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日常編 第二章

 


    + 始業式その午前 +

 


 


GM クラス替えの名簿が張り出されているよ。

正輝 どれどれ…?

魅呼音 ん…。……あった。あたしたち三人とも同じクラスみたいよ。

正輝 お、本当だ。やったじゃないか。

GM/連太郎 「2年B組ねぇ……ああ、日和川は違うクラスだな……」

魅呼音 ああ、そうみたいね。えっと……2年D組よ。

GM/連太郎 「あ~ぁ……学園美少女の五指に入るという日和川や志木瑞香とは違うクラスかぁ……(残念)」

魅呼音 なに、あたしだけじゃなにか不満でも(びゅっと寸止め)。

GM/連太郎 「滅相もございません(笑)」

 


 


 日和川(ひよりがわ)アンナ――俺の幼なじみだ。

 欧州系アメリカ人とのハーフで、どこにいても目立つ……そんな女の子だ。

 小学校高学年の時にアメリカへ転校してしまったが、去年から日本に帰国してきて、俺と同じクラスだった。

 


 


GM/連太郎 「日和川ってハーフだから、顔立ちも日本人離れしてるし、お嬢様だし……いやぁ、正輝といると可愛い子と友達になれて嬉しいぜ(サムズアップ)」

正輝 なんで、お前なんかと親友しているんだろうな……俺? ま、アンナは世間知らずな部分があるから、騙すようなこと言うなよ。

GM/連太郎 「オレはいつでも真剣さ。オレとならきっとベスト恋人…間違いなしだぜ。きらーん(歯が光った)」

魅呼音 「ベストカップル」…でしょ? あんた、やっぱアホね……(笑)。

一同 (笑)

GM/連太郎 「それはともかく(話題を変え)。志木瑞香って芸能人だっていうことを鼻にかけているって話らしいから、あんまいい噂は聞かないな……(苦笑)」

 


 


 志木瑞香(しきみずか)――なんでも、小さい頃からモデルなどをやっているらしい。

 らしい……というのは、俺としてはあんまり興味がなかったからだ。

 ただ、そういった部分で周りから浮いているみたいだ。また、それをさらに鼻にかけるもんだからますます周りとの確執が絶えないそうだ。

 


 


正輝 まぁ、彼女は彼女で大変なんだろうな……。

魅呼音 ん、そろそろ教室に行かなきゃまずいわね。

GM/連太郎 「そうだな……それじゃあ、行きますか」

 


 


 


    + 始業式その午後 +

 


 


 そうして、始業式はなにごともなく終わった。

「じゃあ、あたしは空手部の方に行くから」

 あたしがそう言うと、

「おう、それじゃぁな、魅呼音!」

 と正輝が返事をしてくれる。

 あたしはそのまま空手部の部室に行き、先輩たちと部員勧誘の話をした。



「はぁっ!」

 気合と共にあたしは瓦を割る。

 そして、少し遠くから見学している一年生たちが拍手を送ってくれる。

「暁、お疲れさま」

 と先輩があたしにタオルを投げてくれた。

「どうもありがとうござます、先輩」

 あたしは汗を拭きながら、先輩に向けて一礼する。

 幼い頃から道場通いを続けていて、すでに習慣となっている挨拶だ。

 だけど、あたしは内心では全力で空手ができない自分をあまり好きではない。あたしが全力を発揮する時、それは人の力を超えることを意味する―――

 


 


 あたしも詳しいことは知らないが、今、世界情勢はゆるやかに荒廃へと向かっているそうだ。だけど、それは犯罪率の上昇や、景気停滞による経済破綻、内戦などのレベルではない。

 そう、それは“ヒト”ならざるものの存在が現われたことによる。


 今から約20年前にこの世界に未知のウィルスが撒き散らされた。

 それは、動物植物問わず色々なものに感染し、人も例外ではなかった。そして、そのウィルスはDNAを勝手に書き換え、宿主を人知の超えた生命体へと変貌させてしまう。

 感染者は全員が発症するとは限らないが、発症した者のほとんどは、脳に異常を来す。その時に、理性が吹き飛ぶほどの邪な衝動が起こるのだ。

 発症してなお理性があるものも、いつその衝動に抗えなくなり、知性なき異形と成り果てるかわからない。

 世界各国はその存在を極秘のうちに認知し、続発する異形の事件を隠匿し始めた。

 そう、ウィルス感染者は邪悪であるとして。

 そのウィルスを『レネゲイド・ウィルス』と呼んでいる。


 しかし、理性ある発症者は組織を作り、発症者をなんとかまとめ上げた。

 世界へ受け入れられるべく組織された(ユニバーサル・)(ガーディアンズ・)(ネットワーク)

