日常編 第三章
+ 春うららか +
始業式、翌日―――
正輝 早く起きろっ、夕美っ!(がばっと布団をはぐ)
夕美 ほわぁぁぁ~~~~~~(あくび)。おはよう~……お兄ちゃん~………(のび)。
(椎奈 ……私だけ、世界が違う……。一人だけ……アクション映画?(笑))
一同 (笑)
GM UGNチルドレンとただの高校生の違いってやつです(笑)。
正輝 ほらほら、今年は生活習慣変えるって言ってただろ?
夕美 ふみぃ~~……眠いものは眠いも~ん……。
正輝 遅くまでテレビ見てるからだ、まったく。
夕美 夕美も大人になったから、深夜番組がおもしろいんだよ~~(笑)。
一同 大人は関係ない!(笑)
正輝 (朝日を眺めながら)ふっ、今日も平和だ……(笑)。
GM というわけで、二日続けて目玉焼きを食べて、その登校途中。
日和川 アンナ 正輝、夕美、おはようございます(にっこり)。
正輝 おはよう、アンナ。
夕美 アンナさん、おはようございます(ぺこり)。
俺たちに優雅に挨拶をしてきたのは、日和川アンナだ。
小学校時代の幼なじみで、学園の有名人の一人である。制服姿にハーフ特有の青い瞳と地毛の綺麗な茶色い髪の毛、それをポニーテールで束ねている。
顔立ちが非常に整っていて、その辺のアイドルではとても太刀打ちできるようなレベルじゃない。両親が相当の資産家で、その育ちのせいか動作が一つ一つ優雅だ。
アンナは俺が小学校5年生の時にアメリカへ転校してしまったが、去年の春から日本へ帰国してきて俺と同じクラスになった。
いつも穏やかな笑みを浮かべていて、なんだかこちらもそんな気分にさせてくれる幼なじみ――それが、日和川アンナだ。
アンナ 今日から、いよいよ授業が始まりますわね。
正輝 ああ、そうだな。そういや、アンナは……D組だっけ?
アンナ ええ、そうですわ。
正輝 俺は魅呼音や連太と同じクラスなんだぜ。毎日が騒がしいぐらいだ(苦笑)。
アンナ (くすりと笑って)とても楽しそうですわねぇ……。
正輝 ……夕美ももう少しアンナを見習って、落ち着いたらどうだ?
夕美 …ぶぅ(不満)。
アンナ あら、夕美がわたくしなどを見習う必要なんてございませんわ。
正輝 せめて、自分で起きられるぐらいにはなって欲しいもんだ。
夕美 うぅ~…なんか、色々と言われてるぅ~~。
正輝 まあ、これも兄からの忠告ってやつだよ。
アンナ 年長者は、下の方に色々と言いたくなるものですものね。(辺りを眺めて)……それにしても、綺麗な桜ですわね……。
正輝 …ああ(頷く)。
アンナ 日本の四季はわたくし大好きですのよ。特に、この桜吹雪は日本でしか見られませんから……。
正輝 アンナは海外の生活が長かったからな。そうか……アンナは桜が好きなのか。
アンナ (手を伸ばして)……こうしていると、まるで不思議な世界に迷い込んだ気がしませんか?
正輝 ……そう、だな……(遠い目)。
+ MemoriesⅡ +
あれは俺が小学校一年生の時のことだった―――
GM/男子 「(髪の毛をぐいっと引っ張って)や~~い、変な髪~~」
アンナ っ…………。
GM/男子 「それに、こいつ日本語しゃべれないんだぜ~」
アンナ …………。
GM/男子 「くやしかったら、なんか言ってみろよぉ。やーい、やーいっ!」
アンナ ぅ…ぅ……(泣)。
GM/男子 「泣いてやんの、や~い、や~い!」
正輝 (走ってきて)やめろよぉ!!
GM/男子 「なんだよぉ、じゃまするなよぉ!」
正輝 (きっと睨む)
GM/男子 「なんだよ、おまえこいつかばうのかよぉ。こいつ、お化けなんだぜ~」
正輝 お化けなんかじゃないよ! それに、女の子をいじめちゃダメだってお母さんが言っていたんだ!
この時の俺は、母さんの言うことを一つ一つしっかりと守っていた。
そうすることが自分のせいで死んだ母さんへの償いだと思っていたのかもしれない。
結局、俺はどれだけのことを守ることができたのだろうか……?
正輝 (男の子とケンカをして追っ払った…)もう、泣くなよ……。
アンナ ……うっく、うっく……。
正輝 ほら、立ちなよ……(手を伸ばす)。
アンナ …………。
正輝 ほら……(手をさらに伸ばす)。
アンナ …………(こくりと頷く)。
正輝 だいじょうぶ?
アンナ ……?
