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LoveSyndrome編 第四章:10月11日(木)

 


    + 相談相手 +

 


 


正輝 (ぼそりと)ちょっと、澄さんの家に行ってみようかな……?

夕美 お兄ちゃん、どこ行くの? 学校はこっちだよぉ?

正輝 ああ……。

GM じゃあ、その登校途中に魅呼音と会えた。

魅呼音 おはよ、正輝。……どう、身体の調子は?

正輝 ああ、だいぶよく…。

夕美 「それがさぁ、昨日のことなんだけど…」とグラタンを落としたこととか話しちゃうよ。

正輝 ……はは、ちょっと、まだ調子悪いみたいだ(苦笑)。

魅呼音 熱でもあるんじゃない? 一日ぐらい学校休んだら?

正輝 いや、熱もないし、休むほどじゃないからな。

魅呼音 ノートぐらいなら、あたしに任せてもいいから……。

正輝 まあ、休んだ時は頼むよ。ほら、さっさとしないと遅刻するぞっ(空元気)。

 


 


夕美 「調子悪くなったらちゃんと、保健室に行くんだよっ」とちょっとお姉さんぶってみたり(笑)。

正輝 あ、ああ(苦笑)。

魅呼音 まあ、あたしがついててあげるから。

夕美 うん、じゃあ、魅呼音さん、お兄ちゃんをよろしくねっ。

魅呼音 ええ、任せておいて。

夕美 じゃあ、行ってきまぁ~す(と、教室に向かう)。

二人 …………。

正輝 実はさ……魅呼音。ちょっと、話したいことが……。

魅呼音 ん、どうしたの?

正輝 あのさ、俺……メールしてるって前、話したよな……。

魅呼音 え、ええ……。

GM また、魅呼音がへこむようなことを…(苦笑)。そんなことやってると、予鈴が鳴るけど。

正輝 実は……、って、もう授業か。後で、詳しいこと話すよ。

魅呼音 え、ええ……。

GM そして、授業のチャイムが鳴っても、椎奈は学校に来なかった。

正輝 休み…なのか……?

 


 


正輝 (昼休みに)……このメール、ちょっと見てくれないか?

魅呼音 ………え? (徐々に魅呼音の顔色が変わっていく)なにこれ……気味…悪いわね……。ねえ、正輝、ちゃんとメール断ったのっ?

正輝 ああ……ちゃんと、こんなことやめろと送ったんだが……こゆみが……。

魅呼音 こゆみが…?

GM/連太郎 「ちゃおっ。どうしたんだ、二人だけで内緒話か?」と少し遠慮がちに声をかけてくるけど。

正輝 「連太……」う、どうしようか……連太にも相談した方がいいかな……(悩)。一人じゃどうにもならない気もするし……。

GM そんなのは、自分で決めてくれ。

正輝 分かった。「二人とも一緒に屋上に来てくれないか?」

 


 


正輝 (メールを見せた後)……こゆみが殺されて、ポストに入れられていたんだ……。

魅呼音 うそ……。

GM/連太郎 「ほんと…かよ?」

正輝 「ああ、ホントだ。これを見てくれ」と手紙と写真を見せる。

一同 ぶっ!!!(吹き出す)


(魅呼音 な、なんで、そんなの持ち歩いているのよっ!!?)

(正輝 しょうがないだろ!! 家に置いておくと、夕美に見つかるかもしれないじゃないかっ!!)

(夕美 うは~、お昼休みにその写真見せるんだぁ~……)

(椎奈 しかも、その手紙とかひどく臭うわよ……?(苦笑))

(魅呼音 さっき食べたお弁当、もどしそう…………)

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


GM/連太郎 「(写真を見て)こ、これは……ひどいな………」

魅呼音 こ、こんな写真捨てなさいよっ!!!

