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その日も曇り空が広がり、まるで世界が灰色に支配されたかのようだった。


大人たちもピリピリしていたし、それに当てられて村の子供たちも不安がっていた。


村のみんなが身を寄せ合う熱気。臭気。それらに伴う息苦しさ。


弱い。

まるで庇護を求める犬の様な声の大人。


一度聞こえた怒声。



――――本当になにがいけなかったんだろう



ぱしゃりと一度、世界は緋色に染めなおされ、生活は一変。

まともなご飯が食べられるようになったし、服装だって綺麗になった。


なのに……どうしてこんなにも胸が詰まるのか。



――――ただその目玉たちが己を睨めつける。どくんどくんと、いやに波打つ鼓動。



正しい行動。教えられた通りにしただけなのに。


心だけが相も変わらず鼠色――――




……目を開けると、未だ空は暗い。



まぁ、でも……。


今日は夢見が悪かったし、体に疲れはないし。

いつもより、早く鍛錬するのも悪くはないだろう。


そうして刀を振るっていれば、じき日も上がり、気温が上がってくるにつれて、小鳥たちがさえずり


……彼女がやってくる。



そんないつもの日常に戻れるのだから。








恒例となった彼女の朝の襲撃を終えた後、本来の仕事である門の番につく。


相方の男はだらしなく大口を開け、欠伸を幾度となく繰り返している。


無精ひげを剃りもしないで、ただ気の抜けた風体で門番につくのが、そいつの昼頃の様式だ。


日が落ち始めると、そいつは俺に門番を任せ塀に勝手に開けた、横穴で夜の街へと繰り出す。

そいつに言わせると、


「ふざけんなよテメェ。開けたなんて言い方するんじゃねぇよ。勝手に開いたんだっつーの。俺は罅が入った所を蹴りくれて手伝っただけ。それに俺があそこから抜けるのは、フケてんじゃなくて、あっこから不審者が入ってこないか確認してんだよ。そのついでにその辺りをブラブラっと見回ってやってるだけだ。マジメだろ?」


ということらしい。


別に、俺はどうでもいいし、一人でこの門ぐらいなら守れるから、好きにしろとは言っている。


奴の雇い主も俺と同じ。あの男は腕の立つ私兵を集めている。


あの濁った瞳を思い出す。



碌な事にはならないな。


知らず息を吐き出していたらしい。


白い靄が波のように出、消えていった。

最近は温かくなってきたかと思ったが、日が落ちた後の冷えは、あまり変わらないように思える。


そろそろ交代のやつらが来る時間だ。その頃には、抜け出したあいつは酒気を引き連れ、首尾よく戻ってきていることだろう。


そして俺は屋敷の見回りに移ることになる。


そういえば、屋敷で近々、兵士の鍛錬具合の査察があるんだそうな。

恐らく、俺も出ることになるだろう。


そしたら、あのお姫様は、見たい!なんてゴネるかもしれないな。



そんな益体も無いことを考えながら、今日を終えた。

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