正輝 ……え~っと……なんて言ったらいいのか、わかんないけど……(困)。えっと、大丈夫だから………。
アンナ …………(にっこりと笑って)ありガト…………(手を握り返す)。
それが、アンナと俺の最初の出会いだった―――
+ 彼における周囲の人々 +
正輝 …………(回想中)。
夕美 また、お兄ちゃん、ぼんやりしてるぅ…。
*ギャルゲー的主人公の基本ですね(笑)。
夕美 また、女の人のこと考えていたでしょぉ? ぷんぷんっ(お怒りの擬音)。
一同 (爆笑)
*「ぷんぷんっ」……すごい擬音です(笑)。
正輝 そんなことはないぞ。夕美もなにを根拠にそんなことを……。
夕美 お兄ちゃん、鼻の下伸びてるよ。
正輝 だから、そんなことはないぞ。
アンナ (穏やかに笑って)仲のよい兄妹ですわね……。そうだ、今度新入生歓迎に向けて演劇部で劇をやりますの。よろしければ、夕美とご一緒に見に来ていただけませんか?
正輝 ああ、喜んで行かせもらうよ。それで、なんの劇をやるんだ?
アンナ へ?(素っ頓狂な声) ………GM、なんの劇ですの?(笑)
GM あ、考えてなかった(笑)。まあ、和風系の劇ということで。
アンナ 和風系の劇ですの。
夕美 そうなんだぁ~、おもしろそう~。
アンナ 部員のみんなも、いい感じにまとまってきて練習がうまくいってますわ。もしかしたら、今年こそ演劇部は賞を取れるかもしれませんわね。
正輝 そっか、それは大した自信だな。アンナもがんばれよ。
アンナ はいっ。そう言えば、正輝の方はどうかしら? バスケ部は今年もインターハイに行けそうかしら?
正輝 ああ、連太やみんながいれば大丈夫さ。
アンナ 去年は惜しかったですものね……。
GM 去年は全国ベスト8ぐらいだったということで。
正輝 おお、そうだったんだ。「連太は人に努力を見せるのを嫌うからな……ああ見えて、あいつは努力家なんだよな」
アンナ それに、連太郎は色々とおもしろい方ですもの(にっこり)。
正輝 面白すぎるというのも問題があると思うが……。
アンナ あら、ユーモアは大切ですわよ。
正輝 そういうところは、少しは俺も見習わないといけないかもな(苦笑)。そんなわけで、今年は優勝を目指しているんだ。
夕美 わ、お兄ちゃんもものすごい自信~。
正輝 気持ちだけは、ってやつだ(笑)。
アンナ 頑張ってくださいませ。(腕時計を見て)……あら……もうこんな時間。ふぅ(ため息)、わたくしも正輝と同じクラスでしたら、もう少しお話ができたのですけど……。
正輝 そうか………だけど、こうしていつでも会えるだろ?
アンナ ええ、そうですわね。…それでは、ごきげんよう(優雅にお辞儀)。
正輝 おうっ、じゃあまたな!
夕美 アンナさん、まったねぇ!! (アンナの背中を見送って)………ごきげんよう………かぁ。アンナさんってお嬢様~って感じだよねぇ。夕美もあんな風にしゃべったらお嬢様って感じになるかなぁ…?
正輝 (頭にぽんっと手を置いて)夕美は夕美らしくしてればいいから、な?(優しく微笑む)
夕美 えへへへ、そっか。それじゃあ、夕美ももう行くね。お兄ちゃん、行ってきまぁす!(手を大きく振りながら)
正輝 おう、気を付けてなっ!