正輝 ……そ、そうだな……。

GM/連太郎 「それで、警察に言うのか?」と、ここで正輝と魅呼音は思い出すが、UGNには「警察には頼ってはいけない」と言われている。警察はUGNやオーヴァードの敵みたいなものだからね。


 *これは『ダブルクロス1st』時代のGMの勝手な推察です。ルールブックには、UGNと警察は険悪な関係であることを示唆する内容が記載されておりました。


正輝 あ、いや、ストーカー事件とかって警察は頼りにならないっていう話よく聞くしな……。

魅呼音 そうね……。

GM/連太郎 「まぁな。確かに……」

正輝 できるなら、自分一人でどうにかしたいが……。

GM/連太郎 「オレになにかできることがあったら、言ってくれよな……。その、あれだ……正直、なんの力にもなれそうにないが……」

正輝 まあ、なにか変わったことあったら、教えてくれよ。

GM/連太郎 「ああ、分かった……。不審な奴を見かけたら、オレが捕まえてやるよっ(正輝の肩を叩く)」

正輝 ああ、だけど、気を付けてくれよな。

GM/連太郎 「まあ、任せておけって」と、正輝に頼られてちょっと嬉しそう。

魅呼音 それで、このことは夕美ちゃんには……。

正輝 (唇をかみしめて)言ってない…こんなこと、言えるわけない。

魅呼音 そうね……。

正輝 こゆみのことは、夕美には適当に言っておくさ。

魅呼音 それがいいわね。

正輝 (グラタンの話もする)…というわけなんだ。

GM/連太郎 「印刷された字ねぇ……お前の考え過ぎじゃないのか?」

正輝 そうかもしれないけどな。まあ、今日はちょっと澄さんの家に寄ってみるよ。

 


 


 


    + 柳澄Ⅰ +

 


 


正輝 魅呼音、ちょっと澄さんの家に行くの、付き合ってくれないか?

魅呼音 え、あたし? ええ、別にいいけど…………。部活、休んでくるって伝えてくるわ(と、立ち去る)。

正輝 あ、いや、そこまで……しまった、魅呼音も部活があったんだっけ(苦笑)。

魅呼音 お待たせ。じゃ、行こっか。

正輝 悪い、部活を休ませて……。

魅呼音 いいわよ、それぐらい。……それにしても、本当に澄さんのグラタンじゃなかったの?

正輝 いや、食べる前に捨てちゃったからなんとも……。

GM 食べてみれば、味付けが違ったとか分かったかもしれないのに。今更、分かりようもないことだ。

正輝 だって、食うのが恐かったんだよっ(泣)。

魅呼音 それで、澄さんの家ってどこなの?

正輝 ああ、こっちだ。

 


 


GM 澄さんが住んでいるマンションについた。ちなみに、一人暮らしだよ。

正輝 行ってみるか……。

GM じゃあ、ドアのところに着くと、何日分かの新聞が溜まっているのが分かる。

魅呼音 ……しばらく、いないみたいね。

正輝 ああ、そうみたいだな。どうしたんだろう? 澄さん、学校に行ってないのかな…?

魅呼音 サークルの合宿とかかしら?

正輝 それだったら、隣の人とかに聞いてみようかな?

GM そんなこと知らないよ。ただの隣人がそんなこと知っているわけがないでしょ。

正輝 いや、最近、帰っているとかそれぐらい……。

GM だから、そんなこと知らないって(苦笑)。


(椎奈 ……悲しい都会の付き合いね……)

(魅呼音 逆に、いちいち気にしている方が嫌がられるわよ(苦笑))


正輝 澄さん……どこに行ったんだろうな?

魅呼音 あたしに言われても……。電話はしてみたの?

正輝 いや、携帯の電話番号は知らないし、家はこの通りだろ?

二人 う~ん……。

GM なにもしないから、このシーンは終わりにするけど……。

正輝 ちょっと、待ってくれ。


(椎奈 ……私がアドバイスしちゃ……ダメよね?)

GM うん。今回のシナリオは、この場にいない人は基本的にそういうことはしてはダメ。


魅呼音 そう言えば、新聞の日付はいつから溜まっているのかしら?

GM 10月9日(火)の夕刊からだ。

正輝 確か、その日は…………こゆみがいなくなった日か。それと、澄さんがグラタンを普通に届けてくれた日でもある……。

 (なにかに気付いた)なあ、魅呼音。ということは澄さん、グラタン……。


(椎奈 ……になって、帰ってきた……?)

一同 な、なんてことを……。

(正輝 恐いこと、考えさせるなっ!!)


