第1話
2年後、ズウォレス共和国の首都、ライデンにて……
ベルトムントとの戦いが終わり、2度目の冬。
かつて戦場となっていたライデン城にはフロリーナ含む何人かの軍人とフロリーナの子供、ディートリンデとイグナーツが住んでいた。
吐く息も白くなる執務室の中、毛布を幾重にも被ったフロリーナが暖めた葡萄酒を飲みながら羊皮紙に目を通している。
元々あった豪華な調度品は埃をかぶっているが、フロリーナが気にする様子はない。
「ようフロリーナ、久しぶりだ」
呼び声と共に部屋に入って来る男がいる。
「ラルスか、よく来てくれた」
いきなり執務室に入ってきたのは南部の部隊を率いていたラルス。
格好はというと革鎧……ではなく麻で出来た服だ。
「どうだ北西部の様子は?」
「まずまずだな。いかんせん人が足りないから目標の6割が達成できればいいほうだ」
「そうか……」
戦争が終わってからというもの、フロリーナは暫く税をとらない代わりに各都市の復興を命じた。
とはいえそこは戦後、1万に満たない国民の手でかつてのズウォレスの領土を治めようとするには限界がある。
食料だけなら安定して供給出来ているのが幸いか。
「まあ暗い話題ばかりじゃない、みろよほら」
「なんだ?」
うなだれているとラルスは懐から黄金色に輝く豆のようなものを出してきた。
「……これは?」
「砂金だよ砂金。ステレン村で最近砂金が出始めたみたいでな。結構な量が既に採掘されてる」
「なん……だと?」
見る見るうちに青ざめていくフロリーナ。
「どうだ? いっそこれを国全体でやってーー」
「今すぐやめさせろ!! 今我々が金を見つけるのはまずい!!」
ラルスの言葉を遮る形で、フロリーナが唾を飛ばしながらがなりたてる。
「お、おいおい……一体何が駄目なんだよ。金持ちになれるかもしれないのに」
「そう考える人間が大多数になるのが問題なんだ!! いいから行くぞ! 何が何でも止めるんだ!!」
現在ズウォレスは復興の途中、目先の金に目がくらむ人間は少なくないだろう。
加えてベルトムントとの戦争が終わったとはいえ今のズウォレスは弱りきっている。
周辺国にこれが嗅ぎつけられると戦争の火種にもなりかねない。
「け、けどもう結構な数の人間が拾いに出てたぞ。とてもじゃないが止められねぇよ」
「とめられないじゃない! 止めるんだ!」
大声でまくしたてるフロリーナだったが、もう既に何もかもが遅すぎた。
既にステレン村で採掘された金の量は樽に1つ以上。
周辺の村や都市にも噂は広まった後。
そしてこれが後に『呪われた黄金』と呼ばれるに至る災厄の種となった。