 逆に、世界の敵となるべく組織されたファルスハーツ。

 そして、“ヒト”ならざるものを隠匿し続ける世界各国。


 もちろん、このことは一般に知られることもなく事件は闇から闇へと葬り去られている。

 …………そう、あたしも発症者だ…………。

 それは中学生の時だった―――

 


 


 あたしは嫌な気分を吹き飛ばすために外を出歩くことにした。

 遠くから楽しそうな声が聞こえてくる。

 正輝と連太だ。

 どうやら、女子をナンパしている連太を正輝がたしなめているようだ。

「止めてくれるな、正輝~!」

「あほか! 男子バスケ部しかないのに、女子ばかり誘ってどうする!?」

「ばっか、男子バスケ部員なんちゅうもんは放っておいても入部してくる。だが! 可愛い女子マネージャーは放っておいても入ってこないだろうがー!!」

 そんなくだらない会話をしている。

 正輝はバスケをやるには身長は高くないが、技術と努力で補っている。成績もよく、なによりその顔立ちはとても整っていた。だから、中学時代から女子にものすごく人気があり、それは高校に入ってからより拍車がかかったと言える。

 あたしは最初は軽い奴かと軽蔑していたが、そのことにほとんど自覚がなく、また人をなごませる性格、というか雰囲気を持っている……。

 本当に軽いと言えば、連太だろう。

 あたしの知る中でも、口と性格の軽さで言えばかかなりのものだと思う。しかし、あんな奴でも義理堅く、友人を大事にしている。

 だから、あたしはあの二人と親友でいられる。

 それだけで、あたしは満足している。

 


 


 あたしは再び中学時代のことを思い出していた。

 中学時代は、あまりいい思い出がない。

 その頃、あたしはあの優しい正輝に恋をしていた。

 だけど、あたしは自分が“ヒト”でなくなってしまった。

 正輝に一度は思いを打ち明けたものの、“もう一つの姿”をもし見られたら……という不安、嫌われることの恐怖から逃げるためあたしは、返事を聞かなかった。そして、今も残る、秘密を黙って付き合っている後ろめたさ。正直、あの二人から離れようと思っていた時期もあった。

 だけど、もしもこれ以上あたしが大切だと思える日常を失ってしまったら、あたしは本当に“人”でなくなってしまう。

 そのことに気付かされ、あたしは親友という立場で居続けることにしたのだ。

 今に不満があるわけではない。

 ただ、あたしが望むものはあまりにも利己的な欲求に過ぎないのかもしれない。

 


 


 あたしは、そんなエゴイストな自分を受け入れられる日がくるのだろうか―――

 


 


挿絵(By みてみん)

 


 


 


 *詳しい世界観についてはルールブックを参照してください。また、シーン登場による侵蝕率上昇等の判定はリプレイ上カットしています。

 


 


 


    + 彼の日常 +

 


 


GM/連太郎 「止めてくれるな、正輝~!」

正輝 あほか! 男子バスケ部しかないのに、女子ばかり誘ってどうする!?(笑)

GM/連太郎 「ばっか、男子バスケ部員なんちゅうもんは放っておいても入部してくる。だが! 可愛い女子マネージャーは放っておいても入ってこないだろうがー!!」

正輝 あのなぁ……お前って奴はどうしてそうなんだ……?(ため息) いいから、お前はさっさと彼女でも作ればいいだろ?

GM/連太郎 「ふふ、オレはな……一人の女性では満足できない身体なんだ(悶えながら)」

正輝 くねくね踊るな(笑)。

GM/連太郎 「そういう、お前はどうなんだよ? オレが知る限りでも去年に……(ダイス2個振って→3、6)」


(夕美 36人もフったの、お兄ちゃんっ!?(笑))

(正輝 俺は1クラス分もフったのか?(笑))

一同 (爆笑)

GM 「3+6」で9人だよ(笑)。


GM/連太郎 「9人はフっただろ?」

正輝 いや、俺はバスケ部で手一杯だし、そこまで気を回せるほど器用じゃないよ。

GM/連太郎 「のわ……なんという、傲慢な発言だ」

正輝 まあ、それに、俺の理想の人が……。

GM/連太郎 「はいはい、また正輝の理想の女性像だよ。性格も見た目も可愛い子がたくさんいたのにな……」

正輝 …………。

GM/連太郎 「そういや、この後さ……お前ヒマか?」

正輝 え、ああ、まあ。

GM/連太郎 「じゃあさ、魅呼音とか夕美ちゃんとか誘って、どっか遊びに行こうぜ」

正輝 そうだな、たまにはみんなでパーっとやるか。……じゃあ、どこへ行くか決めないとな……。

GM/連太郎 「そうだなぁ……」

正輝 (ちょっと考えて)ひとまず…カラオケにでも行くか。

GM/連太郎 「OK!」

 