正輝 グラタンを持ってきてくれた日から帰っていないってことだよな。

魅呼音 グラタン持って……どこかに旅行とかはおかしいわよね……。

正輝 だろ? 旅行行く前にグラタン作って持ってきたりしないよな、普通(どんどん嫌な考えが浮かぶ)。ちょっと、管理人さんにでも話を聞いてみるか。

 


 


GM/管理人 「(澄のことを聞いてみたが)さあ、旅行という話は聞いてないけど、ちょっと留守にしているだけなんじゃないの? ……それより、あんたたち、どういう知り合いだね?」

正輝 妹の家庭教師をしていただきまして……。あの、ちょっと心配なんで中を見せてくれませんか?

GM/管理人 「悪いんだけど、身内の人じゃないとそれはできないねぇ」

正輝 立ち会いでも…。

GM/管理人 「悪いんだけど、無理だねぇ。まあ、帰ってきたらあんたたちが来たこと伝えておいてあげるから」

正輝 すみません、お願いします……。

魅呼音 (そこから離れた後)……どうする、正輝? 勝手に……入ろうと思えば入れそうだけど……。

 


 


 


    + 柳澄Ⅱ +

 


 


魅呼音 強力な磁力で鍵を動かして開けることができるって聞いたことあるわ。あたしだと、壊して入ることしかできないし……。

正輝 《磁力結界》でできるかな?

GM それなら、判定に+1していいよ。あと、扉をこじ開けて入るという発想は、UGNイリーガルである魅呼音がいるから出た発想だということ忘れないで欲しいかな。


 *正輝というキャラは、まだ一般人側の立場である程度ものを考えていると、正輝のプレイヤーさんが言っていたので。


正輝 (ころころ)達成値は9だな。

GM とりあえず中には、入れた。

二人 (調べ始める)

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


GM 大雑把に探しても、特になにも分からないけど。

魅呼音 そうだ、留守電をちょっと調べてみるけど……。

 


 


 留守電をみてみると、メッセージが2件入っていた。

「あ、正輝です。いつもお世話になってます。ええと、この間も…きょ、今日もグラタンありがとうございます。れ、連絡…ください……」

 これは、俺がこの間、入れておいたメッセージだ。

 澄さんはこのメッセージをまだ聞いていないってことか……。

 どんどんと嫌なことを考えさせられる。

「澄……もう一度会って話さないか? 明日、あの公園で待っている……やはり、私には澄が必要なんだ……。だから、きちんと会って話そう……待っている……」

 ……確か、この声は澄さんのバイト先の店長……。

「澄さんの恋人かしら?」

 と魅呼音が俺に聞いてくる。

「ああ、そうみたいだな……」

 俺は曖昧な返事を返した。

 そのメッセージが昨日入っていたということは、あの男は今ごろ公園で待っているということか……。

 


 


魅呼音 この人に呼び出されて行ったわけじゃなさそうよね……。火曜日の夕刊から新聞が溜まっているんだし……。

正輝 ああ……。

魅呼音 でも、恋人だったらなにか知っているかも……。

正輝 ああ……(曖昧な返事)。

魅呼音 (魅呼音は澄とその人の詳しい話は聞かされていない)…………正輝?

正輝 とりあえず、俺が一人で行ってみるよ……。

魅呼音 分かったわ。じゃあ、あたしはもう少しここを調べてみるわ。

 


 


魅呼音 (鍋のフタをあけてみて)……グラタンは少なくとも本当に作っていたみたいね。さすがに、いつ作ったとまでは分からないけど……。

GM そんなことをやっていると、玄関のチャイムが鳴る。

魅呼音 「(魚眼レンズで覗く)正輝…(と、ドアを開ける)。………どうだった、正輝?」

正輝 いや、あの男はなにも知らなそうだったよ(リプレイではカット)。

魅呼音 そう……こっちも特に手がかりがなしよ……。

正輝 くそっ、澄さんはどこに行ったっていうんだ!

魅呼音 やっぱり、あの「あい」っていう子と関係があるんじゃ……。

正輝 いや、しかし……。

魅呼音 メールで確認とかできないの?

