作り手から使い手へジョブチェンジ
西暦2123年
もはやネットが第二の世界として定着した時代、A.I.R.Aと呼ばれるネットゲームが空前のヒットを飛ばしていた
プレイヤーはレイダーと呼ばれレイドフレームと呼ばれるメカを操り領土を奪うという単純な内容だがその勝利報酬は大きく一攫千金を狙うものが後を絶たない
中には仕事を辞めてA.I.R.Aをやるものまで現れるだけでなく企業や国家間での代理戦争としてまで使われもはやゲームとしての度が過ぎた規模にまで膨れ上がっていた
アークハイヴ“ケロンパ”
「みんな、あのアンノウンを囲んでください」
日本サーバー最大のハイヴ、ケロンパのリーダーが命令を下す
敵はたった一機の黒いレイドフレームだった。黒なんてオンラインゲームでは良くあるものだがこいつは格が違っていた
黒いレイドフレームが持つライフルが火を噴き次々とケロンパ所属のレイダーのレイドフレームたちの胸部装甲が次々と砕かれ沈黙する
「なんなんだあの化け物は!まぁいい、あいつが仲間になればドミネイトポイント統一も夢じゃない!」
リーダーは己のレイドフレームをブースターに火をつけると複雑な機動を描きつつ前へ飛び出しレーザーソードを取り出し斬りかかる
黒いレイドフレームは槍を取り出すと頭上で振り回しレーザーソードを受け流す
「まだまだ!!」
弾かれた勢いに乗ってさらに斬り返す。槍と剣がぶつかり火花を散らしながら鍔迫り合いとなった
互いのパワーは互角、リーダーは咄嗟に片手を離し空いた手で腰からもう一本のレーザーソードを掴むと一気に抜き放つ
黒いレイドフレームはすぐに槍を手放し後退すると背中のホルスターからライフルを抜き右に飛びながら連射する。リーダーは素早く弾を避けつつ敵に接近、多少被弾したがまだいける程度だった
「うーん....レイダーねぇ....」
「そうそう!和樹も一緒にやろうよ!レイドフレームデザインやパーツチューンが得意なんだしさ」
彼女である美奈の誘いに藤堂和樹は悩んでいた
「あれは趣味であってしかも大体が欠陥機でそれに俺は戦うのはちょっと...」
「それでもいいから!まだうちのハイヴではクリエイターがいなくて困ってるの」
「えー、でもめんどくせぇよ」
和樹はあからさまに嫌な顔をした
美奈は笑顔で拳を見せると和樹の腹にぶちかます
「げばらっ!?」
「殴るよ?」
「殴ってるし!」
「和樹、君に拒否権はない」
美奈は笑顔で宣言する
「救いはないのですか!?」
「あ?ねぇよそんなもん」
美奈はパキパキと指を鳴らす
「まぁ整備くらいなら」
和樹は渋々やることにした
「いいの!?じゃあ早速うちに来てはじめようよ!」
美奈が和樹の手を引く
「ちょ、まてよ!....ったく、こういうのは直樹が得意だったんだがな」
和樹は行方不明になった弟のことを思い出しながらも引っ張られた
「あ、そういえば和樹はデバイスを持って無いんだっけ?」
デバイスとはユーザー認証機能を搭載したメモリーである。またこれはレイドフレームの起動キーにもなるためA.I.R.Aを始めるには必須だ
「直樹のがあるぞ」
和樹はポケットから弟のデバイスを取り出した
「それ、使えるの?」
「今まで直樹のデバイスを使って改造とかしてたし大丈夫だろ」
デバイスを起動して見せる
「なら大丈夫だね、じゃあいこっか」
「ちょ!ま!痛いからその引きずりやめて!!」
和樹は美奈に引きずられながら彼女の家へ向かった
「うっ....あ....」
美奈の家に着いた頃和樹はすでに全身をピクピクと痙攣させ動かなくなっていた
「ほら起きる!」
美奈が和樹の腹を踏む
「ぐっはぁ!」
