RainyRoute 編 第一章:螺旋状の道(2)
+ UGN +
UGN日本支部関東本部―――
GM/坂本 「指宿さんに報告しておかなければならないと思いましてね。あなたに関係がない話でもありませんし……」
椎奈 私に関係がある……?
GM/坂本 「ですが、先に言っておきます。たぶん、ここから先はUGNとして調べて欲しくない領域に入ります。それでも……聞きたいですか……?」
椎奈 ………聞き…たいです………聞かせてください。私に関係があるお話というなら……。
GM/坂本 「分かりました……。10年前の“オーヴァード化”誘発薬……あれは、どうやらファルスハーツが作ったものではなく、もともとUGNから脱走した研究員が流していたものだと今日分かりました。
こちらに戻って直接調べなければ分からないものばかりでしたよ……」
椎奈 そうなんですか……。
GM/坂本 「ええ、それでここからはUGN内でもみ消しがあった部分なので詳しいことは分からなかったのですが、その脱走した研究員は葛篭 苑吉……当時、“抗体レネゲイド薬”を作っていたグループの副主任をしていました。
その薬は発症したものに使用すると、ウィルスの侵蝕を鎮静化させるという画期的な効果がありました。副作用が判明するまでは……」
椎奈 …………。
GM/坂本 「これは、定期的に投与しないと、爆発的に侵蝕率が上昇するという危険なものだったんですよ。また、まだ発症していないものに使用する、“オーヴァード化”を誘発します」
(魅呼音 つまり、これを一回使用すると一生使い続けないと意味がないものなのね)
(椎奈 まるで、麻薬…みたいね……)
GM そうだね。これを麻薬のようにしたのが10年前の“オーヴァード化”誘発薬。そして、それをさらにファルスハーツ側で改良したのが9月の事件の“オーヴァード化”誘発薬というのが真相。
誘発薬の名称は特に決めていないけど。
GM/坂本 「そして、当時その薬の研究主任をしていたのが……指宿さん……あなたの父親なんです……」
椎奈 ……がびーん(心の衝撃の擬音)。
GM がびーん…って、本当にショック受けているんかい?(笑)
椎奈 (淡々と)これでも、かなり。
GM そ、そですか。
/坂本 「人体実験に移る前からその“抗体レネゲイド薬”の危険性を訴えていたのが、葛篭苑吉。そして、副作用が立証され、このプロジェクトが凍結する寸前に葛篭苑吉は人体実験の被験者である3人の子供のうち2人を連れて逃亡。もう1人は逃亡寸前にUGN施設内で射殺……」
椎奈 それって、私が……。
GM/坂本 「(首を横に振って)あなたのせいじゃありませんよ……その少年は自らをジャーム化して囮になったそうです。もし、あそこで指宿さんが撃っていなかったら、あなたの方が危なかったのですから……」
…………。
理屈では分かります。
あの時、正面にいた私がああしなかったら私自身が危険であったことも分かります。
だけど………。
もっと、
もっと別の方法があったのかもしれない。
今でも、そう思ってしまいます。
GM/坂本 「今では、UGNに葛篭苑吉やそのプロジェクト自体があったという痕跡はほとんどありません。そして、葛篭苑吉が逃亡してから数ヶ月後、Y市でその薬物の粗悪品が流通するようになりました……」
椎奈 …………。
GM/坂本 「もしかしたら、まだあの街に葛篭苑吉はいるのかもしれませんね……」
椎奈 そう、ですか……。
この時、私は父親に会わなければならないと思いました。
いつも任務のことしか聞いてこない、そして聞かれたことにしか答えない、冷たいやりとり。
そこに親子という関係を私はとても見出せません。
だけど、私は聞かなければならないと思いました。
それは、任務のためなのか、正輝のためなのか、なにより自分のためなのか。
10年前、UGNで、あの街でなにがあったのかを……。