正輝 ……やるだけやってみるか……。ええと、なんて送るかな……下手なことを書くとまずいし……「澄さんに、手を出されましたか?」

一同 なんで、敬語やねん!(笑)

正輝 今のは、冗談だとして、『間違っていたら、謝るが。まだ、付きまとっているのか?』と送るぞ。

魅呼音 澄さんのことは聞かないの?

正輝 もしも、ここで澄さんの名前を出すと危険のような気がする。それに、まだ澄さんをあいがどうにかした確証はなに一つないしな……。

GM/あいのメール 『いつも、あなたを見守っています。だから、安心してください』

正輝 『まさか、俺の見知った人に手を出したりしてないだろうな?』

GM ちょっと、間があって。

  /あいのメール 『ポストに投函しておきました』

 


 


 


    + 2通目のラブレター +

 


 


 っ!!!

 まさか、まさかっ―――

 


 


 俺は急いで自分の家に駆けつける。

 周りなんて見えやしない。

 澄さんの家の扉を閉め忘れたとか、魅呼音はちゃんとついてきているだろうかとか、そんなことは構っていられなかった。

 息を切らせながら、家に辿り着く。

 そして、ポストの中を……覗き込んでみた。


 そこには、

 俺宛の大きな封筒があった。

 そして、封筒にはなにか四角い物体が入っているようだった。

 消印がないということは、直接ここに投函されたのだろう。

 俺は、震える手でそっと封筒を開ける。

 そこには、

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 一本のビデオテープが入っていた。

 


 


 



正輝 ビデオテープ……? なんで、こんなものが……。

GM 他にも手紙が入っていた。

正輝 それは、急いで見てみるぞ。

GM/手紙 『この女は他の男と不義の関係を持ちながら、あなたに近づいてくる大変汚らしい女です。それは見ているだけでも、とても耐えられません。吐き気がします。あの女にあなたが触れられただけで、あなたまで穢れそうです。

 だから、そうなる前に粛清しておきました。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 きっと、男なら誰でもホテルに誘うような最低な女なんでしょう。こうなって、当然ですよね?』

正輝 ……ホテルのことまで……知っているのか……?

GM/手紙 『前回は写真では満足いかなかったみたいなので、ビデオにしてみました。お楽しみいただければ、幸いです―――あい』

正輝 ………………。

GM/手紙 『追伸。わたしが作ったグラタン、食べてくれましたか? あの女が作った汚らわしいグラタンに比べて何十倍何百倍もおいしかったことだと思います』

正輝 ……まさか…このビデオは……。

魅呼音 (息を切らせながら)やっと、追いついた……どう、どうしたの、正輝? いったい、なにが……?

正輝 …………(黙って手紙を見せる)。

魅呼音 正輝………このビデオ……。

正輝 とりあえず、俺の部屋で見てみよう……(暗い表情)。

夕美 (帰ってきた正輝に)あ、お兄ちゃんおかえりなさ~いっ。……あれ、また? 今度は魅呼音さんを夕ご飯に呼ぶの?


(椎奈 ……「また」?(笑))

一同 (笑)

(夕美 だってだって、この間は澄先生も椎奈さんも来たからぁ(笑))

(椎奈 ……しかも、一人一人入れ代わり立ち代わり……(笑))

(魅呼音 正輝、「また」ってどういうことよ?(きらーん))

(正輝 ぐぁ……、ってそんなこと言ってる場合かっ!)


正輝 いや、もう夕飯は食べてきたから(嘘)。

夕美 え、そうなんだぁ……。次からはちゃんと電話ちょうだいね! お兄ちゃんの分のご飯作っちゃったんだからっ(ぷんぷんっ)。

正輝 悪い、夕美。そんなことより…。

夕美 そんなことより……(しょんぼり)。

GM 夕美が落ち込んでますが?(笑)

正輝 だから、そんな場合じゃないんだ。「悪い、ちょっと魅呼音と話があるから(自分の部屋に向かう)」

魅呼音 ……ごめん、夕美ちゃん(と、正輝の後についていく)。

夕美 うん…………。

 


 


 


    + ビデオⅠ +

 


 


正輝 いいか、見るぞ……(ビデオデッキにビデオを入れる)。

二人 …………。

 


 