和樹は目を覚ましふらふらと立ち上がる
「そういや美奈の家に来るの初めてだよな」
和樹は美奈の部屋を見渡す。人形の他に女性らしい小物が飾ってありファンシーな雰囲気だがどうも部屋の真ん中だけには特大級に場違いなものが鎮座されていた
「これって最新式の神経接続ベッドか」
「そうだよ」
「首輪じゃダメなのか?」
和樹は自分の首についた装置を指差す。これはスイッチを入れることで擬似的な幽体離脱を行いネットワークに接続するものだ。かつては専用の器具を人体に取り付けていたが今では必要となくなった
「感度が違うのだよ明智君」
「感度はわかった、俺の名前は明智君ではない」
和樹は冷静につっこむ
大型の神経接続装置は小型のものと比べてまるで本当に自分がそこにいるという実感が体験できるメリットがある。そのため大型の神経接続装置が廃ることはなかった
「なるほどねぇ。んでどこいけばいいんだ?」
「じゃあ私のサーバーに来てよ。パスワードは送っておいたから入れるはずだよ」
美奈は神経接続ベッドに横たわると先にサーバーへログインした
「あいよ」
和樹も首輪を起動しログインする。一瞬電気が走る痛みを感じたがやがて眠るように目をつぶった
目を開けるとそこは工場のような場所だった
「お、きたきた。ここが私のガレージだよ。好きに使ってね」
目の前には鳥の姿をした巨大なレイドフレーム、ファルピュイアが立っていた。ファルピュイアは和樹が製作した作品の一つでかつてレイドフレームでは実現不可能と言われてきた飛行能力を持った現行唯一の機体である。正確には滑空であるが高い機動力と高高度からの爆撃により美奈は全国ランキング2位にまで上り詰めた。フォルピュイアに関しては和樹は最高傑作だと思っておりこのゲームでの仕様であるハンディキャップも軽めで扱いやすい
和樹はフォルピュイアを見上げると親が子を見るような優しい眼差しをした
「美奈、フォルピュイアの整備しておこうか?」
美奈はよろしくと言って奥へと進む
和樹もついていくと正面に扉が開く
「ここがメインルームだよ、好きに使ってね」
広さはそこそこ、無駄のない内装で綺麗に整頓....されていなかった
「おい....」
和樹はプルプル震える
「ん?なに和樹」
美奈はキョトンとした顔で聞く
「掃除くらいちゃんとしろおおおお!!!」
和樹の叫びが建物中に響き渡る
「おいこらどうなってんだこれ、なんでデスクの上に下着とかが散乱しているんだ!しかも整備用の工具が床に散らばってるとか言語道断!お前レイドフレームをなんだと思っている!?愛情はないのか?お前の大事な相棒でしかも俺が作った中でも最高の一品なんだぞ?誰もが羨むワンオフ機だぞ?お前よくそんな気概で名工と呼ばれた俺をここに呼んだな!覚悟はできてるだろうな!俺の大事なフォルピュイアを没収すんぞ!没収!」
和樹は唾を飛ばしながら美奈に説教する
「うぅ...和樹ったら相変わらずそういうところ几帳面なんだから...」
美奈は正座して足がしびれたのかへたり込む
「まぁ和樹のレイドフレームは最高なのは確かだけどなんか職人っぽいよ」
「職人っぽいんじゃない、職人だからな」
和樹は胸を張る
「でも自分で操縦しないでよくあんないいもの作るよね」
グサっと和樹の胸に何かが刺さる
「結構作ったものの中にはレイダーのことを考えないものもあるっていうし」
更に追い打ちをかける
「いや....あれはその...わかった本当のことを教えてやろう」
和樹は頭を抱えると口を開いた
「実は俺、レイドフレームに乗ると酔うんだ....」
「....え?」
「だからレイドフレームに乗ると酔うの!」
和樹が少しムキになる
