RainyRoute 編 終章:UGN施設Ⅱ
+ 真夜中の訪問者Ⅰ +
GM そして、その日の夜。正輝の部屋に人が訪ねてくる。
正輝 ……誰だ?
GM そこには、UGNの上司がいた。ここで、知覚判定。
正輝 (ころころ)9。
GM 上司の右手に、一本のビデオを持っていることに気付く。
/上司 「(ビデオを見せて)このビデオが先程、UGNに届けられたわ……」
正輝 まさか、それは……。
GM/上司 「あなたに……最初に、あなたに見て欲しいから。暁さんや指宿さんには、見せないほうがいいでしょうし……どう、春日くん。このビデオ……見る? 見ない? あなたが、選んでください……」
正輝 ……見ます……。
砂嵐。
ざらざらと画面を舐めるように、ちらつく灰色。
ざーざーと耳に響く雑音。
鮮明になっていく、画面。
この瞬間、
たのしくて、
おかしくて、
おかしくなりそうで、
笑いたくなった。
だって、その画面には、やっぱり見知った顔が映っていたから。
あははは。
俺の浮かべる虚ろな笑みが、画面に微かに反射している。
彼女は、俺の幼なじみで、ハーフなんだ。
あははははははは。
そして、俺の初恋の人だった。
日和川アンナ―――。
音は相変わらずざーざーという雑音だけ。
だって、今から死ぬんだぜ?
これが笑わずにいられるか?
手術台に縛られ、白い裸体をさらけ出していた。
俺の見たことのない、アンナのあられもない姿。
アンナの、あの綺麗な顔が恐怖に歪んでいる。
俺の見たことのない、アンナの表情。
カチリ、カチリ、カチリ。
なにか、視界が灰色だったり、赤色だったり、世界がごたごたしていて。
画面の中では、
あの黒髪の女が、
手にメスを持っていた。
目を大きく開けたアンナが、そのメスに気付く。
「今から、殺されるんだぜ」
「楽しくて、おかしくて、笑っちまうよな」
ソイツは、ひどく饒舌になって俺に囁きかける。
「ほら、見ろよ? 今、下腹部にメスが入った」
「おお!」
ソイツは、嬉しそうに俺に解説してくれる。
「ありゃ、麻酔なんて使ってないからなぁ」
「生きたままの手術だなんて」
「ありゃ、死ぬな」
アンナが、大きな悲鳴をあげているのだが、
さっきから、スピーカーからは雑音しか流れない。
ざーざーとうるさくて。
ソイツは俺に語り掛けてくる。
「見ろよ! お前、初めて見るだろ!?」
黒髪の女の手には、赤黒い物体が取り出されていた。
だらしなく、でろでろと垂れる管。
痙攣する白い裸体。
黒髪の女は、カメラの前に赤子を見せるかのように掲げた。
まるで、なにか神聖な儀式のように。
「あれが、子宮さ―――」
隣で、UGNの上司がそんな俺を微笑むように見ている。
俺も、微笑み返した。
俺は、おかしくなって、壊れた機械のように張り付いた笑みを浮かべていた。
だって、ソイツはいつもこう俺に囁くんだ。
殺せ。
殺せ、殺せ。
殺せ、殺せ、殺せ。
画面は砂嵐に戻っていく。
だけど、それでも俺はどきどきしながら、すごく興奮していた。
笑っていた。
これは、俺なのか。
それとも、もう一人の俺なのか。
そもそも、もう一人の俺なんているのか。
訳が分からない夢を見ているみたいだ。
ごちゃごちゃごちゃごちゃと、
世界はどうでもよくなった―――
+ 真夜中の訪問者Ⅱ +
どーん!
という大きな音。
なにが起きているのか、周りがうるさいです。
施設中に、鳴り響くけたたましいサイレンの音。
どーん!! どーん!!
続けて、鳴り響く音はどうやら爆発音のようです。
辺りが騒がしくなり、銃声も聞こえました。
私は、すでに拳銃を構えて、ドアをそっと開けます。
爆発と火事。
そして、悲鳴がこの施設に広がりつつありました。
GM どうする? ちなみに、一番近い部屋は魅呼音の部屋なんで、目の前に魅呼音もいるということで。
魅呼音 椎奈…? なにが?