 砂嵐。

 じゃらじゃらと金属と金属がぶつかり合う音がする。

 徐々に鮮明になっていき映し出された画面には、

 コンクリートむき出しの暗い部屋。

 壁の所々に染みがついていた。

 蛍光燈が天井にあるが、その光はあまりにも弱い。

 この部屋から連想できるのは、「牢獄」という言葉がふさわしい気がした。

 じゃらじゃら。

 その音は鎖と鎖がぶつかる音だった。

 その鎖に白い部分が見える。

 それは腕。

 両腕を鎖で縛られた女性の姿だった。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 

 それはまるで、罪人のようでひどく背徳的な光景だった。

 がたがたと音がして、顔をアップで映し出す。


 


 


 


 そこには、見知った顔が映し出されていた。

 メガネをかけた知的な感じの人。

 いつも穏やかな笑みを浮かべ、お姉さんのような存在。

 柳澄―――それが、その人の名前だ。

 気絶しているのか、ぐったりとしている。

 しかも、ガムテープで口をふさがれていた。

 そして、画面端から黒い影が伸びていき、それが誰かの手だと分かる。

 黒いシルクの手袋をはめた手。

 そっと、頬を撫でる。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 そこで、一旦、画面が砂嵐になっていった。

 …………。

 


 


魅呼音 これって……澄さんが捕まっているってこと?

正輝 ああ、たぶん……な……(暗い表情)。

二人 …………。

GM とかやっていると、再び画面になにか映し出されていく。

 


 


 


    + ビデオⅡ +

 


 


 再び、徐々に鮮明になっていく画面。

 そこは、先程の暗い部屋を映し出していた。

 コンクリートむき出しの壁。

 暗がりの中、一人の女性が口をふさがれ、鎖で縛られていた。

 


 


 


正輝 澄さんを助けに行かないとっ!!

魅呼音 待ちなさいよ!! どこに捕まっているか分からないでしょ!?

正輝 くそ、ビデオになにか映っているかもしれないってことか……。

 


 


 後ろ手を縛られ、足は地面に届かず、ぷらぷらと揺れていた。

 女性が動くたびに、じゃらじゃらと音を立てる。

「うー」

 いかがわしいビデオ……なのか。しかし、その女性は髪を三つ編みで束ね、メガネをかけたそんなビデオには似つかわしくない人……それは紛れもなく澄だった。

 いつも温和そうな顔が、恐怖の色で包まれている。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


「うぅー」

 口をふさがれ、うめき声しか出せない。

 そして、カラカラとなにか金属を引きずる音が近づいてくる。

「うううううう」

 恐怖に歪んだ声。

「ううぅーーー!!!」

 じたばたと澄は暴れるが、そのか弱い力では、鎖をどうにかできるわけがなかった。

 


 


正輝 す、澄さん……。

魅呼音 …………。

 


 


 その画面の端に、バールのようなものが映し出された。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 そして、何者かがそれを振りかぶり、澄の膝辺りを直撃する。

 くちゃり。くぐもった悲鳴。

 と嫌な音が重なる。

 本来、曲がらない方へ足が折れ曲がっていた。

 そして、白い骨らしきものがその折れ目から突き出しているのが分かる。

「うううううううううううううぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 画面が粗く、よく見えないがバールの先は赤い染みがこびりついていた。再び、振り上げられる鈍器。今度はお腹のあたりを叩く。

 どむ。という音、鎖がじゃらじゃらと音をたてる。

 息ができないのか、一瞬、間があり、耳を覆いたくなるような悲鳴があがる。

 しかし、息をつく暇もないまま、何度も何度もバールは身体にめり込んでいった。

 


 


魅呼音 正輝、ごめん……(手で口を押さえながら、トイレに駆け込む)。

正輝 …………(呆然)。

 


 


 がつん。

 という音がして、ビデオカメラが地面に落ちる。

 どうやら、バールが立てかけられたビデオカメラにぶつかったようだ。

 揺れた画面は、後は澄の足と地面を映すだけとなった。

 しかし、ひっきりなしに、音だけは続いていた。

 ビデオカメラが倒れたことにも気付かないぐらい夢中に、一心に。

 どむ、ぐしゃ、だしゅ。

 くぐもった悲鳴。

 じゃらじゃら。

 その繰り返し。

 地面には、その度にぽたぽたと血が落ち、倒れたビデオカメラは、その揺れる足を映し出していた。

 ぷらぷらと、音と共に奇妙なダンスを踊っていた。

 そして、最後にぼきり。

 と嫌な音が聞こえて、血で汚れ割れたメガネが地面に落ちてから、悲鳴が聞こえなくなった。

 映し出された捻じれた足だけが痙攣している。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 そして、画面は砂嵐になって消えていった。

 …………。

 


 


正輝 (画面に向かって)澄さん…澄さんっ! 澄さん!!