 


 俺らはこの後、カラオケへ行ってファミレスでご飯を食べた後、家に帰ることになった。

 これが、ずっと続く平凡な日々だと信じて―――

 


 


 


    + 彼女の日常 +

 


 


 道路脇の並木が、ヘッドライトの光の中へ流れるように現れては、暗闇の中へと去っていきます。

 私は目を凝らしながらすでに目標を補足していました。

 今回の私の任務は、ファルスハーツ絡みの薬品の回収及び妨害者の排除です。

 しかし、工場に駆けつけた時にはすでに薬品はトラックで搬送済みで、私はエージェントの運転する乗用車に揺られながら、そのトラックを追跡しています。

 前方に微かにゆれる車のバックライトを見つめながら、攻撃の機会を待っていました。

 


 


GM その薬品というのは、“オーヴァード化”を誘発するという薬だ。

  /UGNのエージェント 「困りましたね、このままだと関東圏を出てしまいますよ。なんとかなりませんか、指宿さん?」

指宿(いぶすき) 椎奈(しいな) (淡々と)………もう少し、そばに寄せてください。タイヤを撃ち抜きます。

GM/エージェント 「了解しました。なんとかしてみましょう」現在は埼玉県の奥地にある山道で、人通りがまったくない……というか、外灯すら見えない。細い山道でアクセルを踏むと、一気にトラックに近づけるね。

椎奈 …………(観察中)。

GM/エージェント 「どうですか、いけそうですか…?」と言った所で、ぱんっ! という銃声がする。「向こうも、やる気のようですね」

椎奈 (無表情のまま拳銃を構える)……行きます。

GM/エージェント 「運転は任せてください」


 *今回はカーチェイスをしながらの銃撃戦で、〈運転:四輪〉技能の達成値の差分値が車に命中する目標値に影響するという簡易のFSシステムを使用しております。また、エフェクトの組み合わせに《コンセントレイト》等の表記を省略しております。


GM/エージェント 「(ころころ)…すみません、指宿さん。少々運転をミスってしまいました」

椎奈 ………問題ありません。(窓から身体を乗り出して)タイヤに向けて、《コンバットシステム:射撃》……(ころころ)……達成値21です。

 


 

挿絵(By みてみん)

 


 


GM えっと、トラックの後輪に命中した。しかし、相手もハンドルを取られながらも狙撃者が君たちの車を狙ってくる。(ころころ)達成値は11。

椎奈 (ぽつりと)《守りの弾》+《コンバットシステム:射撃》。

GM/ファルスハーツの工作員 「ばかなっ、弾を撃ち落としただと!?」

椎奈 ……ちょっと、かっこいいでしょ……(呟き)。

一同 自慢してる!?(笑)

GM/エージェント 「すみません、私のフォローまでっ」と再び〈運転〉判定……(ころころ)……また、ファルスハーツ側の勝利だね。「すみませんっ」

椎奈 ……大丈夫、一気に片を付けます。《オウガバトル》、《コンバットシステム:射撃》で残ったタイヤを全て打ち抜きます。

一同 をををっ!!(賞賛)

椎奈 (ころころ)……当たった……(無表情)。

 


 


 きゅるるるるるるという音をたてながら、トラックは車体をガードレールにこすって、そして横転していきます。その瞬間、吹き飛んだトラック後部の扉が私たちの乗っている車の方に飛んできました。

「危ない……」

 と言う暇さえなく、そのまま乗用車がトラックに突っ込んでいきます。とりあえず、受け身というものを取ってみました。


 ………………。

 …………。


 一瞬――約6秒間気を失っていたようです。

 自分の怪我が軽いことを確認すると、急いで車から出てトラックに乗っていた工作員の身柄を拘束。どうやら、命に別状はないようです。

 そして、トラックの積み荷を調べてみようと覗き込むと中はからっぽでした。

「……ない」

 ぽつりと呟いた私の一言は、まだ寒さの残る風に吹かれて消えていきました。

 


 


GM それが、昨夜の出来事だ。

 


 


 

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