*ちょっとしたことですが、夕美とアンナはサブマスターが取り扱うキャラです。同時に出ている時などは、GMが片方をやったりしています。
GM さて、その日の放課後のバスケ部。肉体判定をしてくれ。
正輝 (ころころ)18だ。
GM/連太郎 「ナイスシュート! さすがだな、正輝っ」
正輝 (ガッツポーズを取って)会心の3Pシュートだったな。
(椎奈 ……必殺のシュート……)
(夕美 誰かが死んじゃうんだ?(笑))
(魅呼音 あんたら、何気に物騒よ(苦笑))
GM/連太郎 「(ふと周りを見て)今日もギャラリーがいっぱいいるなぁ……」
夕美/ギャラリーA 「きゃぁ~~~っ、春日く~~~ん!!」
魅呼音/ギャラリーB 「こっち向いたわぁ~~きゃ~~~~~っ!!」
GM ノリノリだね、君たち(笑)。
正輝 いや、俺はできれば女の子よりも部員たちに見て欲しかったんだが……。
GM/連太郎 「(ばきっと正輝を攻撃)贅沢なこと抜かすなぁ!!」
正輝 あいてっ(痛)。
夕美/ギャラリーA 「なにあれ~…さいてー!」
椎奈/ギャラリーC 「野蛮~!!!」
正輝 どうやら、お前の行動は女の子に不評なようだぞ(笑)。
GM/連太郎 「ば、ばかな……これは、フレンドリーなスキンシップなのに……(しくしく)」
正輝 じゃあ、俺と仲がよいことを証明するために、肩でも組んでみるか?(笑)
GM/連太郎 「よっしゃー!(肩を組む)」
夕美/ギャラリーA 「ぶ~ぶ~~!!(ブーイング)」
椎奈/ギャラリーC 「春日くんから離れなさいよぉ~~野蛮人~~~~!」
魅呼音/ギャラリーB 「春日くんに変な菌がつくでしょ~~~!」
一同 ひ、ひでぇ…(爆笑)。
GM/連太郎 「ぐはぁ……オレはもうダメだぁ………立ち直れねぇ………」
正輝 連太……すまない。これはフォローできない……(笑)。
GM/連太郎 「…………(急に立ち直って)ん、あそこにいるのって日和川じゃねぇ?」
アンナ (遠くから)……Good job。
正輝 んん、ああ……(連太郎に対して頷く)。
GM というわけで、その後の部活帰り。向こうの方で夕美と大学生ぐらいの女性とがなにか話しているのを見かける。
正輝 あれは……。
GM/柳 澄 「あら…正輝くんじゃない。お久しぶりねぇ……今日も部活?」
夕美 あっ、お兄ちゃんだぁ~。
夕美と話していたのは、柳 澄さん、現在大学二年生だ。
去年、夕美が高校受験の時に家庭教師をしてくれた人で、料理が苦手な夕美に代わって、夕ご飯を作ってくれたりと、色々とお世話になった。
澄さんは髪を三つ編みで束ねて、メガネをかけているところからものすごく知的なイメージを受けるが、実はかなりおっとりしている。趣味がぽけ~っとすること、好きなものはコタツみかん、とか去年言っていたな。
もしも、自分にお姉さんがいるとしたら、こんな感じなのかな……と、俺はなんとなく思っていた。
正輝 その節はどうも。澄さんがいなかったら、夕美も今ごろどうなっていたことやら……。
GM/澄 「そんなことはないわよ。夕美ちゃんの実力よ(のんびり)」
夕美 ううん(首を振って)、澄先生の教え方がうまかったからだよ(笑顔)。
GM/澄 「まぁ、夕美ちゃんたらっ(にっこり)」
正輝 ほら、夕美、ちゃんとお礼を言ったのか?
夕美 あ、まだだよ。えっと……(澄の方に向き直って)……おかげさまで、女子高生になれましたっ☆(スカートを摘まんでくるんと回る)
*一同悶絶……実は、本日何度目かのです(笑)。
GM/澄 「まぁ、よかったわね(笑顔)」
夕美 そうそう、お兄ちゃん聞いてよ。すごいんだよ、澄先生ねぇ、宝くじで二十万円が当たったんだって!
GM/澄 「うふふ……そうは言っても、いままでに買ってきた宝くじの分を考えると、あんまり得していないっていうのが、ちょっと悲しいんだけどねぇ……」
正輝 そんなことはないですよ。二十万円って言ったら、すごいですよっ。
夕美 そうだよぉ、澄先生。にじゅうまんえんだよ、二十万円っ。夕美のお小遣いが月に五千円だから……400回分…?(笑)
GM/澄 「夕美ちゃん、40…でしょ?(笑) それに、わたしはもう先生じゃないんだから、澄でいいわよ」
夕美 うん、澄先生……あれ?(笑)
正輝 あんまり、澄さんに心配かけるなよ(苦笑)。
GM/澄 「(笑いながら)そうだ、ご飯まだでしょ? せっかくだからおごってあげるわよ」
夕美 え、ホント!?(喜)
正輝 え、でもそれは悪いですよ。
GM/澄 「ほら、わたし夕美ちゃんの合格祝いまだしてなかったし。ぜひ、おごらせてちょうだい」
夕美 ねぇ、いいでしょぉ~お兄ぃちゃ~ん……(上目遣い)。
正輝 そういうことなら……すみませんね、澄さん。
GM/澄 「ううん、遠慮しないでいいわよ(にっこり)」
夕美 やった~~(ぴょんぴょんと飛び跳ねる)。
正輝 (夕美を眺めながら)…………(苦笑)。
+ 彼女における周囲の人々 +
同日同時刻、UGN関東第一支部―――
GM 椎奈はUGNの上司に呼ばれる。
椎奈 ………来ました。
GM/UGNの上司 「“嘆きの銃弾”」
椎奈 はい。
GM/上司 「昨夜のトラックの積み荷の件ですが、どうやら途中で他のトラックに移し替えたみたいです。トラックに乗っていた人間は他にはなにも知らなかったわ」
椎奈 ……やはり、そうですか。
GM/上司 「あれだけの量をばらまかれたら、さすがにまずいことになるわ。あなたにはひとまず通常任務に戻ってもらいます」
椎奈 ……了解。
GM あっ、通常任務というのは、学校生活を送りながら周辺にいるかもしれないオーヴァードやジャームを監視するというものだよ。事件にならないのが普通だ。
/上司 「しかし、先程の任務を解かれたわけではありません。状況が変り次第、あなたには先の任務を最優先で引き受けてもらいます。よろしいですね、“嘆きの銃弾”?」
椎奈 ……了解。
GM/上司 「ああ、それと先の任務で同行していたエージェントがまだ入院しています。よければ、お見舞いに行ってくれないかしら?」
椎奈 命令、ですか?
