LoveSyndorme編 第六章:10月13日(土)
+ 手がかりを求めてⅡ +
正輝 一睡もできなかった……。
GM そうなんだ。それでいつものように夕美を起こして、ポストを見ると……新聞が入っていただけだ。
夕美 夕美も、近頃のお兄ちゃんのことで、あんまり眠れなかったよぉ。
GM そうそう、みんな悪いのは正輝だから……。
正輝 違う! 悪いのはあいだろっ!!(笑) 俺の方からメールを送るぞ。『澄さんは、どこにいるんだ?』
GM 特に、返事は来ないね。
正輝 何通も送るが。
GM いや、返事は来ない。今日は学校に行く?
正輝 そうだな……椎奈や…アンナのことも心配だし、学校に行ってみるか。
GM その登校途中。
アンナ 正輝、夕美、おはようございます(にっこり)。
正輝 アンナ……(ぽつりと)無事だったのか。(笑顔を作って)……ああ、おはよう。
夕美 あ、おはよう、アンナさん……。
三人 ……(沈黙)……。
アンナ ……文化祭が終わったと思ったら、もうすぐに中間試験ですわね。どう? お勉強してます?
正輝 ああ、もうそんな時期か……。勉強なんて全然やってないよ(苦笑)。
夕美 夕美も、やってないよぉ。
正輝 ……なぁ、それよりも二人とも近頃、周りに変な奴がうろちょろしてなかったか?
二人 ……それは……。
夕美 この間、夕美がフった奴がいたなぁ……でも、お兄ちゃんに報告することじゃないよね。「ううん、知らない」
アンナ いいえ、わたくしもそんなことはないですけど。
正輝 そうか、それならいいんだが。もし、周りで変なことがあったら、すぐに助けを呼ぶんだぞ。
夕美 夕美は、お兄ちゃんの方が心配だよぉ……。
正輝 …………。
三人 …………。
夕美 あっ、そう言えばさ、アンナさんってやっぱり英語得意なんだよねっ?
アンナ え、ええ。
夕美 夕美、いっつも英語に時間取られちゃって、試験勉強がピンチなんだよぉ。
アンナ あら、わたくしが英語できても、なにもすごいことはありませんわ。
夕美 でも、夕美、漢字とか全然ダメダメなんだよぉ。夕美、得意課目なんてないし……(笑)。
正輝 (そんな二人を眺めながら)俺が…この日常を守るんだ……。
GM とかやっている時に、〈知覚〉判定。
夕美&アンナ 失敗。
正輝 (ころころ)…成功だな。
GM 榊学園に向かう生徒の中に、美空節子が正輝たちの方をちらりと見て、足早に登校していく姿を見掛けた。
正輝 美空さん…?
アンナ どうしたんですの、正輝?
正輝 いや、ちょっと知り合いがいたから。
アンナ そう……。(小声で)ねぇ、正輝。わたくし、正輝がなにを悩んでいるのか分かりませんわ。でも、一人で背負い込もうとしないで。一人ではできないことでも、二人でやれば、みんなでやればどうにかなることもありますわよ?
正輝 アンナ……。
アンナ わたくしは、正輝の…幼なじみですわ。例え、微力だとしてもなにかの力になれるのですからね。それを忘れないで(微笑み)。
正輝 俺は…アンナに話すべきなんだろうか、このこと……?
GM さあ、その辺は正輝の判断で。
正輝 ……悪いなアンナ、話せる時が来たら話すから。
アンナ ええ(微笑)。…わたくし、もう教室に行きますわね。それでは、ごきげんよう、正輝、夕美。
正輝 ああ、またな……。
夕美 うん、またねっ!
GM 今日は土曜日なんで、昼休みはないが屋上に正輝と連太郎がいる。魅呼音は?
