覚醒編 終章
+ 遭遇 +
正輝 はぁ(ため息)。伊集院に志木か……面倒なことになりそうだな(苦笑)。特に、伊集院だよな……下手なことをすると、バスケ部に迷惑がかかりそうだ。
GM 小さな公園を通り過ぎるんだけど、そこから「GRURURURURURU…」と奇妙な声がする。
正輝 な、なんだ?(振り返る)
公園の茂みの中でらんらんと赤く光る二つの瞳と、俺は目が合ってしまった。
そいつは、緑色をした奇怪な姿で、爬虫類を思わせる瞳、牙。さらに、手には大きすぎる爪がついていた。
瞳孔がうっすらと細くなる。
俺は、一歩後ろに下がることしかできなかった。
GM/ジャーム 「GYAAAAAAAAAAAAA!!(一瞬で詰め寄って爪を振り上げる)」
正輝 うわあああああ!(鞄が切り裂かれる)
GM/ジャーム 「GRUGRYAAAA!」
正輝 (ころころ)食らった……。
俺は必死に転げまわるようにその巨大な爪から逃れていたが、ついにその爪が俺の脇腹をえぐった。
痛みで、体中が熱くなる。
そいつにとってみれば、軽く撫でたつもりかもしれないが、俺には耐えられないほどの痛みだった。
「くそっ……いったい…なんなんだ…………」
今度は、頬。
次は、左肩。
えぐられるたびに、俺の動きは鈍くなり傷が増えていくペースがあがっていく。
体中に傷を負いながら、徐々に現実感が薄れてきた。
出血もひどい。
そして、ついに抵抗する気力もなくなり、そいつの振り上げる巨大な爪を俺はぼんやりと見ていた。
椎奈 (ジャームを見つけて)あれは………正輝…!?
GM/ジャーム 「GRYUUUUAAAAAAAAAAA!!」
正輝 …………(意識朦朧)。
ああ、俺は死ぬのかな……。
なんだか、よく分からないや……。
爪が俺の顔面に迫ってくるのを、遠くからぼんやりと眺めている自分。
そこいる無気力な自分。
そして、
目の前が赤く染まった。
+ 覚醒Ⅰ +
俺の目の前には、覆い被さる椎奈の姿があった。
まるで、スローモーションで見ているかのように、
そして、長い黒い髪がなびくように揺れながら、
ゆらゆらと揺れながら、
赤い、
赤い、
紅い色。
それは、黒い巨大な影。
その巨大な影が自分に迫ってくる。
異形の姿をした、そいつの巨大な爪が―――
二つの灯火をつけながら近づいてくる。
らんらんと輝く赤い瞳で―――
必死にそこから逃げ出そうとするが、足が竦んで動けない。
あまりにも無力な自分。
逃げなきゃ。
逃げないと。
そう言い聞かせながら、一歩……そう、一歩でいいから動け……。
しかし、足は一歩も動かず、それを見上げることしか臆病な自分にはできなかった。
ぼんやりと俺は眺めているだけ―――
そんな俺を優しく一人の女性が抱いてくれる。
「大丈夫よ……」
とても優しい声で自分に微笑んでくれる。
「よかった……」
椎奈はとても優しい微笑みを浮かべながら、
黒い影から自分を庇ってくれた女性は。
長い黒髪をなびかせながら、
その優しい微笑みを残しながら、
真っ赤に染まる。
赤く。
鮮やかに。
その女性の顔は、
その女性の顔は―――
母さん―――
椎奈―――
―――っ!!!
熱い…………。
身体が焼けるように熱い…………。
身を焦がすような熱さの中、俺は頭を掻き毟るような頭痛を感じる。
「コロセ………」
その頭痛は、声を伴っている。
「コロセ………」
直接脳みそをかき乱すような声は、うるさく俺に付きまとってきた。
「コロセ………コロセ………コロセ………」
うるさい。
うるさい、うるさい、うるさいっ!!
「コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………」
うるさい、黙れ、黙れ、黙れっ!!!
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れっ!!!
コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………コロセ………。
それは、もう俺の声なのか、脳に響く声なのか、俺はそれをすでに叫んでいるのかすら、分からない状態にあった。
目の前は赤く、濁っていた。
………………。
…………。
……。
気がつくと、俺は氷のような剣を手に持って呆然と立っている。
それには、べっとりと赤い色がついていた。
赤い。
赤い血。
目の前には、あの異形の生き物が血まみれで倒れていた―――
+ 覚醒Ⅱ +
正輝 うああああAAAAAAAっ!!!(傷がふさがっていく)
椎奈 (傷を負いながら)……まさか……覚醒………。
正輝 あAAAAAAああああああああああAAAAっ!!!!
