衝動編 第六章
+ 衝動疾走 +
俺はあてもなく駆け出していた。
手当たり次第街を駆け回り、アンナの姿を探していた。
我ながら馬鹿げたことをしていると心のどこかで思う。
しかし、今、アンナが誰かの手に落ちているかと思うといてもたってもいられなかった。もしも、アンナを守れなかったら俺は一生後悔するだろう。
俺のこの力はなんのためにあるのか?
その答えを探すかのように、俺はがむしゃらに走り続けた。
そして、焦燥感が募るままに、一時間近くも経過した―――
正輝 (携帯が鳴る)……田淵さんから……? もしもし……?
GM/田淵 「もしもし……春日くんですか? ああ、切らないでください」
正輝 …………。
GM/田淵 「えっと、大変言いにくいことなんですが、指宿さんと暁さんは人質に取らせていただきました」
正輝 なに…!?
GM/田淵 「実は私はファルスハーツ側の工作員でして(明るい口調)」
正輝 あ、あんたは……(怒)。
GM/田淵 「まさか、あなたがそこまで激情家だとは思いませんでしたよ。おかげで、せっかく立てた計画が台無しです」
正輝 俺に、どうしろって言うんだ!?
GM/田淵 「ここを知っていますか……?」
今までに聞いたことがないぐらい上機嫌な声で田淵さん――いや、もう田淵でいいか。田淵は場所の説明をした。
この街から少し離れた所に、都市開発が途中で止まり、入居者がいないマンションがある。
数年前に、怪奇特集で幽霊がいるとかいないとかで報道されていた。地元の人は「おばけマンション」とか呼んでいる場所だ。
そこに、魅呼音と椎奈……そして、アンナもいるという。
「伊集院くんもあなたのことを待っていますよ」
そう言って、携帯が切れた。
田淵はどこかいやらしさを含んだ口調にすっかり変わっていた。もともとそういう口調なのだろうか?
「くそ!!」
俺は悪態を吐きながら、辺りを見渡す。
頭の芯がじんじんと痛み始めるのが分かる。
近くの壁を殴りその鈍い痛みと怒りをぶつけ、俺はおばけマンションに向かった―――
+ 衝動衝突 +
魅呼音 ……あたしたちをどうするつもり?(睨)
GM/田淵 「どうもしませんよ(にっこり)。あなた方はただの観客なのですから(拳銃を向けながら)」
椎奈 ……UGNのエージェントは……?
GM/田淵 「ああ、本物の田淵さんはすでに死んでおります。ちなみに、私の名前は宮沢と申します……って、あなた方にはそんなことはどうでもいい話でしょうけど(笑み)」
アンナ …………。
正輝 みんなーっ!!!(盗んだバイクで突っ込んでくる)
GM まさか、バイクまで盗むとは思わなかった(笑)。
(正輝 いや、タクシーで来るよりはましだろ? 「へい! たくしー!! お化けマンションまで頼む!!(笑)」)
一同 カッコ悪ぅ~(笑)。
GM/宮沢 「どうやら、来たようですね」
正輝 (周りを見渡す)来てやったぞ!!
アンナ ……ま、ま…さき……?(ぽつり)
俺は慣れないバイクを操作しながら、山の上にひっそりと建てられたマンションにたどり着く。
空き地のような所には、錆びたドラム缶やプレハブの建物。そして、その背後には蔦が這い灰色に染まった壁のマンションがのっぺりと建っていた。
空き地にはあの車に乗っていた運転手がアンナにナイフを、そしてそこから離れた所で田淵が椎奈と魅呼音に拳銃を向けていた。
そして俺を出迎えたのは、嫌な笑みを浮かべた伊集院と……炎だった。
正輝 ぐ、なんとか回避したぞ。《イオノクラフト》で着地成功。バイクは大破したな……。
GM/伊集院 「くくっ、見てろよ…アンナ。お前は俺のものだということを目の前で春日をぶっ殺して証明してやるよ、なあ、アンナ(にやり)」
アンナ …………(沈黙)。
正輝 アンナ!
GM/伊集院 「うるせぇよ。…だいたい、てめぇは前々から目障りなんだよっ!!(正輝を睨む)」
正輝 (伊集院を無視して)アンナ、無事か!?
アンナ ……正輝……、来て……来てくれたの………?
正輝 当たり前だろ(にっこり)。
アンナ (はっとして)正輝!! お願い、正輝!! 逃げてー!!
正輝 今、助けるからな、アンナ!
アンナ (首を横に振って)だめ……だめですわ、正輝! わたくし、なにが起こっているのかよく分かりませんけど……この方たち、普通ではありませんわ!!! だから、逃げて!!!
正輝 (ぼそりと)普通じゃない…か……。
GM/伊集院 「だとさ。お姫さまがそう言ってるぜ。まさか、ここで尻尾まいて逃げたりはしねぇよなぁ(にやにや)」
正輝 …………逃げるつもりはない。本当に、お前と戦えばみんなを離すんだろうな?
GM/伊集院 「ああ、もちろんだぜ」
正輝 …………。
GM/伊集院 「……なぁ、春日……お前は感じないか? もう一人の自分ってやつを……」
正輝 なんの話だ…?