魅呼音 あたしは、部活に行ってるわ。
GM/連太郎 「今日も、指宿さん休みだったな。まあ、あんまし身体とか丈夫そうに見えなかったし風邪でも引いているんじゃないかな」
正輝 ああ、そうだな。後で電話でもかけてみるか。
GM/連太郎 「それがいいかもな。……まあ、これでも見て、正輝も元気を出せ」と一冊の本を取り出す。
正輝 なんだ、これは……? パラダイス女子高生IN学園天国……? エロ本じゃないかっ!(笑)
GM/連太郎 「不満なのか? もしかして、ビデオの方がよかったか?(笑)」
正輝 いや、ビデオは…いらん。これも…いらん(笑)。(苦笑しながら)元気付けてくれて、ありがとうな。
GM/連太郎 「(鞄に本をしまいながら)……なあ、正輝。今日はさ、中学時代みたいに魅呼音とかと三人だけでどっか行かないか?」
正輝 え?
GM/連太郎 「いや、なんとなくだがよ。たまには、そういうのもいいんじゃないかって思ってな。悩みを忘れてパーッと遊ぶのも大事だぞ」
正輝 ……そうなりたいんだけどな……。
GM/連太郎 「そうか、それならいいんだ……」
正輝 悪いけど、澄さん探さないと……。
GM/連太郎 「澄さん? 澄さんがどうかしたのか?」
正輝 「あ、いや……」しまった、連太にはこゆみのことしか話していなかった……。
GM/連太郎 「もしかして、まだ、あのメールが来るのか?」
正輝 ああ。
GM/連太郎 「お前、いい加減アドレス変えれば?」
正輝 ちょっと、そういうわけにもいかないんだよな……。
(魅呼音 まあ、唯一の連絡手段だもんねぇ)
(正輝 それよりも、俺は連太に相談した方がいいのか?)
GM だから、そういうのは自分で判断してくれ。
(正輝 相談したいんだが、連太は普通の人間だし……う~ん、う~ん(悩))
GM (長い間悩む正輝を見て)決まらないなら、そのままここは悩んで終わったことにするけど。
(正輝 …………。……話すことする……全部は話せないが、だいたいのことは相談したい)
正輝 実は、夕美の家庭教師をしていた澄さんなんだけど……。澄さん、家に帰ってきてないんだ。
GM/連太郎 「それが…どうかしたのか?」
正輝 「いや、それで、あいが澄さんになにかしたような感じのメールが送られてきたんだ……。澄さんを誘拐したみたいなんだよ……」さすがに、あのビデオのことまでは話せないし……。
GM/連太郎 「さらわれたって……お前、それ、証拠とかあんのかよ?」
正輝 う、いや、ある(暗い表情で)。それで、俺は一刻も早く澄さんを探さなきゃいけないんだ。手がかりはひとけのない建物の地下室ってことぐらいしか分からなくて……。
GM/連太郎 「……そうか。分かった、お前の言うこと信じるよ」
正輝 連太……。
GM/連太郎 「ひとけのない建物の地下室か………はっ! まさか、おばけマンションっ!!」
一同 (苦笑)
正輝 ……行くだけ、行ってみるか……。
GM/連太郎 「そうと決まれば、善は急げだ。今から行ってみようぜ」
+ 手がかりを求めてⅢ +
GM 部活が終わる頃、魅呼音に坂本さんから電話がかかってくるよ。
魅呼音 はい、もしもし?
GM/坂本 「今から、渋谷まで来られませんか?」
魅呼音 今から…ですか? えっと、それはどんな用事で……。
GM/坂本 「少々、指宿さんのことで相談があるんですよ」
魅呼音 椎奈の…? 分かりました……。
正輝 (携帯電話で)なあ、魅呼音。今からおばけマンションに行くんだけど、一緒に行かないか?
魅呼音 ごめん、今からちょっと用事があって、無理なのよ。後で連絡するから……。
正輝 分かった、それじゃあ、また後でな(電話を切る)。……仕方ない、俺らだけで行くか。
GM/連太郎 「もしかして、武器かなんか持っていった方がいいんじゃねぇか? ……バットとか」
(椎奈 釘バット…?)
(魅呼音 そんなもの、どこから調達する気よ…?(笑))
GM 他にも、バールとか(ニヤリ)。
(正輝 うわ……嫌なこと思い出させるな(苦笑))
GM とりあえず、バットは野球部から拝借したということで(笑)。
正輝 (辺りを見渡して)……おばけマンションがなくなってる?
