(13)[エルガルド編]脱走
『虹の七色』から出てきた訳の分らん刀。
事情の詳細な説明を求めるために、メルとそれを落ち着けるのにかなりの時間を食ってしまった。
「・・・つまりだ。これは親父の残した一振りだと?」
「そう言うことらしいですよ」
『うむ、簡潔に言うとそう言う事だ』
「・・・魔神と友達で、こんな刀を持ってる俺の親父っていったい何なの?」
「私が聞きたいですよ~」
『ふむ・・・。まぁ、いつか分かる時が来る』
刀の方は何か知っているらしいが、尋ねても『いつか分かる』としか答えないし、メルはメルで『こっちが知りたい』って言ってるし・・・。
こんなので大丈夫なのかよ・・・?
『それで主?とっとと銘を決めてくれぬか?』
「銘?」
「刀の名前の事ですよ」
「・・・ふ~ん。そうだな、『虹の七色』から出てきたわけだし、それにちなんだ奴がいいよな・・・。分かりやすいし」
とは言ったものの、こういうものに名前を付けた事のない俺には難題だ。どうしようか、と悩んでいるとメルが
「もう『七閃』でいいでしょう」
「ああ、まぁそれでいいか」
『な!メル!貴様!』
「なんですか?やるんですか?だったら、表に出てきやがれってんです!」
『・・・よかろう。後悔させてやろうぞ!』
「あれ~?良いんですか?主がいるのに、その姿をさらして~」
『問題ない。こやつは、特別だ』
「・・・え゛?」
メルの顔が一気に蒼白になる。
どうやらまだ何か秘密があるらしいが、その秘密はメルが有利で七閃は不利になるものだったらしい。出来ないと高をくくっていたのが、できると言うのだから戦慄したのだろう。
すると、またもや光が先程と同じように刀を包んでいく。
俺は俺で成り行きを見守っていると、
「ふむ、なかなかの調子じゃ。重畳だの」
今度は美少女が現れた。
・・・は?これなんて(ry
「「・・・・・・」」
俺は俺で美少女が出てきた事に驚いていたが、メルの驚きはまた別だったようだ。顔面蒼白だったのが、今度は冷や汗までかき始めている。
「さて、この姿でははじめましてじゃの主」
どうやら、まだ説明をしてもらわなきゃいけない事があるらしい。
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「ほう、つまりお前は、形態変化した刀ってところか・・・」
「うむ」
どんな技術使ったらそんな事が出来るんだ、とかいろいろ言いたい事は残っていたがどうせ聞いてもまともな答えなんか返ってこないので、その辺はすっぱり諦めて、無理やり自分を納得させることにした。
「・・・さしずめ、呼ぶならナナってとこか」
「・・・・・・・」
そう言うとナナは固まっていた。
「? どうしたよ?」
「いや、そなたは親父殿と同じ呼び方をするのだな」
「そうなのか?まぁ、分からないでもないかな。だって、今の姿はどっから見ても人だ。つーことは、君は人と同じだろう?なら、そういう風に扱わないとな」
「ふ、ははははは!そうか、そうか!さすがは、あ奴の息子か。だが、刀の状態の時は遠慮はいらん。そんな事をすればお主が傷つくからの、それだけはやめてくれ」
「分かった」
そんな感じで、ナナと話しているとメルが不機嫌そうに
「我が主は、節操なしでいやですね~」
とか言ってくる。一体何の話をしている・・・。相手は、美少女とは言え刀だぞ?綺麗な花には刺どころか、刃がついてるじゃないか!