しかし、この時の私は10年前の真実にどのような意味があるのか、まだなにも知らなかったのです―――
GM/坂本 「てっきり、“震夜”の影響で10年前の事件が曖昧になっていたのかと思いましたが、あれはUGNから流出した薬だということを隠匿するために報告書が改竄されたようです。もし、これが外部に漏れると、国に対してUGNの立場が悪くなるから……というのが大方の理由でしょうね」
椎奈 …………。
GM/坂本 「ファルスハーツが絡んでいたという事実も、少々怪しくなってきましたね……」
椎奈 (意を決したように)父に……会ってみます……。
GM/坂本 「そう、ですか。すみませんね……これ以上のことは、調べることは私では難しいので……助かります」
椎奈 いいえ、自分自身のためでもありますから……。
GM/坂本 「……分かりました。……おっと、もうこんな時間ですか。私の方でももう少し調べてみます。それじゃあ、私はもう行きますので(にっこり)」
椎奈 はい……。
GM じゃあ、指宿家まで来ました。
椎奈 久しぶりに……帰ってきた………。
GM そうだね。もともと、椎奈は一人暮らしだったし、任務であちこちに引っ越したりするから。
椎奈 た、ただいま……。
GM/指宿母 「椎奈っ、おかえりなさい」
椎奈 母さん……。
GM/指宿母 「あなたが帰ってきてくれて、お母さん嬉しいわ。ご飯、食べてきた?」
椎奈 ……食べてない……。
GM/指宿母 「そう、だったら今夜の夕ご飯、温め直さなきゃね(嬉)。椎奈が帰ってくるんだったら、椎奈の好きな料理にしておけばよかったわ」
椎奈 ちょっと、こういうの照れる…わ……。
GM/指宿母 「明日は、椎奈の好きなものを作ってあげるわね」
椎奈 ……うん(コクリと頷く)。
GM/指宿母 「お父さんは明日には、帰ってくると思うから……」
椎奈 ……そう(暗い顔)。
GM/指宿母 「どう、学校の方は?」
椎奈 ぼちぼち(笑)。
一同 ぼちぼち?(笑)
椎奈 それと、友達ができた……。
GM/指宿母 「そうなの。じゃあ、お祝いしないとねっ」
一同 友達ができただけで!?(笑)
GM なにせ、椎奈から「友達が…」という話なんて初めてですよ(笑)。
椎奈 (母親に向かって)………うん(嬉しそうに微笑む)。
+ 家族Ⅰ +
「椎奈……なぜ、ジャームを撃たない!? そうしなければ、死ぬのはお前なんだぞ。ジャームは敵だ。私を失望させるな、椎奈」
そう叱責する父。
とても冷たい目で、私のことを見つめる。
銃が撃てなくなった。
どうしても、相手があの子供のジャームに見える。
あれは、正しかったの。あれは、間違っていたの。よく分からなかったの。
だから、許してとも言えなかった。許して欲しい相手は父親なのか、殺してしまったジャームなのか、それとも自分なのか。
当時は分からなかったけれど。
今では、そのことはもういいんです。
そして、父はいつも任務のことしか聞かなくなってしまいました。
そして、私は気がつくと銃を撃てるようになっていました。
きっかけなんてお互いに特になかったのかもしれません。
ただ、それが自然なのでしょう。
ただ、そうしなければ生きていけなかったのでしょう。
ただ、それだけのことだったのでしょう……。
GM 10月13日(土)の朝。
/指宿母 「椎奈、朝ですよ。ご飯、できているわよ」
椎奈 ……おはよぅ……母さん……。
GM/指宿母 「おはよう、椎奈(愛情のある笑顔)」
椎奈 ……コクリ(頷く)。
GM/指宿母 「今日は、椎奈の好きなものだけで、朝ご飯を作ってみました~(にこにこ)」
椎奈 ……むしゃり(食べる擬音)。
一同 変な擬音で食べるなっ!(笑)
GM じゃあ、むしゃりむしゃりと朝ご飯を食べたということで(笑)。ちなみに、父親は夜遅くに帰ってくるからね。
椎奈 ……了解。昼間は……なにをしていようかしら……?