GM/連太郎 「見事なまでの更地だな……」真相は、UGNがウィルスごと建物全部を処分してしまったらしい。
正輝 さすがに…UGNはこういった事件は手際がいいな。今回みたいなレネゲイド事件以外じゃUGNは頼れないしな……くそっ!
GM/連太郎 「とりあえず、ここじゃないみたいだな……もしかして、この山奥になんか建物があったりしてな……」
正輝 それは、ホントか!?
GM/連太郎 「いや、知らねーって。ただ、オレにはこの辺だとここぐらいしか思い付かねーよ……」
正輝 そうだな……駅前のビルや普通の一軒家の地下室とか……いくらでも、可能性はあるってことか……。なあ、連太。とりあえず、戻るか……。
GM/連太郎 「そうだな……」
GM/坂本 「わざわざお呼びしてすみませんね、暁さん」
魅呼音 いいえ。
GM/坂本 「すみませんね、私もこちらで少々調べものをしておりまして、そちらまで行く余裕がなかったのですよ」
魅呼音 あの、それで椎奈のことで話したいことって……?
GM/坂本 「実は、指宿さんは今、色々とごたごたとしておりまして……その、もしかしたら、そのことで指宿さんがひどく落ち込んだり傷つく可能性もあります。その時は、指宿さんのお力になってくれませんか?」
魅呼音 それって……。
GM/坂本 「残念ながら、まだ詳しいことは言えないのですけど……。時期がくれば指宿さん自身から相談を受けるかもしれません……」
魅呼音 分かりました。あたしにできることなら、なんでもします!
GM/坂本 「ありがとうございます、暁さん。……ところで、春日くんは元気にしていますか?」
魅呼音 「え……」と、ここで正輝のことを坂本さんに話した方がいいのかな……? う~ん、正輝には他の人には言わないでくれって頼まれているし、やめておくわ。「(暗い表情で)ええ、元気です」
GM/坂本 「そうですか。まあ、なにかあったら連絡ください。私たちにできることがあれば最大限努力しますよ」
魅呼音 はい……。
GM/坂本 「…………それと、暁さんもたまには素直になることも必要ですよ。みんな、いい子たちばかりなので受け止めてくれると思いますがね」
(正輝 今はそれどころじゃねーのに、なんてことを(笑))
GM 坂本さんは正輝のところで起こっている事件なんてまったく知らないんだよ?(笑) 魅呼音が暗い表情をしているのを、坂本さんなりに勝手に気を遣っただけだ。
(正輝 いらない気遣いをしやがって(笑))
GM 気遣いすらできん、正輝に言われたくないな(笑)。
(椎奈 この内容だったら、電話で……)
GM こういう大事な頼み事は直接会って話す方が普通じゃない? 電話じゃ誠意が伝わらないしね。
GM/坂本 「怖がっているばかりじゃ、なにも変わりませよ」
魅呼音 ありがとうございます……。
GM/坂本 「頑張ってくださいね……」
GM おばけマンションからの帰り道。午後6時半過ぎぐらいのこと。
正輝 (連太郎と別れた後)俺はどうするかな……この街でひとけがない建物で地下室があるところか……ありそうでない、なさそうである……闇雲に探すか?
GM そうすると、夕美から電話がかかってくる。
夕美 (携帯電話で)もしもし、お兄ちゃん?
正輝 夕美、どうしたんだ?
夕美 今日はお夕飯どうするのかなぁ~って。
正輝 ああ、今日は……。
夕美 今日ね、夕美新作のメニューに挑戦してるんだよぉ! だから、早く帰ってきてね。…あっ、ちゃんと本を見ながら作っているから大丈夫だからっ(元気)。
正輝 そうか、がんばれよ。
夕美 スタミナがつくお料理、作ってあげるね。
正輝 すまないな、心配かけて……。
夕美 うん(笑顔)。…あ、そうそう。お兄ちゃん宛に手紙が届いていたよ。
正輝 っ!!!
夕美 とりあえず、居間に置いておいたからね。
正輝 分かった、すぐにこれから帰るからな!