椎奈 …………。
正輝 ……コロス………。
正輝の周囲の気温が下がり始めました。
手からはパリパリという音を立てながら、鋭利な刃物を形成していきます。
透明な刃物……おそらくは、氷。
そして、ばちっという音で、強く光りました。
氷の表面は、帯電しているようです。
温度を操るサラマンダー、電気を操るブラックドッグ……今の彼は、まさにその能力を使っていました。
GM/ジャーム 「GAAAAAAAAAA!!!」《獣の力》+《銘無き刃》で(ころころ)19。
正輝 《磁力結界》でガード!
バチンっと電気の流れる音がすると、ジャームの牙は正輝に届く前に弾かれてしまいました。
そして、私が持っている拳銃から異様な重さを感じます。
周囲の金属類ががたがたと音を立てていることから見ると、どうやら強力な磁力でこの辺りの磁場がおかしくなっているようです。
正輝 《氷炎の剣》、《バリアクラッカー》+《MAXボルテージ》+《アームズリンク》で攻撃。「シネ……っ!!」
ジャームが俊敏な動きでかわそうとするのを、やはり周囲の磁力を狂わせて動きを鈍らせます。そして、その瞬間を狙って一気に氷の剣で切り裂きました。
「GUAAAAAAAAAAAA」
断末魔と共に、ジャームは倒れました。
正輝 ……………。
椎奈 (ぽつり)正輝………。
正輝 …………。
椎奈 ………正輝………?
正輝 (瞳に光を取り戻して)…………ぁ……?
椎奈 …………。
正輝 ………いったい……なにが………?
椎奈 ………………(かなしげに目を伏せる)。
正輝 …………俺は………?
二人 ……(沈黙)……。
椎奈 (正輝をかなしげに見つめて)……それは…………。
私はこの世界のことを話し始めました―――
+ 世界 +
その後、色々とごたごたしていた。
事後処理とかなんとかで、あの化け物――ジャームというらしいが。そいつを救急車に偽装した車が運んでいったり。
数日間もかけて、俺はUGNという組織で検査を受けたりしていた。
そして、
俺はこの世界のことを教えられた。
俺の母さんの事件のことも。
魅呼音 ………ごめん………黙っていて………あたしは……。
正輝 ……いや、いいんだ。ああいう事情ならしょうがないよ。お前だって大変だったんだろ…?(にっこり)
魅呼音 正輝………ありがとう………そう言ってくれて……。
椎奈 …………(沈んだ表情)。
正輝 椎奈も、俺のことなんて気にするなよ。
椎奈 ………正輝………でも、私は正輝のことを疑ってた……(しょんぼり)。
正輝 まあ、仕事みたいなもん…だったんだろ? それは、椎奈のせいじゃないさ。二人とも、俺のことなら大丈夫だからな(にこっ)。
二人 ……うん(頷く)。
正輝 (教室でぼ~っとしてる)…………。
GM/連太郎 「ちゃおっ! 正輝の親友の連太郎くんだぞ!!(笑顔)」
正輝 よっ(笑顔)。
GM/連太郎 「…………」
正輝 どうしたんだ?(笑顔)
GM/連太郎 「……お前さ、なにかあったのか?」
正輝 いや、そんなことはないぞ…(から笑い)。
GM/連太郎 「(真面目な顔になって)……なんかあったら、オレに言えよ。オレならいつでも相談に乗ってやるからな……」
正輝 ………ああ。
「“碧き輝き”か………」
椎奈の上司から、そう命名された。
俺は、春日正輝だぞ………。
心の中でそう呟きながら、自分の部屋でごろごろとしていた。
色々と頭の中では整理できないことばかりだ。
レネゲイド・ウィルスのこと。
自分が“ヒト”でなくなったこと。
母さんがジャームに殺されたこと。
そんな俺を気遣ってくれる、みんな。
魅呼音や夕美やアンナや椎奈、連太。
俺の周りの連中はいい奴ばかりだ。
そう、思える。
だからこそ、俺は心配かけまいと振る舞っていた。
だが、この気持ちを言う気にはなれなかった。
そのことを黙っていた魅呼音や椎奈に。
そのことを黙っている夕美やアンナ、連太に。
すると、突然に俺の携帯が鳴り始めた。
『はじめまして! メル友になりませんか?』
『今、高校二年生のあいといいます。いろんなことを話し合えるメル友を募集中です。よろしければ、お返事ください。それでは』
今までだったら、気にも留めないメールだったが。
誰でもない、
そう、
誰でもない誰かとの会話が欲しかった。
気がつくと、携帯のボタンを押す自分がいた―――
ダブルクロス・リプレイ - LoveSyndrome/恋愛症候群 -
覚醒編――END
日常編・覚醒編のスチルイラストを一部、修正・追加しました(2014/10/5)。