「ふん、嫉妬か?見苦しいなぁ、魔神の使い魔よ」
「ぐっ・・・。そっちこそ、道具の分際で!」
「なんだとっ!?」
「なによっ!?」
どうでもいいが、この状況。はたから見たら、ただの女たらしだけど主観的に言って人外二人に詰め寄られてるわけだから、心臓に悪いだけだよね。
「一々喧嘩するなよ。取りあえず、今のところ俺の本当の味方はお前ら二人ってところだな・・・」
「? どういう事じゃ?ここに居る者たちも味方であろう」
「ま、今夜抜け出すからな。どっちかと言うと、これから裏切るんだよ」
「抜け出す?」
「そ。まぁ、時間があるなら騎士学校とやらに行ってもいいが、今の状況ではそんなこと言ってられないからな」
「・・・そんな簡単にはいかないと思うがな。特にあの姫・・・、何かを企んでおるような顔をしておったしの」
「??」
なにやら、ナナがブツブツ言っていたがひとり言のようだったのでスルーする。
「それで?いつ抜け出すのですか?」
「まぁ、善は急げと言うしな。人気が消えたら即だな」
それから、数十分後。
「どうやら、見張りは集中力を切らし始めたようですよ?」
「なら、実行するぞ。いいか、喧嘩すんなよ」
「「・・・分かった(了解です)」」
互いを見合ってものすごく嫌そうな顔したが、それも一瞬の事。すぐに切り替えて、抜け出す機をうかがう。
「・・・今です」
メルがそう言い、彼女を先頭にしてナナ、俺と続く。ここから取りあえず、外に出なくてはならない。しかし、城壁を乗り越える力なんてないので門から出るしかない。RPGみたいに地下水道が都合よくあったりはしないだろうし、何よりそう言うところの方が普通、警備は強固だ。
「・・・それで?どうやって抜け出すのだ?」
「・・・そうだな」
そこで少し悩む。
これは、ちと頭を使わなきゃいけないようだ。
仮に、外へ出たいと言ってもこんな時間だから、不審に思われる事請け合いだ。出来る事なら、この城からある程度離れるまで気づかれたくはないしな。
そうなると、朝までは誰にも知られない方がいい・・・。
・・・門の警備状況次第だな。
と言う訳で、敢えて正門にやってきた。
なんでかって?こういう時、正門の方が案外警備ゆるかったりするんだよ。まぁ、比較的って言うだけで十分に厳重なんだが・・・。
ほら、それでもさっき見てきた裏門の二十人体制よりはマシな、十人体制だ。・・・半分か。
「・・・十人か。全員気絶させてもいいんだろうけど・・・」
どうする?とメルが聞いてくる。
つまり、メルには大した相手ではないという事か。それなら、気絶でも・・・。
「それはだめです。そんなことしたら騒ぎになりますよ?全く、勝手に抜け出しちゃだめじゃないですか」
「ですよね~・・・って、え?」
「・・・主よ。後ろを見てみい・・・」
恐る恐る、後ろを振り返ってみると
「・・・(にこっ)」
目が笑ってないです、マム。
「全く、抜け出すならそうと言ってくださればいいのに・・・。そうしたら、私が手引きして差し上げたのに」
「・・・え?」
これは予想外だった。
この国の人間なら、救世主ともとれる人間をそう簡単に手放すわけがないと思ったからだ。
「その代わり、と言ってはなんですが・・・。私も連れてって下さいな」
「・・・え?」
これまた、予想外な出来事が起こった。手引きしてやるから、私も連れてけとな・・・?
「何故?」
「え?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・。まぁ、良いじゃないですか!」
「えぇ~・・・」
今の間がものすごく怖いんですが・・・。
「とにかく、今から、正門の警備を数分間ゆるめます」
「どうやって?」
「企業秘密です♪」
頼むから、変な事だけはしないで欲しい。
「ってあら?」
何かをしようとした姫がその動きを止め、驚いている。
「どうした?」
「いえ、それが警備の方々がなぜか急に休憩に入り始めたんですよ」
「・・・。怪しすぎるが・・・、同時にチャンスだな。メル」
「了解です」
すぐにメルに先行してもらい、周りの状況を確認しながら彼女についていく。列の最後を走る俺は、誰かに見られているような気がして城門を出たところで、一瞬動きを止め後ろを振り向くが、
「どうしたのじゃ?」
ナナにそう言われて我に返りすぐさま振り返り、走り出す。
「・・・おっかしいなぁ・・・」
ちなみに、振り返った時そこには不自然なくらい静まり返った城門があるだけだった。
