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異世界漂流記  作者: 明鏡 桜花
15/17

(15)[エルガルド編]魔王登場

「な、あんたがどうしてここに!」

「愚問だな。王女あるところにエルベありだ」

突然現れて、疾風のごとき剣戟で女盗賊を一瞬で窮地に追い込んでいる。

「貴方は・・・。そう、確かに貴方がいてもおかしくはないわね」

俺が茫然としている横で、何やら納得している奴がいる。件の彼女だ。自分が窮地に追い込まれている事も何でもないかのように冷静に状況把握している。

「助太刀してはやらんぞ。この程度の相手を倒せぬようでは魔王打倒など到底不可能だ。何より、私がこの剣でお守りするのは王女唯一人だからな」

「・・・そりゃ、結構なことで」

なんだか妙に手厳しい言葉に投げやりに返す。

しかし、どちらにせよこれはいい機会だろう。今持てる自分の力をすべて出し切る。それで勝てないようなら、死ぬしかないという事だ。ただ、死期が少し早まるだけで結果は変わらない。

(さぁ、俺の中に居座る魔神よ。俺に力を貸せ。どの道このままでは俺はここで負けてしまう。負けたくない、こんなところで負けるわけにはいかないんだ!)

【ならば、祈るがいい。お主が真に望む力の形を】

【祈ればあるいは・・・、届くのやも知れん】

【届かなければ、それはお前が力の形を意味を履き違えているから答えぬという事なのだろう】

(祈る・・・。それは、願うのとどう違うのだろう。さっきから力は願っているが一向にその力の形とやらが分からないし、つかめない)

【ならば、お主の願いとやらは筋違いと言う事だろう】

「あてにならん力だな」

「? 何か言ったか」

「別に」

心の中で言ったつもりが声に出ていたようだ。

【・・・一つ助言しよう】

(なんだよ?)

出来る事なら助言ではなく、助力してくれるのが一番なんだが・・・。まぁせっかく助言してくれるっていってるんだから聞いておいて損はないだろう。

【敵を見ない事だ。お前には戦闘は向いていないようだしな。大局を見るようにすれば、違う物が見えてくるやも知れんぞ】

(・・・ためになる助言ありがとうよ)

「何をボケっとしているのか知らないけど、この隙を逃すほど甘くはないわよ?」

どうやらかなりの時間ぼんやりしていたらしい。

後頭部に思いっきり衝撃が来たことにより、現実に一気に引き戻された。

「っつう!容赦ねぇなぁ・・・」

うんざりした声音で言ってやると

「ふん!知らないわよ」

しかし、困った。現状ある武器で戦おうと思うとどうしても無理が出てくる。ボウガンでもできない事はない。ただ、そうなるとかなり戦略的に幅が狭まる。

『・・・お主、すっかり我の事を忘れておろう』

・・・あったぁぁぁ!こんなところにちょうどいい武器が!!そうだよ、わざわざ腰にぶら下げて何チャラチャラやってるんだ俺は・・・。

『まぁ、主は我を抜きたくないらしいが』

「いや、抜くさ。ここで抜かなきゃ何もできないまま終わる」

チャキ、という音と共に剣の刃が姿を見せる。

それは恐ろしいまでに鋭い。しかし、同時に人を物を斬るためにどこまでも鈍い輝きを持つ。

「へぇ・・・。良い武器持ってるじゃない」

「・・・」

武器は最上級、ならば後必要なものは己の覚悟と力だ。

【そなたに関して言えば、覚悟だけだ】

【さぁ、我が★○×?!●としての資格を見せてみよ】

なんだ?何の資格だって?

【今は、そなたに必要なき事。いつか、知るべき時に知ろうぞ】

そう言うと奴の気配は消えていった。

・・・よくは分からないが、とにかく俺の主としての素養が試されるらしい。

あぁ、なら見せてやる。これが、鮎川甲の覚悟だ!