「プッ、まさか今まで乗らなかったのって酔うからだったの?」
美奈は笑いを堪えるのに必死で顔を赤くしながら口を抑える
「そーだよダメかよ」
和樹は項垂れた
「いや、なんていうか。ちょっと意外」
「ったく、そんでベンチはあるか?」
和樹が辺りを見回しながら聞く
「作業台のことだね。好きに使っていいけど資材とかは自腹ね」
美奈が案内する
「わかってるよ、幸い仕事と金と資材には困ったことがないんでね」
和樹がデバイスを美奈に見せる
「うお!?これって下手したら国家予算級だよね!?」
美奈は飛び上がる
「それは大げさだけどな、レイドフレームの依頼は3年先まで埋まってるよ。中には結構なお偉いさんにまで目をつけられてるしな」
「確かにねー、大体変態レイドフレームを見かけたらメイドイン和樹ってのあるし」
「技術的な変態は褒め言葉だ」
和樹はドヤ顔をする
「変態!変態!変態!痴漢!露出狂!」
美奈が笑いながら罵倒する
「ごめんなさい、やっぱ今のなし」
和樹の心は一気にへし折られた
「あはは、冗談だよ冗談」
「わかってるさ、美奈の言動はほとんどノリだってことくらい」
和樹はため息をつくとベンチにデバイスを差し込み作業に取り組む
「えっと、パーツは過去に作った秘蔵の傑作を寄せ集めて形状は全体的に合わせるのでいいか。ジェネレーター....しまった、この前ので在庫がないな。作るの面倒だし直樹のファイルからなにかないかな」
直樹のパーツファイルを開きジェネレーターのカテゴリを選択する
「どれもいいものだがなんかなぁ....お?」
一つ気になるものがあった
“アハトコーポレーション試作エンジン・バーストドライブ”
アハトコーポレーションが作る試作品はどれもランキング上位者に送られるものでゲームバランスを一気に崩壊させるほどの性能を有していた。和樹もアハトコーポレーション製のパーツには興味を持っていて一度は見て見たかった
“使用不可能”
その下にはそんなことが書いてあった。強力だが使えないパーツを見て和樹の職人魂がうずく
「これ、直樹には悪いが使わせてもらうか。さてどんなじゃじゃ馬ができるかな」
早速和樹はこのパーツを中心に組み込むことにした
「どう?」
美奈がひょっこり顔を出す
「今面白いパーツが手に入ったんだけど重量が結構あってどう組み込むか悩んでるんだよ。肉抜きできればいいけどどれもブラックボックスになってて下手にいじると取り返しがつかなくなる」
和樹はいろいろいじりながら考える
「よくわからないけどガッチリとしたものにならなきゃいけないんだね」
「そうだな、それと問題はまだある」
「なに?」
和樹はデータを美奈に見せる
「発熱量とエネルギー出力だ。どれもバカみたいな数字でこれじゃフレームが耐えきれない、耐熱性に優れたフレームでさえもシミュレートしたが結果は不適合」
いろんな材質のフレームが現れNGと表示される
「それじゃあ使えないじゃん」
美奈は呆れる
「まだ試していないものがあるんだが正直これは実現できないものではない」
「じゃあやれば?」
美奈が言うと和樹は軽く頷く
「やってもいいが使う素材がアダマンチウムになるんだ」
「アダマンチウム!?」
アダマンチウムとはこの世界に存在する最高の金属である。アハトコーポレーションでのみ取り扱われておりその価値はプラチナをも超える
「ああ、だから悩んでいる」
「なら使う場所を決めるとか」
美奈が提案する
「ほら、例えばジェネレーター周りとか足とか」
和樹はなるほどと理解し早速取り掛かる
「とりあえず今は胴体の部分のフレームだけアダマンチウムにしてあとは既存のものを使うか」