椎奈 分からないわ……けど、かなり危険な状況みたい……。
GM そこに、坂本さんがやってくる。
/坂本 「大変です! 治療中のジャームたちが暴走を始めました!! 指宿さん、暁さん、急いで対処してください!」と、目の前に、突然ジャームが襲い掛かってきた。演出だけで倒していから。
椎奈 それなら、そのジャームを素早く拳銃で撃ちます。
GM 「GYAAAAA!!」と倒れる。坂本さんが走りながら、状況を説明してくれる。
/坂本 「この施設には、たくさんの治療中の患者がいます。その中には、感染した人も数多くいますので、下手をすれば共振能力の連鎖で、この施設中が衝動にかられたジャームで埋め尽くされてしまいます!」とか言っていると、また、ジャームが一匹目の前に出てくる。
魅呼音 「っ!(《一角鬼》でなぎ倒す) ……くっ」と、薬の影響で、少し辛いところを見せるわ……。
椎奈 大丈夫…?
魅呼音 え、ええ(頷く)。
GM/坂本 「しかし、ジャームは暴走しないように、厳重に対策、隔離してあるのですが……今は、そんなことを言っている場合ではないですね。今は少しでも多くの患者を救い、多くのジャームを止めることが先決です!」
椎奈 了解。
魅呼音 分かりました……!
GM 目の前に、数匹のジャームがいる。それと、数人の患者を逃がしているUGNの上司がいる。ちなみに、UGNの上司は戦闘タイプのオーヴァードではないので、苦戦している。
/坂本 「く、早く春日くんと合流したいところですが……」
椎奈 私たちがここをどうにかするから、魅呼音は正輝と合流して!
魅呼音 ん、分かった……。椎奈も、坂本さんも気をつけて……(駆け出す)。
椎奈 魅呼音もね……。
GM それじゃあ、無事に正輝の部屋に着いた。
魅呼音 (ドアを開けて)正輝……っ!
+ 涙の咆哮Ⅰ +
GM/上司 「……さあ、一緒に行きましょう、春日くん(にっこり)」
正輝 ………アンナ………。
GM と、ここで《蝕む声》+《錯覚の香り》+《竹馬の友》を使ってくる(ころころ)。
正輝 (ころころ)……。
魅呼音 (ドアを開けて)正輝……っ!
GM/上司 「暁…魅呼音さん……。どうしたの、ここはまだ無事よ…?」
正輝 (ぼぉっとしながら)……魅呼音……?
魅呼音 (UGNの上司を見て)ちょ、ちょっと、なんであんたがここにいるの!?
GM/上司 「どうしたの、暁さん…? わたしがどうかしたの……?」
魅呼音 あんた、何者よ!?
GM/上司 「(正輝を見ながら)くすくすくす……ねぇ、見て………わたし…こんなにも綺麗になりました……」と、UGNの上司の身体がうねり、ねじり、整っていく。そこには、美空節子をものすごく美化したような姿がある。ちなみに、分かっていると思うけど《擬態の仮面》ね。
魅呼音 あんたは……、確か……。
正輝 …………。
GM/美空 節子 「わたし、綺麗ですよね? これなら、春日くんと…釣り合いとれますよね?」「ね、あなたもそう思いますよね?」「春日くんの周りには、いつも綺麗な女の子ばかり」「でも、今のわたしなら、一番綺麗……」「くすくすくすくすくすくす」
魅呼音 あんたは……な、なにを…正輝? ねぇ、正輝?