「? なに?この気配は・・・」

甲の周りの植物が生物が枯れ、生き絶え、炎上する。一瞬のうちに、周辺の生物はすべて甲に食われてしまったのだ。

【・・・やはり、相性は最悪のようだな。これでは、何が力の本質か見失ってしまうだろう。これでも、お前は後悔していないと言うのか・・・】

何やら、魔神がブツブツと言っているが関係ない。この場でこいつを倒す。そう決めた。そう決めた以上、甘い事は言ってられない。例え、殺すことになっても道を開くために・・・。仕方がない、そうだこれはしょうがない事だ。

「く・・・。そう、私を殺すのね。なら、覚悟しなさい。貴方のような善人は人を殺した自分を許せない。いつか自分で自分を罪悪感で押しつぶす」

そう心では分かっていても、体が、頭が正常に働く事を拒否している。こんなことは間違っているとこんな事をしても、解決には至らないと。

【ふふふははははは!!おもしろい、実に愉快。さぁ、時間はないぞ。だとしたらどうする。全てをすくい取りたいのだろう?お前のあこがれる”主人公”とやらは、誰かを傷つけて満足なのか?】

黙れ、そんな事は俺が知っているしこの物語は俺の物だ。なら、

「【なら、誰もが笑っていられる幸せな未来を望もう!!】」

その瞬間。魔神と俺の声が重なった瞬間。先程まで枯れ落ちていた植物が、生物が急速に力を取り戻していく。そして、燃えていた火が消えたちどころに緑が、生物の活気が元に戻る。



【そは誰も知らず】「故にすべてを知る」

【我はすべてを記憶しよう】「俺が全てを語ろう」



「【悪戯な魔神(パワー・オブ・ロキ)!!】」



【こちらが先に発現したか】

相変わらず魔神がぶつくさ言っているが、取りあえず力を具現することはできたようだ。その証拠に力があふれてくる。

【過信はするな。この力は、所詮お前の物ではなく借り物だ】

そう言い残すと気配が今度こそ完全に消え去った。

「なによ、それ?なんなのよ!!」

女盗賊は焦っていた。

今更だが本来、彼女は盗賊などではない。正真正銘の魔王の配下だ。人間の姿をしているが、魔神の一種であり名をウェルデダンテ・シュトゥルム・ヴァルトと言う。さて置き、彼女は魔神故に目の前に立つ者の異変が、異常がよく分かる。魔神にも格と言う物がある。そして、目の前につ魔神を宿した人間は、彼女よりは下だ。だが、明らかにおかしい。人間が魔神を宿すなど、魔王の配下であるはずの魔神がなぜ人間に味方などするのか。

その上に、どうして魔力が毎秒ごとに跳ね上がっているのか(・・・・・・・・)

謎だらけだった。

一つ分かるのは目の前にいるのが一種の究極を表しているであろうことだけ。

「く!そっちがその気なら、限定解除(リミット・バースト)!!」

ウェルデダンテは、魔王の配下になる際その力の一部を封印することで普段の消費魔力を最低限に抑え、有事に備えるようにしている。封印している理由としてはいざとなったら、魔王を裏切ることも視野に入れていると言うのもあるが、これは魔王に従っている魔神すべてに言えることだ。

ともかく、その封印はかなり強いもので事実上魔力の量で言えば右に出る者はいない。しかし、目の前にいる敵は徐々に彼女のそう魔力量に追いつきそうなのだ。

(なんなのよ。この私の魔力量に追いすがるようなものの存在なんて知らないわ)

そう、魔王が生まれてからの魔神であるウェルデダンテは知らない。過去に原初より存在した伝説の魔神の事を。その魔神が今は人間に味方しているなどとは。

「なんだって言うのよー!!!!!」

そして、キレてしまう。

戦いにおいて、戦術はさることながら一番必要な事は冷静である事だ。どんな戦術も冷静にこなさなければ、どうしてもブレが生まれる。そのブレを隙として捉えられたら、一巻の終わりなのだ。

『これほどの好機は二度とないやもしれん。今のうちにこうげきをしかけるのじゃ!!』

「おう!」

ただし、それはある程度の実力しかないものの話。戦闘狂や一流の武人はそんなものは関係ない。そして、ウェルデダンテは後者だった。

突っ込んでくる甲に対して、今度は油断も傲慢も何もなしで対等な自分の存在を脅かす外敵として構えを取る。

振り落とされる剣戟に対しても、先程までとは明らかに違う気迫で挑んでいる。

つまり、ここからが正真正銘の真剣勝負。

キレても自分が何をすべきか見失わない敵ほど厄介なものはない。

先程のスピードの倍以上の速度で攻撃してくる。避けきることなど不可能だ。先程の時点で目で追えなかった姿が今の状態でようやく視認が可能なのに、これ以上スピードが上がればその先に待っているのは今度こそ本物の死だ。

「う、うぉおおおおおおぉぉぉぉぉおおお!!」

自分でもよく分からない雄叫びを上げながら刀を振りぬく。

金属音が響いて、刀から腕にかけて衝撃が走る。運よく刀身が向こうの剣とぶつかってくれたようだ。

(くそ!どうする、どうする!どうすればいい!!)