GM/指宿母 「それじゃあ、お母さんとお買い物にいきましょう。せっかく帰ってきたんですもの、椎奈の好きな物買ってあげるわよ」
椎奈 ……え?(困惑)
GM/指宿母 「なにが欲しいの? お洋服? それとも、本かしら?(にこにこ)」
椎奈 ……普通で…いいと思う……。一緒にいてくれるだけで…いいから……。
GM/指宿母 「それだけでいいの?」
椎奈 うん……。そんなに気を使ってくれなくていいから……。
GM/指宿母 「椎奈が甘えてくれないと、お母さん寂しいわ」
椎奈 …………。
GM/指宿母 「ほらほら、たまにはお母さんらしいこともさせて…ね、椎奈…(優しく微笑む)」
椎奈 …………コクリ(頷く)。
GM/指宿母 「じゃあ、今日は外でお昼ご飯を食べましょ。それと、それと……」
GM というわけで、夕方近くまで色々、付き合わされた。夕ご飯も椎奈の好きなものばかりだったり。
(椎奈 私も夕ご飯のお手伝いするわ……)
GM という、ほのぼのシーンがあったということで。
(正輝 なぜ、同じ日のシーンの雰囲気が俺とここまで違うんだ……)
(椎奈 最初の頃と逆ね……(笑))
(春日 夕美 一方その頃、夕美は行方不明にぃ~(笑))
(魅呼音 夕美ちゃん、そこは笑うところじゃないわよ(苦笑))
GM その頃、魅呼音は坂本さんから電話がある。
魅呼音 はい、もしもし?
GM/坂本 「今から、渋谷まで来られませんか?」
魅呼音 今から…ですか? えっと、それはどんな用事で……。
GM/坂本 「少々、指宿さんのことで相談があるんですよ」
魅呼音 椎奈の…? 分かりました……。
GM というわけで、渋谷についた。
/坂本 「わざわざお呼びしてすみませんね、暁さん」
魅呼音 いいえ。
GM/坂本 「すみませんね、私もこちらで少々調べものをしておりまして、そちらまで行く余裕がなかったのですよ」
魅呼音 あの、それで椎奈のことで話したいことって……?
GM/坂本 「実は、指宿さんは今、色々とごたごたとしておりまして……その、もしかしたら、そのことで指宿さんがひどく落ち込んだり傷つく可能性もあります。その時は、指宿さんのお力になってくれませんか?」
魅呼音 それって……。
GM/坂本 「残念ながら、まだ詳しいことは言えないのですけど……。時期がくれば指宿さん自身から相談を受けるかもしれません……」
魅呼音 分かりました。あたしにできることなら、なんでもします!
GM/坂本 「ありがとうございます、暁さん。……ところで、春日くんは元気にしていますか?」
魅呼音 「え……」と、ここで正輝のことを坂本さんに話した方がいいのかな……? う~ん、正輝には他の人には言わないでくれって言われているし、やめておくわ。「(暗い表情で)ええ、元気です」
GM/坂本 「そうですか。まあ、なにかあったら連絡ください。私たちにできることがあれば最大限努力しますよ」
魅呼音 はい……。
GM/坂本 「…………それと、暁さんもたまには素直になることも必要ですよ。みんな、いい子たちばかりなので受け止めてくれると思いますがね。
怖がっているばかりじゃ、なにも変わりませよ」
魅呼音 ありがとうございます……。
GM/坂本 「頑張ってくださいね……」
+ 家族Ⅱ +
GM/指宿両親 「(夜遅くに帰宅して)椎奈……帰ってきていたのか。…任務はどうした?」「あなた、椎奈がせっかく帰ってきたのにまたそんなことばかり……」
椎奈 ……その任務のことで、お話があります……。
GM/指宿父 「…………」
椎奈 10年前に起きた事件のことです。
GM/指宿父 「10年前…? そんな昔のことは忘れてしまったな……」
椎奈 忘れているはずないです(父親を見据える)。
GM/指宿父 「…………」まあ、椎奈がある程度事情を知っていると判断したんだろう。「10年前のあの事件か……(ため息)」
椎奈 …………。
GM/指宿母 「本当のことをきちんと椎奈に話すべきよ、ね、あなた? 本当に、二人揃って不器用なんだから……(微笑)」
椎奈 本当の…こと……?