GM/伊集院 「俺はな…そいつと仲良くやってるぜ。なんていったかな……そうそう、殺してやりてぇ…という衝動だ。そして、それを実現できる力……春日、お前はどうなんだよ……?」
正輝 それに関しては、俺はお前と同じ意見だ……(睨)。
GM/伊集院 「……いい目だ、春日ぁ。人殺しは、楽しいぜ……俺に逆らうとどうなるか、その身をもって味わいなぁ!!」
正輝 俺も言ったはずだ! 俺自身、抑えがきかないんだとなっ!!!
GM というわけで、戦闘開始。椎奈、魅呼音はなにもしないんだよね?
魅呼音 アンナが人質に取られてるし……見てるわよ。
椎奈 ……はい。
正輝 (アンナに)……できれば、目をつぶっていて欲しい……。
アンナ 正輝……。
GM/伊集院 マイナーアクションで《炎の加護》。そして、《灼熱の砦》+《灼熱の弾丸》で……(ころころ)45。
正輝 〈回避〉は無理そうだな……《磁力結界》でガードだ……。
GM/伊集院 「ふはははは、燃え尽きちまいな!!!」ダメージは42点。
正輝 ぐあああああぁぁぁぁぁぁ!!!
+ 衝動暴走 +
人体が一瞬で黒こげになるほどの火力。
俺はそれをほぼまともに浴びてしまった。
火事の時、炎自体は恐ろしいものではない。本当に恐ろしいのは煙を吸い込むことによる呼吸困難であり、火傷自体は致命傷になりにくい。
しかし、これは皮膚を越え筋肉まで焦がす強力な炎だった。
俺の細胞組織が死を告げる瞬間、俺の中にあるウィルスが爆発的な繁殖をし、肉体を侵蝕する。そして、ウィルスは瞬間的に筋肉や皮膚を蘇生させた。
激痛の後、俺は気を失うことを許されず、戦いに引き戻される。
そして、「殺せる」ことを喜ぶもう一人の自分の声が確かに大きくなった。
正輝 はぁ、はぁ……(HP3点回復)。
(椎奈 ガッツ……)
(魅呼音 もしかして、応援のつもり?(笑))
(椎奈 うん(笑))
(アンナ わたくしは応援できるのでしょうかね、この人外の戦い振りを見て……(苦笑))
GM/伊集院 「くく、辛そうだなぁ……だが、降参はねぇぜ、この戦いはなぁ!」
正輝 ぐ……、おのれぇ!! いい台詞が思い付かない!!!(笑)
一同 (笑)
(正輝 俺はちゃんとした戦闘なんて初めてだから、実は焦りまくり(笑))
GM じゃあ、他の皆さんはなにかアドバイスを。
(椎奈 慌てないで! 相手の炎をよく見るの……避けられないほどじゃないわ!! ……たぶん(笑))
(魅呼音 そうよ! 正輝はあたしより電流をうまく使えるはずよ! 電気で炎を防ぐのよ!!)
(アンナ あとはダイス目ですわ!!(笑))
正輝 俺は……みんなを守るために、負けるわけにはいかない!!
正輝 マイナーアクションで《氷炎の剣》+《イオノクラフト》。《アームズリンク》を(ころころ)18。
GM/伊集院 〈回避〉は……(ころころ)19! 「とろいぜ!!」さらに、《加速する刻》で、《灼熱の砦》+《エネルギーマイスター》+《灼熱の弾丸》! (ころころ)29。
正輝 くそ、ガードができない!! 〈回避〉で8……。
GM/伊集院 ダメージは振るまでもなく、HPは0になるな。
正輝 (ころころ)7点回復。
GM/伊集院 次のラウンド。エンゲージした正輝に《灼熱の砦》+《エネルギーマイスター》+《灼熱の弾丸》+《災厄の炎》で攻撃。……18。
正輝 ……19で回避成功。いくぜ!!
俺がそう身構えた瞬間。
伊集院の身体に異変が起きていた。
「な、なに……? 馬鹿な……俺が………この俺が…っ!!!」
メキメキという気味の悪い音を立てながら筋肉が不自然に膨張していく。それに骨が追いつかないのか、それとも骨格にも異変が起きているのか、奇妙な姿に成り果てていく。
「えらばれたこのおれGAじゃーMUNIIIIIIII!!?」
暴走。
これが、レネゲイドウィルスに感染した者の末路。
これが、ジャーム―――
「おやおや、あなたもダメでしたか……」
まるで、その辺の野良犬の死体を見つめるような目で田淵が呟いた。
「ちょっと、あんたあいつの仲間じゃなかったの!?」
魅呼音が田淵に食って掛かるが、田淵はまったく気にしていない様子だった。
白目を剥き、そして涎をだらだらと垂れ流しながら、炎の塊をまき散らす伊集院。
「かすがぁぁぁぁぁぁぁKOROすぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
俺はその炎に腹を貫かれ、辺りに血と肉を撒き散らす。
「くっ……」
アンナと魅呼音が悲鳴を上げる。
俺は脇腹からずきずきと痛みを感じている。しかし、その反対に頭の方はひどく落ち着いていた。
この憐れな生き物が、伊集院の言っていた「もう一人の自分」なのだろうか?