夕美 うん、料理頑張るね。
正輝 それと、戸締まりをしっかりと…な。
夕美 はぁ~い。
俺は大急ぎで家に向かっていった。
あいの奴、またなにか送ってきたというのか!?
今度は今度はいったいなんだって言うんだ!?
そして、俺が玄関のドアを開けると、なにやら台所からいい匂いがしてくる。
「おかえりなさぁい! お兄ちゃん、結構早かったね」
エプロンをしたまま、夕美が俺を出迎えてくれる。
「その俺宛の封筒ってどこに!?」
「居間に置いてあるよぉ」
俺は、急いで居間に向かった。
+ 3通目のラブレター +
GM 居間のテーブルの上には、白い封筒が置いてある。差出人不明のものだ。
正輝 自分の部屋に行って読む。
GM/手紙 『春日正輝さまへ。
近頃、なにやら思いつめた顔をしていますね。それはきっと、
あの女のせいだと思います。
汚らしい女です。乱交パーティーに行くような汚らしい手であなたのことを叩くだなんて、大変な侮辱です』
正輝 ……まさか、それは志木さんのことか……。
GM/手紙 『あなたが穢れてしまいそうで、いてもたってもいられませんでした。どうせ、あの女もあなたに近づこうとする女に違いありません。
だから、あなたの代わりにあの女を粛正しておきました。これで、あなたの悩みが解消されることだと思います―――あい』
正輝 …………。
GM/手紙 『追伸。その時のビデオをあなたの下駄箱に入れておきました。そのビデオでも見て、元気を出してくださいね』
正輝 くそ!! 今から、走って取りに行くぞっ。
夕美 (玄関のところで)あれ、お兄ちゃんまた出かけるの?
正輝 ああ、ちょっとな。すぐに戻ってくるから!
夕美 うん、いってらっしゃ~い!
GM じゃあ、学校の下駄箱についた。
正輝 俺の下駄箱に入れておくって書いてあったよな……。
GM そっと、開けるとそこにはビデオテープと、なにかの液体で満たされたタッパがあった。
GM その中には……人間の指が入っている。
正輝 ……うっ、これは……志木さんの指…なのか……? ……なんで、こんなことを……するんだ………くそ!
……夕美を一人で家においてきちまったな……急に不安になってきたぞ。それを鞄にしまって、急いで帰るぞ!!
俺は湧き上がる不安を抑えながら、家に向かう。
「夕美、大丈夫か!?」
俺が玄関のドアを勢いよく開ける。
そうすると、いつものように夕美が、
「お兄ちゃん、遅いよぉ。もう、ご飯が冷めちゃったよぉ!」
と、頬を膨らませながら、俺を非難するように見る。
だけど、すぐに元気で明るいところを見せてくれるんだ。
「ただいま」
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
そんな会話が、
そんないつものやりとりが、
――なかった。
正輝 ……夕美?
GM 返事はないよ。
正輝 台所にはいないのか?
GM 台所には、ラップがかけられた色々な料理が並べられている。そして、置き手紙が一枚。
/手紙 『お兄ちゃんへ。病院から電話があって、澄先生が事故で入院したそうです。今から駅前の病院に行ってきます―――夕美』
正輝 くそ、まさかっ!? 急いで、駅前の病院に行くぞ!
GM それじゃあ、駅前の病院に着いたよ。
正輝 (受付に)すみません、澄さんっ……柳澄さんはここに入院しているんでしょうか!?