正輝 …………。
GM/節子 「でも、あなたは邪魔」「あなたみたいな人、いらないです」「あなたは醜いあなたを正輝に見せるべきです」「ううん、そうすべきです」「そう言っていますから」「わたしが、そう言っていますから」
魅呼音 ……(少し後退る)。
GM/節子 「化け物になってください。醜い化け物に……ねぇ、ナラシンハさん?」と、ここで《蝕む声》+《錯覚の香り》で、魅呼音の《完全獣化》と衝動判定を強制してくる(ころころ)。
魅呼音 (ころころ)……失敗。「(自分の肩を抱いて)いや! 見ないで!! お願い!!! おね…が……」
正輝 ……みこと……?(ぼんやり)
GM/節子 「ねぇ、見て、春日くん。彼女のこの姿、醜いわ! 化け物だわ! 罵りましょう! 彼女を化け物と!!!」正輝は、その言葉に反応するかのように魅呼音を罵り始めるよ。
魅呼音 ああああぁぁぁぁァァァァァァァァァァァ!!!(《完全獣化》変化中)
俺はただ、その異形化していく魅呼音を見ながら、様々な想いがあふれ出てきた。
これは、俺の奥底でフタをしていた、暗い、暗い、暗部。
普段はけして、出ることのない言葉。
正輝 (目の焦点が合っていない)嘘だろ…? 魅呼音……お前は、そんな化け物になるような力まであったのか? また、俺に嘘をついていたのか!?
GM さらに、正輝には同時にもう一人の自分が声をかけてくる。それも口走っているのかもしれないが、正輝にはよく分からない。「そんな化け物で、よく俺たちと付き合ってこれたな!」
正輝 俺を騙しやがって!! ずっと、俺を騙しやがって!!!
GM/正輝 「早くしないと、あの化け物に殺されちまうぞ」「あれは化け物だ。母さんの仇だ」
正輝 化け物、ジャームだよ、お前は!!
GM/正輝 「敵だ、あれは敵だ!! 殺すべき敵だ!!!」
正輝 くそ!! お前が近くにいたせいで、俺まで感染したかもしれないんだ!!! ちくしょう!!! そんな化け物だったなんて!!!
GM ……と、そろそろ正輝は正気にかえるということで。
正輝 ……え………俺は…なにを……?
「ああああぁぁぁぁァァァァァァァァァァァ!!!」
あたしの声が、獣の咆哮のように変化していく。
頭に直接響く「化け物になれ」という言葉に抗えず、あたしの身体は勝手にマトリクスシフトが起こり、DNAの設計図が変化していった。
そして、あたしの上半身を中心に書き換えられていく。
窓ガラスに映る姿に、あたしは恐怖と闘争本能が混ぜ合わさった気分で、訳も分からず、高揚していた。
その姿は、半獣半人というのが相応しく。
全身を金色の毛で覆われた、直立するライオンをイメージさせた。
もちろん、地球上にはこのような生物は存在していない。
なにか、しゃべろうとしても、人間のソレとは違う構造の喉では唸り声しか出せないこの姿。
正輝の言葉が、発せられるたびに。
化け物と言わないで!!
見られた!!
見ないで!!
違う!!!
助けて!!!
正輝!!!
あたしはそう叫びたいのに、口からは獣のような唸り声しか出せなかった。
+ 涙の咆哮Ⅱ +
GM/節子 「そのまま、あなたは死んでください……醜い化け物のまま、死んでください……」というわけで、戦闘開始。
魅呼音 セットアップで《フルパワーアタック》。
GM ということは、イニシアティブは0か。次は、正輝。
正輝 (魅呼音に)俺、ちが、そんな……。
GM ノリノリだったくせに(笑)。せいぜい、正輝は悩んでいてくれ。
/節子 「その醜い姿のまま、死んでください!」……《爪剣》+《オールレンジ》+《貪欲なる拳》+《妖の招き》で魅呼音に攻撃してくる。(ころころ)26。
魅呼音 (ころころ)24…食らったわね……。
GM/節子 (ころころ)15点ダメージだ。生きてる?