三人 …………。
GM/指宿父 「(遠い目をしながら)……お前は生まれた時、身体が弱かった。生まれた時に生命維持装置を使わなければならないほどにな……それでも、1年も生きられないと医者に言われた……」
椎奈 …………。
GM/指宿父 「だから、ウィルスの力しか現代医学では救う道がなかった。それしかないと思っていた……だが、それは過ちだったと分かった。なぜなら、すでにお前に“ヒト”としての人生はありえなくなってしまったのだから……」
淡々と語る私の父親の姿は、なぜだかとても小さく見えました。
いつも、恐いと思うその父親の姿が……とても弱そうで。
「まだ、自我が形成されていないオーヴァードは、UGN施設で監視されながら育つ。幼少期のオーヴァードは大変に不安定なものだ……自我、理性がないぶん、いつジャーム化してもおかしくないからな……。
そして、UGN内でのお前の立場は、他のUGNチルドレンと同じく実験体でしかなかった。
そんな幼少期を過ごして……普通に生活できるわけがない……。
それからというもの、私は極力お前の実験に付き合い、衝動を抑えるための理性、生き延びるための手段を教えた。
だが、私はどうしてもお前を“ヒト”に戻してやりたかった。だから、私はレネゲイドウィルスの侵蝕を食いとめる“抗体レネゲイド薬”の開発に着手した……お前が、完全に能力に目覚めてしまう前にな……。
しかし、急ぎの余りに。副主任をしていた葛篭の制止も聞かずに、人体実験に乗り出してしまった……その結果があれだ……。
あの10年前の事件は私が引き起こしたようなものだよ……」
無表情ともとれる、父親の顔。
しかし、その瞳が微妙に揺れているのを私は見てしまいました。
私のために……手を尽くしてくれた父親。
だけど、そのやり方は間違っていました。
子供でもすぐに分かる間違い方。
子供だからすぐに分かる間違い方。
GM/指宿父 「結局、“抗体レネゲイド薬”は“オーヴァード化”誘発薬の原形に過ぎなかった。
そして、葛篭は実験体の子供たちと共に、逃亡した……。薬の影響で処分が決まった子供を救うためにな……あの時の葛篭の顔を忘れられない……。あれは紛れもなく“父親”の顔だったのだから……」
椎奈 …………。
GM/指宿父 「あの時はああするしかなかった……そう、自分に言い聞かせているだけなのかもしれない。私は……父親失格だからな……お前になにかしてやる資格すらもない……」
椎奈 ……そんなことない……なんて、今はまだ言えない……。
GM/指宿母 「あなた…椎奈……。資格がないだとか、失格だとかそんなことはないのよ……椎奈にとって、父親はあなただけなんですよ。大事な一人娘なんですよ……。
それが分からないあなたじゃ……それが分からない椎奈じゃないのに……」
椎奈 母さん……。
GM/指宿父 「理屈で感情は納得させることはできない……。それにこうして生きてきたからな……」
椎奈 不器用…な、生き方……。私も…そうして、生きてきたから……。
GM/指宿母 「ホント、二人とも強情で不器用なところばっかり似ちゃって……(微笑)」
「椎奈……。10年前の事件の詳しいことは私でも分からない。すでに、担当から外れていたからな。それに、UGN内でもそれに関する書類はほぼすべて処分されているだろう。
ただ、一つ。あの街にいる美空という医者なら、なにか知っているかもしれん。その当時、彼が事件に関わっていたことは知っている。私が言えることはここまでだ……」
みそら……?