組み合わせを決定させるとOKの文字が出る
「おし!」
「やった!」
和樹と美奈はハイタッチをする
「あくまで理論上だがこれで動くはずだ。あとは熱暴走を抑えるためにいろんなところに排熱機関を設けて問題はエネルギーをどうするかだな」
「レーザーとかエネルギーをたくさん使う武器じゃダメなの?あとブースターとか」
「それだと重量と発熱量に問題が出るんだ。ただでさえ間に合うかどうかの冷却機を使ってるのに」
「つまり武器を乗せるまくるとそれに比例して冷却機も増やさないといけないってこと?」
「そうだ、エネルギーは心配しなくてもいいがどんどん巨大化していくしフレームも耐えられない」
「なんか難しいね」
「そうだ、だから燃える!」
和樹が立ち上がり腕を上げる
「この情熱をもっと正しい方向に持っていければいいのに」
美奈は自分の恋人の姿に少し心配した
「なんだかんだで一ヶ月だね」
美奈は紅茶をすする
「オーダー全て蹴飛ばして徹夜でやってるけどうまくいかない」
和樹は目の下のクマをこすりながらドリンク剤を飲む
「始める前からこんなハードモードで大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
和樹は美奈に向けて親指を立てる
「いやダメでしょ、今日は気晴らしに買い物いかない?」
「買い物か、ネット?リアル?」
和樹は若干目を虚ろにさせて聞く
「リアルだよバカ」
美奈が和樹の目を指で刺す
「目がぁ!目がぁ!」
和樹は床に転がり悶えた
「ちょっとは休まないとダメだよ」
「死んだらどうする!」
「ほっといても勝手に死ぬでしょアンタ」
「うっ....」
痛いところをつかれ和樹は黙る
「とにかく、行くよ」
美奈は和樹の手を取り引きずった
「ぎゃあああ!!痛い!!」
階段を引きずられながら降りる和樹はすでに血まみれになっていた
外に出ると近所の人が和樹たちをガン見する
「見てよあのカップル、また彼氏が彼女に引きずられて血まみれだよ」
「うっわ、私男嫌いだけど流石に同情するわー。そうだみっちゃん、あとで私たちの将来について語り合わない?」
「ごめん、アンタとの歪んだ友人関係にピリオドを打ちたくなってきたわ」
女子高生たちがヒソヒソと話す
「ママ、あのおじちゃんお姉ちゃんに引きずられて喜んでるよ!」
少女が指差すと母親は慌てて少女の目を覆う
「見ちゃダメ!」
「おいこら!俺はおじちゃんじゃねぇし喜んでもいねぇ!」
和樹は大人げもなく少女に反論する
「うぇーん!!」
少女は泣き出した
「女の子を泣かせない!」
美奈は和樹を蹴った
「あべし!!」
「やっとついた....」
和樹は地面に弱々しく倒れる
「ふぅ、お疲れ様」
美奈は爽やかな笑みを和樹に向ける
「おい、これデートの前に死ぬぞ」
和樹は近くの電柱で体を支える
「これも愛だよ♬」
てへぺろと美奈が可愛く返す
「お父さんは娘の将来が心配です」
「私に和樹みたいなお父さんがいたら9回くらい自殺を考えてるわ...」
「おいこら、だったらどうして俺たち付き合ってるんだよ!」
「他人だからいいのさ」
「よくわからん」
和樹は考えるのをやめた
「んでなに買うんだ?」
「んーと、ダンベル?」
美奈がスポーツショップを指差す
「お願いしますなんでもしますのでこれ以上その殺人的な腕力の強化に励まないでください」
和樹は切実な思いで願う
「じゃあランジェリーショップ!」
「考えが極端だわ!アンタは俺をそんなに殺したいか!」
「もう、わがままなんだから。じゃあビデオ借りよっか」
「そうしてくれ、俺は疲れた」
そう言ってとぼとぼ歩くのだった