ついにここにきて甲の混乱は頂点に達する。自分の力が急に倍加した事にもまだ、頭が追い付いていないのに敵までもが力を倍加し、速度を上げてきたのだ。混乱するなと言うのが無理な話だ。

ズパッ!!

そして、その隙を突かれた甲は肉が斬れる音と共に鮮血を舞わせていた。

「ぐぁ!」

痛烈な痛みが全身を襲う。

その痛みを無理やり気力でねじふせて、突貫する。単純だが攻撃した後は隙ができやすいからな。

「くっ!?」

案の定、こちらに向きを変えようとした時にバランスを崩したのだろうふらついているのが見える。

確かに、ウェルデダンテは一流の武人だがいくらそうであっても冷静さを欠いている今は隙が皆無とはいえない。

甲は、勢いはそのままに刀を振り下ろす。その瞬間に刀に『願い』を込める。『遍く全て斬れてしまえ』と。

その『願い』は魔力となり、刀を強化し、ウェルデダンテを剣ごと斬り裂こうとする。

「きゃぁあああああ?!」


だが、ここで予想外の出来事が起こる。

まず、急に曇天となり周りに満ち溢れていた活気が、生気が一気に消滅した。

「ど、どうしてあなたが!!」

ウェルデダンテが驚愕の声をあげた、その視線の先には、

「・・・不甲斐ない部下の処罰のためにだ」

次に、いつの間にか漆黒の魔力を身にまとった。おおよそ、この世のものとは思えない力を持っていそうな男が立っていた。

「貴様が、使者の唯一の生き残りか」

その視線がこちらへ向く。

「お前が、魔王だな」

「その通りだ」

一目見た瞬間分かった。

こいつは、確かに今の力の制御がまだできていない俺では敵わない相手だと。


そして、同時に恐怖する。

こんなのが、まだゴロゴロと居るのかと・・・。


魔王は、動けない俺を一瞥すると

「今は、まだお前とは剣を交えたくはないのでな、ロキ(・・)

ロキ?その名前は確か、北欧神話のトリックスターだ。

【ふん。私は確かにロキだが、心を入れ替えたのだ。貴様らに(くみ)したとしても、何も面白くはないだろうしな】

「心を入れ替えた、ね・・・。笑わせる。だが、今は貴様の相手をしている暇はない」

そう言って、俺に背を向けウェルデダンテの方に向く。


「さて、貴様には厳罰が必要だろうな」

「な、なぜです!私は、貴方の障害の芽を摘もうと・・・っ!」

「新入りが入ってな、そいつにこの地を任せようと思ってな。つまり、お前はクビだ」

「な・・・っ!」

ウェルデダンテはその言葉を聞き、茫然となる。

それはそうだろう。今まで、忠誠を誓っていたのに、それを突然拒絶され、挙句殺すとまで言われたのだ。

俺は、絶句していた。

「では、さらばだ。良い夢を、亡国の王女よ」

「っ!あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

魔王の腕が振り下ろされそうになる直前、我に返ったウェルデダンテは魔力を弾丸にして撃ちだす、連射したためか、面攻撃となって魔王を襲う!


ズガガガガガンッ!