美空……美空 節子。確か、前回の事件の榊学園容疑者リストの中で、重要度Cの欄に、父親が医者をしているという女子生徒の名前があったことを思い出しました。
なにか、関係があったのかもしれません。
見えないジグソーパズルが、少しずつ埋っていく気がしました。
「せっかく、家族がこうして集まったんですもの。みんなで、一緒になにか食べながらお話ししましょう」
母さんが嬉しそうにそう提案します。
私は10年前の事件と前回の事件の関わり。
そして、父親との関連。
それが分かっただけでも、もう充分だと思いました。
事後処理さえ終われば、榊学園でのあの暖かい日常がまたあるものだと、私は信じて疑いませんでした。
そう、
明日になるまでは―――
+ 10月14日(日)の午前 +
GM ほんの一日この街から離れていただけなのに、なぜだかひどく懐かしい気がする……。
椎奈 ……コクリ(頷く)。……出番……あんまりなかったから……(遠い目)。
GM う、すみません。正輝の方がメインなんで……(苦笑)。
*どのくらい正輝と椎奈の出番が違うかは、このリプレイの正輝と椎奈の一日の長さの違いからすぐに分かるはずです。
椎奈 それはともかく、美空節子さんの父親に会おうとする……。それと、坂本さんにも経過を報告しておきます。
GM 了解。
(椎奈 それにしても、昨日は久しぶりに満ち足りた団欒だったわ……父親とも、仕事以外の話をしたの……初めて……)
GM 「椎奈は、どんな本を読んでいるのだ?」と父親がぎこちなく聞く。
(魅呼音 「これ……」と、ボーイズ・ラブの本を見せる椎奈(笑))
一同 ヤな団欒だな(笑)。
椎奈 これから、美空さんに会おうと思うんだけど……この街の病院に勤めているって話よね? ……じゃあ、いきなりは会えそうにないんでまずは連絡をしてみる……。直通の番号とか知っているのかしら……? それなら、UGNの名前を出せばすぐに来てくれ……。
GM いいや、すでに椎奈の調べていることはUGNにとって好ましくない領域に入っている。要するに、すでに調べなくてもいいことまで調べてしまっているんだよ。だから、UGNの情報網は使えないから、せいぜい勤めている総合病院の番号ぐらいだよ。
椎奈 ……それでも、一応かけてみます……。「美空先生をお願いできませんか? 指宿の娘と言えば分かるはずです」
GM/受付 「少々お待ちください……」
椎奈 …………。
GM/美空父 「代わりました。指宿さんの娘さん…だそうだね?」
椎奈 ええ、そうです。それで、お話ししたいことが……。
GM/美空父 「今、残念だけど色々と大変なんでね。……12時になったら、なんとか時間を作れるから、それまで待ってくれないかな?」
椎奈 分かりました。じゃあ、一時間後に……。
GM/美空父 「それじゃあ、病院前の喫茶店で……」
椎奈 はい……(携帯を切る)。……これから、どうしよう……?
GM と、そこに、魅呼音から電話がかかってくる。
椎奈 (携帯をとって)もしもし、どうしたの……?
魅呼音 あ、椎奈……。
正輝 (電話越しから)椎奈、無事なのか?
椎奈 え、なにが…? 無事? え、ええ、無事だけど、それがなに……?
魅呼音 それが、夕美ちゃんとアンナがさらわれたのっ。
GM 椎奈に話しちゃうんだね、そのこと?
魅呼音 ええ、もうこれ以上、椎奈にだまっているのも……。
椎奈 (状況が把握できず)それは…どういうことっ?
魅呼音 「それが……」と今までのことを簡単に話すけど。
GM う~んと、そこはなにをしゃべったのか明確にしたいから、これとこれを話すときちんとして欲しいな。
魅呼音 ん、分かったわ。「正輝のメール相手が関係しているみたいんだけど……」と、それで今までに柳 澄さんと志木 瑞香さんもさらわれたこと。色々と危ない目にあっていること。夕美ちゃんとアンナもさらわれて、急いで探さなければならないことを話すわ。
椎奈 そ、そんなことが……(呆然)。
魅呼音 それで、警察にも頼めないし、UGNにだって頼めないし……。だから、椎奈……夕美ちゃんとアンナを探すのを手伝ってくれない…?
椎奈 ……分かった。
魅呼音 たぶん…だけど、ひとけのない建物の地下室に捕らわれていると思うのよ……。
椎奈 ……そういう場所なら…心当たりあるわ……。
正輝&魅呼音 えっ!?
椎奈 10年前に起きたジャーム事件の時に使われた……病院の廃虚なら……それに当てはまるわ……。
魅呼音 それじゃあ……。
椎奈 でも、この間…事後処理の任務でそこに行ったけど……そこにはなにもなかったわ……。
魅呼音 そ、そう……。でも、もう一度行って確かめる価値はあるわよね。じゃあ、これからあたしたちはそこに……。
GM と、そこに正輝の携帯にあいからメールが届く。
正輝 っ!