一通り買い物も終わり和樹たちはカフェで昼食をとっていた
「ふぅ、疲れた」
和樹は深く息を吐く
「お疲れ様」
美奈はまだ元気そうである
「つーかなんでよりにもよってとっとこハ○太郎借りたんだよ」
「ハハッ!」
美奈が笑う
「やめろ消されるぞ。しかもキャラ違うし共通点がネズミのオスくらいしかねぇだろうが」
「大丈夫だよ、次の私ならきっとうまくやってくれるって」
「ZAP!ZAP!ZAP!」
和樹は某パラノイア風に言う
「あ、ちょっとお花を摘みに行ってくる」
美奈が立ち上がる
「いっといれー」
和樹が手を振ると美奈の拳が顔面にヒットし陥没する
「千の風になればいいのに」
美奈は和樹に冷たい視線を向けるとトイレへ向かった
「....はぁ、世界の悪意を感じるよ」
和樹はテーブルに突っ伏した
「よっ!相変わらず熱いねぇ」
金髪のちょっと軽そうなイケメンが声をかける
「....誰だお前、悪いけど俺の知り合いにホモはいないぞ」
和樹が真顔で言うとイケメンはずっこけた
「俺はお前の先輩の田中五郎だ!あとホモじゃねぇ!」
「ああ思い出しました、顔はいいけど名前が地味な田中先輩じゃありませんか....プッ」
和樹は棒読みで言うと思わず吹き出した
「いちいちうぜぇ...」
「んで、俺になんか用ですか?」
和樹は椅子にふんぞり返り上から目線で足を組む
「用はないがたまたま見かけたから声かけただけさ」
太郎はイケメンスマイルでかっこ良く答える
「じゃあ帰れ」
「ひどくね!?」
太郎は気をとりなおして和樹の横の席に座る
「つうかいつの間にか文章が五郎から太郎になってるんですけど!?」
「文章?なんのことですか?ちょっと休んだほうがいいですよ」
和樹は呆れる
「まぁあれだ、風の噂でなんだがお前レイダーになるんだって?」
「美奈に強引に誘われましてねぇ、あの娘本当に扱いが大変ですよ」
和樹はタバコを取り出すと火を付ける
「お客様、当店は禁煙でございます」
「あ、すみません」
店員に注意され和樹は慌てて携帯灰皿で火を消す
「なんだかんだでラブラブなんだな和樹ー」
和樹はピクリと眉を動かすと五郎の腹に肘打ちを叩き込み後頭部を掴むと思いっきりテーブルに叩きつけた
「確かに俺は美奈のことが好きだ。だがアンタに言われると腹が立つ」
五郎はピクピクと痙攣すると力尽きた
「ただいまーって田中先輩どうしたの?」
美奈が帰ってきて和樹に尋ねる
「すごく疲れているんだ、起こさないでやってくれ」
「それ死んでるよね間違いなく」
美奈が指摘する
「ソンナコトナイヨー」
和樹は棒読みで返す
「まぁいいけどさ」
美奈は五郎が座っている椅子を力強く引っ張る。すると五郎は尻餅をついた
「なんだろう、シャングリラにいた気がしたんだが」
五郎が真顔で言う
「綺麗なお姉さんには出会えたか?」
和樹が皮肉っぽく聞く
「いや、タコみたいな顔に猫耳が生えたメイドとビキニの幼女ならいた」
「どんなカオスで冒涜的な楽園だよ」
和樹と美奈顔色が悪くなる
「ま、まぁそれは置いといて田中さんはどうしてここに?」
美奈が話を切り替える
「いやぁナンパしてたんだけどさ」
「最低!」
美奈が反射的に批判する
「ひどいっ!まぁもちろんいつも通り失敗したわけだがそんなとき和樹を見かけて声をかけたのさ」
五郎がクールに説明した
「いつも通りってとこ少しは進歩するように努力はしないんですか」
「そういうお前は物語の進行に努力しろ」
「物語?いい歳して中二病こじらせるから彼女ができないんですよ」
美奈が小馬鹿にするような笑みを浮かべて痛いところを突いた
「もうやだこのカップル」
五郎は完全にノックアウトした