(10)[エルガルド編]結末
そこから俺の体内時計(こっちに来た時に電子機器は壊れた)で数分すると、いかにもこの世界で最高級の品質で作ってありますと言わんばかりの扉が見えてきた。
すると、その正面でエルベさんは立ち止りこちらを振り向き、
「ここです。くれぐれも粗相のないようにお願いします」
粗相のないようにと言われても、こっちの礼儀とか知らんぞ?と思いながらも取りあえず頷いておく。
そして、エルベさんがその扉を開けようとした瞬間。
ガシャァァアアアン。
なんていう窓ガラスの割れるような音が響いた。
一瞬、何があったのか分からなかったが真っ先に部屋に飛び込んだエルベさんが
「王女!!」
とやけに切迫した声で叫んでいるのを聞き、そちらに目を向けてやっと状況が理解できた。
悪魔?みたいなのが王女を抱えた状態でエルベさんと渡り合っている。というよりもむしろ、押している。
「・・・なぜか、めちゃくちゃ強そうに見える件についてどう思う?」
実際、この国の王女直属近衛騎士団長をハンデがあるのに渡り合ってるんだから強いよね、うん。
(主さまは、助けないの?)
無茶苦茶言うなよ?ただの人間の俺がどうやってあんなの倒すんだよ?
(そこはほら?知略で?)
無理だろ?限度があるって・・・。
「もうしょうがないなぁ。このメルがやってあげましょう!」
「は?」
ボウン、なんていう擬音が聞こえそうな感じで登場したのは前にも見た白銀の女騎士。
現れた瞬間、王女を抱えている悪魔に接近し剣をふるう。今回は中型の剣のようだ。ただ、それにしてはなんだかやけに見難い。これは、後から聞いた話だが、限りなく純正の鏡みたいな金属を使っているので風景に溶け込んでしまう。そのため、正確に扱わないと自分をも傷つける可能性があるらしい。
閑話休題。
いきなり増えた敵に驚き、さらに二人になったことで隙ができた悪魔?が今度は追い込まれていく。壁際にまで追い込まれた悪魔は、いきなり王女を投げつけた!
「ほいっと」
それを難なくキャッチしたメルはそのまま接近して、止めを刺そうとする。
だがその瞬間、轟音と共に滑り込んできた何かがメルを弾き飛ばす。
「きゃあ!?」
そして、その何かはもはや何が起こっているのか分からないエルベさんに剣を突きたてようとする。
「この野郎っ!!」
バシュ、バシュ!
二連射で射たボウガンの矢は狙いたがわずに飛んでいくが、
キ、キィン。
「なっ!?」
狙い違わず飛んだ矢が当たった瞬間、鉄に当たったような音がして矢が二本とも弾かれたのだ。驚かない方がおかしい。
だが、この時の俺はそこまで鈍くはなかった。ボウガンでの攻撃は利かないと判断して、即座に剣に切り替える。我ながら良い反応だ。
「うらぁあああ!!」
気合を入れて振ったその剣は、見事に命中した。
「よし!」
「っ!?ダメです!後ろ!!」
その時、ようやく思考能力が戻ってきたエルベさんが叫ぶ。
ドシュッ!
「え・・・?」
何かが貫かれる音が聞こえて、目の前が真っ白になる。
・・・真っ白?
「・・・主?怪我は・・・?」
「え?メル?」
よく目を凝らすと、真っ白になったのではなく白銀のマントで前が見えなくなっただけのようだ。
しかし、そのマントにもおかしな部分が見受けられる。そうさっきまでは白と言って差し支えない色だった。なのに今は、徐々に赤に染まって行っている。
・・・赤?