GM/受付 「少々お待ちください(パソコンで調べ始める)」
正輝 …………。
GM/受付 「……やなぎすみれ……やなぎすみれ……」
正輝 …………。
GM/受付 「(調べ終わって)申し訳ありませんが、そのような方は当病院には入院しておりません」
正輝 ……それじゃあ、ここに女の子が訊ねてきませんでしたか!? ツインテールで背の低い……高校生か中学生ぐらいのっ。
GM/受付 「さぁ…来ていないと思いますけど」
正輝 じゃぁ……じゃあ……俺は、走る。
GM どこへだ?(苦笑)
正輝 家だ、家に帰る。いや、携帯…夕美の携帯にかけてみるぞ。
GM ワンコールのち、電話が切れた。
正輝 ……切れた!? み、魅呼音に!! 連太にも連絡する!!(混乱中)
魅呼音 「(正輝から連絡受けて)ごめん、まだあたし電車の中なの。極力、あたしも急ぐから……」渋谷からだと、一時間半近くかかるのよね……。
GM/連太郎 「(正輝から連絡受けて)分かった、オレも今からお前の家に行くからっ」連太郎もここから2駅ぐらい離れたところに住んでいるから、30分ぐらいかかるけど。
GM ピンポーンと音がして、連太郎が正輝の家に来たよ。
/連太郎 「夕美ちゃんがいなくなったんだって!?」
正輝 来る途中でも、どこかでも、夕美を、夕美を見なかったか?(支離滅裂)
GM/連太郎 「悪いけど見てないよ。それで、いなくなったってどういうことなんだよ、正輝!?」
正輝 だから、夕美がいなくなったんだ。俺にも分からないよっ!!
GM 連太郎にキレるなよ(苦笑)。
/連太郎 「とりあえず、こんなところで、うだうだしててもしょうがねぇだろ!? とっとと街に出て、夕美ちゃんを探しに行くぞ!」
正輝 ……分かった、すまない連太……。
GM/連太郎 「じゃあ、オレは駅の方をもう一度見てくる!!(駆け出す)」
正輝 じゃあ、俺はこっちを探してくる!!
正輝 俺は、病院までの途中の店や通りすがる人に夕美を見なかったか聞いてみるぞ。
GM 「いや、見てないね」「いやぁ、知らないなぁ……悪いね」など、情報はさっぱりだね。
正輝 くそ……澄さんだって……志木さんだって探さなきゃいけないのに……ビデオ……。そうだ、ビデオにならなにかヒントがあるかもしれない……(再び、家に向かって駆け出す)。
+ ビデオⅢ +
テレビ画面が徐々に変わっていく……。
砂嵐。
そこは息苦しいコンクリートでできた灰色の部屋だった。
画面がぐらぐらと揺れて、蛍光燈を映し、そして壁を映し、コンクリートの地面を映した。
そして、鎖で後ろ手を縛られた榊学園の女子生徒を映し出した。
「ちょっと、ここはどこなの? 一体、なんなのよ!!」
綺麗だが、高慢そうな声がその部屋に響く。
「助けなさいよ!! 誰かぁ~!!!」
質の悪いカメラは、その女子生徒が志木瑞香であることを証明する。
「あんた……誰なのよ! こんなことをしてただで済むと思っているの!?」
その高飛車な口調も、こんな時にはさすがに恐怖の色を隠せないようだ。
目隠しをされて、しかも手を縛られて、瑞香は近づいてくる気配に恐怖していた。
かつん、かつん、と歩くたびに、画面が揺れ、音が響く。
目を封じられらた今、逆に他の感覚が鋭敏化しているのだろう。
かつん、かつん。
「な、なんのなのよ!! あたしをどうしよっていうの!?」
瑞香を捕まえた、“誰か”がビデオカメラを持っているようだ。
しゃきん。
と、なにか金属がこすれる音がする。
今の音で、びくりと瑞香が反応する。
「今の、なによ……?」
すごく怯えた声。
そして、“誰か”が手を伸ばす。
その手袋をはめた手には、ハサミがあった。
銀色のまったく特色のない、機能性だけを追求したようなハサミ。
実験や手術に使うようなハサミだ。
ハサミで無造作に瑞香の髪の毛を切り落とす。
「や、やめ!! いや!!!」
ウェーブがかかった手入れの行き届いた髪がぱさぱさと辺りに散っていく。
そして、無残な髪型になった瑞香は、ふるふると震えていた。
泣いているためなのだろうか、怒りのためだろうか、それとも恐怖だろうか。
「なんで……どうして…こんなことを……」
+ ビデオⅣ +
そこで、初めて“誰か”の声が響く。
「あなたは……自分が綺麗だと思っている? 自慢できる?」