…………なにやら、向こう側が騒がしいです。
正輝がなやら声を張り上げているようですが、うまく聞き取れません。
正輝 大事な人って、俺にとってはどっちも大事なんだよっ!!
魅呼音 どうしたの、正輝? また、あいからメールが来たの?
正輝 これを見てくれっ!(と、メールを見せようとする)
GM とかやっているうちにも、時間が過ぎていくけど?(ニヤリ)
正輝 え!? 「どっちかだなんて、俺には選べない! ………そうだっ、魅呼音!! 片方に行ってくれないかっ!!」
魅呼音 え、片方ってなにが?
椎奈 ……どうしたの?
GM ちなみに、リアルタイムの秒単位で時間が進んでいるから(にやにや)。
正輝 え!? ど、どうすればいいんだよ!!? 夕美は俺の妹だぞ!?(混乱)
魅呼音 どうしたの、正輝? きちんと説明してくれないと、分からないわよっ!
椎奈 ……なにが……起きているの……?
正輝 アンナはどう……ええい、俺は夕美の方に行く!!
魅呼音 夕美ちゃんのところへ? だから、なにが……。
正輝 (電話越しから)説明している暇はない!! 魅呼音、噴水のある公園のベンチまで行ってくれ!! 急いでだ!!! 俺は、学校まで走っていくからっ!!!
魅呼音 わ、分かったわ(頷く)。
GM 全力で走っていくんだよね?
正輝 ああ、もちろんだ。
魅呼音 あたしは……うん、よく分からないけど、大変なことが起きているみたいだし……全力で走るわ。
椎奈 本当に、どうしたの……?
魅呼音 病院跡地のことは後で電話かけ直すから、ごめんっ!
椎奈 分かったわ……(頷く)。
+ 10月14日(日)の正午 +
椎奈 仕方がないので、約束通りに私は美空さんに会いに行きます。
GM 正午になってやってきたのは、メガネをかけた地味な感じの男だ。
/美空父 「それで、お話というのはなにかな…?」
椎奈 ……10年前の事件のことと、今回の“オーヴァード化”誘発薬の流通についてです……。
GM/美空父 「そうか、やはり10年前の事件と関係があるのか……」
椎奈 と、言うと…?
GM/美空父 「実は、一昨日から娘が家に帰ってこなくてね。電話も繋がらない……おそらく10年前と同じことが起こっているのだろうね……。そんな時に君から狙ったように連絡が来たんだよ……」
椎奈 (いぶかしむように)どうして、そんなにも冷静なんですか?
GM/美空父 「相手は得体も知れない組織だ。僕一人が騒いで娘を危険にさらすことよりも、素直に従った方がいいからね。10年前も、娘を人質に取られて……それで、薬の生成に協力させられていたんだ」
椎奈 ……それは、もしかしてUGN…ですか……?
GM/美空父 「いいや、ファルスハーツだよ。隣街にある病院跡地を知っているかな?」
椎奈 はい…。
GM/美空父 「あそこの院長はファルスハーツの息がかかった人間でね。あそこには薬を実験するための施設があったんだ。僕は詳しいことを知らないけど、薬を生成するための施設がいくつかあったらしいよ。まあ、そのほとんどはUGNによって潰されたみたいだけどね。
当時、UGN内でも色々とあったらしくて、かなり大雑把な処理をしていたみたいだ。事実、あの病院跡地が未だに残っているのもそのせいだね」
椎奈 ……その院長の周囲に、葛篭という男がいませんでしたか?
