表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深い森  作者: 神山 備
PR
7/7

森の出口、あるいは深淵

 それからおおよそ15年、私はPTAの広報誌編集のため再び筆をとった。行事の報告など、当たり障りない文章しか書いてはいなかったけれど。

 それなのに、その中の一人の安岡さんは私に、

「小山さん書きなれてるみたいだから。昔、何か書いてたんじゃない?」

と聞いた。私は嘘をつくのもイヤなので、黙ってうなづいた。

「やっぱりね、実はあたしもそうなんだ。いやさ、この前お兄ちゃんの持って帰ってきた作文の宿題なんけど、テーマがケッサクでね、ネタになりそうなんだ。どう、小山さんも書いてみない?」

 気乗りしないまま、彼女が言う作文のテーマを聞く。本当にこれで作文を書かせるの? と思うくらいの突飛なテーマで、私の頭の中にすぐさま主人公が登場し、どんどんと物語を展開させていく。

「ね、なかなかそそるでしょ」

私の眼がくるくると動いているのを見て、彼女は満足そうにそう言った。

 そして、私は結局その物語を15年ぶりに紡いだ。そして、気づいたことは、私は書くことがやっぱり好きだと言うことだった。人を傷つけてしまわないかと、身震いするほど怖いのに、私はそれでも……物を語ることが好きなのだと。

 安岡さんの後押しもあり、私は自作をWebで発表し始めた。


 幸いにも私の作品は、公開第一作で『私はこの作品に出会うためにここに登録したのかも』とのコメントを、第二作では『あなたの作品には救いがある』とのコメントをいただいた。

 確かに、『面白くない』『何が書いてあるのかわからない』などの否定的なコメントもたくさんいただく。だけどそれは私の技量が足りないためだ。それは次への糧にすればいい。

 私は姫ちゃんのお墓に参った。そこは姫ちゃんの引っ越した家のすぐそばの高台にあった。雲の切れ間から光が射し込んで照らされているのは、彼女のかつて住んでいた町-つまりは私の実家のある町だ。そうか、私はずっとあなたに見守られていたんだね。

 ねぇ、姫ちゃん、どうかこれからも私を見ていてね。私が言葉で人を傷つけることがないかどうか。


 あなたに向かって、私は書き続けていくから。


               -了-

 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