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RainyRoute 編 第三章:UGN施設Ⅰ

 


    + 合流Ⅰ +

 


 


 10月18日(木)―――


GM 椎奈がUGNと連絡を取った後、正輝がいるUGN施設に連れていかれた。そして、無傷の椎奈が事情説明を求められるね。

椎奈 それは、包み隠さず報告します。

GM 了解。椎奈にも現在の状況を説明して。

  /上司 「しばらく、あなたにも事件の捜査から外れてもらいます。UGNに反した行動には目をつぶりましょう。以後、気をつけなさい」

椎奈 ……はい。

GM/上司 「当分の間、あなたには春日くんを監視する役目をお願いするわ」

椎奈 ……(頷く)。

GM/上司 「UGNは、全力で犯人と暁さんの行方を追っていますから……」

 


 


GM 正輝に会いに行く途中に、坂本さんに会う。

  /坂本 「春日くんのことをお願いしますよ、指宿さん。彼のそばにいてあげてください……」

椎奈 正輝は……そんなに…ひどいのですか……?

GM 坂本さんは、悲しげな表情で頷く。

椎奈 ……そう。

 


 


GM 正輝に割り当てられた部屋に着いた。

正輝 (窓から外をぼーっと眺めている)…………。

椎奈 まさ……(言葉が詰まる)。

正輝 (情けない表情をして振り返る)……誰…だ……?

椎奈 ……正輝、大丈夫?

正輝 (表情が明るくなって)……しぃ…な……椎奈っ! いきて、生きていたのか!!

椎奈 ……コクリ(頷く)。

正輝 よかった、本当によかった……(嬉)。

椎奈 …………(少し複雑な表情)。

正輝 (そこで気付いて)……あれ、魅呼音は…?

椎奈 魅呼音は……その………。

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


正輝 (暗い表情に戻って)そうなのか………。

椎奈 私は、葛篭苑吉さんに助けてもらったの……。

正輝 葛篭苑吉……?

 


 


 


    + 合流Ⅱ +

 


 


 私は、葛篭苑吉さんのこと。

 美空節子さんが、あいに捕まっているかもしれないことなどを、説明しました。

 


 


正輝 そんな…俺のせいで美空さん、まで……。

椎奈 …………。

正輝 椎奈……椎奈だけは、お願いだからどこにも行かないでくれ………(弱々しい声)。

椎奈 ……正輝……。

正輝 俺のせいで、みんな、みんな、夕美もアンナも……助けられなくて、俺、俺は……みんな助けたかったのに、俺はなんにも…魅呼音も……俺……みんなを守るなんて、できるわけなかったんだ……なにもできないんだ……。

椎奈 ……そんなことない。後悔する前に、やれることは…あるわ。

正輝 でも…UGNには、動くなって……。

一同 ダメだ、この男……(苦笑)。

椎奈 (淡々と)……あなたは……それで、なにもしないで後悔するの? 他の人にそう言われたから、そこでやめちゃうの? 恐くなって、このまま逃げるの?

正輝 ……俺は……。

椎奈 ……UGNがどうとか、そんなの関係ないわ……

正輝 だけど、夕美のことも……。俺は、もうこれ以上、誰も犠牲にしたくないんだ……誰も……椎奈まで、巻き込んで……もう一度、捕まったら……。

椎奈 (ぽつりと)そんなの……ずるい………。

正輝 (聞こえていない)だから、俺は…俺は………。

 


 


 『“ヒト”じゃないんだからな』

 そう言っていた正輝。

 “力”はあるのに。

 なにもできない、なにも考えない。


 これが、“ヒト”を越えたものでありながら、心が“人”のままの弱さ。

 これが、オーヴァードという存在。


 だけど、それは弱さだけではないと思いたいです。

 “人”の優しさが、その弱さが、救えるものがあると信じていたいから。

 初めて、私を笑わせてくれた人たちだから。

 だから、私は―――

 


 


椎奈 魅呼音は私の友達だから、助けに行く……。

正輝 ……椎奈……。

椎奈 あなたはここにいてくれていいから。私はUGNから抜け出てでも、魅呼音を助けに行くわ(決意の表情)。

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


正輝 俺は……。

椎奈 ………さようなら………(立ち去ろうとする)。

正輝 ま、待ってくれ! 俺は、俺は……俺も、魅呼音を助けたい。アンナも助けたいんだ……。

椎奈 だったら……。

GM と、ここで施設内がばたばたし始めるね。

二人 え?

