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日常編 終章

 


    + ある夏の日Ⅰ +

 


 


GM こうして、それぞれの日常はおおむね平和に過ぎ去っていく。例えば、アンナの新入生歓迎の劇。どうだったと思う?

(アンナ もちろん、大好評ですわ。おかげで、部員もたくさん入っていただきました)

GM 正輝のバスケ部の方は、どう?

(正輝 そうだな、「次回こそは優勝してやるっ」という気持ちで、全国3位ぐらいだ)

GM 魅呼音の空手部は?

(魅呼音 ん、そうね……団体戦5位、個人戦4位ってところかしら)

(正輝 エフェクトを使えば優勝できるぞ、きっと(笑))

(魅呼音 しないわよ、そんなこと(苦笑)。でも、実戦だったら負ける気はしないけどね)

GM 後、夕美はいつも通りだし、椎奈もいつも通り。

(夕美 夕美はともかく、椎奈さんの日常ってどんなの?)

(椎奈 射撃練習とか……)

 


 


GM さて、部活もお盆休みに入る。

正輝 そうか……お墓参りか………。

夕美 うん、夕美の本当のお父さんも、病気で死んじゃったから。

GM それで、再婚したという話だよ。

 


 


 みーんみんみんみんみーーん……。

 蝉が鳴くこの日。

 俺は黙々とお墓を掃除しながら、真夏の太陽がじりじりと肌を焼くのを感じていた。

 夕美は風で麦わら帽子が飛ばないように片手で抑えながら、もう片方の手で花をかかえている。

 そして、最後に綺麗な水をかける。

 水飛沫が太陽の光を乱反射しながら、飛び散っていった。

「ああ、夕美、線香を取ってくれ」

「うん……」

 


 


 そして、静かに時間が過ぎていく。

 一通りのことを済ますと、俺と夕美はそこを立ち去った。

「夕美はなにを話していたんだ?」

 俺は何気なしに聞いてみる。

「えっとね、おかーさんも新しいおとーさんも……それに、お兄ちゃんも、優しくて夕美は幸せです。だから、安心してくださいって」

 さんさんと輝く真夏の太陽に負けないような笑顔を俺に見せてくれる。

「そうか……」

 俺はそれとは反対に、曇るような笑顔しかできない。

 それは、俺の母さんに対する罪の意識のせいだろうか……?

 すでに曖昧になりながらも、母さんの最期の笑みと赤色だけは今でも鮮明に覚えている。

「そうだ、今日は夕美がお兄ちゃんの好きな物を作ってあげるよ」

「え、夕美がか?」

「あ~~ひどいもん、その言い方ぁ~~」

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


 俺たちはそんなことを話しながら家路についた。

 


 


 


    + ある夏の日Ⅱ +

 


 


GM そして、その次の日。

夕美 (ばたばたと駆け寄ってきて)お兄ちゃんっ!

正輝 …ん、なんだ夕美?

夕美 夕美ね、海かプールに行きたいよぉ。いいでしょぉ~。

正輝 まぁ、部活も休みだしいいか。そうだな……海にするか? プールは混んでいそうだしな。

夕美 海も混んでると思うけど、お兄ちゃんがそう言うなら海でいいよ。じゃあ、明日にでも行こっ(正輝の手を引っ張る)。

正輝 二人だけでか? それだと、家にいるのと変わらないだろ(苦笑)。連太や魅呼音あたりも誘っておくか。

夕美 え……あ、うん……。

正輝 ああ、あと、アンナにも声をかけておくか。まあ、日程はみんなの予定次第ということで。

夕美 うん、そうだよね…。

 


 


GM というわけで、みんなで海に来ました。

アンナ まぁ…これが、日本の海ですのね(笑み)。

魅呼音 ちょっと、汚いけどね(苦笑)。

正輝 人でごった返しているけど、これはこれで楽しそうじゃないか?