GM いくらテレビ画面に呼びかけても、砂嵐を映し出しているだけだ……。

正輝 ……ぐっ(なにかが込み上げてくる)。

 


 


 ――セ。


 この込み上げてくるモノは、なんだ?

 気分が悪い。

 俺はあのビデオを見ておかしくなったのか?

 気分が悪い。

 ふと、気付くと手紙の隙間からひび割れたガラスの破片が出てきた。

 血がついたそれは、澄さんのメガネの欠片だった。


 ――ろセ。


 ガラスについた血が赤い。

 気がつくと、目の前が真っ赤だ。

 赤い、赤い、赤い。

 息が苦しい。

 胸が苦しい。

 頭がいたい。


 どくん、どくんと心臓が波打っている。

 その波に俺は流されていく。

 どこまでも、どこまでも、どこまでも、どこまでも。

 


 


 どこか遠くで、ざーざーと流れるテレビの砂嵐の音がやけにうるさかった……。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


    + 柳澄Ⅲ +

 


 


 あれは、俺が高校一年生の時だった―――


GM/澄 「あ、はじめまして。今日から家庭教師をすることになった柳澄です。よろしくお願いしますね(にっこり)」

夕美 あ、えっと、春日夕美です。よろしくお願いしまぁす! ほら、お兄ちゃんもっ。

正輝 あ、え?(戸惑い) 「よろしくお願いします! うちの夕美が、お世話になりますっ。ご迷惑おかけするかもしれませんけど……」


(正輝 って、GMは鬼かー!!(泣))

一同 (爆笑)


 *この時、正輝は不自然に明るい声でした。


夕美 優しそうな先生でよかったぁ……。

正輝 そうだな。

夕美 なんか、がちがちのかてーきょうしっ! って、感じの恐い先生だったら、夕美、どうしようかと思っちゃったよ~。

正輝 ほら、先生を前にそんなこと言っちゃダメだぞ。すみません、失礼なこと言っちゃって……。

GM/澄 「大丈夫よ、全然気にしてませんから(にこにこ)。よろしくね、夕美ちゃん、正輝くん」

二人 はいっ。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


GM それで、簡単に授業のことやらを話した後のこと。

  /澄 「へぇ、夕美ちゃんのお家ってご両親が海外赴任しているんだ。じゃあ、ご飯とかはどうしているの?」

夕美 夕美は一生懸命やっているんだよ。でもね、炊飯器でご飯を焦がしたら、お兄ちゃんが怒るんだよぉ~。

正輝 炊飯器でご飯を焦がすのはお前ぐらいだよ(苦笑)。そんなわけで、コンビニ弁当とかが主流で……。

GM/澄 「よかったら、わたしが夕美ちゃんに簡単なご飯の作り方とか教えてあげようか?(優しげな笑顔)」

正輝 ホントですか? それは助かります。でも、夕美は教わってもできるかどうか……。

夕美 そ、そんなことないもん。夕美だって、ちゃんと教わればできるようになるもんっ。

正輝 できれば、俺にも教えてくれませんか?

GM/澄 「ええ、二人のお勉強に邪魔にならないぐらいに教えてあげるわよ」

 


 


 と、にっこりと微笑む澄さん。

 こうして、夕美の料理はなんとか食べられるレベルになった。

 俺の方が料理が上手になり、夕美が「お兄ちゃんよりもうまくなって、びっくりさせてあげるんだから!」と言い出して、朝ご飯を作るようになったのは、それから随分経ってからのことだった。

 それが、一年前くらいのこと。

 


 


 気がつくと、俺は自分の部屋にいる。

 ざーざーと砂嵐がテレビ画面に映し出されていた。


 うるさい!