それは、不自然な声。
ボイスチェンジャーを通した機械的な声だった。
「なにを言っているのよ!!」
瑞香がそう叫んだ瞬間、カメラを持つ人物は無造作に手を伸ばしてハサミに力を込める。
じょぎんっ。
「い、やああああああああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのハサミの先には、瑞香の指があった。
「あ、ああぁぁぁぁぁぁふぁぁぁぁ」
悲鳴。
絶叫。
ぶつっ、ぶつっ。
全部で五回、嫌な音が響く。
瑞香の左手にはもう指が残っていなかった。
たらたらと血がそこから流れる。
「はぁぁぁぁふぁぁぁあぁあぁぁぁぁ」
すでに、うめき声に変わっていた。
その手袋は、指を一つ握り。
「こんなにも醜い指なのに……綺麗なの?」
淡々と。
「た、やめ………」
「あなたのパーツは一つ一つ醜い……穢れている……」
ごとん。
と、テーブルのようなものにカメラを置く。
ついに、その“誰か”が映し出された。
後ろ姿だけだが、黒い長い髪がまず目に入った。
ストレートで床にまで届きそうな長さだ。
黒いドレス服。
そして、紅いハイヒールがその黒さに際立っていた。
両手で、瑞香の顔を掴み、無理矢理起き上がらせる。
「だから、パーツ一つ一つ……」
一つ。
一つ。
そう言って、その女は無造作に瑞香の耳にハサミを押し付け―――
狂っていた。
その女の、
「また、一つ」
という声がするたびに、瑞香は悲鳴を上げる。
そして、黒い髪がその度にゆらゆらと揺れた。
ゆらゆら。
それが何分続いただろうか。
コンクリートの地面にはたらたらと血が流れ、そこには見たことがあるものばかりが落ちていた。
耳、指、鼻、舌。
顔から削げ落ちたパーツ。
すでに悲鳴は聞こえない。
舌がないから声もだせないのだろうか。
……いや、気絶しているのか。
もしかしたら、すでに死んでいるのかもしれない。
そして、その女がどくと、ばたりと瑞香が倒れる。
一瞬だったが、ちらりと瑞香の顔が映し出された。
それは、とても人の顔と呼べるような代物ではなかった。
真っ赤に染まったのっぺりとした平坦な顔。
ああ、唯一目隠しをしていたので、目だけはあるんだな……と気付く。
最後まで、その女は振りかえることはなかった。
そして、画面は砂嵐に変わっていった。
+ 支離滅裂Ⅰ +
俺はその時、間違いなくもう一人の自分を感じ取れた。
それは、ビデオに対する羨望であり。
渇望であり。
すべてに対する、殺意だった。
吐き気がする。
まるで自分じゃないみたいだ。
携帯電話が鳴る。
「おい、正輝。夕美ちゃん見つかったのか!?」
連太の言葉は俺をいらつかせる。
「見つかるかよっ!!! 俺は、俺がっ!!!」
怒鳴り散らす、俺。
夕美もこんな目に遭うっていうのか!?
ふざけるな!!!
澄さんがなにをしたっていうんだ!?
志木さんがなにをしたっていうんだ!?
夕美がなにを、俺がなにをしたっていうんだっ!!?
携帯をその場に叩き付けて、テレビを倒し、俺は街へと飛び出していった。
夜の街には、人がまだたくさんいる。
俺のことを無関心に通り過ぎていく有象無象。
いらいらする。
湧き上がるこの気持ちをこいつらにぶちまけてやりたい!!
ぶち殺して、滅茶苦茶にして、バラバラにして、ぐちゃぐちゃにしてやりたい!!!
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうっ!!!
あいの奴、殺してやるっ。
殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる。
みんな、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる。
壁によりかかりながら、赤い街を眺める。
ざーざーという砂嵐の音と共に、俺の心は絶叫する。
込み上げてくる殺意はすでに、そこら中に振りまかれそうになっている。
しかし、
急に吐き気を覚え、俺は胃の中のものを戻してしまった。
カチリと、赤色の世界は元の世界の色に戻っていった。
そこには、殺したい人間なんて誰一人いなかった―――
+ 支離滅裂Ⅱ +
GM 午後9時半前ぐらいに魅呼音が正輝の家に着く。
魅呼音 (家に来て)……正輝?