GM/坂本 「(ドアを開けて)たった今、暁さんが保護されました。これから、この施設に運ばれてくるそうです」

二人 魅呼音がっ!?

正輝 そ、それで魅呼音は…?

GM/坂本 「とりあえず、詳しいことはまだ……。外傷はほとんどないそうですが……」

正輝 (夕美のことを思い出して)……魅呼音、無事でいてくれ……。

 


 


 


    + 合流Ⅲ +

 


 


GM この施設に、気絶した魅呼音が運ばれてきた。

椎奈 (駆け寄って)魅呼音! 魅呼音っ!!

正輝 魅呼音……。

魅呼音 ………………。

GM そして、魅呼音は治療室かなんかに運ばれていくね。

二人 …………(運ばれていく魅呼音を見送る)。

 


 


GM そして、真夜中になって、少しの間だけ魅呼音に面会を許される。

正輝 魅呼音、大丈夫なのか!?

魅呼音 (青ざめた顔で)…だいじょうぶ……二人とも……無事で…よかった……。

椎奈 ……魅呼音……(心配)。

正輝 あいに、あいになにかされなかったのか?(心配)

魅呼音 ……(沈黙)……。

GM/医者 「そろそろ、休ませないといけませんので、これ以上は」

正輝 分かりました……。

 


 


 二人がいなくなった後、あたしは身体に起こっている異変を感じていた。

 胸の内から湧き上がる悪寒が、体中を駆け巡るような。

 吐き気がするような最悪の感覚。

 あいに、打ち込まれた薬……。


 それは、小さな穴でさえ空くとダムの堤防が壊れてしまうかのように。

 あたしの崩壊を感じさせた。

 間違いなく、ウィルスの侵蝕がこうしている間にも進んでいることが…………。

 検査を続ければ、もしかしたら薬の中和剤を作れるかもしれないと、医者に言われた。

 まだ、一回の投薬であれば、その可能性は充分あると。

 ただ、それまでの間、絶対に安静にしてなければ、とり返しのつかないことになるとも、言われた。

 


 


 いやだ。

 いやだ。

 ジャームになるなんて、いやだ。

 恐い、とても恐い。

 今まで、目をそらしてきたことに。

 あたしは直面しようとしていた―――


 正輝…………。

 恐い、恐いよ―――

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


 


 


 


    + 彼と彼女Ⅰ +

 


 


 10月19日(金)―――


GM 椎奈が魅呼音の病室に来た。

椎奈 (魅呼音に)気分はどう……?

魅呼音 (弱々しい声で)あんまり、よくはないけど……ん、大丈夫だから……。

椎奈 そう……リンゴでも、食べる?

魅呼音 ……椎奈、ありがと……。

椎奈 …………(不器用にリンゴの皮を剥き始める)。

魅呼音 …………。

二人 …………。

魅呼音 ……ねぇ、椎奈はなにもされなかった……?

椎奈 …え、ええ。葛篭さんに助けられたから大丈夫だった……。

魅呼音 そっか、よかった……。


(正輝 「椎奈は」と言った時点で、魅呼音がなにかされたと言ったのと同じだよな……)

(夕美 椎奈さんは、そのことを聞くの?)

(椎奈 本人が言わない限り……聞かない……聞けないわ……)


二人 ――(リンゴを食べる)――

椎奈 それじゃあ、私、そろそろ行くから……。

魅呼音 ああ、うん……。

椎奈 じゃあ…(立ち去ろうとする)。

魅呼音 あ…待って……。

椎奈 え…?(振り返る)

魅呼音 あ、いや、なんでもない……。

椎奈 ……そう。すぐに元気になって、正輝を安心させてあげてね……(微笑)。

魅呼音 ……そう、ね……(微笑)。

 


 


GM その後、少し経ってから正輝が来る。

正輝 魅呼音…どうだ、体調の方は?

魅呼音 あ、だいぶよくなったから……。

正輝 そうか。魅呼音も…夕美みたいになったかと思って…俺……(不安)。

GM 魅呼音は、夕美のことをまだ知らないよ?(苦笑)

魅呼音 (ぽつりと)夕美ちゃんみたい…?