 うるさいんだよっ!!

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


    + 湧き上がる衝動 +

 


 


GM じゃあ、トイレから出てきた魅呼音。

夕美 どうしたの、魅呼音さん、大丈夫…?

魅呼音 …………(青ざめた顔)。

夕美 もしかして…お兄ちゃんとなにか、あった…の?


(正輝 その頃、俺は部屋で「うるせーーー!!」とか怒鳴って、暴れている)


GM ……ええと、正輝の部屋からどたばたと音がする。

正輝 ちくしょう! ちくしょう!!(壁をコブシで叩く……血が滲んでいる)

魅呼音 (部屋に駆け込んで)正輝!! やめて!!

夕美 そ、そうだよ!! お兄ちゃん!!!

魅呼音 落ち着かないと、どうにもならないでしょっ!!!

正輝 (息を切らせながら)……ああ、分かっている。もう、落ち着いたから……。

魅呼音&夕美 ……(心配げ)。

夕美 お兄ちゃん……。

正輝 俺は大丈夫だから、夕美はもう寝ててくれ。

夕美 そんなことできないよ!! 心配だもん、夕美、お兄ちゃんのこと心配だもんっ!!

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


正輝 俺はもう、大丈夫だから(少し冷たい態度)。

夕美 ……でも、魅呼音さんも……。

魅呼音 あ、あたしは大丈夫だから。

三人 ……(沈黙)……。

正輝 俺は魅呼音とちょっと出てくるから、夕美はもういいから寝るんだっ。

一同 うわ、なんかひどいこと言ってる……。


(魅呼音 なんで、あたしを送ってくるから…とか言えないかな、正輝は?)

(椎奈 ……夕美ちゃん、かわいそう……)

GM いや、ホントだよ(苦笑)。


夕美 ………わかった、よぉ(少し泣きそうな顔)。うん、いってらっしゃい………。部屋、片づけておくよ……(正輝が暴れたので)。

正輝 (はっとビデオのことを思い出して)いや、そんなことはしなくていいからっ。俺が明日片づけるから、いいなっ?(強い口調)

夕美 うん……。


 *夕美、マジでかわいそうです。


魅呼音 (外に出て)……それで、澄さんは……?

正輝 もう、だめかもしれない……。

魅呼音 そんな……。

正輝 俺のせいだ……俺のせいなんだ………。

魅呼音 違う、正輝のせいなんかじゃ…………。

正輝 俺のせいなんだ……どうせ、死ぬんだ……(ぼそり)。

魅呼音 澄さんはまだ死んでないわよっ。だから……。

正輝 殺スんだ……。

魅呼音 ……正輝……? まさ、き……、やめ………。

 


 


 依然として目の前は真っ赤だった。

 さっき薄れたと思っていた赤は、再び色濃くなっていく。

 割れそうなぐらいの頭痛。

 ざーざーと耳鳴りがする。

 ざーざーという雑音の向こう側から聞こえてくる声は、徐々に大きくなり、カタチを持ち始める。

 


 


 


 目の前は赤。

 その血塗られた世界に、鮮明な白色が霞んで見えた。

 俺は導かれるように、手を伸ばす。

 細い首筋。

 俺はギリギリとそれを締め付ける。

 爪が食い込み、白色が赤く滲む。

 俺はそれを見ると、ひどく興奮する。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 


 ごくりと唾を飲み込む。

 頭に血が逆流しそうで、

 喉がからからだ。

 雑音がひときわひどくなる。

 だって、

 さっきから、

 ソイツは俺にこう囁くんだ。


 殺セ――と。

 


 


正輝 …………(魅呼音の首を絞める)。

魅呼音 まさき……。

正輝 (はっとして魅呼音の首から手を放す)……俺は、俺は………すまない、魅呼音、すまない……澄さん……(泣き崩れる)。

魅呼音 (少し咳込んだ後)……正輝、なんとかなるから……。

正輝 …………。

魅呼音 ……大丈夫だから。きっと、なんとかなるから、大丈夫よ……(と、正輝を抱きしめる)。

正輝 …………魅呼音…………。

 


 


挿絵(By みてみん)


 


 


 

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