GM/上司 「そういうわけじゃないけど、UGN内でもオーヴァードとそうでない者とでは見えない確執があるものなのよ。花代はUGNの方に回しても構わないから」
椎奈 ………(こくりと頷く)。
GM/上司 「それじゃあ、お願いね」
(正輝 俺とはこうも世界が違うとは……)
(魅呼音 あたしはその中間ぐらいなのよね……)
(夕美 人生色々だね……)
椎奈 (花屋で)……てきとーに包んでください(無表情)。
GM/店員 「えっと、どのような用事で?」
椎奈 お見舞い……。
GM/店員 「分かりましたぁ、少々お待ちください」
椎奈 あと…領収書ください………。
GM それじゃあ、病室に着いたということで。
/UGNのエージェント 「大した怪我ではないのに、わざわざお見舞いに来ていただいてすみませんね」
椎奈 ……いいえ。
GM/エージェント 「しかし、あなたの方はもう傷痕すらないのですね………こうして、傷の治りを比べると、さすがに驚きを隠せませんよ」
私は、そんなことはないのに……と思います。
確かに、怪我の程度は同じでしたし、普通の人でしたら昨日今日で治る怪我ではありませんけど。
私は小さい頃から、オーヴァードとして生活してきたので、骨折なども軽傷だと考えています。上司が言っていた、見えない確執というものはおそらくこういうところからもあるようです。
そう、こういうところから―――
椎奈 …………(無表情)。
GM/エージェント 「(無言の椎奈を見ながら)指宿さん。あなたはオーヴァードという存在をどう思いますか?」
椎奈 ……?
彼は私に、突然そう訊ねてきました。
どう思うか、とはオーヴァードのことを生物学的に問うているのでしょうか?
しかし、そうではないようです。
つまり、どう思うか、とは私自身がいかなる思考を持ってオーヴァードという存在を認識しているか?
と、そういうことを聞いているのでしょう。
それはかなり難しい質問です。
椎奈 …………(無表情)。
GM/エージェント 「…………」
椎奈 ……悲しい……(ぽつり)。
GM/エージェント 「悲しい存在ですか………。私はね、まだ答えを見出していないのですよ。だから、あなたがお見舞いに来てくれたことを素直に喜べない自分がいるのです(乾いた笑み)」
椎奈 …………(こくりと頷く)。
GM/エージェント 「(苦笑しながら)あなたも難儀な性格のようですね。たまにはUGNとしてではなく、一人の女の子として気軽になりたくありませんか?」
椎奈 ……考えたこともありません……。
私は嘘をつきました。
それは私が何度も考えたことがある、憧れ。
そして、夢だったからです。
しかし、周りがそれを許さないことを重々承知していた私はこう考えるようにしているのです。
なかったことにする、と。
GM/エージェント 「そうですか……(なにかを感じ取って)。また、また一緒に仕事ができるといいですね、指宿さん(にっこり)」
椎奈 ……そうなの……?
GM/エージェント 「ええ、そうですよ(優しげな微笑み)」
椎奈 …………(無表情)。
GM/エージェント 「……?」
椎奈 (ぽつり)……名前……。
GM/エージェント 「ああ、私の名前は坂本です」
椎奈 ……了解……(こくりと頷く)。
こんな怪我までして、オーヴァードではない坂本さんがなぜこんな難儀な仕事をしているのか?
そう、聞きたかった私がいましたが、コミュニケーション能力に難があるとUGNに指摘されている私は、結局聞かずに病室を出てきてしまいました。
それを聞いた所で彼を困らせるだけかもしれませんし、例え聞いたとしても私にはなにもできないです。それに、きっと気の利いたことひとつ言えないでしょう。
そして、私はネオン街を独りで歩きながら、街の灯りでほとんど見えない星空を見上げていました。
*このリプレイでは、UGN所属しているのは“オーヴァード”より“人間”の方が圧倒的に多いという設定です。