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「ふむ、気付かれはせなんだか」
「あの・・・、本当によろしかったので?」
「あぁ、いずれにせよ彼の行く場所は変わらぬ。それにな・・・」
一国の王である彼は、昔一緒に旅をした友がいた。彼は、自由奔放で気まぐれだった。しかし、彼は自分でやると決めた事と自分の世界、つまり一度でも縁が有った事のあるものは何人たりとも見捨てようとはしなかった。
その姿を甲に見たのだ。
「・・・それに?」
「・・・ふ、おそらくだが。彼の父親に『息子をよろしくな』と言われているのでな。これくらいはせねば、なるまい」
「はぁ・・・?」
なんだかよく分かっていない表情をするエルベ。
それを尻目に、てくてくと歩き去っていく国王。
すると、そこに王妃がやってきて
「うふふ、あの人もいろいろ考えているのよ?」
「王妃!?す、すみません!幾ら、王の命令とはいえ王女を・・・」
「いいのよ。どちらにせよ、この国の王家はいつかは旅立ち、国を治める者としてふさわしい教養を身につけなくてはいけないのそれが少し早くなっただけよ」
「・・・は、ありがとうございます」
「じゃ、私も寝ることにするわ」
「え?」
そう言って、立ち去ろうとした王妃が突然足を止めて
「だから、これから何処かの誰かが城門をくぐっても誰も目にすることはないわね?見張りの兵が戻ってくるまでの間は。・・・ふふ、じゃおやすみなさい」
そんな事を言い出した。
エルベは、これではまるでそんなに心配なら自分で行きなさい、と言われている気がした。
その上、エルベは今まで王女につける事が己が天命としてきたのだ。
「・・・・・・。はい、おやすみなさいませ」
王妃の背に深々とお辞儀をすると、ぼそりと
「ならば、行くほかあるまい!!」
そう言って、駈け出した。
少し前に、城門をくぐった王女たちに一刻も早く追いつくために。
そして、王妃の方は。
「全く、上が上なら下も下ね?」
「・・・むぅ。仕方あるまい、どちらも娘だからな」
「あらあら」
心配性な国王と
「だって、エルベ様があんなにお辛そうな表情でこの城を歩かれたら、一日と経たずしてこの城は落ちてしまいます」
そうだ、そうだと同調する心配性な衛兵達。
それらが隠れて、様子をうかがって居たのだ。
おそらくエルベは気付いていない。それほどまでに王女の事を気にしていたのだ。
「でしたら、彼女達が帰ってくるまでの間、この城を落としてはなりませんよ?」
「もちろんだ」
「了解です、王妃様!」
変な方向で士気の上がる兵たちを前に苦笑するしかないのだった。
ほいほい
メル「今回はやたらと早いわね」
家でごろごr(ry
もとい、勉強してたからな
ナナ「もうずぐテストも近いだろうに・・・」
いいんだよ
メル「本当ですか?」
・・・多分
ナナ「恐ろしく不安にしかならん答えじゃな」
メル「大切にしてる祖父母にお金払ってもらってるんだから、きっちりしてくださいよ~」
ナナ「そうじゃな、敬老の精神じゃ」
分かってるよ
メル「・・・。ナナ、お茶いる?」
ナナ「おお、感謝する」
メル「お茶菓子は?」
ナナ「む?すまぬなぁ」
ナナ「なんじゃ・・・?この違和感は・・・。突然態度が・・・」
メル「だって、お年寄りは大切にしなきゃ・・・」
・・・まて、ここでも貴様らの戦争を起こす気か!俺は主人公補正も何もないただの人なんだからやめろ!巻き込まれて死んでしまう!
ナナ「むしろこの場合は、おぬしが標的じゃろう?」
なぜ!?
ナナ「なぜ?___それはの・・・、この設定にした作者だからじゃ、ボケェェェェエエエエ!!!!」
そんな理不尽な、ギャァアアアアアアアア!
メル「社会なんてそんなもんよ」
二次元の存在であるお前らがリアル語るんじゃねぇぇぇぇえええええ!!
ナナ「えぇい!しぶといわ!」
いや、だからちょ!おま!だから、待てってぇぇぇぇぇ!!イイイイイヤァァァァアアアアア!
*規制*
ナナ「ふう、諸悪の根源は滅びた」
メル「・・・、今までの比じゃないわね。やられっぷりが」
メル「まぁ、来週には復活してるだろうから」
ナナ「更新を楽しみにしている方は、していてください!」
二人『じゃ~ね~』ノ
ナナ「作者がいないと、普通のあいさつなんだな」
メル「突っ込みがいないと、ボケがさえないじゃない」
ナナ「なるほど」