甘い匂いに誘われて
『 可愛いひと。 エスコートを 』
私は若干パニックになりながら、ジョージの腕にそっと手を添えた。
公爵令嬢としての教育の賜物なのか、戸惑った顔は一瞬で、令嬢としての顔に切り替える。
2人でコッソリと裏口からお店をでると、いつの間にか馬車が用意されていた。
着替えのあの短時間で、どれだけ根回しがいいのか。そのスマートな対応が、また嬉しく感じる。
エスコートされながら馬車に乗り込み座面に向かい合わせに腰を下ろす。
「どちらに向かうのですか?」
「最近、街で話題になっていて、気になるパフェがあるんだ。カフェだと男1人だと店に入りづらいので、一緒に行って貰えると嬉しい。」
「まあ。パフェですか。」
パフェも大好きだ。私は特に季節限定のフルーツパフェって言われるとめっぽう弱い。
「なんでも、フルーツを薔薇のように美しくカットしてあって、見る者を喜ばせるパフェという」
「それは凄く気になりますね。」
キラキラした瞳をして、レミアはつい前のめりになってしまった。
それと同時に、ガタっと石でも踏んだのか馬車が揺れて、レミアの体は不安定に………あわわわっ
「っっ危ない」
がしっと正面から抱きとめられた。ほんのりと先ほどのキャラメルの甘い匂いが鼻をくすぐる。
わぁ〜。甘くて落ち着く〜って!! 違いますわ!!
「大丈夫かい?」
至近距離に心配顔のイケメンが………
バババッと目にも止まらぬ速さで、体勢を戻す。
あ、あ、危ない。昇天して、意識を持っていかれるところでしたわ。
「あ、ありがとうございます」
ここぞとばかりに、何もなかったように冷静な公爵令嬢の仮面を被る。
はぁ。。危ない……。
甘い匂いに吸い寄せられて、離れがたいと思ってしまったわ……なんて落ち着く匂いなのかしら。
それに、華奢に見えるけど、意外と筋肉も………
わ、わ、わ〜〜〜!!!
私ったら何を思い出してるの〜。
ギャー!!はしたないですわ〜!!
しっかりするのよ〜私〜〜!!
本人は気づいてないが、赤くなったり、スンっとなったり、百面相を繰り返しているレミアを、また暖かい眼差しでジョージがみていた。
レミアがアレコレ考えているうちに、気がつくと馬車は停止していた。
ジョージは颯爽と馬車から先に降りると手をだし「どうぞ」っと言って、エスコートとしてくれる。
「ありがとう」
素直にレミアも手をのせるも、一瞬さっきの妄想がフラッシュバックされ、自分の手に汗がかいてないか、普段気にならないことが気になってしまう。
ドキドキしながら、目線をあげると、そこには可愛らしいお店があった。
お店全体は白をベースにし、お店の周囲には若草の緑の木々と、淡いピンク色の満開の薔薇のアーチがある。
確かに。。ここに男性が1人で入るのには、勇気がいりそうな雰囲気だわ。
落ち込んでそうな私を気遣って、誘ってくれたのかもと、少し気負いしていたが違ったみたい。
ちょっぴりホッとしたけど、少し胸の奥がチクリとして。
ん??チクってなんでだろ。。
「ここだよ。入ってみようか」
「ええ」
チャリンっと音と共にドアが開く。
「いらっしゃいませ。ご予約は?」
「ああ。先程連絡したマルコニだ」
「大変失礼いたしました。承っております。こちらにどうぞ」
え??いつの間にお店予約の手配まで。
わぁ〜。相変わらず行動がスマートと思いながら、店員の後をついていく。
「こちらに」
案内されたのは外のテラス席で、薔薇と木々に囲まれていて、プライベートな空間になっていた。
爽やかな風と共に、ほんのり薔薇の甘い匂いが混じる。
「……素敵なところですね。」
私は思わず、目をキラキラさせながら微笑みを浮かべ呟いた。
何故かそれを見ていた店員が、ほんのり頬を赤らめて「ごゆっくり」といって足早に去っていった。
何だったんだろう?こてりと首をかしげた。
「………無自覚キラー」
「え?何か言いましたか?」
「いや。お店気にいったみたいで良かった。注文を決めようか。」
「はい!!」
思わず元気な返事をしてしまったわ〜。
わぁ〜。パフェも色々あるのね。
季節のフルーツ、チョコバナナ、マンゴー、キャラメル、ティラミス、プリンって。。。どれも美味しそうで、お店に通っていつかは全制覇したいくらいだわ〜。
「決めましたわ〜。私。これにします」
ビシッと迷いなく指をさした。
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