覚えた……報告書は燃やします……。

 


 


 


    + 椎奈と魅呼音 +

 


 


 こうして、引越しの準備も終わり、私はY市の駅に着きました。

 この駅で、UGNイリーガルの暁魅呼音さんと待ち合わせています。

 経歴や写真は確認しましたが、実際の人柄はどうなのでしょうか……?

 私は少し不安を抱きながら、改札口を出て彼女を探していました。

 


 


(あかつき) 魅呼音(みこと) …………そろそろ、時間よね(時計を見ながら)。

椎奈 (気配を殺しながら、小声で)“獅子鬼(ナラシンハ)”さん……?

魅呼音 (ギクッとして)あ、あんたが指宿さん…よね?

椎奈 ええ、そうです。よろしくお願いします……(礼)。

魅呼音 あ、よろしく……。それと、コードネームで呼ぶのはやめてもらえない?(苦笑)

椎奈 (淡々と)お嫌いですか? 分かりました、それでは暁さんと呼ばせてもらいます。

魅呼音 なんか、やりづらい子ね(苦笑)。UGNの人ってみんなこうなの……と思うわ。

椎奈 私も演技しづらいです(苦笑)。

GM 少しこの街について説明するよ。この街は都心から少し離れていて、ベッドタウンとして機能している。駅付近には、榊学園、駅ビル、アーケードなどがあり賑やかだが、少し駅から離れると閑静な住宅街が広がっている。小高い山がいくつかあって、中には都市開発が止まったままのところもある……といった感じだ。

魅呼音 ああ、えっと……「さん」付け呼ぶのも面倒だし、「指宿」でいい?

椎奈 構いません。

魅呼音 あたしのことも、コードネーム以外なら好きに呼んでいいから……。

椎奈 ……それでは、親しみを込めて「魅呼音さん」と呼ばせていただきます(無表情)。

 


 


椎奈 (簡単に任務説明)…ということです。

魅呼音 行方不明者ねぇ……確かに、夏休み中にそんな問題が起こっているって聞いたけど……。

椎奈 はい。被害者の分布上、榊学園を中心に捜査します。それ以外の所は、エージェントの方がフォローしてくれるそうです…………。

魅呼音 …? どうしたの?

椎奈 いっぱい話せた……(嬉)。

一同 いっぱいか?(笑)

GM 報告書に書いてあったが、容疑者リストは魅呼音には送られてきていないからね。最有力容疑者が魅呼音の親友だから捜査の妨害になりそうだし。どの辺で見切りをつけて、このことを話すかは椎奈次第だ。

椎奈 魅呼音さんは……春日正輝が感染していることは知っているのですか?

GM いいや、知らないよ。過去の事件のことも、正輝の母親は交通事故で死んだと思っているぐらいだ。

椎奈 やはり、下手に話すと協力を仰げなくなりそうです。まだ、黙っているのが得策ですね。

GM まあ、そうだろうね。

椎奈 …………(歩)。

魅呼音 …………(歩)。

椎奈 ………………(歩)。

魅呼音 ………………(歩)。

二人 …………。

魅呼音 あ~~…指宿さん?(→結局「さん」付け)

椎奈 はい。

魅呼音 ひとまず、簡単に街や学園を案内するわ。

椎奈 はい、ぜひ見ておきたいです。

 


 


魅呼音 (一通り案内して)…………ねぇ、もしかして機嫌悪いの…?

椎奈 いいえ、そんなことはありません(無表情)。

魅呼音 いや、だって「はい」とか「そうですか」とかしか言わないから……。

椎奈 申し訳ありません。

魅呼音 そうじゃなくてさ、できればもうちょっとなにか話して欲しいんだけど……。

椎奈 すみません、苦手なもので……。

魅呼音 はぁ…(ため息)。そういやさ、あんたはどの辺に住むつもりなの?

椎奈 住居ですか? それなら、駅前のマンションの一室を借りています。

魅呼音 駅前って、あの高級マンション?

椎奈 はい、色々と便利ですから。

魅呼音 さすがは、UGN直属ね……(呆れ)。

 


 


 どうやら、私は第一印象で失敗してしまったようです。

 人生十数年間生きてきて、成功した試しがないので、当然と言えば当然です。

 ちょっと寂しいですが、もうそんなことには慣れていますから、いちいち落ち込んでいられません。

 魅呼音さんと別れ際に、学校で会う時は初対面ということにしないかと言われました。

 確かに、最有力容疑者のこともありますし、変に疑われないためにも必要なことだと私は判断しました。

 だから、私は、

「分かりました……」

 と答えました。

 


 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