魅呼音 (無言で頷く)宣言通り、《フルパワーアタック》を乗せた《雷の牙》+《獣の力》で行く……(ころころ)。
GM/節子 《蛇の動き》でよけようとするけど……(ころころ)……27。
魅呼音 こっちは56。ダメージは……58点。
魅呼音は普通のオーヴァードを明らかに越えた動きで、美空節子の身体ごと吹き飛ばす。
そして、美空節子はそのまま壁に打ち付けられる。
勝負は一瞬でついた。
辺りは、気がつくと炎と爆発と悲鳴が充満する惨状になっていた。
俺は、ただこの光景をぼんやりと見ていただけだった。
GM/節子 「(目の焦点が合っていない)…どう…して……? な…んで…? わ、わたし…せっかく綺麗になれたのに……あなたの隣が、わたしの居場所なのに……」
正輝 (はっと気付いて)み、美空さん……君が…君が……。
GM/節子 「(正輝の方を見ながら)わたしのこと…嫌い……です…か? わたしのこと嫌いです…か……?」
正輝 君が…あいなのか? 君が、あのあいなのか?
GM/節子 「……嫌わないで……お願いですから、わたしのこと嫌わないで………ずっと…前から……あ、あなたのことが………(気絶)」
正輝 君があいなのか!? 美空さん、答えてくれ!! なんで…こんなことに……。
自分の手を見てみる。
人の姿に戻ったこの手。
でも……、
あたしの手は、美空節子の血で濡れていた。
辺りは、炎の紅蓮に包まれている。
震えてくる身体。
思い出す正輝の言葉。
あたしは、
あたしは―――
正輝 (節子のところに行こうとして、振り返る)……魅呼音!
魅呼音 (ぽろぽろと涙を流して逃げ出す)
正輝 ま、待ってくれ! 魅呼音!!
GM と、そこで。
夕美 あー………(足を引き摺りながら、近づいてくる)。
正輝 夕美っ!?
GM そして、ぼんっぼんっ!! と爆発音がすると、向こうの天井が少し崩れるのが見える。さて、ここで正輝は、魅呼音、夕美、節子……誰のもとに駆け寄る?(ニヤリ)
正輝 ぐぁ……お、俺はどうすればいいんだ!?
夕美 あー……(手を伸ばす)。
魅呼音 (炎の向こう側に消えようとしている)
GM (ここで、密やかに時計の秒針を見る。残り、10秒…)
正輝 くそ、どうすりゃ……。
GM (残り5秒……)
正輝 夕美…だ……(苦渋の選択)。
GM 正輝が夕美のもとに駆け寄ると、節子は崩れた天井の下敷きになる。そして、魅呼音が走り去った廊下の方も天井が崩れて通れなくなる。
正輝 ちくしょう……夕美しか、俺には助けられないのか……また、俺は……。
GM/坂本 「(椎奈に)そろそろここも崩れそうですね。あらかた、ジャームも鎮静化しましたし、そろそろ逃げましょう」
椎奈 ……はい。
GM/坂本 「おや? あそこにいるのは……春日くんと…夕美さんですね……」
こうして、なんとか建物から無事に逃げられた。
炎上し、倒壊していくUGN施設を俺たちは呆然と眺めていた―――
+ 涙の咆哮Ⅲ +
炎上する建物の中。
「ごほっ、ごほっ」
口から、血を吐いてしまう。
どうやら、さっきの傷が原因らしい。
あたしはひび割れた壁に手を置き、うずくまる。
「正輝に……見られた……嫌われちゃった……。あたし……もう、だめだ……」
そう、呟く。
身体はすごくだるいのに、頭の芯がとても熱い。
そのせいだろうか、涙が出てくる。
もうだめだ……。
そう思っているあたしの肩に、ぽんっと手を置かれる。
振り返ると、あたしのよく知った顔だった。
ここにいるはずのない人。
なんで、こんなところに……?
そこには、
あたしが今まで見たこともない、
妖艶で、
不気味で、
そして、
なにか、
大事なものが欠けた、
コワれた笑み。
危険な予感がして、あたしはとっさに能力を使おうしたけど、
「化け物」
と、正輝の声がフラッシュバックして、
胸がどくんっと鳴り、激痛が走る。
あたしは、苦しくて胸を押さえて、再びうずくまる。
そして、あの地下室で嗅いだ、
あの甘い匂いがあたしを包み込んだ―――
ダブルクロス・リプレイ - LoveSyndrome/恋愛症候群 -
RainyRoute編――END
次回よりEpilogueに入りますので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!