GM/美空父 「つづら…? さあ、聞いたことないな。院長も、事件発覚後に自殺してしまってね」
椎奈 そう、ですか……。
GM/美空父 「今年になってから、この街で行方不明者が急増しただろう? だから、薄々10年前と同じことが起こっているんじゃないかと思っていたんだ。それで、娘の節子だけは守りたかったんだが……こうして、いなくなってしまって……僕は娘を…守れなかった……。
あんなにいい子が、今どんな目にあっているかと思うと……くそ! 警察は頼りならないし……下手に動くと娘の命が危ない……」
椎奈 美空さん……(同情)。
GM/美空父 「(自分を落ち着かせて)……それにしても、君は指宿さんの娘なのか。あの事件の後、僕もUGNに捕まっていてね、その時に僕を釈放してくれたのが指宿さんなんだよ。
娘のためなら、彼もああするしかなったんだろう…ってね。
その時に、自分にも娘がいることを話してくれたよ。私は娘に嫌われているからね……って、寂しそうに笑っていたんだ。あの人は、君のことを愛しているんだろうね……」
椎奈 そう、なんですか……。
GM/美空父 「ああ、君が聞きたいことはこんなことじゃなかったね。あの病院には、地下に実験室があるんだ。もちろん、普通ではいけない地下二階というのがあってね。
所員用のエレベーターのパネルを外すと、地下二階のボタンがあるんだよ」
椎奈 地下二階が……あったんですね……。
GM/美空父 「うん、そこで僕も薬の実験をさせられていたからね。今では、電気が通っていないはずだから、エレベーターのはしごを使うしかないだろうけど。
噂では、地下三階があるなんて話があったけど、結局、UGNでも見つけることはできなかったみたいだよ。たぶん、ただの噂なんだろうけど……」
(魅呼音 いきなり、怪談染みてきたわね(笑))
(椎奈 そうね…(笑))
GM/美空父 「できれば、今回の事件に娘が…節子が関わっているようなら、助けてくれないか? お願いするよ……。UGNは信用していないけど、あの人の娘だから……信用するよ」
椎奈 わっ、し、信頼されている……。「分かりました……お任せください」とキッパリ答えます。
美空さんと別れた後、すぐに魅呼音から連絡が入りました。
そして、正輝の周辺で起きている事を説明されました―――
+ 10月14日(日)の午後 +
正輝 椎奈……。
椎奈 ……正輝……。
GM 椎奈は他のみんなにこうして会うのは久しぶりだな。
魅呼音 …………。
椎奈 ……病院跡地に行くわよ……。
正輝 ああ……。
GM 数駅先にある病院跡地を目指している。
正輝 ………大切な人を失いたくない………(ぶつぶつ)。
椎奈 (心配そうに)……正輝……。
魅呼音 ……ねぇ、椎奈? それで、病院跡地には地下室があるの?
椎奈 え、ええ。地下一階と地下二階があるわ……。地下二階に行くには、エレベーターのはしごを使うことになると思うけど……。
魅呼音 そっか……。夕美ちゃんやアンナがそこにいるといいわね……(と、正輝を見つめる)。
椎奈 そう、ね……。
正輝 …………(情緒不安定)。
GM ということで、街の外れにある病院跡地に着いた。
椎奈 着いたわ……。
正輝 (病院跡地を見上げる)ここか………。地下室があるんだよな?
椎奈 ええ、地下二階まであるわ……。
魅呼音 とりあえず、地下一階から調べましょ。
正輝 そうだな……。
念のため、地下一階を調べましたが、結局、前に調べた時と変わりはありませんでした。
地下二階に行こうとすると、正輝がなぜ階段がないのかを聞いてきました。
「地下二階は元々、秘密に作られていたみたいなの……私も前回調べた時には気付かなかったわ……」
そういって、私は電気の通っていないエレベーターに近づき、魅呼音と一緒に無理矢理扉を開けました。
「エレベーターでしか行けないんだけど……電気が通ってないから、エレベーター内のはしごを使うしかないわ……」
美空さんが言っていたように、地下二階はあるようです。はしごはかなり下まで続いていました。
GM はしごを降りると、扉がうっすらと見えてきた。終着みたいだね。
椎奈 地下三階はないみたいね……。(小声で)やっぱり、ただの噂かしら……?
正輝 にしても、真っ暗だな……ライトとかないのか?
魅呼音 急いでいたから、なにも……携帯のパネルで照らすしかないわね……。
正輝 仕方ないか……とりあえず、この扉をこじ開けるぞ……。
GM ガコンガコンと扉が開く。そうすると、澱んだ空気が流れ込んでくる。
正輝 中は真っ暗だな……ビデオだと…蛍光灯がついていたし……スイッチとかないのか?
GM ぱっと見てもないね。
正輝 どういうことだ…? ここじゃないってことか…?