正輝 (魅呼音の目を見ながら)魅呼音は、魅呼音はなにもされなかったのか?

魅呼音 …………(暗い顔)。

正輝 …………。

魅呼音 べ、別に、なにも。気がついたら、ここにいて……(ぎこちない笑み)。

正輝 …………なにか、あったのか?

魅呼音 …大丈夫だから、本当に…本当だから。

正輝 ……嘘、ついていないか? 俺に、心配かけないようにしているだけなんじゃないのか……?

 


 


 お願いだから、そんなこと言わないで、正輝。

 あたし、そんなこと言われたら。

 今、あんたにそんなこと言われたら。

 必死に抑えている恐怖が、湧きあがってきてしまう。


 気付かないで―――

 気付いて―――


 恐い。

 恐い。

 とても恐い。

「大丈夫…だから……本当に、大丈夫だから……」

 あたしはそう言いながらも、もう耐え切れなかった……。

 


 


魅呼音 ……正輝……正輝…まさき………(しがみついて、鳴咽を始める)。

正輝 魅呼音……(背中をぽんぽんと叩く)。

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


二人 …………。

魅呼音 …………(鳴咽)。

正輝 …………。

二人 …………。

正輝 お前まで、いなくなったら……。

魅呼音 (少し正輝から離れて)……そんなこと言わないで。椎奈だっているじゃない……。

正輝 そんな問題じゃないだろう!? お前がいなくなるなんて、俺には考えられない!!

 


 


 どこかで、見たことがあります。

 こうして、胸を貸す正輝。

 必死に慰めようとする正輝。

 その胸の中にいる女の人は、少し安心したような表情をします。

 その女の人は、私じゃなくて。

 それが、今日は魅呼音で。

 ずきり、と胸が痛みます。


 魅呼音のことが気になって、戻ってくると中から正輝と魅呼音の声が聞こえてきました。

 そっと、私が中を覗くと、正輝が魅呼音を慰めていました。

 


 


 私なんかより正輝とずっと長く付き合ってきた魅呼音。

 私の初めてできた友達で。

 私なんかより、楽しく正輝と話ができて。

 私なんかより、ずっと普通の女の子―――

 


 


 ああ、胸が苦しいです。

 この感情は、

 こんな感情は、

 湧き上がるこの気持ちは、けしてウィルスのせいなんかではなく。

 じわじわと、染み出るようなこの気持ち。


 なにがあったのか、私には分からないのですけど。

 魅呼音が間違いなくあいになにかされたことは分かるのですけど。

 私には、それがとてもずるく思えます。

 正輝に頼る魅呼音がずるく思えてしまいます。

 否定したいですけど、間違いなくそんな私がいます。

 


 


 どろどろとしたこの感情は、

 向けられた先は、正輝なのか、魅呼音なのか。

 分からないまま、私はそこから立ち去りました。

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


 憎しみにも似た、妬み。

 また、ずきり、と胸が痛くなりました―――

 


 


 



    + 彼と彼女Ⅱ +

 


 


GM それじゃあ、お昼になって、正輝と椎奈が施設の食堂で会う。

椎奈 ……目を合わせないで、カレーを食べています。

正輝 (椎奈の目の前に座って)なあ、椎奈……魅呼音、大丈夫かな…?

椎奈 …………。

正輝 魅呼音のことが心配だよ……。

椎奈 …………(無言のまま、カレーを食べ続ける)。

正輝 (誰ともしれず)……俺…魅呼音と中学から付き合いがあるけど……ずっと、オーヴァードだって知らなくて……傷つけてきたのかもしれない……。

 これ以上、あいつを傷つけたくない……なあ、椎奈?

椎奈 …………。

正輝 ……椎奈なら、なんとかできないか? 俺じゃあ、どうにも……。

椎奈 …………。

正輝 椎奈? 聞いているのか? 今、大事な……。

椎奈 (ぽつりと)……正輝は、魅呼音と仲がいいから……。

正輝 そりゃあ…当たり前だろ…?

椎奈 ……だから、正輝が元気付けてあげて……。

正輝 な、なんだよ。椎奈だって、魅呼音と仲いいだろ? こんな時だから、椎奈も魅呼音をはげましてやってくれよ!

