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襟首をつかんだ状態で、首を掴まれた猫のようになっている彼女を連れ、彼は釣殿まで戻ってきた。


先ほどまで二人が居た場所は、中島なかのしまと呼ばれる一画で、本来、客とともに主人が花見や歌詠み、酒盛りを行う場である。ただ、今は冬季なので誰も近づこうともせず、時折手入れに人が訪れる程度であるが。


何故釣殿に戻ってきたのか、それは寝殿と呼ばれる殿に戻るには、二通りの道しかないからだ。


寝殿とは屋敷中央部にある殿で、屋敷の主人やその客人の寝室となる場である。釣殿は寝殿から連なるようにして伸びており、釣殿とはその名の通り釣りをする施設なので池へと繋がっている。その池に浮く形で中島が存在する訳だ。当然、中島から釣殿を通り、寝殿へと入ることができるがそうするものはほとんどいない。なぜなら、中島から寝殿の前まで橋がかかっており、その道を通るほうが圧倒的に近道だ。そうしないものは、大抵やましいところがある者である。



そして彼も、おそらく彼女もそういう者なので、彼の顔が苦くなるのも当然かもしれない。




釣殿へと上がると、さっそく彼女を降ろすが彼の右腕を掴み、背中にまわってしまった。

彼は眉を顰め、しかし引き剥がそうとはせず、前にいる集団に視線を向けた。



視線を受けた女達はひっ、とすり足で後退した。そして誰かが呟いた、鬼人と……


彼にとっては慣れたものであるその光景を見る。


彼は自分の姿を客観的に見ることができた。目つきの悪さ、相手に良い印象を与える正の表情の欠如。五寸四尺と小柄ながらも、鍛え抜いたその体が持つ威圧感。幼少期に隣国で育ったという噂話。




しばし見ていると女達を割って、武装した男二人が前へと出てきた。


「姫様をこちらに渡してもらおう!」


言葉こそ丁寧ではあるが、刀に手がかかっている時点で、ひどく警戒しているのが分かる。

彼は何故斬りかかってこないのか不思議に思いながらも、右腕を前へあげる。


すると、それに掴まっていた彼女はつんのめる様にして、前へと飛び出した。



彼女は一瞬唇を突き出し、抗議の表情を向けてくるがそれもすぐ消し、しぶしぶといった体で女達の元へと歩き出した。彼女らが去るまでの間、殿しんがりを務め男たちはこちらを警戒し続づけた。



その集団が去った後、緊張が切れ息でも吐きたくなろうものだが、彼は我関さずといった体で、頭の隅で早く風呂に入りたいと思っているだけだった。









風呂に入り、朝餉を食したところで、召集がかかった。


基本的に彼の仕事は、昼過ぎ頃から陽が落ちるまでの門番と夜間の見回りである。

そして非常勤の仕事がもう一つだけ。その一つが、彼が忌み嫌われようと姫のいる屋敷で働ける最たる理由である。彼はその仕事において優秀であったがために、ここにいる。



魔物討伐――――



それは自然に発生する魔物を駆除する仕事だ。魔物は人を襲う、田畑を荒らす、自然を壊す、規模の大きい害獣とさして変わらない。魔物はそれ一匹で自然の生態系を脅かす存在である。それらが影響を出す前に迅速に始末する必要がある。


魔物には同種のものは存在しない。決まった形では発生しないのだ。

だから、討伐の対象が本当に魔物であるかは分からない。実際、魔物討伐と言って狩った獲物が、ただの巨大な熊や猪、野犬だったなんてこともある。

だが、彼らにとって重要なのはそこではない。



害があるから排除するのだ。人に仇なすから殺すのだ。



魔物討伐といって首をひねる者もいるが、彼にとって依頼してきた者や、依頼を受けた上の連中が納得すればそれでいいだけの話。


彼は仕事のために刀を手に、重い腰を上げた。



五寸四尺…163cm程度、この国の成人男性の平均身長は168cmほど


ちなみに彼女は160cmほど


この体格差で彼女を持ち上げる筋力、推して知るべし

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