「・・・っはぁ!はぁ、はぁ・・・うそでしょ・・・」

ほぼ全弾命中したにもかかわらず、びくともしない魔王を茫然と見上げるウェルデダンテ。それを甲は、何処か遠い景色のような気持ちでしか見られなかった。明らかに常識を超える量の魔力の直撃を受けたにも関わらず、びくともしていない魔王にも、今その魔王に殺されそうになっている女盗賊にも自分は勝てない、と思ってしまっていた。


【それは間違いだ。人間と言うのは進化する生き物だ。故に、おもしろい。故に、魔王を倒す可能性を秘めている】


「・・・?」

どこか哀愁を漂わせるロキ(?)の声で、我に返る。

【己の剣を取り、魔王に示すがいい。お前の敵は、この俺だと】

「だけど・・・」

【今のお前は、気持ちで負けているだけだ。それに敵とはいえ、目の前で女が殺されるのは主義に反するのではないかな?】

確かにそれもそうだ。

騎士道精神じゃないが、あの魔王が男の俺よりも女の魔神を殺す事を優先させているのは気に食わない。あれじゃまるで、俺には背を向けても余裕で対処できると言われているみたいだ。


「気が済んだか?ウェルデダンテ」

「・・・そうね、諦めるわ」

ウェルデダンテは、降参と言って手を振る。

「そうか。では、今度こそよい旅路を」

そうして、今度こそその必殺の腕がウェルデダンテを切り裂くはずだった。


ガキィィィンッ!!


「む、ぐっ・・・!!」

かなりの重さを伴った一撃をもらった。

「っりゃあ!!」

鍔迫り合いした後、すぐに斬りこんだが、手ごたえはあったものの全く斬れていない。

「なるほど、こりゃ魔王と呼ばれるだけあるわ」

後ろに大きく下がりながら、努めて冷静にぼやく。内心は、尻尾まいて逃げ出したいほどだったが・・・。

「・・・よかろう、余興だ。お前が勝ったら、ウェルデダンテは見逃そう」

「はぁ!?ど、どうして私が景品みたいになってるの!!」

「ちょっと、静かにしてくれ。集中したいんでね」

「・・・ふ、気合は十分か。魔神を宿す人間よ」

「ふざけろっ!!」


ズダンッ!


踏み込むのと同時に剣をふるう。


ギャイィン!


ハンマーか何かで金属を叩いたような音がしたにもかかわらず、魔王はびくともしていない。それどころか、苦笑いしている。

「なんだ?その程度か?なら、お前の相手はしてやれんな」

「―――――っ!!」

完全に見下されたその言葉に、この世界に来てからの怒りとか、理不尽な願いとか、運命とかにいら立って、結構ピークに来ていたストレスが完全にオーバーフローした。


「いい目だ。それでこそ、殺しがいが有る」

「―――――す」

「なんだ?」

「殺す」

「出来るならな」


「灼熱の赤。紅蓮の煉獄にお前を誘おう―――」


怒りで我を忘れてしまいそうになるのを必死に抑え、ナナの特性である”七属性の忌剣”を内のひとつを発動する


「―――忌剣・”紅”一の太刀」


忌剣には、属性一つに対して七の太刀まである。これらすべてを含めてナナの能力だ。つまり、主人公の命名はある意味において、物凄く的を得た名前だった。

そして、紅。

その一太刀は、全てを燃やしつくす横薙ぎの一撃。

それは、周囲の木々たちも巻き込み魔王をも呑み込んだ。

・・・あれ?

メル「どうかした?」

お前出てなくね?

メル「出してくれないんじゃん」

・・・いやまぁ

というか、俺って次でバトル終わり的なこと言わなかった?

メル「・・・さぁ?」

いやいやいや、もしそうなら大変なことになるよ?

メル「告知違反ね。どこかの政治家みたい」

こら。そういうデリケートな話題をギャグにするな

メル「それがメルクオリティ」

そんなクオリティ求めてないし、需要ねぇヨ

メル「作ればいいじゃない」

無理だろ・・・

そうそう、作者は最近ペンタブを買おうと思ってるんだが・・・

絵の描きやすい奴でできる限り易いのってないかな?

メル「そんな都合のいいのあるの?」

あるかもしれんだろう

ナナ「そんな虫のいいことがあるわけなかろう」

く、ナナは引っ込んでろ。

ナナ「じゃあ、貴様も退場じゃな」

ふ、甘く見ないでもらおう

メル「え?」

ナナ「な」

これでも、運動神経はそこそこいいほうなのだよ!

メル「へ~」

ナナ「じゃが、人外に勝てるのか?」

ムリデスヨネ~

ナナ「では、いくぞ」

ドナドナ~♪ドナド・・・orz

メル「さて、作者の心が折れる音が聞けたところで今回はこの辺です」

ナナ「ではまたの」

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