第7話
3日後の正午、ステレン村では……
「採掘した金は武器の購入に使うんだ。シャルロワの投石器やバリスタはとても優秀と聞いているからな」
ラルスの指示の下、村人たちは樽に入った大量の砂金を荷車に乗せていく。
大きな樽に合計6つ。
これだけあればかなりの量の兵器が買える。
ラルスはそう思っていた。
「ラルスさん、まだまだ金脈は続いています。恐らくですが村の周囲にも続いているかと……」
「残念だがまだ自分たちの懐には入れるなよ? この砂金で俺たちは力を手に入れるんだ。そしてこの国を……ズウォレスを永遠に平和が続く楽園にしてみせる」
「きっと叶いますとも。その夢は」
ラルスに入れ知恵した村の男が穏やかに笑う。
「そういえば……フロリーナ様にはなんと?」
「報告はしない。今回のフロリーナの判断はどう考えてもおかしいからな。俺達だけでやる。それよりシャルロワに送るための道は?」
「既に当たりはつけてあります。使われなくなった道は山ほどありますから、運搬に苦労は無いでしょう」
ラルスはステレン村の人間からの指示を集め、徐々に強まる自分の影響力に酔いしれていた。
同時刻、ライデン城にて……
「フロリーナ様……ディートリンデ様ですが今日も脱走を……」
各所の視察から帰ってきたフロリーナに城の警備をしていたズウォレス兵が申し訳なさそうに伝えてきた。
「またか……」
ディートリンデは2年前、ベルトムントとの戦争が終わって以来故郷であるベルトムントに戻ろうと脱走を繰り返しているのだ。
しかも幼い弟であるイグナーツも連れて行こうとしているのだから余計質の悪い。
ーー窓に格子を入れるか?それとも部屋の内側からは開かないようにするか?
頭に浮かんでくるのはどうにかしてディートリンデを閉じ込める方法。
最初のうちは腹違いとはいえ自分の娘、出来る限り自由を与えようと思っていたが……こうも脱走を繰り返されては兵士達の負担が増えるだけだ。
「仕方ない、私が話そう。ディートリンデは部屋だな?」
「ええ」
土で汚れた絨毯の上を雪で濡れたブーツで踏みながら子供部屋へと向かう。
傷だらけのドアのそばには心労が色濃いズウォレス兵が控えていたのでわずかだが迷惑料代わりに何枚かの銅貨を渡した。
「ディートリンデ、イグナーツ。私だ、入るぞ」
「入って来ないでください……」
ドア越しに話しかけるフロリーナに、ディートリンデは冷たく拒絶した。
ーーこんな時、どうすればいいんだ?
まともに子供の世話をしたことが無かったフロリーナ。
たかだか木の扉1枚隔てただけなのに。
今のフロリーナにはそれがとんでもなく大きな障害のように感じた。




