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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第二章 呪われた黄金
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第6話

「貴方がズウォレス軍から失踪して2年か。久しぶりだなシセル、それと……先代? とでも言えばいいのか……」


「ジジイで構わんぞ。もう儂は『ズウォレスの黒狐』じゃあないんだからな」


 シセル達の目の前に現れた2頭の馬。


 その背中に乗っているのはフロリーナとブラーム。


 2人とも懐かしい人間を見るような表情をしているが……シセルは嫌悪も露わ、顔をしかめながら馬上のフロリーナを睨んでいた。


「……なんの用だ?」


「迎えに来た。シセル、貴方にはズウォレス軍に戻ってほしいんだ」


 馬を降りて笑顔で語り掛けるフロリーナ、その言葉にシセルは大きくため息をついた。


「戦いに巻き込まれて、俺は多くの人間を殺した。その中には女子供も混ざってる。大麻に芥子に、薬も大量に使った」


「ああ、そうだな」


「ベルトムントとの戦争が終わってもう2年だ。2年経つ。だが俺は、いまだに戦場で殺した奴らを夢に見る。幻覚で目の前に現れることだってある」


 静かに語るシセルに2人は目を伏せた。


「俺はここで暮らす。いつか村が元通りになるまでな。そのために俺は生きる」


「そうか……」


 まるでシセルの心中を表現するかのように、雪が降ってきた。


 そして二人はお互いに顔を突き合わせたまま、一言も話さなくなってしまった。


「……えらく雪が強くなってきたな。こりゃ積もるぞ。お嬢さんとお連れの人、家で泊ってくか?」


「そうさせてもらおうか。積もる話もあるだろう」


 ──ジジイ、余計な事を……


「いや、そのまま帰れ。あの家の主は俺だ。言う事は聞いてもらう」


 きっぱりと拒絶の言葉を浴びせ、シセルはフロリーナ達に背中を向けて家に戻っていく。


「おいシセル! ……ああもう行っちまった。すまんな、家主があんなだからこの話は無かったことにしてくれ」


「仕方ない。今日はこれで帰らせてもらうよ」


 そうしてもらえると助かる、老人はそう言い残すとシセルの後を追って家の中に入って行った。


「……寒いな、私たちも帰ろう。ブラーム」


「だな。けどあいつはどうするんだ?」


 腕をさすりながら、フロリーナは馬に乗る。


「いずれ戦争になれば、無理やりでも徴兵するさ。あの男の名前はもう隣国には知れ渡っている。放置しておくのは惜しい」


 フロリーナにとっては、あくまでシセルは大事な駒なのだろう。


「必要な時が来るまで、しばしの別れだ」


「了解だ。総指令殿」


 フロリーナとブラームは馬を走らせた。

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