GM/連太郎 「そうそう、いるよいるよ、美人のおねーさんがっ(燃)」

魅呼音 あんたは、そればっかりねぇ(苦笑)。

GM/連太郎 「そこのおねぇさ~んっ!!(走っていってしまう)」

正輝 ……ま、あいつは放っておくか。

魅呼音 そうね、どうせフられて戻ってくるでしょ(笑)。

夕美 ねぇねぇねぇねぇ! お兄ちゃん、泳ぎ方教えてよぉ。

正輝 そうだな……夕美も高校生なんだし、いまだに浮き輪というのもアレだろう(笑)。しょうがない、俺が教えてやるか……。

夕美 やった、今年こそは泳げるようになるんだからっ!

魅呼音 (アンナに)そうそう、海の家で食べるご飯がまたおいしいのよ。

アンナ へぇ、そうなんですの?

魅呼音 そう、具とかないし、見た目も貧相なんだけど……根拠もなくおいしいのよね。

アンナ まぁ……それは楽しみですわ。

夕美 あっ、連太郎さんがまたフられている。

正輝 夕美もああいう男に気を付けるんだぞ。

夕美 お兄ちゃんが守ってくれるから大丈夫だも~ん。

正輝 あのなぁ~、俺だっていつまでもお前のそばにいられないんだぞ?

魅呼音 そうよ、ちょっとは自分のことを考えなきゃダメよ。

夕美 ぶぅ(不満)。

アンナ 夕美、きっと、正輝もいざって時は助けに来てくれるわ。仲のよいあなたたちですもの(にっこり)。

夕美 うんっ。

正輝 しっかし、太陽の光が魅呼音の髪に反射して、ギラギラと眩しいな(苦笑)。

魅呼音 ……え、そんなに?

正輝 金髪にしていて、空手部の先輩なんかになんか言われなかったのか?

魅呼音 ……あ、あたしは別に。校則にも違反してないし、先輩はいい人ばかりだし……。

正輝 俺は、昔の頃の黒い髪を知っているから、なんか違和感を感じるんだよな。

魅呼音 ………いや、まぁ………(曖昧)。


 *実は、魅呼音は髪の毛を染めているわけではなく、オーヴァード化の影響で髪の毛の色素が金色になってしまったのです。


アンナ あら、魅呼音はその色がとてもお似合いですわよ。

魅呼音 あはは……ありがと(作り笑い)。

夕美 (唐突に)お兄ちゃんは、染めている方がいいの? それともそのままの方がいいの?

正輝 え、俺? そうだな……髪の毛の色なんて、人それぞれじゃないかな?

夕美 ちぇっ、逃げられたか……でも、まだ諦めないもん(笑)。「夕美はどっちが似合うかなぁ?」

正輝 はは、夕美にはどっちも似合うと思うよ(笑)。

夕美 逃げ切られたぁ(笑)。

一同 (笑)

GM ちなみに、連太郎は彼氏付きの女に声をかけて、砂浜に顔を残して埋められたと(笑)。

正輝 あいつも楽しそうだなぁ……(笑)。

 


 

挿絵(By みてみん)

 


 


 


 帰り道、電車に揺られながら俺たちは一日の疲れからか、みんな無言だった。

 過ぎ去っていく景色や、がたがたと揺れる電車の振動。

 それはなんとも心地よく、俺にはまるで優しい子守り歌に聞こえた。

 すでに、夕美は俺の肩に頭を寄せて可愛い寝息を立てていた。

 俺、夕美、魅呼音、アンナ、そして連太郎。

 会話もなく、ただ今日一日を振り返る。

 一日中はしゃいだ夏の日のことを。

 


 


 しかし、この時の俺はまだなにも知らなかった。

 これが、俺の“ヒト”としての最後の夏になるなんて。

 これが、みんなで遊びに行った最後の思い出になるなんて。

 俺は知らなかったんだ―――

 


 


 

ダブルクロス・リプレイ - LoveSyndrome/恋愛症候群 -

日常編―――END

 


 


 

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