GM/連太郎 「よぉ……魅呼音か? 正輝のやつ、見なかったか?」
魅呼音 正輝がどうしたのっ?
GM/連太郎 「それがオレもよく分からないけどよ、夕美ちゃんもいなくなるし、正輝のやつキレて訳分からないし……部屋は滅茶苦茶だし……なんなんだよ、いったい!?」
魅呼音 それで、正輝は……?
GM/連太郎 「分からない。とりあえず、家にはいない……魅呼音はなにか知っているのか!?」
魅呼音 あたしにも…あたしにも分からないことだらけよ……。正輝の携帯に電話をかけ……。
GM/連太郎 「さっき、部屋に正輝の携帯があった」
魅呼音 そう……夕美ちゃんには?
GM/連太郎 「電源が切られているのか、電波が届かない所なのか、繋がらない。
分からないことだらけだが、とりあえず、夕美ちゃんも正輝もどこかにいるってことだろ。だったら、探しにいくしかないな……」
魅呼音 じゃあ、あたしが正輝の携帯を持っているわ。もしかしたら、正輝から電話あるかもしれないし……。
GM/連太郎 「そうだな……。お前はここで待ってろよ。もしかしたら、正輝が帰ってくるかもしれないし……」
魅呼音 分かった。じゃあ、なにかあったら電話するわね。
GM/連太郎 「おうっ(と、再び街に出る)」
GM 正輝は……どこでなにをしているのかな?
正輝 俺は……少し呆然としながらも、夕美のことを近所とか探してから、家に帰る……。
GM 了解。
GM ええと、午後10時ぐらいに正輝の携帯が鳴る。
魅呼音 もしもし、正輝っ?
アンナ …え、この声は魅呼音ですの? 正輝は…?
魅呼音 え、アンナ? …えっと、それが正輝がちょっといないのよ。
アンナ いない? あ、それはきっと、正輝が今夜、わたくしに学校でお話があるって連絡をくださったから……。
魅呼音 ――えっ?
アンナ 正輝、学校に向かっているのではないかしら?
魅呼音 アンナ、今学校にいるの?
アンナ ええ。
魅呼音 ……まさか……っ! 正輝は、たぶん、正輝はそこに行かないから、急いで帰った方がいいわよっ。
アンナ え、それは……きゃーーーーーーーっ!!!(悲鳴)
GM ブツンッと携帯が切れる。
魅呼音 もしもしっ、もしもしっ! アンナっ!! 急いで、学校に行かないと……(駆け出す)。
GM 急いで学校に駆けつける。すると、学校の玄関前にぽつんと靴が片方だけ落ちている。魅呼音なら見覚えあるね。アンナの靴だよ。
魅呼音 ……うそ……。だって、そんな……。
GM ピッピッピッピと、正輝の携帯にメールが入る。
魅呼音 まさか……。
GM 送信者はもちろん、あいだよ。
/メール 『お預かりしました』
魅呼音 ……あたしが返事を書くわ。『ちょっと、アンナをどうしたの!?』
GM/メール 『あなたは、誰ですか?』
魅呼音 『正輝の友達よ!』
GM/メール 『あなたも、なんですね……』
魅呼音 『そんなこといいから、夕美ちゃんとアンナを返してっ!!』
GM …………返事は来ない。
魅呼音 ……だめ、ね……話にならないわ。なんで、なんで、こんなことに……。とりあえず、靴だけでも持って正輝の家に向かうわ……。
GM じゃあ、正輝の家の近くで、連太郎から電話がかかってくる。
/連太郎 「あ、魅呼音。正輝は家に帰ってきたのか?」
魅呼音 あ、たぶん、まだ……。
GM/連太郎 「そっか。夕美ちゃんは見つかったか?」
魅呼音 ううん、見つかってないわ……。
GM/連太郎 「そうか……分かった、今から正輝の家に戻るわ」
魅呼音 ん、じゃあ、後で(携帯を切る)。
正輝 …………(暗い表情)。
魅呼音 (家に着いて)正輝……。
正輝 …………。
魅呼音 正輝、しっかりしてよっ。正輝っ!