椎奈 私なんかより、正輝の方が魅呼音をずっとうまく元気付けられるわ……。正輝だって、その方がいいんでしょ……?

正輝 なに言ってるんだよ、椎奈? 椎奈がなに考えているんだか、俺には分からないよ……。

 


 


「私だって、正輝の考えていることが分からない!!」

 私は、すでに叫んでいました。

 机を叩いて、立ちあがりました。

「あの日だって、デートに誘うし。私のこと人間じゃないって言うし! 私は、どうせ普通の女の子になんてなれないからっ!!!」

 感情的に、なります。

 怒っているから、涙が出てくるのでしょうか?

 胸が痛いから、涙が出てくるのでしょうか?

 悔しいから、涙が出てくるのでしょうか?

「なに言ってるんだよ、椎奈? 俺、そんな話じゃなくて、魅呼音の…」

 困惑したように、私を見る正輝。


 分かってもらえない、この気持ち―――

 


 


椎奈 ばか……馬鹿っ!!

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


正輝 なんで怒っているんだよ!? 俺はただ、みんなのことを心配しているだけで…っ!

椎奈 みんなのこと、みんなのことって、魅呼音が一番大事なんでしょ!?

正輝 だから、なんでそうなるんだよ!? さっきから、椎奈、おかしいぞ!!

椎奈 だって、さっきだって、魅呼音と抱き合っていたじゃない!!!

正輝 あれは…そういうんじゃないだろ!! 魅呼音のことが心配だから…。

椎奈 ほら、魅呼音が一番心配なんじゃない!

正輝 違う! 魅呼音は、オーヴァードになってから数年しか経っていないし、こんなことになって……。

椎奈 じゃあ、正輝はいつオーヴァードになったかで人間かそうじゃないかって決めるの!? 私は化け物ってことなの!?

正輝 違う! だいたい、なんでそこまで化け物とかオーヴァードとかにこだわるんだよ!!!

椎奈 正輝には、分からない! 私の気持ちなんて、分からない!!

正輝 俺だって、椎奈のことは分からない!! 俺は、そんなことにこだわっていないし、そんなところで椎奈のことが好きなったんじゃないんだ!!!

椎奈 ……え……?

正輝 ……あ……。

椎奈 今、なんて言った…の……?

正輝 ……それは……。

椎奈 それは…?

二人 …………。

正輝 (決心して椎奈を真剣に見つめる)……俺は、椎奈のことが…好きだ……誰よりも、好きなんだ……。

椎奈 正輝……? それ、本当……?(顔が赤い)

 


 


 


    + 彼と彼女Ⅲ +

 


 


GM さて、魅呼音は検査の帰り、廊下を歩いていると、食堂から正輝と椎奈の声が聞こえきた。

魅呼音 ……え、なに?(と覗きに行く)

 


 


椎奈 …………(顔赤い)。

正輝 …………(顔赤い)。

二人 ………………。

GM ちなみに、ここは人がそれなりにいる昼間の食堂なんだがね(笑)。

正輝 そんなこと、気にしない(笑)。「俺は、椎奈のことが大事だ……大切にしたいと思う。守りたいと思う……」

椎奈 ……正輝……。

正輝 今まで、なにも守れなかった……みんな、守りたかったのに……。夕美やアンナや母さんやみんな、みんな……。

 周りことが見えなくなっても、椎奈だけは、椎奈だけは……守りたい! 守りたいんだ!!

椎奈 正輝……(そっと手を握る)。

正輝 どうしたらいいのか、全然分からないけど。なにができるか分からないけど。なんにもできないかもしれないけど……こんな、情けない俺だけど……。

 俺一人でも……あいの所へ行って……だから、椎奈はここにいてくれ。危ないのは俺一人で充分だから……。

椎奈 (首を横に振って、笑う)…………。なんでも、一人で背負い込もうとするのは正輝の悪い癖よ………。私は守られるばかりじゃなくて、あなたのそばで、一緒に守ってあげる……あなたの、守りたいものを……。

正輝 ……椎奈……(手を握り返す)。

 


 


魅呼音 (そっと立ち去りながら)……よかったね……椎奈……(寂笑)。

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 

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