そう思うと、俺は腹の痛みよりも心が悲しみに満ちる。
動きを止めた伊集院に、俺はなんなく氷の剣を突き立てる。
すぶり、と音を立てて伊集院の身体を氷が突き抜けた。
そして、伊集院はそのまま倒れていった。
「伊集院……」
俺は殺してやりたいという衝動が、急速に冷めていくのを感じていた。
そして、ひどく虚しい気分になる。
俺にとってのもう一人の自分。
それは、
もしかしたら、
伊集院だったかもしれない―――
*伊集院十和は侵蝕率100%を越えると自動的にジャーム化するという設定にしていました。
+ 凶弾 +
GM/宮沢 「(伊集院を見て)やれやれ、彼のために用意した舞台はここまでのようですね」
魅呼音 ちょっと、あんた! 早くアンナを離しなさいよ!!
GM/宮沢 「そんなことよりも、日和川さんになにが起こっているのか説明しないのですか?」
魅呼音 え…そ、それは……(口篭る)。
アンナ …………。
GM/宮沢 「どうしたんです…?」
正輝 アンナ……悪い…後でちゃんと説明するから……。
アンナ 正輝…………。
GM/宮沢 「まあ、このままあなた方が私を見逃してくれるわけがないでしょうし、一つ、私がお相手をしてあげますよ(にっこり)」
椎奈 ………(銃を構える)。
GM/宮沢 「さあ、始めましょうかっ」ちなみに、アンナを押さえている運転手は戦闘に不参加ということで。
椎奈 まずは、私からですね。
GM/宮沢 いや、宮沢は《戦局判断》でイニシアティブを引き上げる。
魅呼音 ノイマン……ね。
GM/宮沢 椎奈に向けて、《オウガバトル》《シューティングシステム:射撃》で。
椎奈 撃ち落とします。《シューティングシステム:射撃》+《守りの弾》で……21です。
GM/宮沢 (ころころ)こっちは58。ダメージは…30点。
椎奈 (ころころ)《リザレクト》発動…7点回復、です。防ぐのは、難しい……。
魅呼音 あたしは《一角鬼》と移動しておしまいね……。
正輝 俺はマイナーアクションで《氷炎の剣》+《イオノクラフト》。《MAXボルテージ》+《アームズリンク》を(ころころ)24。
GM/宮沢 《アナライズ》で〈回避〉……成功。「所詮は、あなた方はこの程度なのですよ!」
「圧倒的に上回っているのですよ!!」
高笑いをしながら、宮沢の正確無比の射撃で再び私の胸を弾丸が貫通しました。
撃ち出された弾丸を私はなんとか撃ち落とすのですが、その瞬間、死角からさらに弾丸が飛んでくるのです。ほんのコンマ数秒の戦いですが、宮沢の言う通り圧倒的な技量差が分かりました。
普通の人間でしたら、確実に即死するような銃弾を浴びながら、なんとかウィルスの力で回復しているのが現状です。
魅呼音の爪や正輝の氷剣も、宮沢の目には止まっているかのように、冷静に銃弾で対処してきます。私も制服が汚れるのも構わず、転がりながら避けようとしても無駄でした。
正輝 ついに、侵蝕率が100%を越えた……「俺は守るんだ!! みんなを守るんだ!!!」(ころころ)38!
GM/宮沢 (ころころ)ぬぅ、ダメか……ダメージは?
正輝 これが俺の力だ!(ダメージ36点)
GM/宮沢 「ぐ…お、おのれぇぇぇぇ! この私によくも傷を!!」
傷をつけられた宮沢は、先程の冷静さはなくなり、私や魅呼音、正輝に向けて弾丸を雨のように撃ってきました。
魅呼音も急所を撃ち抜かれ、ウィルスの異常な回復力でなんとか立っている状態です。
正輝は瞳の色が、危険な感じを漂わせていました。それは、ウィルスの侵蝕率がかなり危険なレベルまで進んでいることを示しています。
1、2、3、4、5。
私はトリガーを引き、狙い通りの場所に撃ちます。
一直線に弾丸が宮沢の元に向かいますが、
「遅い!」
宮沢はそう一喝してすべての弾丸を避けていきます。
――もう、終わりですね。
私は、そう小さく呟きました。
魅呼音 《雷の牙》+《獣の力》で……く、出目が足りない……!
GM/宮沢 「その程度で……」
椎奈 (ぽつりと)《勝利の女神》……貴方の負けです……。
GM/宮沢 「ば、馬鹿なぁぁ!?」
宮沢は、いつのまにか壁際まで追い詰められていることに気づき、無様な表情をしています。
魅呼音は、その爪があっさりと宮沢の胸を貫いたことに、驚きの表情を隠せませんでした。
この時の私の格好は、
擦り切れてボロボロになり、
所々に弾丸の突き抜けた穴が制服に空いています。
この制服はもう着られませんね……。
と、考えていました。