「・・・よかった・・・、主が無事なら・・・私は・・・」
そう言うとぱたりとメルが倒れる。
「・・・・・・」
俺はと言うと固まったまま動けなくなっていた。
赤・・・。つまり、血が俺をかばって剣を受けて流れた。しかも、あんなに美しかった白銀のマントを汚してまで。
「おい・・・?メル・・・?」
かろうじて息はあるようだが今すぐに治療が必要だろう。
そのためには、この事を引き起した奴らを徹底的に叩きのめさればならない。
一刻の猶予もないし、与えるつもりもない。
そう考え、今まで何処か消極的に、流されるままに握ってきた剣を今度は自分の意思でちゃんと持つ。
この時、初めて俺は自らの意思で戦う事を決意した。
その時だった。
【なればこそ、我と汝の終着の地は変わらず】
【故に我と汝は同一存在にして、運命を共にする者】
「今こそ、ここで誓おう」
頭に直接響く声に自然とそう返していた。
まるで、そうするのが当然だろうと言わんばかりに。
【汝は我の写し身なり】
自分でも何を言っているか分からないが、なぜか口が止まらない。
さらに、最後まで言い切った瞬間体に変化が現れる。
傷を負った部分は癒え、疲労感は消える。変わりに残ったのはとてつもない圧迫感。
(ぐ・・・、なんだ?これ)
【我が写し身よ。注意せよ。我が力と汝の魂がせめぎ合っているこの状況でもしも、少しでも気を抜けば汝の魂は消滅する】
【さぁ、我が写し身としての力を発現するがいい】
「? 貴様、何をしている」
メルを吹き飛ばした奴がこちらを振り向く。
その前に、メルを突き刺した馬鹿に思いっきり蹴りを入れておく。本当なら止めを入れてやりたいが、今はこちらを睨んで構えている奴に背を向けることなどできない。
「・・・そうか、その力・・・。貴様もそうなのか」
向こうは向こうで何やら頷き納得している。
「訳・・・分かんねぇんだよ!!」
技術無視の特攻。
もとより、技術必要ないくらいに力は増幅されている。この分なら剣を振るうだけで奴を斬ることが出来る。
ブゥオオォォオン!
甲が振るった剣は風を巻き起こしながら、大威力のまま敵に直撃する。しかし、これで倒れるほど敵も甘くなかった。
「ふん、無駄な動きが多い。洗練されていない攻撃など私には届かんよ」
少し体をずらし刀身を避けると、剣風も軽くいなす。
それはまるで、妖精の踊りのようだった。
「あながち間違いではない。この歩法は、妖精に教えを請うたものだからな」
驚きが顔に出ていたのだろうか?心の内を簡単に読まれてしまう。
声からして女剣士は、そう言いながら半歩下がり、
「次はこちらから行くぞ」
剣を前に突き出すという珍しい構えをする。あれでは腕を斬り落としてくれと言っているようなものだ。
俺は即座にその剣を叩き落とそうとするが、
「だから、洗練されていないというのだ。目先の事にとらわれてしまえば、そこで必ず隙が生まれる。それを見逃すほど優しくはないぞ?私は」
と言うと女剣士の刀身がぶれ、そこから八方向から迫る剣線が見える。
「回避は不可能。さぁ、我が主に勝てる可能性とやらを見せてみろ」
「!? なに訳わかんねぇことを言ってやがる!!」
回避は不可能と言われているのだ。試すだけ無駄だろう。そんな事をするぐらいなら、
「・・・攻めに出る!!」
合計八の斬撃に対してこちらは一。しかし、威力としては申し分ないはずだ。
「・・・っああぁぁぁあああ!!」
「むっ!?ぐぅ・・・っ!」
ザ、ザザザザザザザシュン!
ビュゴゴゴォォォオオ!
ほぼ同時に襲い来る斬撃に内心ビビりながら(多分、キレていなかったら逃げ出していただろう)逆袈裟に剣を振るう。
拮抗したのは一瞬。
次の瞬間には互いに吹き飛び、崩れてきた瓦礫の下敷きになった。
ボゴッ!
だが、女剣士は一瞬で瓦礫の下から這い出てくる。
「・・・ふ、まさか、本当に・・・」
そうつぶやくと一瞬何事かを考え、
「よかろう。貴様に免じて、今回だけは見逃す。だが、次までにもう少し腕を磨いておくことだ」
次はないからな、とそう言い残すと倒れている仲間を引きずり、魔方陣を起動させ消えようとする。
ビュォ!
その瞬間、甲が吹き飛んだ方の粉塵からボウガンの矢が無数に飛来する。しかし、それらが目標に当たることはなかった。何かの壁に阻まれているようだ。
それを、口をゆがめながら見送ると女剣士は消えていった。
メル「・・・主人公はお亡くなりになられました」
むしろ、本編からいってお亡くなりになったのはおまえじゃないか?
メル「生きてるもん」
もんって・・・・
メル「私って一応人外じゃない?」
うん
メル「ならおk」
・・・いいのかなぁ・・・
メル「どの道主人公は来ないわよ?」
どーして?
メル「今瓦礫の下」
前回から扱いがひどい
まぁ、次回は出してやるよ・・・
メル「悲痛なことにキャラが多すぎるのよね」
どこの恋姫○双だ・・・
メル「まぁ、ともかくゲームとかやってて更新はとろいけど気長に待っててね~」