魅呼音 まだ、なにも調べていないじゃない。ひとまず、ここを調べてみましょう。
正輝 …そうだな。そういや、あいから連絡が来てもここじゃ圏外だし困ったな……。
GM いいや、電波は来ているよ。ファルスハーツの科学力だ(笑)。
魅呼音 そうなんだ。それで部屋はあるの…?
GM 心もとない明りだから、廊下全体を照らすことはできないけど、いくつも部屋はあるみたい。どうする? バラバラに調べる?
椎奈 別れない方がいいわ。
正輝 いや、ここは迅速に行動すべきだ。俺はこっちに行くから、二人はそっちを調べてくれっ。
魅呼音 ダメよ、正輝! 今までだって、そうやって一人になるそばから、いなくなっているのよ?
正輝 大丈夫だろ…俺たちは“ヒト”じゃないんだからな…。
椎奈 っ!!!
この時、私は正輝がなにを言ったのか理解できませんでした……。
だって、そんなことは私が一番分かっていたのですから。
分かっていたからこそ、悲しかったです。
怒りを通り越して、とてもとても悲しかったです。
だって、正輝の前では「普通の女の子」になれたような気がして、そんな些細なことが嬉しくて……でも、でも、やっぱり、正輝の前でも私は“ヒト”じゃなかったみたいです。
やはり、正輝にとっても私は「普通の女の子」じゃない…んですよね……?
正輝に、「普通の女の子」と思われているだなんて勝手に勘違いして。
私は…馬鹿みたいです……。
魅呼音 ……正輝、そんなこと……。
椎奈 (涙を堪えながら)た、確かに…私たちは“ヒト”じゃないけど……あなただって、そんなに弱いじゃないっ!!(感情的)
正輝 なっ……人を殺せる力だってあるんだぞっ!!
椎奈 だから、そんなんじゃ誰も守れない…!!!
正輝 くそっ!!! 椎奈に俺のなにが分かるって言うんだよ!!!
椎奈 ……分からない、分からない……っ!!!
二人 ……(にらみ合う)……。
魅呼音 やめなよっ! 二人ともこんなところで!! お願いだから……いがみ合わないでよ。ここは、一緒に探すのよ…いいわね?
三人 ……(沈黙)……。
正輝 ……分かった……。
椎奈 …………。
この後、私は気分を落ち着かせるために、黙々と部屋を調べていきました。
でも、さっきから正輝の言葉が反芻されるたびに、心にずきりと痛みを感じます。
そして、私たちの前に物々しい金属で作られた扉が現われました。上には冷凍室と書かれたプレートがあります。
軋みながら開く扉を開けて、私たちは中を覗き込みます。
すると、奥の方に古ぼけたトランクケースがありました。
用心しながら、トランクケースを開けてみると………中にはなにも入っていませんでした。
あれ?
今、なにか聞こえたような……?
耳を澄ましてみると、カツーンカツーンという足音が遠くの廊下からこちらに近づいてくるのが聞こえます。
私たちは息を殺して、身をかがめました。
携帯を閉じ、明りを見えないようにします。
カツーン、カツーン。
………………。
…………。
……。
カツーン。
そして、足音は冷凍室の扉の前で止まりました。
誰なの……?
暗がりの中を、私は目を凝らしてみました。
………?
……この甘い匂いは……?
まずいっ! ソラリス!?
しかし、私がそう口にする前に、急速に意識がなくなっていきます。
私が意識を失う前に思ったことは、
ああ、正輝や魅呼音は大丈夫なのだろうか?
ということだけでした―――
というわけで、「Side:椎奈」でした。
まだ続きますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。
ちなみに、投稿したらまさかの文字数制限エラー?
リプレイ投稿の連動企画で、「小説家になろう」側にはないと思われる1話の投稿文字数制限が、「TRPG ONLINE」側にはあるみたいです。
約2万字が限界の模様(それ以上は未反映?)。
ひとまず、第一章を二つに分けるという苦肉の策をしてみましたが……自分の投稿ミスじゃないよね?(遠い目)
もしも、違うようならどなたか教えていただけると大変うれしいです(2014/11/23)。