正輝 …………。
魅呼音 実は、アンナが……(と、簡単に事情を話す)。
正輝 な、なんだって…? あ、アンナまで……? なんでだよ、なんでそんなところに行っちゃったんだよ!!
魅呼音 正輝……ごめん、あたしが来るのが遅かったせいで……。
GM なんで、魅呼音が謝ってるんだ?(苦笑)
正輝 どうすればいいんだ……俺、どうすればいいんだ……。
魅呼音 そう言えば、さっきこんなメールが来てたわ……。
正輝 言うのが遅いんだよっ!!(魅呼音から携帯を奪う)
一同 逆ギレかよっ!!?(笑)
正輝 くそ、メールを送り返してやる。『俺だ、正輝だ!! 夕美とアンナをどうした!!!』
GM/メール 『これもすべて、あなたとわたしのためです。でも、そこに、また別の女がいますね』
正輝 『魅呼音までどうにかする気か!!?』
GM/メール 『これもすべて、あなたとわたしのためです。それでは、また明日連絡します……』
正輝 くそっ、くそっ、くそっ!!! 魅呼音、このままじゃお前まで…。
魅呼音 (正輝を遮って)あたしなら、大丈夫だから……。
正輝 ……魅呼音……。
魅呼音 …………(正輝を見つめ返す)。
正輝 ……分かった、魅呼音……(絞り出すように)。
+ 支離滅裂Ⅲ +
魅呼音 とりあえず、あたしはこのまま正輝を放っておけないから、今夜は正輝の家に泊まるわ。家には「友達の家に泊まる」とか適当なことを言っておくから……。
GM じゃあ、そんなことをしていると、連太郎が帰ってくる。
/連太郎 「(険悪な雰囲気に気付いて)ど、どうしたんだ……?」
正輝 夕美だけじゃなくて、アンナまでもいなくなった……。
GM/連太郎 「日和川までっ!? いったいどうなってるんだ、なあ!?」
正輝 「こうなるのかしれない…」と志木瑞香のビデオを見せるぞ、涙を流しながら。
一同 ぶぼっ!(吹き出す)
GM み、見せるのか、それを……魅呼音や連太郎に……(呆然)。
正輝 もう、自分でなにをしているのかもよく分かってないんだよっ。
*正輝のプレイヤー……キャラの心情にシンクロし過ぎです(笑)。
GM (苦笑しながら)はい、魅呼音は衝動判定。
魅呼音 (ころころ)衝動判定に失敗……。気分が悪くなって、トイレに駆け込むわ……。
正輝 くそ、どうしたら、いいんだ……(すでに周りのことが見えなくなっている)。
GM/連太郎 「(ビデオを呆然と眺めて)おい! それじゃあ、夕美ちゃんや日和川は!!?」
正輝 (聞いていない)俺は……守れなかった………守れなかったんだ……ちくしょう、ちくしょうっ。
GM/連太郎 「ばっきゃろーっ! 落ち込んでいる場合か!? まだ、近くにいるかもしれないんだぞっ!! 探しに、街に探しに行くんだ!!! いいな!!?」
正輝 連太……。そうだな……こうなったら、警察でもUGNでもなんでも頼ってやる……。
魅呼音 (トイレから帰ってきて)ダメよ…正輝……。あいは……あたしたちのこと、たぶん、どっかで見てるわ。もしも、警察に知らせたら、それこそ……夕美ちゃんやアンナの命だって……。それに、いざって時にあたしたちは警察は頼れないのよっ!
正輝 じゃあ…じゃあ、どうしろって言うんだ!?
魅呼音 どこかに、監禁しているのは間違いないのよ……そこを、そこを探さないと……。
正輝 (弱々しい口調で)くそぉ…どこにいるんだ……夕美…アンナ……。
そんな俺の言葉は空しく夜の街に消えていく。
真夜中まで街を探索したが、なんの手がかりも得られなかった。
途方にくれる俺たちは、まるでこの街から見捨てられたような気分になる。
これからどうすればいいのか?
今、なにをするべきなのかすら分からない。
ただ、ふと思ったことは、
あいは……いったい誰なんだ……?
という、疑問だった―――




